転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1799話

 タルタロスの2階を進んでいる中で、再度姿を現すシャドウ。

 それは、目の周りだけを隠すような、赤いマスクを身につけたスライムもどき。

 臆病のマーヤとそっくりのそれを遠目に見ると、俺は隣にいる荒垣に視線を向ける。

 

「で、あのスライムもどきは何て名前なんだ?」

「残酷のマーヤだな」

「……残酷の、ね」

 

 そうなると、マーヤというのが恐らくあのスライムもどきの姿を表しており、臆病や残酷といった形容詞がマスクの方を表している……って認識でいいのか?

 ともあれ、アギを使ってくるあの敵に向かってゆかりは再び歩いて近づいていく。

 最初の時のように、ペルソナを召喚するのに緊張している様子はない。

 召喚器を持っている手も、震えてないしな。

 まだ2回目なのだが、それでもやっぱり敵が雑魚だというのは、ペルソナを召喚するゆかりにとって、緊張しないで済んでいるんだろう。

 ……臆病のマーヤもそうだが、残酷のマーヤも魔法を使ってくるから、必ずしも安全って訳じゃないんだけどな。

 そんな俺の懸念は、次の瞬間現実のものとなる。

 臆病のマーヤの時と同じように距離をとってイオを召喚しようとしていたゆかりだったが、向こうはまるでそれを見抜いたかのように地面を滑りながらゆかりとの間合いを詰めたのだ。

 

「アギ」

 

 放たれた魔法。

 そこまで強力という訳ではないが、それでも間違いなく放たれた火の玉は、真っ直ぐゆかりにぶつかる。

 

「きゃあっ!」

 

 幸い……と言うべきか、外に出ている皮膚の部分に当たった訳ではなく、身体に命中していた。

 それでいながら、服が燃えるといった事はなかったのは、単純に運が良かったのか、それともアギという魔法自体にそこまでの威力がなかったからなのか。

 ともあれ、そのアギによってゆかりがダメージを受けたのは間違いなく、その口から悲鳴が上がる。

 助けるか?

 一瞬そう思ったが、それでは過保護だろうとすぐに考えを改める。

 

「へぇ。てっきり助けに行くのかと思ったけどな」

 

 そんな俺の様子を見て、荒垣は微妙に感心したように呟く。

 実際、一瞬であっても助けに行こうと考えたのだから、その言葉を否定する事は出来ないだろう。

 

「万が一死ぬ可能性があったらともかく、あのくらいは自力で何とかして貰わないとな」

 

 助けに行こうとした事は取りあえず棚に上げ、それだけを告げる。

 そんな俺の視線の先では、攻撃された衝撃を顔に表したまま、それでもゆかりは召喚器を自分の頭部に向けてトリガーを引く。

 

「ペルソナ!」

 

 そうして呼び出されたイオは、次の瞬間牛の頭蓋骨が真っ直ぐ残酷のマーヤに向かって突っ込んでいく。

 臆病のマーヤの時は、ただ上からその重量で落ちるだけだった。

 だが、今回のその攻撃は、攻撃をするという意思がイオにある。

 車が猛スピードで走っている状態で轢くかのように……そんな感じで、残酷のマーヤは一撃で殺される。……いや、明確に命があるのかどうかとか、その辺りは分からないけど。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……ディア」

 

 残酷のマーヤが消滅したのを確認したゆかりは、そう呟いて回復魔法を使う。

 尚、回復魔法だと理解したのは、イオが現在使える魔法は回復魔法だけだからと聞いていた為だ。

 なるほど、この世界の回復魔法はディアって言うんだな。

 白い光がイオから放たれ、ゆかりにその白い光が触れる。

 瞬間、まだ痛みに歪められていたゆかりの顔が、安堵の表情へと変わる。

 どうやら、回復魔法はしっかりと効果を発揮したらしい。

 ……もっとも、当然のように回復魔法で効果があるのは、ゆかりの身体だけだ。

 それは逆に言えば、敵の攻撃を食らった場所……正確にはゆかりの着ていた服は、アギによって焦げ目が付いたままという事になる。

 ゆかりも、これから起こるのは戦闘だと知っている為か、着ているのは動きやすい服装だ。

 値段の高い私服の類でなかったのは、幸いだったと言えるだろう。

 けど、そろそろゆかりの防具を何とかしないといけないな。

 だが……問題なのは、どこで買うかだ。

 もしくは、空間倉庫の中に入っている、シャドウミラーの技術班が開発したプロテクターを使うという方法もあるが、恐らく……いや、間違いなく身体には合わないだろう。

 これでゆかりが、胸が小さい……いわゆる貧乳の類であれば、もしかしたら俺のプロテクターを着る事も出来たかもしれない。

 だが、残念ながらと言うべきか、ゆかりの胸は平均以上の大きさを持つ。

 とてもではないが、俺が持っているプロテクターを着るのは難しい。

 いや、無理をすれば着る事も出来るかもしれないが、そうなれば動きにくくて戦闘に影響が出る可能性も十分にある筈だ。

 であれば、やはりこの世界できちんとゆかりの身体に合った防具を用意するべきだろう。

 ……スポーツ用品店にでも行ってアメフトとかのプロテクターを買う?

