転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1846話

 桐条と魔法の訓練をしていたのだが、30分程でそれも終わる。

 いや、終わらせられたという表現が正しいか。

 小田桐が生徒会室にやってきたからだ。

 まさか、何も知らない者の前で魔法の勉強や訓練をする訳にもいかないだろう。

 ……初心者用の魔法の杖を振っている桐条というのは、色々な意味でレアな光景だったが、もしそれを言ってしまえば色々と悲惨な事になるのは間違いない。

 ともあれ、小田桐と長髪の大人しそうな女の生徒がやってきた事もあって、結局魔法に関してはそれで終わった。

 で、小田桐に君はまだいたのか? とかそんな視線を向けられたこともあり、生徒会室を出た俺は、放課後の校舎の中を歩き回っていた。

 さて、どうするべきか。

 弓道部に行ってゆかりが部活をやっている光景を見るか? それとも、ボクシング部に行って真田の相手をするか。

 もしくは、学校から出てどこかに遊びに行くという手段もありだな。

 そんな風に考えていると……

 

「あら、アルマー君。丁度いいところにいたわね」

 

 ……何故か、教室に戻る途中で鳥海に遭遇してしまった。

 

「何ですか? 微妙に嫌な予感がするんですけど」

「ふふっ、別にそんなに大変な事じゃないわ。ちょっとこれをボクシング部の部室まで持っていって欲しいのよ」

 

 そう言いながら、鳥海が俺に渡したのは1枚の書類。

 

「これは?」

 

 鳥海に渡された書類を見ると、そこには他校のボクシング部を校内に入れるための許可証だった。

 

「……えっと、何から尋ねるべきなんでしょうね。何で鳥海先生がこの書類を持っているのかとか、それとも何で俺がこれをボクシング部に持っていかなきゃいけないのかとか、それ以外にも色々と」

「私が持っていたのは、職員室の中で私がまだ若い教師だからよ」

 

 あー……なるほど。使いっ走りに使われている訳だ。

 鳥海が現在具体的に何歳なのかは分からないが、それでもまだ20代、30代といったところだろう。

 そう考えれば、鳥海よりも若い教師がいてもおかしくないと思うんだが。

 偶然何らかの用事でその場にいなかったのか、それとも鳥海がその若い教師にも侮られているのか。

 ……何だか後者のような気がしてきたな。

 鳥海は微妙にやる気のなさというか、気力とかそういうのが低いように思える。

 元気一杯な年下の教師には、気迫で負けてもおかしくはないだろう。

 勿論、だからといって俺が同情したりといった真似はするつもりはないんだが。

 

「あー……で、俺がボクシング部の部室まで持っていく理由は?」

「それは私が教師で、アルマー君が生徒だからよ」

 

 納得出来るような出来ないような、微妙な説明。

 ただ、どのみち今日はどこに行くのか迷っていたんだから、これはいい切っ掛けと考える事も出来る。

 

「分かりました。ボクシング部に行こうかと思ってたので、ちょうどいいですよ」

「……え? アルマー君、ボクシング部に入るの? うち、結構強豪なのよ?」

「でしょうね」

 

 何だかんだと言いつつ、真田がいるという時点で強豪になるのは当然だろう。

 元々持っていた類い希な運動神経。

 そして、真田自身力を求めており、更にはシャドウを相手にしてではあっても、命懸けの実戦を幾度となく経験している。

 1度の実戦は1ヶ月、またはそれ以上の訓練に匹敵すると言われる事もあり、そして実際それは間違っていない。

 まぁ、真田が経験した実戦は基本的にタルタロスから出てきたような弱いシャドウがメインであり、純粋な実戦の数と質では、既にゆかりの方が上回っている可能性も否定出来ないが。

 ともあれ、臆病のマーヤとかが主な相手であっても、実戦を経験してきたのは事実で、それは真田にとって大きな糧となっている。

 そんな真田がいるのだから、月光館学園のボクシング部が強豪に名を連ねるのも当然だろう。

 まぁ、真田は自分が強くなる事には積極的ではあっても、他の部員を熱心に指導するような真似をするのかと言われれば、首を傾げざるを得ない。

 つまり、月光館学園のボクシング部は、真田が強くても他はそこまで強くない可能性は十分にある。

 もっとも、基本的にボクシングというのは個人競技だ。

 あくまでも1人だけ強くても、十分にインターハイとかそういうのに参加は出来るのだろう。

 ……ボクシングに団体戦とかあるのかどうかは、ちょっと分からないけど。

 

