転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1854話

「はぁっ!」

 

 鋭く息を吐きながら、ゲイ・ボルクを放つ。

 真っ直ぐに突き出された槍の穂先は、黒い外殻を持つ死甲蟲を一撃で貫き、そのままシャドウは消えていく。

 ゆかりのショートボウで射る矢には強力な防御力を誇る死甲蟲の外殻だったが、俺の身体能力とゲイ・ボルクが合わされば、防ぐような事は出来ないらしい。

 順平や友近と高校生らしい放課後をすごした日の夜……影時間になった今、俺の姿はタルタロスの15階にあった。

 本来なら今日はタルタロスの探索は休みという事なので、ゆかりと荒垣の姿はなく、あくまでも俺だけでの行動だ。

 有里が転校してきた事により、もしかしたら原作が始まって16階の鉄格子が消えて通れるようになったのではないかと思ったのだが……残念ながら、16階は昨日までと同様に鉄格子が存在して先に続く道を塞いでいた。

 有里は原作に出てくる人物じゃなかったのか?

 ともあれ、そんな風に考えながら適当にシャドウを狩りつつ、宝箱からマジックアイテムや金といった物を回収していく。

 

「死神は出ないな」

 

 周囲を見回しながら、呟く。

 俺が今日タルタロスに来たのは、16階を確認する意味もあるのだが、それと同様に……もしくはそれ以上に、死神との再戦を期待しているというのもある。

 正面から戦えば、油断しない限りどうにかなるだろうという思いがあった。

 勿論、死神も前回の戦闘で全ての力を見せた訳ではない筈だ。

 実際最初に接触した時は、あのマハラギダインとかいう強力な火の魔法も使っていなかったし。

 何か奥の手がある可能性は十分にある。

 まぁ、その辺りを考えるだけの知能があるかどうかは、はっきりとしないのだが。

 ともあれ、死神と戦えない以上、このままタルタロスにいる必要はないか?

 そんな風に思っていると、壁を曲がった場所から1匹のシャドウが姿を現す。

 空を飛ぶ狂愛のクビド。

 一撃で倒してしまってもいいのだが、何となくどんな行動をするのかを見ていると、やがて向こうは俺の存在に気が付いたのだろう。

 慌てたように、弓を構え、こちらに矢を射ってくる。

 だが、俺がゲイ・ボルクを大きく振るうと、それだけでこちらに向かって射られた矢は全てが破壊され、矢の残骸と呼ぶのに相応しい姿となってタルタロスの壁に叩き付けられた。

 そんな様子を見て動揺……したのかどうかは分からないが、一瞬動きが鈍った瞬間、俺は瞬動を使って既に槍の間合いに入り込み、ゲイ・ボルクを放つ。

 槍の突き。

 基本的な形式の一撃だったが、放たれたのは一瞬の閃光の如き突きだ。

 死神ならまだしも、狂愛のクビド如きに回避出来るような一撃ではない。

 一撃で身体を貫通された狂愛のクビドは、あっさりと消えていく。

 うん、まぁ、こんなものだろうな。

 その後も適当に周囲を歩き回り、死神が出てこないのを確認するとターミナルを使ってエントランスに移動する。

 そうしてタルタロスから外に出ると……

 

「お? アルマーか? 今日は1人でタルタロスに挑戦してたのか。珍しいな」

 

 丁度真田と遭遇する。

 

「そっちこそ、今日は1人なのか? いつもは桐条と一緒だったと思うけど」

 

 真田には若干思うところがない訳でもないのだが、それでも俺が真田に対してそれなりに好感を抱いているのは間違いない。

 ひたすらに強さを求め続ける。

 それだけを聞けば、どこかマイナスの感情を抱いてもおかしくはない。

 しかし……真田の場合は力を求めてはいるが、そこまで負の要素がない。

 これは結構珍しい事だと思う。……ムラタを知っていれば、尚更。

 まぁ、プロテイン系統で真田と話をするのは、色々な意味でやばいというのは分かるのだが。

 

「ああ。ちょっと周囲の見回りをな。美鶴の奴は……有里の様子を見ている」

「ああ、なるほど。あの……」

 

 何で様子を見ているのかというのは、考えるまでもなく明らかだ。

 部屋の中に仕込まれていた、監視カメラ……いや、ここは盗撮用のカメラと言うべきか?

