転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1858話

「有里君は、怪我で暫く入院するとの事です」

『えええええええええええええ』

 

 朝のHRで鳥海の口から出た言葉に、教室の中が騒がしくなる。

 一応前情報として俺が教えてはいたのだが、それが全員に行き届かなかったというのもあるし、何よりやはり正式に教師の口から出たというのは大きいのだろう。

 

「先生、有里くんのお見舞いに行きたいんですが、入院している病院と病室は教えて貰えますか?」

「そうね、転入してきたばかりなのに、いきなり入院してしまっては、クラスに馴染めなかったりするでしょうね。……後で教えるので、気になる人は職員室まで来るように」

 

 そう告げると、見るからに教室の中にいる女達……有里のファンの面々が安堵の息を吐くのが分かる。

 こうなると、俺や順平、友近と一緒に見舞いに行くのは少し待った方がいいかもしれないな。

 幸い……幸い? いや、こういう場合は幸いって表現は使わないのかもしれないが、有里は入院しているが、意識を失った状態で入院している。

 それこそ、今日見舞いに行っても、有里と話す事は出来ないのだ。

 ……ただ、有里の人気を思えば、有里のファン達だけで見舞いに向かわせるのは、ちょっと危険な気がしないでもないな。それこそ、有里の貞操的な意味で。

 一応、桐条にその辺を連絡しておいた方がいいか。

 そんな風に考えている間にも朝のHRは終わり、続けて1時限目の授業になる。

 授業自体は特に興味深いものではないので、適当に聞き流す。

 うん、こうして改めて高校生活を送っていて思うんだが、やっぱり授業ってのは退屈だよな。

 いや、勿論それぞれの授業に意味があるというのは理解しているし、きちんとこの世界で暮らしていくのであれば、成績や内申点的な意味でもサボるような真似は論外なのだろうが……俺の場合、別にこの世界で生きて行こうとは思ってないしな。

 それに何より、俺は士官学校を卒業している。

 勿論随分と前の話である以上、色々と興味深い内容がない訳でもないんだが。

 ともあれ、俺としては授業の殆どは復習に近い内容となっているのは間違いない。

 つまり……

 

「授業って退屈だよな」

「まぁ、そりゃそうだろ。そもそも、授業を喜んで受けてる奴なんて、とてもじゃないけど友達になれそうもないし」

 

 昼食のパンを口に運びながら、友近がそう告げる。

 順平も友近の意見に同様なのか、コンビニで買ってきたのだろうおにぎりを食べながら頷いていた。

 昨日までなら、ここに有里もいたんだけどな。

 もっとも、有里が転校してきてからまだ数日だ。

 いなくても慣れないとか、そういう感じではない。

 これが、1ヶ月くらい同級生として生活していれば、話もまた違うんだろうが。

 

「まぁ、勉強については取りあえず置いておくとしてだ。……それで、有里の見舞いどうする?」

 

 勉強について考えるのが思い切り嫌だと態度で示しつつ尋ねてくる順平だったが、俺はそれに首を横に振る。

 

「見舞いに行くにしても、今日は止めておいたほうがいいだろ。明日も……まぁ、人が多そうだし、明後日くらいがちょうどいいんじゃないか?」

「だろうな。つか、有里の奴たった数日でよくもこんなにファンを作ったよな。何か妙な能力でも持ってたりしないよな?」

 

 友近の言葉に、俺は幕の内弁当に入っていた出汁巻き卵を口に持っていく手を止める。

 妙な力と聞き、真っ先に思い出すのは当然のようにペルソナだ。

 この世界特有の能力で、その力は強力無比。

 少なくても、このペルソナがない状況でシャドウと戦うのは不可能に近い筈だ。

 勿論、低級のシャドウ……臆病のマーヤみたいな奴であれば、話は別だろうが。

 そして、実際に有里がそんな能力を持っているというのは、俺も知っている。

 だが、ペルソナの力を使って女に群がれているというのは……有里の面倒臭がりな性格を考えれば、可能性は少ないだろう。

 

「まぁ、月並みな言い方だけど勉強はしておいて損はないんじゃないか? 少なくても学校の成績が上がれば、3年になった時に選べる選択肢は増えるし」

 

 ゆかりや有里のようにペルソナ使いであれば、桐条財閥がほぼ無条件で就職させるという選択肢もあるので、更に将来の選択肢は広がるだろうが……ゆかりの場合は桐条財閥に就職するというのは、かなり難しいだろう。