「じゃ、よろしくね。私は色々と忙しいから」

 

 鳥海は俺にプリントを渡すと、そのまま去っていく。

 その後ろ姿を一瞥すると、俺も今日やるべき事が出来たので、ボクシング部の部室に向かう。

 今までにも何度か行っているので、学校の中で道に迷うことはなかった。

 そうしてボクシング部の部室にやってきたのだが……そこには、予想外に、もしくは予想通りにか? ともあれ、大勢の学生達が集まっている。

 女の方が多いが、男も決して皆無という訳ではない。

 そんな連中が誰なのか、俺は容易に想像出来た。

 真田のファンの連中だろう。

 ファンクラブがあるのかどうかは分からないが、それでも真田の追っかけの連中だ。

 ……以前来た時はこういう連中がいないから問題なかったけど……今日はいるのか。

 ボクシング部の部室の窓から中を覗いているそんな連中の後ろを通り、部室の扉を開ける。

 瞬間、窓から覗いていた多くの者が俺に視線を向ける。

 恐らくボクシング部と用事がある者以外は中に入らないようにされているのだろう。

 それだけであれば、適当に用事を作って部室の中に入ろうと考える者がいてもおかしくはないが、そんな様子がないところを見ると、ある程度暴走はしないようにされているのだろう。

 それだけに、俺がボクシング部の部室に入るのは何の用件もないのにそんな真似をしてるんじゃないだろうな、といった視線が向けられる。

 そこまで真田に入れ込んでいるのなら、男はボクシング部に入ればいいと思うし、女もマネージャーとかならなれると思うんだけどな。

 そこまでの覚悟がないという者達……といったところなのだろうが。

 ともあれ、今はそんな連中に構っているような暇はないので、ボクシング部の部室の中に入っていく。

 練習中だからか、それぞれが縄跳びだったり、腕立て伏せだったり、サンドバックを打ってたり……といった者達が多い。

 そんな状況だけに、当然俺が部室の中に入ってきたと気が付く部員もあまりいない。

 だが、当然全員が気が付かないという訳ではなく……

 

「あ、ちょっと。困ります! 部員以外の人は部室に入らないで下さい!」

 

 扉の近くにいた部員が俺に気が付き、そう言ってくる。

 ボクシング部の部員にしては、結構大人しいというか、品行方正というか、そんな感じだな。

 てっきり『何で勝手に入ってきてるんだ、てめえっ!』とか怒鳴られるかと思ったんだが。

 ともあれ、喧嘩腰で話し掛けてくる相手ではなくて何より。

 

「ああ、悪い。ちょっと届け物だ。鳥海先生からボクシング部に」

 

 そう告げ、持っていたプリント……許可証を渡す。

 それを見て、生徒も俺が部室の外にいるミーハーな真田ファンではないと判断したのだろう。慌てて頭を下げてくる。

 

「あ、ごめん。それ待ってたんだ」

 

 そう言い、部員がプリントを受け取り……

 

「おお、アルマー! やっと来たか!」

 

 その瞬間、まるでタイミングを計っていたかのように真田の声が響く。

 そして、想像上の相手とボクシングをする、いわゆるシャドーをしていた真田が俺の方に近づいてくる。

 そうなれば当然真田のファン達は俺に視線を向け、何故真田が俺と友好的なのかというのを囁き合う。

 何人かが、真田と噂のある桐条と俺が今朝一緒にいたというのを話している声が聞こえてくる。

 いやまぁ、それは間違ってないけどな。

 

「やっと来たんじゃなくて、書類を持ってきただけだけどな。許可証」

「あー……ああ、練習試合のか。正直なところ、他校と練習試合をするよりも、アルマーと戦った方が得られるものは多いと思うんだけどな」

「真田先輩、それはちょっと聞き逃せません!」

 

 俺から少し離れた場所で縄跳びをしていたボクシング部の部員が、不服そうにそう告げる。

 真田を先輩と呼んでいるという事は、少なくても俺と同学年……もしかしたら1年という可能性もあるか。

 もっとも、俺の場合は年齢が色々と不明な状況だから、正確には同学年とは言えないが。

 いや、元々20代なんだから、どちらかと言えば鳥海の方が年齢は近い筈だ。

 

「ん? 何がだ?」

「何でこんな奴と戦った方が、練習試合よりも得られるものが多いんですか!?」

 

 全く納得出来ませんといった表情の男だったが、真田は特に気にした様子もなく口を開く。

 

