転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1825話

 ゆかりの説得の成功と、荒垣の怪しげな一件。

 それがあってから何日か経ち……やがて3月も中旬に入った。

 どうやら月光館学園では卒業式が終わったらしく、その練習が面倒だったとゆかりが携帯でボヤいていた。

 授業も既に殆どなく、そろそろ春休みも近い……といったくらい。

 そんな日、俺はゆかりと共に長鳴神社にやってきていた。

 今日は日曜で部活もないという話だったので、久しぶりに……と、ゆかりと共に行動する事にしたのだ。

 もっとも、ゆかりは俺と一緒に遊ぶのを楽しみにしていたのではなく、俺から話を聞いていた犬に興味があったというのが正しい。

 ゆかりも可愛いものは好きらしく、頭のいい犬はそんなゆかりにとってかなり惹かれる存在だったのだろう。

 また、季節も既に春という事もあり、2月の境内とは違って暖かみがあるというのもいい。

 境内に続く階段を上りながら、ゆかりは春の空気を嗅ぎながらしみじみと呟く。

 

「今日はいい天気ね。お弁当を持ってきて良かったわ」

「弁当って言ってもな。スーパーで買ってきた弁当だろ?」

 

 言うまでもなく、いつものように犬用のドッグフードを売ってるスーパーで買ってきた代物だ。

 もう3月も中旬という事もあり、日曜の午前中ともなれば行楽弁当の類もスーパーに置くようになった。

 ちなみに今回のメインは、総菜コーナーに置いてあったオードブルの詰め合わせだ。

 唐揚げとかフライドポテトとか春巻きとか肉団子とかテリーヌとか、その他諸々、様々な料理が入って3980円。

 オードブルの盛り合わせは幾つかランクがあったのだが、折角だという事で、一番大きく、料理の種類が多いのを選ばせて貰った。

 特に巨大なエビフライが入っていたのが、決め手となっている。

 一緒に買い物をしていたゆかりは、オードブルセットを選んだ俺を見て呆れた表情を浮かべていたが、俺の場合は食い切れなかったら空間倉庫に入れておくという手段が使えるしな。

 悪くなるという事はない。

 他にも幾つか行楽弁当の類や飲み物、お菓子を買った。

 ……ちなみに、レジが若い男で、ゆかりと一緒に買い物をしている俺を見て、隠しきれない嫉妬の視線を向けていたのが気になった。

 恐らくあの男は独り身なんだろう。

 そういう男が、休日にゆかりと一緒に出掛ける……というのを見れば、嫉妬の視線を向けてきてもおかしくはない。

 ああ、もしかしたらあの男は月光館学園の生徒だった可能性もあるのか?

 ふと、そんな事を思う。

 ただ、ゆかりが特に気にした様子はなかったところを考えると、学年が違うのかもしれない。

 そんな風に考えながら階段を上っていくと、やがて境内に到着する。

 

「ワン! ワンワンワン!」

 

 聞こえてくる犬の鳴き声。

 声のした方に視線を向けると、そこでは見覚えのある小学生が犬と遊んでいる。

 

「舞子、来てたのか」

「あ、お兄ちゃん!」

 

 犬と遊んでいた舞子は、俺の姿を見ると嬉しそうに駆け寄ってくる。

 そして俺の隣にゆかりがいるのを見て、不思議そうな顔をする。

 

「あれ? そのお姉ちゃんは誰?」

「えっと……お姉ちゃんは岳羽ゆかりって言うの。今日はアクセルから可愛い犬がいるって聞いて、一緒に来たんだ。お嬢ちゃんは?」

「舞子!」

「そう、舞子ちゃんね。よろしく」

「うん! ……えっと、その……」

 

 予想外に柔らかい態度のゆかりに俺が驚いている間に、ゆかりと舞子はあっという間に打ち解けた。

 いや、どちらかと言えば、舞子がゆかりに懐いたといった方が正しいのか。

 

「うん? どうしたの?」

「その……お姉ちゃんは、お兄ちゃんの恋人?」

 

 ぶっ、と。

 ゆかりらしくもなく吹き出す。

 うん、まぁ、ゆかりもまさかここでそんな事を聞かれるとは思ってなかったんだろうな。

 にしても、舞子……意外にマセてるな。

 

「ちょっ、舞子ちゃん。何でそうなるのよ!」

「え? だって、お兄ちゃんと一緒にいるし、仲よさそうだし」

「それは……そう、その友達、友達なのよ。舞子ちゃんだって、男の子の友達とは仲良く話したりするでしょ?」

「えー……そうでもないよ。皆、舞子に意地悪ばっかりするんだもん」

 