 少なくても父親の一件がきちんと片付くまで、その選択肢はない筈だ。

 そんな風に考えながら、昼休みを楽しむ。

 もっとも、俺の口から勉強をした方がいいという言葉が出るとは思わなかったのか、順平と友近はかなり驚いていたが。……その上、順平はかなり嫌そうな表情を浮かべていたのを考えると、成績的にかなり厳しいんだろう。

 勿論友近の方も似たような表情だったのを見れば、類が友を呼ぶといったところか。

 ……ん? だとすれば、俺もその類になるのか?

 ただ、俺の場合は成績という一点に関してはかなりいいと断言出来る。

 古文とかそっち系統は若干苦手だが、それだって平均かそれ以上には出来ているという自信があった。

 

「中間テストとか、最悪じゃん」

「それは否定しない。……もっとも、それが日本の高校教育のシステムである以上、否定してもしょうがないとは思うけどな」

「……アルマー、お前もしかして頭いい?」

 

 俺の言葉を聞いた友近がそう尋ねてくるが、俺はそれに肩を竦める。

 

「さて、どうだろうな。俺が本当に頭がいいのなら……それこそ、次のテストで実力を見せるかもしれないけど」

「けっ、お前は敵だ、敵」

 

 そんな風に言っていると、やがて昼休みも終わる。

 そのまま午後の授業が終わると……何人かの女が、急いで教室を出ていくのが見えた。

 一体何を? と一瞬疑問を抱いたが、すぐに有里の見舞いだろうと理解する。

 それを見ると、桐条に連絡をする必要があることを思い出し、携帯に手を伸ばす。

 

「おーい、アクセル。帰ろうぜ。はがくれにでも寄っていかないか?」

「悪い、今日はちょっと用事があるから無理だ。俺の分もラーメンを楽しんできてくれ」

 

 こっちを呼ぶ友近にそう声を掛け、少し離れた場所で携帯から桐条の番号を選択する。

 数度の呼び出し音の後、やがて桐条が電話に出た。

 

『もしもし、アルマーか? どうした?』

「クラスの女達が有里の見舞いに行ったらしい。有里はまだ意識を取り戻してないんだろ? だとすれば、見舞いに行ったのは有里のファンだから、何か悪戯されたりする可能性もある」

『む、それは困るな』

 

 不幸中の幸いだったのは、見舞いに行った人数が数人だった事か。

 いや、このクラスでそれだから、有里のファンクラブのメンバーを誘って見舞いに向かったのなら、もっと人数は多くなっているかもしれない。

 ともあれ、1人で見舞いに行けば眠っている有里を見て血迷った真似をする者もいるかもしれないが、人数が多ければそんな真似も出来ない……と、信じたい。

 順平辺りが聞けば、そんな悪戯は羨ましそうだと言う可能性もあるが……基本的に女に興味がないように見える有里にとって、そういうのはあまり面白くないだろう。……多分。

 ともあれ、悪戯をされないのであればそれに越した事はないだろう。

 であれば、有里が入院している病院も桐条グループの傘下か何からしいし、悪戯されないように手を回すくらい、桐条にとっては問題はない筈だ。

 桐条にとっても、貴重なペルソナ使いの有里に妙な真似をされるのはごめんだと、そう思っているのは当然だろうし。

 

『そうだな、ではその辺りはこちらで手を回そう。有里が妙な目に遭うのは、こちらとしても避けたいからな』

「頼む」

『それにしても、アルマーには色々と迷惑を掛けるな。私達とは協力関係を結んでいるだけだというのに』

「まぁ、有里は友人だしな。それに……最初からそれを狙ってたんだろ?」

 

 その言葉に、桐条が言葉に詰まる。

 そもそもの話、有里が月光館学園に転入してくるというのは前もって決まっていた事だ。

 そこに俺の転入を提案し、更に同じクラスなのだから……その辺りを邪推するなという方が無理だろう。

 まぁ、ペルソナ使いを別々のクラスに分けるよりは、2-Fという1つのクラスに一緒に纏めておくというのが色々と面倒がないと思ったのも大きいんだろうが。

 そういう意味では、ゆかりが元々2-Fだったのが大きな理由だろう。

 

