転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1867話

 有里に俺達の事を紹介するというので、夕方、俺はゆかりと共に桐条達が住んでいる寮……巌戸台分寮にやってきていた。

 一応荒垣にメールで今日の件を教えたのだが、当然のように不参加となり、こちらからは俺とゆかりの2人だけでの参加だ。

 そのゆかりも、放課後は俺が桐条と一緒に食事――お好み焼きだが――に行くというのを聞いて、微妙に不機嫌だったのだが……幸い、もうその機嫌は直ったらしい。

 

「じゃあ、行くか」

「……そこまで気合いを入れる必要はないと思うんだけど」

 

 俺の言葉に、不思議そうな表情を浮かべるゆかり。

 いや、俺も寮にいるのが桐条、真田、有里の3人だけであれば、ここまで気合いを入れようとは思っていなかっただろう。

 だが、今回の話し合いでは間違いなくあの男が……幾月が姿を現す。

 駄洒落好きという他は、特に何かある訳でもない相手なのだが……ただ、どうしても友好的な相手とは思えないんだよな。

 感覚的に駄目な相手で。

 ……その辺り、自分でも不思議だとは思うんだが……

 ともあれ、感覚的に合わないからといって、友好的に接してこようとする相手をこっちからどうにかする訳にもいかないしな。

 結局、向こうとは適当にやりすごす必要がある訳だ。

 もっとも、ゆかりには幾月が怪しいといった事を別に言っている訳ではないので、俺の行動を不思議そうに思っていても、それだけなのだが。

 

「男には色々とあるんだよ。……へぇ」

 

 そう告げ、扉の側にあるチャイムを鳴らす。

 すると、殆ど時間も掛からずに扉が開き、そこには真田の姿があった。

 

「よう、アルマー。岳羽も。話は聞いてる。中に入ってくれ。……シンジの奴は来なかったのか」

 

 俺とゆかりの2人だけなのを見て、少しだけ残念そうに呟く真田。

 真田としては、出来れば荒垣も一緒に来て欲しかったのだろう。

 

「一応荒垣も誘ったんだけどな。駄目だった」

「……ま、シンジらしいかもな」

 

 そう言うと、真田は寮の中に入るように促す。

 

「もう食事の用意は出来ている。……中々美味そうだぞ」

 

 真田の言葉通り、寮の中からはかなり食欲を刺激する匂いが漂っている。

 それが何の料理なのかは分からなかったが、真田にとってはこの匂いの中で俺達を待っていたのだから、かなりの我慢が必要だっただろう。

 

「いい匂いですね。これは……チーズですか?」

 

 ゆかりも漂ってくる匂いに気が付いたのか、嬉しそうにそう言いながら真田に尋ねる。

 女は大抵チーズが好きだしな。

 特にチーズケーキとか、嫌いな女は少数派だろう。

 俺はチーズケーキは、食べられない事はないが、そこまで好きな訳ではない。

 チーズケーキより、それこそ普通のショートケーキとかの方が美味いと感じる。

 ……この辺、味覚の違いが如実に現れている形だろうな。

 まぁ、特に問題はないのだが。

 俺がチーズケーキを好まないというのは、コーヒーではなく紅茶を好むとか、そういった嗜好の違いでしかないのだから。

 

「ああ、チーズフォンデュだったか? 俺も初めて食べるから、楽しみにしてたんだが……こんなに美味そうな料理だとは思わなかったな」

 

 チーズの匂いがすると思ったら、チーズフォンデュだったのか。

 桐条が自信に満ちていたのを思い出すと、なるほどと思う。

 実際、俺もチーズフォンデュというのは、知識では知っていても直接食べた事はない。

 勿論ある程度大きな街とかに行けば、レストランとかで食う事は出来るんだろうが……今までは、縁がなかったのか、食う機会には恵まれなかった。

 確かチーズを溶かして、肉とか野菜とかを付けて食べる料理だったと思う。

 似たようなのに、デザート系のチョコレートフォンデュとか、油で揚げるオイルフォンデュとか、そういうのがあったと思う。

 そんな事を考えながら部屋の中に入ると、そこではテーブルの上に溶けたチーズがたっぷりと入った大きめの鍋がある。

 下にあるコンロは、チーズが冷えて固まらないようにという為だろう。

 そして鍋の周囲には肉、野菜、魚介類といったように様々な存在が並んでいた。

 