 いや、そもそも女用のプロテクターがあるとは思えないし、弓を使う上でかなり邪魔になりそうな気がする。

 だとすれば、ミリタリーショップとか、そっち系か?

 そんな事を考えながら、こっちに近づいてくるゆかりを眺めつつ……ふと、隣にいる荒垣に気が付く。

 

「なぁ、荒垣。どこか防具を売ってる場所に心当たりはないか?」

 

 そう、今はともかくとして、以前は桐条や真田といった仲間と共にペルソナを使って行動していたのだ。

 であれば、当然のように武器や防具といった物は必要になるだろう。

 まぁ、桐条グループの完全なバックアップがあるという話だし、もしかしたら装備品の類は完全にそっち任せだった可能性もあるが。

 ともあれ、今頼れるのは荒垣か……もしくは、ショートボウが出てきたのを思えば、タルタロスの宝箱しか期待出来ない。

 そして宝箱は当然のようにランダム性が高い。

 狙って防具が出てくるとは思えない以上、やはりどうにかする為にはタルタロスの宝箱以外でどうにかするしかないだろう。

 

「防具、か。……まぁ、心当たりがない訳じゃないか……」

「え? 防具の心当たり、あるんですか?」

 

 俺と荒垣の側までやってきたゆかりが、防具云々という会話に喜びの混じった顔を浮かべる。

 普通に考えれば、動きやすいとはいえ普通の服装でタルタロスに挑むという事そのものが、半ば自殺行為に等しいのだから、その気持ちは分からないでもない。

 俺の場合は、混沌精霊だからシャドウの攻撃は殆ど意味はないんだが。

 ただ、それはあくまでもこの階層のシャドウだからだ。

 少なくても、昨日遭遇した死神辺りであれば、俺が無意識に展開している魔法障壁程度は容易に抜いてくるだろう。

 勿論、俺がそれに容易く命中するような事はないのだが。

 ともあれ、あの死神のような存在がいる以上、タルタロスの上層部にはもっと強力な攻撃力を持つシャドウがいる可能性というのは十分にある。

 そうである以上、武器はゲイ・ボルクがあるから問題ないとしても、防具の方はある程度用意した方がいいだろう。

 それと、マジックアイテムの類も、出来るならタルタロスの宝箱ではなく、どこかで買って入手出来るのであれば是非欲しい。

 

「防具を扱っているところに心当たりはあるし、そこを紹介してもいい。……ただし、そこを紹介した場合、お前達にとっては色々と不味い事になりかねないぞ?」

「は? それはどういう意味だ?」

 

 何故俺達にとって不味い事になるのか。

 そんな疑問の視線を向けると、荒垣は小さく溜息を吐いてから口を開く。

 

「俺達が活動している時に武器や防具を用意して貰っていた相手は、桐条グループの息が掛かっている相手だ」

「あー……なるほど」

 

 そこまで言われれば、最後まで聞かなくても荒垣が何を心配しているのかはすぐに分かった。……分かってしまった。

 俺達の事は、荒垣が気を遣って桐条グループの方に情報を流さないでいてくれている。

 それは、俺ではなくゆかりが桐条グループに対して色々と思うところがある為だ。

 だが、桐条グループと繋がりのある相手から武器や防具を売って? それとも譲ってか? ともあれ用意して貰えば、当然のように桐条グループに俺とゆかりの情報は流れるだろう。

 そうすれば、当然のように俺達の前に桐条グループの手の者が現れるのはほぼ確実だろう。

 そして接触してくるのは、恐らく……本当に恐らくだが、桐条美鶴と真田明彦の2人。

 これは、俺やゆかりと年齢が近いというのもあるし、同時にペルソナ使いだからというのもある。

 

「どうする?」

 