「それより、桐条。お前は大丈夫なのか?」

『む? 何がだ?』

「昨日行われたという戦いに参加し、その後は意識不明の有里を病院に運んで手続きをし……で、早朝に俺に電話をしてきて、その後はすぐに学校だ。1日で経験したにしては、随分と大変だったと思うんだがな」

『……アルマーが私の心配をしてくれるとは思わなかったな。だが、安心してくれ。軽くではあるが休んでいるし、多少の事はあっても問題ないだけの体力はある』

 

 高校生くらいの年齢なら、1日徹夜したくらいでは問題がないか。

 どのみち、俺がそんな桐条にしてやれる事は何もない以上、その言葉を信用するしかない。

 本当にどうしようもなかったら、それこそ空間倉庫の中に入っている魔法薬を使ったりしてもいいんだが、今の状況でそれが必要かと言われれば、その答えは否だしな。

 

「そうか。なら、俺からは何も言う事はない。ただ、気をつけろよ。お前はそっちのパーティの要だ。そうである以上、もしお前が倒れるような事にでもなれば、戦力が大幅にダウンするんだからな」

『……ああ、肝に銘じておこう。アルマーも気をつけてな。……いや、アルマーには言うまでもないか』

「そうだな。死神でも出てこない限り、こっちに問題はない。……一応聞いておくが、お前達はタルタロスで死神に遭遇したりはしてないよな?」

 

 そう尋ねながらも、俺は桐条達が死神に遭遇していない事を理解していた。

 そもそもの話、もし死神と遭遇しているのであれば、桐条も真田も無事で済んだ筈がないのだから。

 少なくても、今の桐条、真田……そしてゆかりといったペルソナ使い達では、死神を相手取るのはまず不可能だと断言出来る。

 そんな理由から、死神と遭遇していないのは分かっていたが、それでもやはり尋ねてしまうのは、桐条と真田という2人を気に入っているからだろう。

 また、有里もまだ数日の付き合いだが、友人という意味では付き合っていて疲れない男だし。

 ……賑やかな順平と友近という2人がいたからこそ、有里に対してもそんな思いを抱いたのだろう。

 ともあれ、違う勢力、違うパーティという扱いであっても、桐条達を気に掛ける理由は十分にある。……幾月はともかく。

 

『ふふっ、当然だろう。アルマーから聞いた話によれば、少なくても私達では死神と遭遇すれば逃げの一手しかない。それも、そうする事で完全に逃げられるかと言われれば……微妙なところだからな』

 

 電話の向こうで桐条が苦笑をしているのが分かる。

 実際、桐条にとって死神と遭遇した時に逃げられるかどうかも微妙だというのは、色々と思うところがあるのだろう。

 ただ、今まで俺達が挑むまでに何度もタルタロスに挑んでいたにも関わらず、死神が桐条達の前に姿を現した事はない。

 それに比べて、俺達の……俺の下には、あっさりと姿を見せている。

 この差は一体どこにある?

 そう思わないでもないが、やはり一番に思い当たるのは俺の存在だろう。

 だとすれば、意外とあの死神は俺達の前にしか姿を現さないのか?

 正確には、俺達じゃなくて俺だけだろうが。

 もしかしたら、俺がこのペルソナ世界の人間ではなく、異世界の人間だというのも知っているのかもしれないな。

 それはそれで面白い。

 もしかしたら、死神は他の世界に行く為の手段とか、そういうのを知っている可能性もある。

 異世界への転移……今の俺にとっては、非常に興味深い代物だ。

 だが、だからって安易にそれを求める訳にもいかないのは事実だ。

 何しろ、このペルソナ世界にやって来たのすらイレギュラーな事態である以上、ここから更に別の世界に転移するような事になってしまえば、それこそレモン達が俺を見つけるのは難しくなる。

 ……ああ、でも別の世界に転移すれば、システムXNやゲートを使ってホワイトスターに戻る事が出来る可能性は十分にあるのか。

 であれば、意外とこの世界から脱出する為に死神にちょっかいを出しても本当にいいかもしれないな。

 ただ、現状この世界のペルソナ使い達はまだ未熟だ。

 そんな中で戦力の要とも言える俺が脱出してもいいのかと言えば……正直、どうだろうな。

 そんな風に思いつつも、今日はタルタロスで死神を探してみようと考えつつ、俺は暫くの間桐条との会話を続けるのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1389

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