 その言葉に、ああ……と納得の表情を浮かべてしまう。

 小学生くらいの男子というのは、気になる相手にちょっかいを掛けてしまうのだ。

 気になるけど、話せないと。そういう相手であるからこそ、暴力的な手段に出る。

 勿論全員が全員そんな相手なのだとは限らないが、大抵の男子はそんな感じだろう。

 そう考えると、恐らくその男子達は舞子に気がある……好意を抱いている可能性が高い。

 もっとも、当の舞子はそんな相手の気持ちに全く気が付いていない様子だったが。

 

「そ、そう。でも私とアクセルは仲のいい友達なの。その辺は分かってちょうだい?」

 

 そんな話をしている2人を見ながら、ふと俺は気が付く。

 今の状況で食べ物を空間倉庫から出すと、色々と舞子に怪しまれるのでは? と。

 それを防ぐ為、空間倉庫の中から手提げバッグを取り出す。

 中には何も入っていない手提げバッグだったが、それでも空間倉庫から直接取り出すよりは、この手提げバッグを経由した方がまだ誤魔化せるだろう。

 幸い、舞子はまだ小学生だし。

 

「そうなの? 残念」

「……そ、そうなのよ」

 

 舞子に押されっぱなしのゆかり。

 これは、相性がいいのか、悪いのか。

 正直なところ、微妙な感じだな。

 

「お兄ちゃん、お姉ちゃんにフラれちゃったねー」

「あー……うん、そうだな。残念だ。俺は結構ゆかりが好きなんだが」

 

 そう言った瞬間、舞子は両手で自分の顔を隠してきゃーっ! といった悲鳴を上げる。……歓声か?

 そしてゆかりの方はと言えば、顔を真っ赤に染めながら俺を睨み付けてきた。

 

「なっ、いきなり何を言ってるのよ! 馬鹿じゃない? ってか、馬鹿じゃない!」

 

 いつものように、混乱すると同じ事を2度言うようになる癖は変わっていないらしい。

 まぁ、それは別にいいんだが。

 

「ワンワン!」

 

 俺達のやり取りを黙って見ていた犬は、不意に吠える。

 それが何を要求しているのかというのは、容易に想像出来た。

 手提げバッグの中に手を入れ、そこから出したように見せかけて空間倉庫から缶詰のドッグフードを取り出す。

 

「え? あれ? お兄ちゃん達、そんなの持ってたっけ?」

「ああ、持ってたぞ。気が付かなかったんだろうな。初めて会うゆかりがいたし」

 

 相手が小学生の舞子だからこそ、このごり押しで何とかなる。

 いや、場合によってはそんなのは嘘だ! と言ったりする相手もいるかもしれないが、幸いな事に舞子はそんな風に言ってきたりはしない。

 

「え? うーん……そうだっけ?」

 

 不思議そうにしている舞子だったが、そんな舞子の注意を逸らすかのように、袋の中から色々な料理を取りだしていく。

 どれもスーパーで買った出来合のものだったが、それでも舞子にとっては、十分目を引くだけの衝撃だったのだろう。

 

「うわっ、美味しそー! ね、お兄ちゃん、お姉ちゃん。これ、舞子も食べていいの?」

「ええ、舞子ちゃんも一緒に食べましょう。こうして天気がいいんだし、ピクニックに来たと思えば、ちょうどいいわよね」

 

 ゆかりの言葉通り、今日の天気は行楽日和と言ってもいい日だ。

 いっそ、この神社じゃなくてどこか山とか湖とか、そういう場所にピクニックに行くのも面白かったかもしれないな。

 幸い……って言い方はどうかと思うが、俺の影のゲートがあれば、移動時間なんてあってないようなものだし。

 もっとも、移動する時の時間も遊びに行く醍醐味だと言われれば、それを否定する事は出来ないが。

 少なくても、新幹線とか電車に乗って駅弁とかを食べるような時間的な余裕がないのは間違いないのだから。

 人によっては、味気ないと考える者もいるだろう。

 俺なんかは、移動時間とかは無駄に感じるから、特に問題はないのだが。

 その辺は性格によるんだろうな。

 

「ワンワン!」

 

 自分にも、と吠えてくる犬に、こちらも取り出したドッグフードを渡す。

 缶詰タイプの、それなりに高級な代物だ。

 犬はそれを見ると、嬉しそうに尻尾を振りながら食べ始める。

 

「はい、舞子ちゃん。これで手を拭いてね」

「ありがとー、お姉ちゃん」

 