「おお、来たかアルマー。……どうだ、それなりに立派な出来だと思わないか?」

 

 自信に満ちた表情でそう告げる桐条だが、テーブルの上にあるチーズフォンデュを見れば、そんな風に自信に満ちていてもおかしくはない。

 

「あれ? 2人とも……どうしたの?」

 

 そんな桐条の横では、音楽を聴いていた有里がようやく俺達に気が付いたのか不思議そうに言ってくる。

 この様子だと、どうやら俺達の事は言ってなかったらしい。

 いやまぁ、ペルソナ使いだってのは食事が終わってから話す予定なんだろうが。

 

「一応私達は未成年なので、チーズを伸ばすのは白ワインではなく牛乳を使わせて貰った。初めて作ったが、なかなかのものだと自負しているぞ。……まぁ、具材の方を切るのは菊乃に手伝って貰ったがな」

 

 菊乃? と疑問に思ったが、以前少し会ったことがあるのを考えると、それがどのような人物なのかは何となく理解出来る。

 であれば、ここでわざわざ聞く必要もないだろう。

 ともあれ、アルコールの類は俺に取って危険物に等しい。

 もしここでアルコールを飲もうものなら、色々な意味で危険な事態になりかねないし、俺がアルコールを飲むとすぐに記憶を失ってしまうというのは、出来るだけ知られたくない。特に……

 

「やぁ、2人とも。今日はよく来てくれたね」

 

 そして既に椅子に座っている幾月が俺達を見て声を掛けてくる。

 そう、この男に対しては。

 ともあれ、あの駄洒落が出てこないのは助かったな。

 それはゆかりも同じ気持ちなのか、幾月に小さく頭を下げるだけだ。

 そうして俺達も椅子に座ると、真田も椅子に座り、それぞれの前にお茶の入ったコップを配り、桐条が口を開く。

 

「チーズフォンデュには、特にこれといった作法のようなものはない。それでは、食べるとしよう。この後は色々と話をする必要もあるので、食べすぎて動けなくなる……などということはないように」

 

 そう言う桐条だが、チーズフォンデュ用に切られて木の串に刺さっているのは、全て一口サイズ……それも、男の俺や真田、有里ではなく、桐条やゆかりのように女の一口サイズといった大きさだ。

 このくらいの大きさで、腹が一杯になるまで食うのは結構大変そうな気がするな。

 勿論、それは面倒なだけで、不可能ではないのだが。

 特に俺の場合は、腹が一杯になって動けなくなるという事は基本的にない。

 まぁ、けど……程々にしておいた方がいいか。

 まさか、ここにある材料全部を食い切ってしまう訳にもいかないしな。

 

「私のお勧めはアスパラだ。チーズとアスパラの相性は抜群だぞ」

 

 そう言う桐条の言葉に興味を持ち、アスパラの刺さった串をチーズの海とでも呼ぶべき鍋の中に入れる。

 既に具材には火を通してあるので、アスパラを軽く回してチーズを付けてから、そのまま口に運ぶ。

 串揚げのソースは2度付け禁止とかあったけど、このチーズフォンデュもそうなのかもしれないな。

 最初に感じたのは、チーズの濃厚な味。

 チーズを牛乳で伸ばしていると聞いたが、それ以外にも色々と香辛料とかが入っているらしい。

 そんなチーズの濃厚な味の後に、アスパラの瑞々しい食感が口の中に広がる。

 へぇ……チーズフォンデュ、初めて食ったけど、美味いな。

 

「美味しい……これがチーズフォンデュなのね」

「ん? ゆかりもチーズフォンデュは初めてだったのか?」

「ええ。もしかしたら小さい時に食べた事はあったかもしれないけど、少なくても物心ついてからは初めてね」

 