 視線をゆかりに向けると、難しい表情で考えているのが見える。

 桐条グループにはまだ接触したくない……か。

 それでいながら、防具も欲しい。

 そうなると、やっぱりというか当然ながらこうして迷ってしまうのだろう。

 1分程考え……やがて、ゆかりは申し訳なさそうに俺の方に視線を向けてくる。

 

「ごめん、アクセル。もう暫く防具は今のままでいい? 前衛のアクセルには色々と迷惑を掛けてしまうと思うけど」

 

 結局そういう事になったらしい。

 まぁ、よっぽど上層部までいかない限り俺は多分大丈夫だと思うし、それこそいざとなれば、ゆかりが装備出来ないプロテクターが空間倉庫の中に入っている。

 

「ま、それならそれで構わない。ゆかりの場合は護衛に炎獣を出しておけばいいしな。……それに、ゆかりは怪我をしても回復魔法があるし」

「そう、ね。……勿論、あまり怪我はしたくないんだけど」

 

 憂鬱そうに溜息が吐き出される。

 その気持ちは分からないでもない。

 特に大きいのは、怪我もそうだが、やはり防具……服だろう。

 俺達は別に誰かに頼まれてこのタルタロスを攻略している訳じゃない以上、当然のように給料の類は出ない。

 出るのは、それこそ宝箱の中に何故か入っている現金とかだが、それだって毎回必ず入手出来る訳じゃない。

 ……まぁ、いざとなったら俺が宝石とか金塊とか現金とかを出してもいいんだが、ゆかり本人はそれを嫌がるだろう。

 基本的に自分の事はきちんと自分でやりたいと……他人に頼りたくないと思っているのだから。

 

「ま、しょうがない。ダンジョンで見つけた現金とか宝石とかそういうのは、ゆかりの戦力を整える為の資金として使えばいいか」

「……ありがと」

 

 照れくさいのか、視線を逸らし、頬を薄らと赤くしながらゆかりが感謝の言葉を告げてくる。

 そんなゆかりの様子に思わず笑みを浮かべ……先程から少し気になっていた事を、荒垣に尋ねる。

 

「なぁ、武器や防具を用意してくれる相手がいるって事は……もしかして、マジックアイテムの類を用意してくれる相手もいるのか?」

「マジックアイテム? ……ああ、そうだな。ポロニアンモールにBe blue Vってアクセサリー屋があるのを知ってるか?」

「あー……あったか?」

「私、知ってる。女の子に結構評判のいいお店よ。それでいて値段もそんなに高くないんだけど……もしかして……」

 

 ゆかりの視線に、荒垣は頷く。

 

「そうだ。Be blue Vも桐条グループが関係している店だ」

 

 まぁ、ポロニアンモールは元々桐条グループが率先して開発していった場所だって話だし、桐条グループのお手つきでも分からないではないか。

 ただ、その店を利用した事があるのだろうゆかりは、微妙な表情を浮かべている。

 桐条グループに対しては、色々と思うところがあるのだから、当然と言うべきか。

 

「その店では、影時間とかシャドウ、ペルソナとかの研究で出来た成果として、特殊な効果を持つアクセサリを売ってる。ただ、当然全てのアクセサリにそんな効果がある訳じゃないけどな」

「……ほう」

 

 まさに、俺にとっては非常にありがたい代物だ。

 寧ろ、ペルソナという能力を俺が発揮出来るかどうか分からない以上、そのアクセサリー屋は非常に興味深い。

 そもそも、ペルソナを召喚するのに必要なのが擬似的な死だという時点で、俺がペルソナを召喚するのはかなり難しいだろう。

 自慢ではないが、今の俺を殺そうと思えば、それこそ神とかそういうレベルの相手が必要だと思う。

 あの死神はこっちに危険を感じさせる相手ではあったが、俺だけで正面から戦えば決して負ける気はしない。

 そう考えると、やはり俺がペルソナを召喚出来るようになるのかどうかというのは、酷く難しい話になる筈だ。

 ましてや、純粋に技術的な意味で考えれば、寧ろそのアクセサリの方がシャドウミラー的には美味しい相手だ。

 

「ただ、その店も結局は桐条グループと繋がっている以上、俺が紹介して買えたとしても、間違いなく桐条グループの手がお前達に回るだろうな」

「……なるほどな。それは大変だ。出来れば利用したかったんだが」

 

 何とか俺の感情を表に出さないようにし、荒垣の言葉にそう言葉を返す。

 さて、大事な情報も入手した事だし……まぁ、代価は置いてくる必要があるだろうが、久しぶりに行動を起こすとするかね。

 かつてマオ・インダストリー社に侵入した手並みを、この世界でも見せつける時がやって来たのだ。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1389

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