転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1852話

 休み時間が終わり、授業が始まって……そして次の休み時間になっても、有里の周囲に女が集まるのは止められなかった。

 いやまぁ、有里の顔立ちは整っているし、その辺りの事を考えれば不思議でも何でもないんだが。

 普通の休み時間でもそれなのだから、昼休みという1時間近い休み時間ともなれば、当然のように多くの女達が有里と食事をしようとやって来る。

 ……これで有里が女達を口説いたりしていれば、クラスの男にとって印象は最悪だっただろう。

 だが、有里はどちらかと言えば無愛想というか、言葉短めに質問に答えており、決して現状を喜んでいる訳ではないのは確実だった。

 もっとも、そんな有里の態度が余裕があるように見えて、それが面白くないと思っている男もいるのだが。

 

「いやぁ、アクセルが来た時はここまで騒動にならなかったのにな」

 

 俺の隣でパンを食べている順平が、しみじみと告げる。

 その言葉は決して間違っていない。

 実際、俺は今の有里のように女に群がられたりはしなかった。

 別に俺の顔立ちが有里よりも劣っているという訳ではない……と思う。

 まぁ、絶世の美男子という言葉はさすがにどうかと思うが、少し垂れ目気味であっても、アクセル・アルマーという男の顔は不細工か美男子かで言えば、間違いなく後者の筈だ。

 

「いや、そりゃあアクセルには……」

 

 そう言いながら、友近は離れた場所で女友達とパンを食べているゆかりに視線を向ける。

 シャドウとの戦いで視線とかには敏感になっているのか……もしくは、純粋に人気のあるゆかりだけに視線を向けられるのに敏感になっているのか。

 そのどちらなのかは俺にも分からないが、ともあれゆかりが視線に敏感なのは間違いなかった。

 何? と視線で尋ねてくるゆかり。

 もっと近ければ直接尋ねてきたのだろうが、残念ながら俺達とゆかり達の席は結構な距離離れている。

 ましてや、今は有里に大勢の女が群がっており、教室の中はかなり騒がしい。

 そんな中で、向こうからこっちに声を掛けるには、それこそ教室中の注目を浴びるかのような大声を出す必要があるだろう。

 それは避けたいと、そう判断してのゆかりの行動なのだろう。

 ゆかりに何でもないと首を横に振り……それを見ていた友近が、ほらな、と口にする。

 

「俺は興味ないけど、岳羽さんは2年の中でもかなり人気があるんだぜ? その岳羽さんとアクセルの仲がいいのなんて、これを見れば誰でも分かるだろ。ましてや。アクセルが転入するよりも前から、岳羽さんとは色々と噂があったんだ。そんな岳羽さんのお手つきのアクセルに、ちょっかいを出すような人がいるとは思えないな」

「あー、まぁ、ゆかりッチが恋敵になるってのは、ちょっと厳しいか」

 

 恋敵云々はともかく、確かにゆかりが俺の側にいるのであれば、女が俺に言い寄るというのは難しいだろう。……もっとも、ゆかりがいなくても、有里のようにあそこまで多くの女が近寄ってくるかどうかは……正直、微妙なところだと思うが。

 

「それより、有里は何だかあまり楽しそうじゃないな」

 

 有里の方を見ながらそう告げる。

 実際、有里は大勢の女に集まられてはいるのだが、どこか怠そうにしているように見える。

 こうして見る限り、別に女の扱いが得意という訳ではないのだろう。

 ……まぁ、休み時間になる度にああして女達が集まってくるのであれば、気の休まる暇がないのも間違いはない。ましてや、有里は今日月光館学園に転入してきたばかりなのだから。

 もっとも、偉そうにそんな事を言ってる俺も、昨日転入してきたばかりなのだが。

 ともあれ、助けに行った方がいいのは間違いない。

 だが、女の中に突っ込んでいくというのは、そう簡単な話ではない。

 さて、ではどうするか。

 少し迷うも、結局解決策は出ず……小さく溜息を吐いてから立ち上がる。

 

「おい、アクセル?」

「ちょっと行って救出してくる」

 

 戸惑ったような順平だったが、俺の言葉を聞いて複雑な表情を浮かべた。

 まぁ、順平も有里をどうにかした方がいいとは思っていたのだろうが、それでも自分があの女の群れの中に突っ込んでいく勇気はなかったのだろう。

 まぁ、10人近くが有里の近くに集まってるからな。

 だが……俺の場合は10人近い女の群れに突っ込むのには慣れている。

 それこそ、ホワイトスターにいた頃は、毎晩のようにベッドの上にいるレモン達に突っ込んでいったのだから。

 しかも、全裸か下着姿になっているレモン達に。

 それに比べれば、この程度の事は全く問題がない。

 うん、間違いなく問題はないだろう。

 

