転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1802話

 花見が済んだ日の夜……俺の姿は、当然のようにタルタロスの中にあった。

 ちなみに、当然ながらゆかりと……そして荒垣の姿もある。

 

「ったく、何で俺まで……昨日だけだって言っただろ?」

「俺はそれに納得しなかった筈だが? それに、荒垣も何だかんだとタルタロスは気になってるんだろ」

「……んな訳ねえだろ」

 

 俺の言葉に反論する荒垣だったが、答えるまでに若干の間があったのを考えると、当然のように本心という訳ではないのだろう。

 面倒見がいい割に、微妙に捻くれているしな。

 勿論、本人にそんな事を言えば絶対に納得しないだろうが。

 

「とにかく、今日は5階から上に進むとしよう。……目指すのは、9階。あの死神が出た場所だ」

「おい、俺を戦闘に巻き込むつもりか?」

「どうだろうな。……まぁ、恐らく9階に行っても死神はいないと思うが」

「そう思う根拠は何だ?」

「純粋に、死神が強すぎるシャドウだからだ。とてもではないが、9階とかで出てくるようなシャドウじゃなかった。……まぁ、正確には9階に上がってからすぐに死神と遭遇したから、9階のシャドウとは戦っていないんだけどな」

 

 その言葉に荒垣は呆れの視線を向けてくる。

 だが、9階のシャドウとは戦っていなくても、8階のシャドウとは戦っているのだ。

 これが、9階と11階で差が出てくるのであれば、まだ分かる。

 ……ちなみに、10階が抜かれているのは恐らくだが10階には5階と同じような小ボスがいると予想されている為だ。

 だから、正確には小ボスのいる階層を境にしてシャドウの強さが異なる……というのが正確か。

 勿論これはあくまでも俺の予想だから、実際には何らかの理由で9階から強力なシャドウが出現するようになっているという可能性は否定出来ないのだが。

 

「まぁ、アルマーがそう言うのならそれでもいいけどな。何しろ、アルマーの場合は影のゲートがある。一方通行のターミナルをいつでも使えるようなものだ。……いや、行って戻ってくるって事は、双方向のターミナルか。正直、双方向のターミナルがあるとは思ってなかったけどな」

「まぁ、双方向ターミナルがあるのは5階だしな。そこまで到着してなければ、知らなくても仕方がないさ」

 

 そう言えば、俺とゆかりがターミナルと呼んでいるこの転移装置。

 実は、荒垣達……より正確には桐条グループ側でも、ターミナルと呼んでいたらしい。

 転移装置とかなら分かるが、まさか向こうでもターミナルとは……これは偶然か? それとも、何か別の意味があっての事なのか?

 ふとそんな疑問を抱くが……すぐに今はそんな事を考えている場合ではないと判断する。

 とにかく、今は上の階に……9階に向かう必要があるのだから。

 

「とにかく、行くとしようか」

 

 影の転移魔法やターミナルについて色々と話すのも面白そうだとは思ったが、今は進む方を優先すべきだろう。

 ゆかりと荒垣も特に異論はないのか、そのまま真っ直ぐにタルタロスを進み始める。

 3階ではサンダル、4階では短剣といった代物を入手していったが、狙っていたマジックアイテムの類は何も入手出来ない。

 そもそも、宝箱そのものがそれ程多く置かれていないってのもあるんだろうが。

 

「取りあえず、この短剣でも持っておかないか? いざって時に何も武器がないと危険だろ?」

 

 特に使い道のない短剣を荒垣に渡し、ふと以前入手した下駄も空間倉庫から取り出して荒垣に渡す。

 

「お前……俺をどうしたいんだ?」

 

 何故か不満そうな表情を浮かべる荒垣だったが、別にどうするつもりがある訳でもない。

 俺の渡した下駄と短剣を身につけた荒垣は、こうして見ると……一昔前の、いわゆる番長とかそういうのがいた時代の不良に見えないでもない。

 全国の高校を統一してやる! とかそんな感じで叫ぶような。

 ……不思議と、荒垣にはそれが似合ってるような気がしないでもない。

 ただ、荒垣にそれを言えば間違いなく怒られると思うんだが。

 

「特にどうしたいとは思ってないな。ただ、荒垣にいざという時に戦えるようになって貰いたいと思っただけで。……ああ、でもペルソナがあるから大丈夫なのか?」

「駄目よ。荒垣さんの召喚器は私が使ってるんだから」

 

