転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1807話

「ふーん、そうか。舞子は前からこの神社に遊びに来てたのか」

「うん、そうだよ。このワンちゃんともいつも遊んでるんだ」

 

 そう言いながら、舞子は犬を撫でる。

 犬の方も撫でられるのは慣れているのか、特に抵抗する様子を見せてはいない。

 このくらいの年齢なら、それこそ他の子供達と遊んでいるのが楽しいと思うんだが……まぁ、何か事情があるのかもしれないし、俺はここで会っただけだ。

 舞子の保護者でも兄弟でも親でもないのだから、その辺りを特に突っ込む必要はないだろう。

 

「ねー、お兄ちゃん。舞子ちょっとお腹減った」

「うん? ……ほら、取りあえずこれでも食えよ」

 

 何故か急に空腹を訴えてきた舞子に、俺は空間倉庫から取り出したハンバーガーを渡す。

 もっとも、ハンバーガーはハンバーガーでも、このハンバーガーは専門のハンバーガー店で買ったハンバーガーだ。

 それこそ、その辺のファーストフード店のハンバーガーとは比べものにならないくらいの味だろう。

 

「え? いいの?」

 

 自分で腹が減ったと言ってきた割に、ハンバーガーを渡すと何故か遠慮した様子を見せる。

 

「気にするな。このハンバーガーは美味いハンバーガーなんだし、折角だから冷えないうちに食えよ」

「……う、うん。ありがと!」

 

 少し躊躇った様子の舞子だったが、やがてハンバーガーを受け取るとそのまま齧りつく。

 包み紙で押さえる事が出来なければ、恐らく食べている途中で零れてしまうだろう、そんなハンバーガーだったが、それだけに舞子にとっても美味かったのだろう。

 一口食べると、目を大きく開く。

 大人と子供だと味覚は結構違うから、大人にとっての本格的な味というのは、必ずしも子供に受け入れられるとは限らないのだが、このハンバーガーは見事に受け入れられたらしい。

 

「美味しい! 美味しいよ、お兄ちゃん!」

「そうか、それはよかったな」

 

 値段にして、ハンバーガー1つで1000円オーバーの代物だ。

 これで不味いとなれば、店は早々に潰れるだろう。

 

「ワフゥ……」

 

 そんなハンバーガーを食べている舞子を見て、犬が羨ましそうに鳴く。

 

「お前には、さっきやっただろ?」

「ワン!」

 

 足りないと言いたいのか、犬は俺の方を見て吠えてくる。

 

「はい、ワンちゃん。これ、ちょっとあげるね」

 

 そんな犬を見て可哀想に思ったのだろう。舞子はハンバーガーを少し千切ると地面に……正確には石畳の上に置く。

 ハンバーガーにはタマネギとかピクルスとかそういうのが入ってるんだが、刺激の強いのって食べさせても良かったんだったか?

 そんな疑問を抱くも、犬はハンバーガーの食欲を刺激する香りに我慢出来なかったのか、あっという間にハンバーガーを食べてしまう。

 あー……腹を壊さないといいんだけどな。

 犬の様子を眺めていると、舞子は犬と一緒にハンバーガーを食べたのが嬉しかったのか、笑顔を浮かべている。

 

「ね、ね。お兄ちゃん。私が来た時、ワンちゃんと遊んでたよね? 何してたの?」

「何って……木の枝を投げで遊んでたんだよ。この犬は投げた木の枝をキャッチして持ってくるのが好きらしいしな」

「本当? じゃあ、私もやってもいい?」

 

 好奇心に目を輝かせて告げてくる舞子に、少しの間どうするべきかと迷う。

 迷うも……やりたい思いを全身で表している舞子に見られれば、それを断るのもどうかと思う。

 勿論、何か危ない要素があるのなら止めさせるように考えもしただろう。

 だが、幸いにも木の枝を投げるというのは、別に舞子にとって危険な要素はない。

 木の枝の先端が舞子に刺さるとか、犬が舞子に危害を加えるかもしれないとか、色々と危険要素を考えようとすれば、それはあるだろう。

 だが、何でもかんでも、危険だからと行動を禁止するような真似をしても、それは子供にとって決していい環境ではない筈だ。

 何だったか……あまりにも小さい頃から泥遊びとかさせないようにした子供達は、ウィルスとかに対する抵抗力が落ちているとか何とか……そんな話だった気がする。

 勿論、これはそこまで大袈裟なものではないだろうが。

 ともあれ、舞子は木の枝を持って犬に言い聞かせていた。

 

「いい? 舞子がこの木の枝を投げるから、ワンちゃんはこれを取ってくるんだよ?」

「ワン!」

 