「ちょっ、本気かよ!?」

 

 俺と順平の会話を聞いていた友近が、焦ったように言う。

 

「ああ。同じ転入生として、あの有里を放っておく訳にもいかないしな」

「あー……ったく、分かったよ。行ってこい。これで俺もクラスの女達に恨まれるのは確定じゃねえか。……まぁ、叶先生がいるからいいけどよ」

 

 何やら呟いている友近をその場に残し、俺は有里の席の方に向かう。

 有里に集まっている女達のうち、外側にいる何人かが俺を見て驚いた様子を見せるが、俺はそれに構わず女達の中に割って入っていく。

 

「ちょっ、何よいきなり!」

「悪いな、有里にちょっと用事だ」

 

 突然の乱入者に、有里の隣で嬉しそうにしていた女が不満そうに呟くが、俺の言葉を聞くとそれ以上文句を言ってはこない。

 もっとも、それは俺に遠慮してとかの話ではなく、純粋に俺がゆかりと……このクラスどころか、学年、学校の中でも人気のある女と仲がいいからというのが大きいだろう。

 それにプラスして、昨日桐条との仲が噂されたというのもあるし……ああ、それと真田に勝ったというのが広まっているのも大きいだろう。

 ともあれ、そんな俺の邪魔をして月光館学園の有名人達の不興を買いたくない……といったところか。

 

「有里、女とばっかりじゃなくて、男と一緒に飯を食ったりしないか?」

「……うん」

 

 一瞬迷ったようだったが、やがて有里は頷く。

 それは、女に囲まれている今の状態でもいいと思ったのか、それとも単純に面倒臭いと思ったのか。

 その理由は分からないが、今の様子を見ると何となく後者ではないか……そんな風に思ってしまう。

 ともあれ、有里は俺達と一緒に食事をする事に賛成し、周囲にいた女達もそれぞれ昼休みを堪能すべく散っていく。

 女達にしても、昼休みというのは非常に貴重な時間だ。

 有里と一緒に食事が出来るのなら頑張る意味もあるし、もし他の女が自分達を出し抜くのであれば、それを許せるかどうかは分からなかったが、今回は有里を食事に誘ったのは、あくまでも俺だ。

 そして俺が一緒に食事をしている面子は、順平と友近と、どっちも男。 

 それならば……と、誰も抜け駆けしなかったことに満足したといったところか。

 そうして女達が全員いなくなったところで、有里が用意してあった昼食を手に立ち上がる。

 もっとも、それは手作り弁当といったものではなく、コンビニで買ってきたパンか何かが入っている袋だったが。

 まぁ、桐条達と同じ寮だと、食事とかを作るのは……うん、無理そうだよな。

 桐条はお嬢様で料理とかは出来そうにないし、真田もそれは同様だ。

 いや、真田の場合は下手をすればプロテイン味を掛けた白米とか出てきそうな気がする。

 幾月は、理事長と研究者という2つの顔を持っている以上、料理をするような余裕はない筈だ。

 有里なら、もしかしたら料理が出来るかもしれないが……ただ、面倒臭そうって感じで料理をしないようにも思える。

 ただ、これはあくまでも俺の印象に近いから、実際には桐条が料理を完璧に出来たり、真田が栄養バランスの整った食事を作ったり……といった事が出来る可能性も皆無ではないが。

 ともあれ、有里は大人しく……それでいてどこか少しだけ安堵した様子を見せながら、俺達の席に移動してくる。

 

「おいおい、お前本当に凄いな」

 

 友近が、何故か感心したような視線を俺に向けてくる。

 そこまで感心されるような事か? と思わないでもないが、友近にとっては大きな出来事だったのだろう。

 

「ま、有里も色々と大変だったんだろ。ただ、アクセルのおかげで、暫くは大丈夫な筈だ」

 

 順平が有里にそう声を掛けている。

 うん、取りあえず全員が大人しくなったので、俺としては特に問題はない。

 今は取りあえず、食事にしよう。

 

「その辺の椅子を適当に持って来て座れよ」

「うん、分かった」

 

 有里が俺の言葉に頷き、近くの席から椅子を持ってきて食事をする体勢に入る。

 