「当然だろ。アルマーは俺が本気で戦っても手も足も出なかった相手だ。今の俺の目標と言ってもいい。そんな相手と戦ってこそ、得られるものは多い」

 

 ざわり、と。

 部室の外から見ている真田のファン達、そして部室の中で訓練をしていたボクシング部員達。

 その双方が、今の真田の言葉を聞いてざわめく。

 

「そんな……嘘だろ? 真田先輩が手も足も出ないで負けた?」

「何か卑怯な真似でもしたんじゃない?」

「いや、でもそれなら真田先輩が、あそこまであの人を持ち上げる訳はないんじゃない?」

 

 そんな風に話しているファン達の声。

 だが、そちらとは裏腹に、ボクシング部員の俺を見る目はかなり厳しい目となっていた。

 当然だろう。真田というのはボクシング部にとって、象徴的な存在だ。

 それだけに、真田が手も足も出ずにやられたという話を聞けば、黙っていられる筈がなかった。

 

「あー、真田その辺にしておいてくれ。訓練に付き合おうとも思ったんだが、残念だけど今のこの状況だととてもじゃないがそんな事は出来そうにないな」

 

 明らかにボクシング部員の俺を見る目が剣呑な色を帯びている。

 勿論実戦も何も経験した事のないような相手からの視線である以上、俺から見れば子犬がじゃれているようにしか見えないのだが……それを口にすれば、間違いなく厄介な出来事になるだろう。

 

「は? どういう意味だ? それより、俺と模擬戦をやってくれないか? ここ数日、身体の調子が結構いいんだ。今なら、アルマーに攻撃を通す……のは無理でも、触れる事は出来るかもしれない」

「あー……うん。ちょっと黙ろうか」

 

 既に周囲の者達の俺を見る目は、色々な意味で凄い事になっている。

 驚愕が最も多く、それ以外にも敵意や嫉妬、羨望といった色を浮かべている者もいた。

 

「うん? 何かおかしな事を言ったか? それより、頼む。今の状況でなら……」

「真田先輩! 冗談は止めて下さい!」

 

 そう言ったのは、さっき真田に向かって聞き逃せないとか何とか言っていた奴だ。

 ボクシングをやるのに相応しい気の強さ、我の強さを持っているらしく、俺を睨み付けていた。

 プリントを渡した男が柔らかな態度だったのでちょっと驚いたが、ボクシング部の部員って言えば、やっぱりこんな感じのイメージだよな。

 

「何なんだ、お前はさっきから」

 

 その男に対し、不満そうな視線を向ける真田。

 だが、男はそんな真田に意見するように口を開く。

 

「こんな男が真田先輩に勝つ? それは、随分と出来の悪い冗談ですね」

「……そうか?」

 

 男の言葉が余程意外だったのだろう。

 真田は一瞬前の不満そうな表情を驚きに変える。

 俺に負けるというのは、真田にとって不思議でも何でもなかったのだろう。

 実際に戦ったからこそ、真田は俺との間にある絶対的な力の差というものを理解している。

 

「そうですよ! ……おい、お前。アルマーとか言ったな。岳羽さんとちょっと噂になってるからって、いい気になってるんじゃねえぞ!」

「あー……」

 

 うん、何でこの男がこうまで俺に対して敵対的なのか、この一言で全てが分かってしまった。

 まぁ、ゆかりの事が好きな奴にしてみれば、そのゆかりと噂になっている俺の存在は気にくわないだろう。

 

「真田先輩と戦う前に、俺と戦え!」

「……何でそうなる?」

「はっ、逃げるのかよ。やっぱり真田先輩に対しても卑怯な真似をしたんだな! だから、こうして皆の前で戦えと言われれば逃げる訳だ」

「おい、大渡、止めないか!」

 

 慌てて真田が俺に絡んできた男……大渡とかいう男を止めようとする。

 まぁ、分からないでもない。

 真田は純粋に俺と模擬戦……ボクシング風に言うのならスパーリングをしたかったのに、何故か自分の後輩が思いきり俺に絡んできたのだから。

 ……さて、どうするべきか。

 別にここでこの大渡とかいう男と戦わなくても構わないと思うが、ここで戦わないと俺がゆかりと桐条との間に噂になっているということもあり、同じように絡んでくる奴がこれからも出てくるだろう。

 だとすれば、後々の面倒を減らす為にも……

 

「そうだな、いいぞ。少しだけ遊んでやる」

 

 そう、告げるのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1389

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