転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1820話

「……」

 

 沈黙。

 それが、この世界に姿を現したニーズヘッグを見た、ゆかりの反応だった。

 いやまぁ、機体から発する雰囲気そのものが、サラマンダーやミロンガ改とは大きく違うのだから、その気持ちも分からないではない。

 いや、サラマンダーやミロンガ改も、普通ならトップエースが乗っても不思議ではない性能を持つ機体だ。

 そう考えれば、やはりニーズヘッグという存在の格が明らかに他の機体と違うのだろう。

 シャドウミラーの技術の粋を尽くして生み出された、まさにフラッグシップ機と呼ぶに相応しい機体。

 その上、シャドウミラーで新しい技術が生み出されれば、それがこの機体で試される事もあり、今の状況でも更に強化され続け……いや、成長し続けている機体。

 嘲笑する虐殺者の名を持つ機体として考えれば、寧ろ納得してしまう姿をしている。

 

「やっぱり、今までの2機とは違うか?」

「……そうね」

 

 ニーズヘッグに見入っていた……いや、魅入っていたゆかりが、俺の言葉で我に返ったのか、そう告げてくる。

 

「感じてると思うが、この機体は色々と特殊な機体だ。もっとも、だからこそこの影時間の中でも動くんじゃないかと思ってるんだけどな」

 

 そう告げ、そのまま空中に浮かび上がる。

 さて、俺の予想が正しければ……

 機体に近づいていくと、その瞬間コックピットが開く。

 特に操作をしている訳でもないのだが、これはニーズヘッグが俺を……自らの半身にして、相棒にして、パイロットを迎え入れた、という風にも見える。

 実際にはT-LINKシステムが俺の念動力を感知したというのが、正しいのだろうが。

 

「動いた」

 

 俺が近づいただけで、自動的にコックピットが開いたのを見てゆかりが呟く。

 まぁ、サラマンダーとミロンガ改は、両方ともコックピットそのものが動かなかったのだ。

 そう考えれば、コックピットが動いただけでも驚くべき事なのだろう。

 そしてコックピットが動いた時点で、既に俺の目論見は……影時間の中で機体が動くのかどうかを確認するという目的は、達成されたも同然だった。

 こうしてコックピットが動いたのだから、機体が動かないという事もないだろう。

 ただ、一応……本当に念の為にそれを確認すべく、俺はコックピットに座る。

 そしてT-LINKシステムが俺の存在を感知し、一瞬で判別を終了。

 俺をアクセル・アルマーだと認識して、機体が起動する。

 

『動いた!?』

 

 外部スピーカーから、先程と同じゆかりの声が聞こえてくる。

 だが、そこに込められている感情の色は、先程よりも圧倒的に強い。

 まぁ、サラマンダーとミロンガ改は、その姿形や大きさとかそういうので驚いただろうけど、結局のところ動かなかった以上、それはただの置物でしかない。

 規模は違えど、プラモデルとかの模型と大して変わらない。

 それがこうして動いたというのは、まさに驚くべき事なのだろう。

 ……もっとも、普通ならこういうロボットとかのような科学技術の粋を凝らした物よりも、ペルソナのようなファンタジー系の方が驚くべきなんだろうが。

 ともあれ、ニーズヘッグはいつものように俺の意思通りに動く。

 一応、とホワイトスターに通信を送ってみようとするが、やはり通信は繋がらない。

 パターン的に考えれば、恐らくこの影時間とかが影響しているんだと思うんだが。

 にしても、考えてみればこの影時間ってのも凄いよな。

 この一帯だけの話じゃなく、日本だけでもなく、地球全体……いや、朝とか夜の時間が毎日のように3時間から4時間ズレてないって事は、太陽系全体が影時間で時間が止まっているんだから。

 そう考えれば、影時間ってもの凄い。

 そんな風に考えながら、考える。宇宙……宇宙か。

 一旦ニーズヘッグのコックピットから降りる。

 

「え? どうしたのよ?」

 

 何故機体を動かさないでわざわざ降りてきたのか、と驚きの視線を向けてくるゆかりに、俺は空間倉庫から取り出したパイロットスーツを渡す。

 W世界で使っていた物だ。

 基本的に男女両用なので、使えない事もないだろう。……まぁ、レモン達みたいに胸が大きければちょっと厳しいかもしれないが、幸い――という表現は正しいのかどうか分からないが――ゆかりの胸は平均よりも上だが、そこまで大きな訳ではない。

 そうである以上、このパイロットスーツを着ても問題はない筈だった。

 