 ペルソナがあるから大丈夫と告げた俺に対し、ゆかりは即座に駄目出しをしてくる。

 

「あー……そうだったな」

 

 実際にはゆかりが最初にペルソナを召喚した時のように、ペルソナを召喚するのに召喚器は絶対に必要ではない。

 それでもペルソナに覚醒したゆかりが、いざペルソナを召喚しようとしても無理だったのを考えれば、やっぱり召喚器というのはあった方がいいんだろうが。

 

「言っておくぞ。俺は、もうペルソナを召喚するつもりはねえ」

 

 俺とゆかりの会話を聞いていた荒垣が、そんな風に割って入る。

 どうやら、今の話に色々と思うところがあったらしい。

 荒垣はやっぱり自分のペルソナについて何かあるのか。

 ……その辺、少し気になるが……聞いても、多分答えないだろうな。

 俺と荒垣の関係は、そこまで友好度が高いって訳じゃないし。

 

「ペルソナを召喚しないなら、尚更いざって時の備えはしておく必要があるだろ」

 

 実際には以前のゆかりのように炎獣でも護衛につけておけば、取りあえず何ともないのだが……ここは、荒垣にも出来るだけ緊張感を持って欲しいので、止めておく。

 ちなみに、今日もゆかりに炎獣の子猫は護衛として出していない。

 ペルソナを使いこなす為には、やっぱり緊張感は大事だと思うし。

 本人も子猫の炎獣を愛でる事が出来ないのは残念そうだったが、それもペルソナを使いこなせるようにする為と考えれば、文句を言ってはこない。

 荒垣はペルソナ云々で若干不満そうにしながらも、そのままタルタロスを進む。

 そして特にこれといった事はないまま、タルタロスを上っていき……やがて、8階に到着する。

 この階層は、今まで俺とゆかりが進んできた中では最前線に近いのだが……幸いにも、もしくは残念ながら? ともあれ、ここに出てくるシャドウはゆかりの相手ではない。

 勿論それなりに厄介ではあるのだが、それでもペルソナを自由に使って戦い……

 

「あ、ちょっとアクセル! 新しい魔法を覚えたみたい!」

 

 戦闘が終わると、ゆかりが嬉しそうな表情でそう告げてくる。

 どうやら今の戦闘でペルソナがレベルアップしたらしい。

 本当にこの世界にレベルという概念があるのかどうかは分からないが、魔法を覚えたというのなら多分あると考えても間違いないだろう。

 

「それでどんな魔法を覚えたんだ?」

 

 この世界の魔法は、俺に取っても非常に珍しい。

 いや、まだこの世界の魔法について殆ど何も知らないからこそ、そう思うのかもしれないが。

 そんな訳で、出来れば俺としてはこの世界の魔法についての情報は欲しかったのだが……

 

「ガル、ね」

 

 ゆかりのその言葉に、微妙に残念な思いを抱いてしまったのは仕方がないだろう。

 実際、ガルというのは風を使った攻撃魔法だ。

 敵が使ってきたのを見た事があるので、大体どんな魔法なのかは分かっている。

 もっとも、シャドウが使うのとゆかりが……正確にはペルソナが使うのが同じ魔法であるとは、限らないのだが。

 名前は同じであっても、その効果が違う可能性は十分にある。

 そうだとすれば、少し興味深いか?

 

「ゆかり、ガルはどんな魔法なのか分かるか? いや、風を使った攻撃魔法だというのは分かるんだが」

「うーん……そうね、ちょっと待って。……ペルソナ、ガル!」

 

 ペルソナを召喚し、イオがタルタロスの壁に向かってガルを放つ。

 それは、シャドウが以前使っていたのと同じような風の刃。

 やっぱりか……そう残念そうに思っていると、ふと荒垣が口を開く。

 

「岳羽、もう1回だ。ただし、今度魔法を使う時は風の刃じゃなくて……そうだな、竜巻を想像してやってみろ」

「え? ……はぁ」

 

 荒垣の言葉を聞き、特に異論はないのか首を傾げながらも、ゆかりは再度召喚器を頭部に向ける。

 

「ペルソナ、ガル!」

 

 その言葉と共にイオが召喚され、再び壁に向かってガルを放つ。

 すると、先程は風の刃として放たれたガルだったが、今度は竜巻として姿を現す。

 ……ただし、竜巻は竜巻でもかなり規模が小さい、それこそつむじ風とでも呼ぶべきような、そんな規模だったが。

 

「荒垣?」

 