 ともあれ、そのカメラによって有里の様子を見ているのだろう。

 正直、幾ら中性的な男だとはいえ、結局男の有里の部屋を盗撮して面白いとは思わないが。

 勿論桐条や幾月も、別に有里の部屋を覗いて喜んでいる訳じゃないんだろうけど。

 

「にしても、周囲の見回りで寮からタルタロスの近くまでやってくるのか……」

「ああ。このくらいの距離は、走るのに丁度いいからな」

「……なるほど」

 

 まぁ、走って移動出来ない距離という訳でもない以上、真田のこの言葉は理解してもおかしくはないのだろう。

 もっとも、それを納得するのかどうかと言われれば、話は別なのだが。

 

「それで、どうなんだ? 有里はペルソナに目覚めそうなのか?」

「あー……どうだろうな。影時間に動いているのは確認したし、桐条グループの方でもその可能性が高いからこそ、色々と無茶をやって有里を月光館学園に連れてきたんだろうし……多分、目覚めるとは思うんだよな」

 

 そう言いながらも、真田は若干不満そうだ。

 その不満の最大の理由は、やはり有里の一件が正確にどうにかなるまでは桐条もそちらについていなければならず、結果として真田だけでタルタロスに挑むのは禁止されているからだろう。

 1人でタルタロスに挑むというのは、桐条も許可しない筈だ。

 それもあって、真田は影時間の中をこうして走っているのだろう。

 ……もしかして、俺と遭遇しなければ直接タルタロスに入るつもりだった、なんて事はないよな?

 だとすれば、この件は一応桐条に報告しておいた方がいいかもしれない。

 そんな風に思いながら、俺は真田と言葉を交わす。

 

「そうか。そっちとしては、期待の戦力だろうな」

 

 実際、真田と桐条の2人だけではタルタロスの攻略が難しいのも事実だ。

 ……まぁ、以前は4階までだったが、今はかなり進んでいるって話らしいが。

 ともあれ、真田達にとっては喉から手が出る程に戦力を欲しているのは間違いない、か。

 その後も幾らか話をし……結局そろそろ影時間が終わってもおかしくないだろうという頃合いになり、俺は影のゲートを使って真田を寮まで送り届ける。

 寮の中に入って桐条や幾月に挨拶をしていかないかとも言われたが、桐条はともかく幾月には好んで会いたいとは思わない。

 ましてや、この寮の中が盗撮し放題の場所になっているというのを理解してしまった以上、あまり上がりたくないのは間違いなかった。

 真田や桐条は、必要ない限り盗撮データの類は破棄していると言っているが、それを本当に確認出来る訳ではないし……何より、データの破棄云々といった内容よりも盗撮されている可能性のある場所に行きたいとは、到底思えない。

 もっとも、盗撮ではなく撮影という意味でなら、防犯カメラのある店はそれこそ星の数程もある。

 そのような店に行けて、寮に入れないというのは……やはり、そこを仕切っている者に対する信用や信頼というのが影響しているのだろう。

 また、店とかでは俺はあくまでも客の1人――それなりに買い物をしているので、いい客かもしれないが――であるのに対し、幾月にとって俺はペルソナもなしでシャドウを倒しまくり、更には過去何をしていたのかといった事も分からないような、そんな相手だ。

 であれば、俺が寮に上がりたいと思わないのは事情を知る誰でも理解出来る筈だ。

 そんな訳で、俺は真田と寮の前で別れてアパートに戻ってくる。

 まだ影時間が終わっていないという事もあって、部屋の中は暗いままだ。

 窓から見える外も、明かりは月明かりしか存在しない。

 ……うん? そう言えばそろそろ満月か。

 窓から見える月は、もう殆ど真円と呼ぶのに相応しい形をしていた。

 今日の時点で満月だと言われても、納得する者が多いだろう程には。

 もっとも、だからどうしたって程でもないんだが。

 指を軽く鳴らして明かり代わりの炎を生み出す。

 そうして炎の明かりを頼りに、俺は空間倉庫から取り出した本を読むのだった。

 

 

 

 

 

「おはよう、アクセル」

「ん? ああ、おはよう」

 

 4月9日、俺が1人でタルタロスに行った日から2日。

 いつものように影のゲートを使って月光館学園の近くまで転移してきた俺は、道を歩いているとそんな風に声を掛けられる。

 聞き覚えのある声にそれが誰なのかというのは特に考える必要もなく判断し、振り向きながら言葉を返す。

 予想通りそこにいたのは、ゆかりだった。

 そう言えば結構な頻度でこうして朝に会うけど、弓道部は朝練とかそういうのはしてないのか?