「にしても、有里は凄いよな。あんなに女にモテるんだから」

「……面倒臭いけど」

 

 友近の言葉に、有里は短くそう答える。

 まぁ、有里が女なら誰もOKって感じの性格であれば、あの光景は嬉しかったのだろうが……生憎とこうして話しているのを見る限り、有里は非常に気怠そうな感じだ。

 少なくても女にがっついているとか、そういう事はない。

 そんな有里にとって、あの状況はとてもではないが愉快なものではなかったのだろう。

 

「で、有里は年上の美人に心当たりないか? ほら、叶先生みたいな?」

「叶先生? 誰?」

「あのなぁ、有里は今日転入してきたばかりなんだぞ? 担任ならともかく、他の教師をそう知ってる筈がないだろ」

「あー、そうか。うーん、勿体ないな。叶先生ってのは、大人の色気ムンムンの、もの凄く魅力的な女の人だよ」

「ふーん」

「って、軽いな!?」

 

 そんなやり取りをしている3人の様子を見ながら、俺はコンビニで買ってきた幕の内弁当を口に運ぶ。

 ……こうやって男友達と一緒に昼休みをすごすってのはいいけど、問題なのはやっぱり俺が普通の人間であると向こうが思っている以上、空間倉庫とか使えない事だよな。

 これが昨日みたいに周囲に誰もいなくて、俺の能力を知っているゆかりとだけだったら、特に気にせず空間倉庫に収納してある料理とかを出す事が出来るのに。

 勿論コンビニ弁当が不味いという訳ではない。

 コンビニ弁当はコンビニ弁当でそれなりの味だが、それでも美味い! って程じゃないのも事実だ。

 それなら、空間倉庫の中に入っている出来たての料理を食べれば、そっちの方が美味いに決まっている。

 

「せめて、電子レンジとかあればいいんだけどな」

「は? いきなり何を言ってるんだよ?」

「いや、この弁当を食っていて思ったんだけどな。こういうコンビニ弁当でも、温めれば今よりも美味く感じるだろと思って」

 

 実際、肉とか魚とかそういうのは、温めれば柔らかくなる。

 ……ただ、弁当を電子レンジに入れると、ポテトサラダとか漬け物とかも一緒に暖まってしまうのが難点だ。

 

「あー、その気持ちは分かるかも。けど、電子レンジがあれば、それを使いたい奴が大勢出てくるから、かなり大変だと思うぞ?」

 

 俺の電子レンジが欲しいという言葉に、友近がそう言ってくる。

 なるほど、その可能性は十分にあるか。

 実際、こうして教室の中を見渡すと、残っているのは15人くらい。

 その中でコンビニ弁当だったり、母親、もしくは自分で作ってきた弁当だったりを食べているのは10人くらい。

 その10人が電子レンジを使うとなれば、電子レンジの種類にもよるだろうが、1人大体1分くらいだろう。

 そうなると、最長10分くらい、昼休みが始まっても何も食えない状態の者がいる事になる。

 

「ま、だろうな。まさか、個人で電子レンジを持ってくる訳にもいかないだろうし」

「ははは。そう出来ればいいんだけどな。けど、電子レンジってそれなりに高いぜ? 取りあえず俺達高校生の金では買えない……事はないだろうけど、それでもかなり痛い出費になる」

 

 俺の言葉を冗談か何かだと思ったのだろう。順平が笑いながらそう告げる。

 

「いっそコンロを持ってきて、すき焼きでもやるか?」

「おい、季節外れにも程があるぞ」

「突っ込むところはそこじゃないと思うんだけど」

 

 俺と友近の会話に、有里がそう告げる。

 まぁ、季節も春になって、大分暖かくなってきたのは事実だしな。

 それでも夜になればまだそれなりに気温は低いので、すき焼きとかは食べてもおかしくはない。

 もっとも、コンロを持ってきて教室ですき焼きとかやれば、鳥海とかに怒られそうだが。

 もしすき焼きをやるとすれば、それこそ昨日の昼休みにゆかりと一緒にいった教室とかでだな。……匂いで見つかりそうな気がするけど。

 その後、すき焼きで締めといえば何なのかという事で話が盛り上がる。

 普通鍋の締めといえば雑炊が一般的なのだが、すき焼きの場合はちょっとタレの味が濃すぎて雑炊は向かない。

 そうめん、ラーメン、うどん……ときて、やっぱりうどんが一般的な締めだという結論になったところで、丁度昼休みは終わったのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1389

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