「折角の機会だし、ゆかりを宇宙に連れて行こうと思ってな。……この世界だと、選ばれに選ばれた宇宙飛行士以外で宇宙に行くなんてまず不可能だろう?」

「……いいの?」

 

 数秒の沈黙の後、驚きを込めてそう尋ねてくるゆかり。

 実際、ゆかりにとっては本来なら信じられないような事態なのだろうから、当然か。

 勿論……この世界の原作で、実は宇宙に行く機会があるとかいう可能性もあるのだが。

 ともあれ、ゆかりの言葉に頷いてパイロットスーツを渡すと、そのままニーズヘッグの足の影に隠れて着替え始める。

 もっとも、着替えではあるが、別に下着姿になる訳じゃない。

 さすがに今の服の上からそのままパイロットスーツを着るのは無理だろうが、Tシャツとかそういうのの上から着れば全く問題はないのだ。

 

「えっと、これでいいの?」

「ああ。後は……」

 

 出てきたゆかりに、パイロットスーツのヘルメットを被せ、これで完成。

 ヘルメットの横にあるスイッチを押し、バイザーを開かせる。

 

「このスイッチでバイザーを下ろしたり出来る」

「うん、ありがと。……けど、アクセルはいいの?」

「ああ、俺は問題ない」

「……何で?」

「まぁ、エースだからな」

 

 正確には混沌精霊だから、生身で宇宙に出ても平気だというのが正しいのだが、ゆかりにはまだその事は言わない方がいいだろう。

 別に俺が人間じゃないからってゆかりが嫌うとも思っていないが、この世界にはシャドウという厄介な存在がいるしな。

 

「ふーん……まぁ、アクセルの事だし、何があっても大丈夫なんでしょうけど」

 

 妙な信頼を受けているみたいだが、まぁ、今はそのままにしておいた方がいいだろう。

 

「じゃ、行くか。……どうする? コックピットの中だと映像モニタ越しにしか宇宙から地球を見られないが」

「え? コックピット以外にどうするのよ?」

「ニーズヘッグの手の上だな」

「ちょっ!」

「ああ、安心しろ。別に自力で大気圏突破したりする訳じゃない。宇宙に行く方法は……そうだな、ゆかりも何度も経験した影の転移魔法があるだろう? あんな感じだ」

 

 正確には転移魔法じゃなくて、システムXNなのだが。

 まぁ、その辺はゆかりに説明してもちょっと分かりにくいだろうし、結果としては同じようなものなので、わざわざ混乱させる必要もないだろう。……まぁ、実際に転移する時に影のゲートとシステムXNでは大きく違うので、その辺で気が付く可能性はあるだろうが。

 ともあれ、俺の言葉に大気圏を突破して宇宙に出る訳ではないと理解したのだろう。ゆかりは安堵の息を吐く。

 もっとも、そういう方法で宇宙に行くのも、恐らくは可能だろうけど。

 システムXNという便利な物がある以上、わざわざ大気圏突破はしなくても構わないが。

 

「取りあえずこれ」

 

 空間倉庫から取り出した紐を、ゆかりに渡す。

 

「え? ちょっと、この紐は何?」

「命綱だな。多分問題ないだろうとは思うけど、念のためにその紐をニーズヘッグの指にでも結んでおいてくれ。ゆかりも、いざって時に命綱があった方がいいだろ?」

 

 そう言われればゆかりも特に文句はないらしく、その紐を受け取る。

 それを確認すると、俺は再び空を飛んでニーズヘッグのコックピットに戻った。

 そうしてニーズヘッグの左手をそっとゆかりに伸ばす。

 ゆかりは恐る恐るとだが左手の上に乗り、紐でパイロットスーツの腰と左手の指の間を結ぶ。

 

「準備は終わったか?」

『え、ええ。いいわよ』

 

 やはりいきなり宇宙に行くというのは、ゆかりにとってもかなり緊張するのだろう。少し震えた声で、準備が整ったと告げてくる。

 それでも怖じ気づいて宇宙に行くのを止めると言ったりしない辺り、度胸は間違いなくあるんだろうが。

 ああ、でも毎日のようにタルタロスを攻略しているのを考えれば、そこまで不思議って訳でもないのか?