 舞子の言葉を理解してるかのようなタイミングで、犬が吠える。

 ……もしかしてこの犬、本当に人の言葉を理解しているんじゃないだろうな。

 いや、ここは何らかの原作がある世界だ。

 であれば、人の言葉を理解出来る犬がいても、不思議ではない。

 

「いくよー! えーい!」

 

 その言葉と共に、舞子が木の枝を力一杯投げる。

 だが……結局それでも、木の枝を投げたのは小学校低学年の舞子なのだ。

 当然のように俺が投げた時のように遠くに飛んでいったりはせず、それ程離れていない場所に木の枝が飛ぶ。

 犬は、そんな木の枝を拾うべく走り始め……丁度そのタイミングで、俺の携帯が鳴る。

 うん? 誰だ?

 ……誰だと言っても、俺の携帯に番号が登録されているのは、ゆかり、荒垣、眞宵堂の店主の3人だけなんだが。

 そして携帯に表示されているのは、ゆかりの番号だった。

 

「もしもし、ゆかりか? どうした?」

 

 時間的には既に午後3時……いや、4時近い。

 そうなれば当然月光館学園でも授業は終わっており、既に帰っているのか、それとも弓道部で練習をしているか。

 そのどちらでもおかしくはないんだが……いや、携帯に電話をしてきたって事は、今日は部活がないのか?

 

『もしもし……アクセル?』

「うん? ああ、そうだが……」

 

 聞こえてきた声は間違いなくゆかりのものだったが、その声には元気がない。

 

「どうかしたのか? 声に元気がないけど」

『あはは。ちょっとその……今日は体調が悪くて。少なくてもタルタロスに行くのは難しそうだわ』

「……風邪か?」

『いえ、ちょっとその……とにかく、今日は身体の調子が悪いの! それと今日から何日かはタルタロスの探索は難しいと思うわ』

「おい、本当に大丈夫か? 何なら薬を持っていこうか?」

 

 エリクシール程ではないにしろ、空間倉庫の中にはマジックアイテムの類は幾つか存在している。

 その中には当然のように体力を回復したりする物もある訳で……多少体調が悪い程度であれば、それこそすぐに治るだろう。

 

『別に病気とかじゃないから、いいわよ。気にしないで』

「……そう言われてもな」

 

 現状、ゆかりはこの世界において数少ない協力者の1人だ。

 いや、俺の正体を知っている――それを完全に信じているかどうかは別だが――という意味では、唯一無二の存在と言ってもいいだろう。

 それだけに、下らない病気でゆかりを失うような真似は避けたい。

 

『本当に大丈夫だから、ちょっとその……うん、疲れただけよ。ほら、ここ暫くは毎日タルタロスに行ってたでしょ? だから』

「……なるほど」

 

 無理に病気の類を隠している……という訳ではないらしい。

 実際、毎日タルタロスに向かっていたのは間違いのない事実なのだ。

 体力という意味では、文字通り人外の俺と比べれば、ゆかりは影時間に適応し、ペルソナに覚醒しても、結局のところ、ただの女子高生でしかない。

 そういう意味では、荒垣も普通の人間ではあるのだが……ただ、荒垣の場合は途中からこっちに合流してきたし、基本的には戦闘にも参加していない。

 だとすれば、やはり俺達の中ではゆかりが一番疲れていると考えても不思議はないだろう。

 もしくは、昨日はペルソナを使って戦闘を繰り返したし、それが関係している可能性も皆無……という訳ではないかもしれない。

 ここは大人しく今日は休ませた方がいいだろうな。

 ……ただ、数日って限定されているのは何でだ?

 まるで数日経てば治ると確信しているかのような……いや、俺がその辺りを心配しても仕方がないか。

 とにかく、今日から数日はゆかりがタルタロスに行けないというのは確定したのだ。

 であれば、俺が出来るのはこの件を荒垣に知らせて、後はゆかりの見舞いにでも行くくらいか。

 犬と遊んでいる舞子の姿を眺めながら、口を開く。

 

「取りあえず数日は大人しくしていて、身体を休めろよ。こっちもこっちで色々とやるべき事があるし、タルタロスに行かないってのは丁度いいかもしれない」

 

 まぁ、別にゆかりと一緒でなければタルタロスに行けないって事もないんだが、ゆかりの性格を考えるとそれを言えば向こうは無理をしてでもタルタロスに行くって言いかねないんだよな。

 であれば、取りあえずゆかりにはこう言っておいた方がいいだろう。

 