 他の運動部では朝練をしている部もあるって話を誰からともなく聞いたけど。

 

「それにしても最近は暖かくなってきたわね。朝起きるのも一苦労よ」

「俺の場合は結構ギリギリまで寝てられるけどな。……朝食は休み時間とかにも食えるし」

 

 そもそも俺の場合、食事というのは生命活動に必須な行動ではない。

 純粋に俺が美味い物を味わいたいという娯楽的な行為なのだ。

 勿論食べた物は俺の腹の中で即座に分解されて魔力として身体に取り込まれる以上、決して無意味という訳ではないのだが、それでも食べないのなら食べないで特に構わなかったりもする。

 そんな訳で、本当に朝が忙しかったら朝食を抜きにしても構わないのだが……その辺は、やっぱり俺が食欲という欲求を抱いている事が大きい。

 

「……いいわね、男って」

 

 そう言い、ゆかりはジト目を俺に向けてくる。

 だが、その気持ちは分からないでもない。

 勿論男だって寝起きそのままで学校に来る……って訳にはいかないが、それでも朝の身支度はかなり簡単な代物だ。

 それに比べると女の場合は男とは比べものにならない程に忙しい。

 実際こうしてゆかりを見てみると、薄らとした化粧をしているのが分かる。

 女としての最低限の身だしなみ……って奴か。

 個人的には、レモン達と熱い夜を終えた後の、気怠そうな寝起きの顔も嫌いじゃないんだが。

 ともあれ、女子高生ではあっても……いや、だからこそなのか、身だしなみには時間を掛ける必要があるらしい。

 本当かどうかは分からないが、昨日の休み時間にクラスの女が話していたのは朝の準備に1時間近く掛かるとか何とか……

 その辺りは大袈裟に話していたのかとも思ったが、こうしてゆかりの様子を見ている限りでは意外と本当なのかもしれないな。

 けど……レモン達の場合は、基本的にはそこまで時間を掛けていなかったんだけどな。

 それこそ純粋に身支度に掛かっていた時間は、10分から20分程度だったと思う。

 寧ろ、前夜の俺との行為と風呂の方が長時間だっただろう。

 ……まぁ、その辺は女としての技術とかコツとか、そういうのもあるのかもしれないが。

 ともあれ、男と女では身支度に掛かる時間が圧倒的に違うというのは間違いなかった。

 だからこそ、ゆかりは俺に向かって羨ましいという思いを込めてジト目を向けているのだろう。

 

「おっはようさん、2人とも。今日も2人揃って登校とは羨ましいですなぁ」

 

 俺とゆかりの会話に割り込むような形で入ってきたその言葉に、最初に反応したのは俺……ではなく、ゆかりだった。

 

「ちょっと、順平! 何でもかんでもそういう方向に結びつけるのは止めてよね!」

 

 不満です! と言いたげな様子のゆかりの言葉だったが、それを聞いた順平は笑みを浮かべて口を開く。

 

「だって、2人の仲がいいのは事実だろ? いつも一緒にいるし」

「別に、いつも一緒って訳じゃないわよ。それは順平だって知ってるでしょ」

 

 まぁ、それは事実だ。

 昼休みに昼食を食べる時、俺とゆかりは基本的に別々に行動している。

 俺は順平と友近、そして初日に女が集まっていたのを助けた縁もあり、有里と一緒に食事をしている。

 ゆかりはクラスメイトと共に食事をしているが、特に決まった面子といった訳ではなく、毎日メンバーが色々と入れ替わったりしている。

 にも関わらず、何故か俺とゆかりが常に一緒に行動しているように見えるというのは……うーん、最初の印象とか、そういうのが大きいんだろう。

 それに、実際俺とゆかりは影時間になれば一緒に行動している事が多い。……もっとも、その時は俺とゆかりの2人だけという訳ではなく、荒垣の姿もあるのだが。

 そんな訳で、常に一緒に行動しているのを否定出来るかとなると、即座に否とは言えない。

 ゆかりの場合は、色々と頑張っているようだが。

 

「ほら、それよりそろそろ行かないか? まだ余裕はあるけど、だからって別に遅刻寸前になってもいいって訳じゃないだろ?」

 

 2人を取りなすようにそう告げ、俺はそのまま校舎に向かう。

 さて、今日も1日高校生活を楽しませて貰うとするかね。

 ……授業は面倒だが、何だかんだと俺自身はこの日常をそれなりに楽しんでいるのは間違いのない事実だった。

 今日の放課後は長鳴神社にでも行って、犬と遊ぶのもいいかもしれない。

 そう思いながら。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1389

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