 ともあれ、ゆかりの準備も整った事だし……

 

「なら、行くぞ」

 

 そう告げ、早速準備を始める。

 

「システムXN、起動。転移座標入力……OK。転移フィールド生成開始」

『ちょっ、アクセル!? 何だか光が……』

 

 転移フィールド……光の繭が機体を包むのを見て、ゆかりが驚きの声を上げた。

 

「心配するな。これはニーズヘッグに存在する転移システムだ。……転移フィールド生成完了。転移」

 

 その言葉と共に転移が完了し……次の瞬間、ニーズヘッグの姿は宇宙空間にあった。

 視線の先には地球。

 ……ただし、影時間である為か、普通の時とは違ってそこまで綺麗には見えない。

 うん、時差的に考えると当然なんだろうが、日本との時差が12時間前後の国というのは、丁度昼に影時間が起こるのか。

 何だか、色々と……うん。微妙な感じがしないでもない。

 

『うわぁ……』

 

 ともあれ、そんな状況であってもゆかりにとっては、地球を宇宙から生で見る光景だ。

 PTやら何やらで人型機動兵器に慣れている俺にとっては、宇宙から見る地球というのはそう珍しいものではないのだが……ゆかりにとっては、話が別なのだろう。

 そのままコックピットを開き、外に出る。

 

『うわぁ……え? ちょっ、アクセル!? あんた、何でそのまま宇宙に出て来てるのよ!』

 

 ニーズヘッグの左手に立った俺がパイロットスーツの類をつけていない、素のままの状態であるのを理解し、ゆかりが叫ぶ。

 

「落ち着け。俺の場合は魔法があるからパイロットスーツなんかいらないんだよ」

 

 そんな風に、適当に誤魔化すと……やがて若干疑わしそうにしながらも、それ以上は何も口にしない。

 まぁ、俺の魔法はこの世界の魔法と比べても色々と特殊だからな。

 俺の魔法ならそのくらいの事は出来ても不思議ではないと、そう思ってもおかしくはない。

 実際には、混沌精霊だからなのだが。

 ともあれ、そんな事はゆかりには言ってないし、分からないだろうから、魔法で誤魔化しておく事にしよう。

 

 

『そう。……それにしてもこれ、影時間じゃないとどういう風に見えるのかしらね』

「もっと色鮮やかな感じだな。それと東京とかの発展してる場所は夜だと明かりが幾つも見える」

 

 そう言えば何かでイカ釣り漁船でイカをおびき寄せる為の明るい光も宇宙からなら見える……ってのを聞いたか見たか、読んだかしたが。

 影時間ではない普通の状況であれば、そういうのも見れるだろう。

 ただまぁ、このペルソナ世界でも宇宙開発はある程度行われている。

 月や火星の入植とか、コロニーとか、そういうのはないらしいが、それでも地球の周りを気象衛星とかの人工衛星が浮かんでいるのは間違いない。

 そんな状況でニーズヘッグが宇宙にいれば、すぐに見つかるだろう。

 もっとも、ミラージュコロイドやASRS、NジャマーⅡ何かを使えば、話は別だろうが。

 

『これよりも色鮮やかに? ……けど、影時間でも普通に見られただけで嬉しいわね』

 

 笑みを浮かべるゆかり。

 ふむ、取りあえずタルタロスの攻略が出来なくなった――それも桐条グループの関係者のせいで――ので落ち込んでいたのが多少は持ち直したか?

 この行動には、多少なりともゆかりの気分転換にでもなればという一面もあった。

 まぁ、俺の協力者には出来るだけストレスを抱えて欲しくないというのもある。

 ……ふむ、そうだな。ストレス、ストレスか。なら……

 

「ゆかり、もうちょっといい場所に連れて行ってやろう」

『え?』

 

 いきなりの言葉にちょっと驚いた様子のゆかりだったが、俺はゆかりをそのままに再びニーズヘッグのコックピットに戻る。

 そして再度システムXNを起動し……

 

「システムXN、起動。転移座標入力……OK。転移フィールド生成開始」

 

 その言葉と共に、ニーズヘッグを光の繭が包み込んでいく。

 

「転移フィールド生成完了。……転移」

 

 その言葉と共に、ニーズヘッグは地球のすぐ側から転移し……

 

『ちょっ、ちょっと、アクセルここってもしかして……え? 嘘? 本当に?』

 

 転移した先にある光景を目にし、ゆかりの混乱したような声が聞こえてくる。

 まぁ、分からないでもない。

 ペルソナ世界の詳しい歴史は知らないが、それでも……恐らく、生身でこの赤い星にやって来た事がある者はいない筈だ。

 つまり、ペルソナ世界ではゆかりがこの星に……火星にやってきた、史上初めての人類という事になる。

 俺は混沌精霊だから、人類じゃないしな。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1389

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