『うん。ごめんね、忙しい時に』

「気にするなって。タルタロスの探索は大事だが、ゆかりの方がもっと大事だしな」

『な……いきなり何を言ってるのよ。馬鹿じゃない!? てか、馬鹿じゃない!?』

 

 いつものように何故か繰り返して告げると、そのまま電話が切れる。

 ……さて、荒垣にも電話しないとな。

 

「ねー、おにーちゃん。どうしたの?」

 

 ゆかりとのやり取りを終えて荒垣に電話を掛けようとすると、犬と遊ぶのが一段落したのか、舞子が不思議そうに尋ねてくる。

 

「いや、友達から電話が掛かってきてな。ちょっと風邪を引いたらしい」

 

 正確には体調を崩したとしか言ってなかったんだが、まぁ、舞子みたいな子供には風邪と言った方が分かりやすいだろう。

 

「ふーん……大丈夫なの? お見舞いに行った方がいいんじゃない? 舞子もね、風邪を引いた時には友達がお見舞いに来てくれたんだよ?」

「……なるほど、お見舞いか」

 

 そう言えば、そういう行動もあったな。

 何だかんだと、シャドウミラーの面子は病気になったり、ましてや撃墜されて入院したりといった事はない。

 いや、エヴァとかエキドナとか茶々丸とか……その他諸々のお仕置きで怪我をするような奴はいるが、大抵何だかんだで何とかなってる。

 近衛の回復魔法もあるし、レモンの培養ポッドによる治療もあるしな。

 敢えて言えば……スティングやアウル、ステラ、レイといった面子を始めとして、培養ポッドに長期間入っていた事か?

 ただ、そういう場合では患者に意識がないから、お見舞いとか行っても殆ど意味がないんだよな。

 

「お見舞い、行った方がいいよ?」

「そうだな。じゃあ、そうするか。……じゃあ、俺はそろそろ行くけど舞子はどうする?」

「え? うーん……もうちょっとここにいるー!」

 

 そろそろ4時近いし、2月だからもう薄暗くなってきてるんだから、もう帰った方がいいと思うんだが。

 ただ、舞子の様子を見る限りだと、この神社で遊び慣れてるみたいだし、犬もいるから危ない事はないか。

 

「分かった。じゃあ、またな」

「うん! ……あ、そうだ。お兄ちゃんの名前教えて!」

 

 踵を返した時にそう言われ、そう言えば舞子に自己紹介をしていなかった事を思い出す。

 舞子の場合は一人称が舞子だったから、自己紹介をされなくても名前が分かったんだが……

 ともあれ、俺は舞子の方に振り向いて口を開く。

 

「俺はアクセルだ。よろしくな」

「うん、アクセルおにーちゃんだね」

「ワン!」

 

 一人と一匹の言葉や鳴き声を聞きながら、俺は神社を去っていく。

 そうして歩きながら、携帯で荒垣に電話を掛け……

 

『もしもし?』

「ああ、荒垣か。俺だ、アクセル」

『それは分かってるよ。それで、どうした?』

「今日のタルタロス探索は中止になった。どうも、ゆかりが体調を崩したらしくてな。それも何日かは無理らしい」

『風邪か?』

「どっちかと言えば、疲れだと思う。休みなしで毎日タルタロスを探索してたし。それに昨日も戦闘は殆どがゆかりにやらせてただろ?」

 

 ゆかりを鍛えるという意味では間違っていない行動だったが、少し前までは普通の女子高生だったゆかりにとっては、あの連戦は体力的にも精神的にもそれなりに堪えたとしてもおかしくはない。

 

『なるほどな。分かった。……つーか、そもそも何で俺がお前達と一緒にタルタロスを攻略する事になってるのかが分かんねえがな』

 

 そう言いつつも、荒垣の言葉に嫌々といった様子はない。

 どちらかといえば、しょうがねえなといった感じすらある。

 

「じゃあ、またタルタロスの探索が出来るようになったら連絡するよ」

『ふんっ、勝手にしろ。けど、俺が付き合うとは限らねえからな』

 

 そう言う荒垣だったが、実際にいざその時になれば間違いなくこっちに付き合うというのは、容易に予想出来た。

 何だかんだと、面倒見がいいしな。

 ……男のツンデレは、イザークで間に合ってるんだが。

 もっとも、荒垣が俺達に協力するのは面倒見の良さだけ……って訳でもない筈だ。

 特に大きいのは、元々の仲間の桐条や真田がタルタロスに挑む際に助言が出来るようにってのも大きいと思う。

 何だかんだと、面倒見のいい荒垣らしいと言えばらしいが。

 

『……岳羽には身体に気をつけろって言っておけ』

 

 そう告げ、電話が切れる。

 ほら、な。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1389

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