 どうなっている? と疑問を込めた視線を向けると、荒垣はそれに対して特に驚いた様子もなく、口を開く。

 

「俺が知ってるペルソナ使いが使う魔法は、同じ魔法であってもその魔法がどういう形で現れるかってのはある程度自由に変える事が出来ていた」

「なるほど。規模そのものは魔法の強さに影響されるだろうけど、それ以外はほぼ自由に変える事が出来るのか」

「ああ。もっとも、マハ系のように広範囲に攻撃するのは、また別みたいだけどな」

「って事らしい……ぞ?」

 

 途中で言葉が途切れてしまったのは、ゆかりの表情が複雑なものになっていた為だ。

 その理由を考え、すぐに納得する。

 ペルソナというのは、基本的に召喚者の本質を表したような存在だ。

 例えば真田のように肉弾戦を得意とするような存在であれば、魔法は覚えない事もないだろうが、それでもやっぱり直接攻撃を得意とするだろう。

 ……イオの牛の頭蓋骨で轢くというのも、中々に強力な物理攻撃だとは思うが。

 ともあれ、そんな理由から現在判明しているペルソナ使いの中でも、魔法を得意としているのは桐条美鶴のペルソナだと思われる。

 だからこそ、桐条美鶴に対して……いや、桐条グループに対して思うところのあるゆかりにとって、複雑な表情となったのだろう。

 意外と荒垣のペルソナが魔法を得意としている可能性も……いや、ないな。

 見た感じからして、荒垣はパワーファイター系だ。

 真田はスピードファイター的な感じがして、荒垣がパワーファイター系、そして桐条が後方から魔法ってところか?

 まぁ、あくまでも見た目の印象だが。

 実際には、それぞれ色々と違うところもあるかもしれないけどな。

 ともあれ、魔法はある程度ではあっても発動時の形態を変えられるというのは、これからシャドウと戦っていく中で大きな利益となるのは間違いないだろう。

 今の様子を見る限り、結構集中力が必要みたいだから、相応の訓練が必要になるだろうが。

 

「ゆかりに思うところがあっても、今の状況では強さというのはあればあった方がいいだろ?」

「……そうね」

 

 落ち着かせるように告げると、ゆかりもそれは理解しているのだろう。まだ若干不満そうな様子はあったが、それでもそれ以上は文句を言う様子もなく頷く。

 

「なら、いよいよ9階に進むか」

 

 その言葉にゆかりと荒垣の2人は緊張したように頷く。

 ゆかりは、あの死神を直接目にした事があるが故の緊張。

 荒垣は、死神を直接見てはいないが、それでもゆかりよりも長くペルソナ使いとして活動してきたが故に死神の恐怖を感じ取っているのだろう。

 まぁ、荒垣がここにいるのはペルソナ使いとしてではなく、あくまでもアドバイザーとしてなのだが。

 うん? いざとなれば……その身に危険が迫れば、荒垣もペルソナを使って戦闘に参加するか?

 そう思わないでもなかったが、荒垣がペルソナに対して何か思うところがあるのは間違いない。

 ここで無理に戦闘をさせようものなら、アドバイザー的な現在の状況もご破算になる可能性が高いだろう。

 それは非常に困る。

 荒垣の持っている情報は、非常に重要なのだから。

 実際、ゆかりの……いや、イオの使うガルについても、もし荒垣がいなければ標準状態の風の刃でガルを使っていただろう。

 ガルの発動形態をある程度変えられるという応用力の高さは、これからタルタロスを攻略する上でかなり重要になってくる可能性が高い。

 そんな知識を持っている荒垣が抜けるような事は、絶対に避けるべきだろう。

 勿論、荒垣が知ってる限りでは桐条や真田達はタルタロスをまだ2階や3階くらいしか攻略していなかったのだ。

 そうである以上、これから挑む9階より上のシャドウについての情報を持っているとは、限らないだろう。

 ……勿論、どの階層でも出てくるシャドウが変わらないというのであれば話は別だが、ここが何らかの物語の世界である以上、そんな希望は抱かない方がいいだろう。

 

「よし、行くか。……9階。死神が出てきた階層。俺達が越えるべき壁の1つ」

 

 最初に出てくる壁にしてはかなり高いが……俺の予想だと、その壁自体が恐らくかなりランダム性が高いんだよな。

 俺達があの死神に遭遇したのは、ある意味運が悪かったのだと……そんな思いで階段を上がっていき……すると、そんな俺の予想通り、死神と遭遇した場所にはどこにもその姿はなかった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1389

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