 ゆかりは舞子の世話をして、ウェットティッシュで舞子の手を拭かせてから食事にする。

 俺が真っ先に手を伸ばしたのは、巨大なエビフライ。

 一番値段が高いオードブルセットだったので、エビフライも大きい。

 ……スーパーとかにもよるが、中には甘エビのような小さなエビに、何重にも衣を付けて巨大に見せかけているエビフライとかもあったりするんだよな。

 いや、それはエビフライだけではなく、弁当コーナーにある天丼とかも同じか。

 イカの天ぷらとかはきちんとイカの身が入ってるのに、何でエビフライだけは衣で誤魔化すのやら。……それだけエビの値段が高いからかもしれないが。

 実際、ネギま世界で食べたエビフライ……長さ40cmくらいの大きさがあるエビフライは、3本で5000円オーバーだった。

 うん、普通に考えれば相当の値段だよな。

 ともあれ、俺が今日買ってきたのは値段的にはそれなりだが、それはあくまでもオードブルのセットとしての値段だ。

 とてもでじゃないが、そこまでのエビフライじゃない。

 それでも、甘エビのエビフライではなく、普通にブラックタイガーとかそういうのを使っているのは間違いない。

 ……今度、伊勢エビのエビフライとか、ロブスターのエビフライとか、食ってみたいな。

 ああ、でもロブスターは分類上だとエビじゃなくてザリガニの仲間だったか?

 ともあれ、美味いのは間違いないので、是非食ってみたい。

 

「うわっ、美味しいね、これ」

 

 紙皿と割り箸をそれぞれ用意し、舞子が最初に叫んだのは牡蠣フライだった。

 まぁ、このオードブルセットも出来たてを買って、そのまま空間倉庫の中に収納していたのだ。冷めて衣がしんなりとしていないんだから、美味いのは事実だろう。

 ちなみに、牡蠣フライにはタルタルソースとかとんかつソースとか、中濃ソースとか、ケチャップとか、色々と派閥があるのは分かる。

 俺としてはどれでも構わないのだが、取りあえずオードブルセットに入ってるソースとかよりは、普通に売ってるソースを買った方が美味いのは間違いないだろう。

 それに、余ったら俺の部屋の冷蔵庫にでも入れておけばいい。

 そんな理由から、1本398円とちょっと高めの中濃ソースを買う事にした。

 舞子が美味いと言ってるのは、恐らく中濃ソースの件も関係あるのだろう。

 ……それとも、まだ小さいと細かいソースの味とかは分からないか?

 

「舞子ちゃんの言う通り、この牡蠣フライ美味しいわね。中に入っている牡蠣も、結構大きいし」

 

 舞子の美味いという言葉に、ゆかりも賛成の声を出す。

 そんな2人とは別に、俺が箸を伸ばしたのは、当然のようにエビフライだ。

 中濃ソースを掛けて食べると、衣のサクッとした歯応えと……うん、まぁ、甘エビとは言わないけど、思っていたよりもエビそのものは小さく、それを衣で誤魔化しているのは間違いない。

 ……甘エビじゃなかっただけ、喜んでおくか。

 ゆかりじゃないが、2度言ってしまったのは、やはりもっとしっかりとしたエビだというのを期待していたからだろう。

 値段もそれなりに高額だったし。

 

「ワンワン! ワフ!」

 

 ドッグフードを食べ終わった犬が俺達の方を見て羨ましそうに吠えているが、犬に人間の食べ物を与えるのは塩分の関係で色々と不味いんだよな。

 そんな訳で、次のドッグフードを取り出す。

 さっきのは肉系の味付けなのに対し、こちらは魚系の味付けだ。

 うん、微妙にこっちの方が高いというのは……どうなんだろうな。

 あくまでも俺のイメージだが、魚よりも肉の方が高価だというイメージがある。

 勿論それは肉や魚の種類にもよるだろう。

 ブロイラーの鶏胸肉と、マグロの大トロでは、明らかに魚の方が上だろうし。

 

「ワフーン!」

 

 おかわりの魚介系のドッグフードの缶詰を、犬は嬉しそうに鳴きながら食べる。

 魚を咥えるのは野良猫かと思ったら、犬もそっち方面で大きな力になってるんだな。

 

「ねぇ、アクセル」

 

 オードブル以外にも弁当や海苔巻き、サンドイッチ、個別の総菜を取り出し、ピクニック気分で俺とゆかり、舞子、犬の3人と1匹で楽しんでいると、不意にゆかりが呟く。

 

「うん? どうした?」

「……私、桐条先輩と会ってみようと思うわ。本格的な協力は難しいかもしれないけど」

 

 まさかここでそんな事を言われるとは思ってもいなかったので、俺は少しだけ驚く。

 だが、やがてゆかりの言葉に頷いて口を開く。

 

「分かった。善は急げって言うしな。なるべく早く荒垣と話して、場を整えよう」

 

 そう、告げるのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1389

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