 そう呟くゆかりの表情が少し悲しげに見えたのは、決して俺の気のせいという訳ではないだろう。

 ただ、ここでこれ以上この話を口にすれば、色々と壊す事になってしまう。

 それはあまりいい事態ではないので、そこには特に突っ込まず、近くに置いてる焼かれた豚肉の刺さった串に手を伸ばす。

 チーズフォンデュに使われる具は、当然ながら既に火を通してある代物だ。

 勿論チーズを纏わせる時に多少は火が通るだろうが、生の豚肉とかをそのまま用意するというのは、俺以外にとっては色々と危険だからな。

 そして火を通すにしても、それには焼く、茹でる、蒸すといった風に色々と種類がある。

 その辺りの微妙な違いを楽しむのも目的らしく、具材は同じでも火の通し方にはそれぞれ違いがあった。

 

「へぇ、焼いた豚肉美味いな」

 

 香ばしさがチーズとの芳醇な香りと共に口の中に広がるというのは、意外に面白い。

 チーズを使った料理だと、ピザとかでこれと同じようなのを楽しめるかもしれないが……ただ、ピザで使われるのは、大抵がベーコンとかソーセージとかだ。

 ……ソーセージとウィンナーの違いって何だったか。

 いや、今は関係ないんだし、そんな事を考える必要はないか。

 そんな風に考えながら、俺はゆかりに焼いた豚肉を勧める。

 ゆかりもタルタロスでの活動のおかげでダイエットとかは必要なく……それどころか、普段よりも多く食べないと痩せる一方なので、俺に勧められた豚肉も特に躊躇なく口に運ぶ。

 

「こっちの茹でたエビも美味しいわよ」

「ふむ、鶏肉のササミがなかなか……」

 

 ゆかりと真田の2人も、それぞれ美味そうにチーズフォンデュを食べている。

 ちなみに真田がササミを食べるのは……やっぱり筋肉の問題なんだろう。

 

「そうか、皆喜んでくれたようで何よりだ」

 

 全て自分で作った訳ではないとはいえ、やはり自分の手料理を美味そうに食べて貰えるというのは、桐条にとっても嬉しいのだろう。

 ……ファンに知られたら、桐条の手料理を食ったという事で、恨まれかねないが。

 実際、この席を見れば月光館学園の殆どの者が嫉妬をするんじゃないんだろうか。

 桐条、真田、ゆかり、有里。

 月光館学園の中でもファンの多い連中が揃っている食事なのだから。

 

「有里、君も退院したばかりでまだ栄養が足りないだろう。しっかりと食べてくれ」

「分かりました」

 

 むぐむぐといった感じで、何かの魚の白身を鍋の中に突き入れる有里。

 

「うーん、これは実に美味しいね。チーズフォンデュだけに、ちっ、ずーっと食べてやりたいな。……ぷぷぷ」

 

 テーブルの端では、何やらいつもの病気を発症している奴がいるが、今はそれはスルーした方がいいだろう。

 

「アルマー、こちらもお勧めだぞ。甘くて、チーズとの相性は抜群だ」

 

 ミニトマトの突き刺さった串を渡してくる桐条。

 折角なのでそれを断ったりはせず、ミニトマトを鍋に入れる。

 元々、チーズとトマトというのは相性がいい。

 ピザとか、サラダとか、普通にあるしな。

 であれば、ミニトマトとチーズフォンデュの相性が悪い訳がなかった。

 口の中に広がるチーズの濃厚な香りと味。

 そして次にトマトの爽やかな酸味が広がる。

 どうだ? と期待を込めた視線を向けてくる桐条に、俺は口の中のトマトを呑み込んでから小さく頷く。

 

「ああ、美味い」

「そうか!」

 

 自分が美味いと思っている物を、他人が食べても美味いと言うのは嬉しいのだろう。

 しかもそれは自分で作った料理なんだから、尚更だ。

 そうして1時間程、チーズフォンデュという珍しい料理を楽しむ。

 時々幾月の下らない駄洒落が炸裂して寒い空気になったりもしたが、そういう意味でも熱々のチーズに具材を絡めるというチーズフォンデュは正解だったのだろう。

 そう言えば、世の中にはカレーフォンデュとかいうのもあるってのを、どこかの世界で見た記憶があるな。

 今度ちょっと試してみたい気がする。

 そんな風に考えながらも、皆の腹が一杯になったところで料理は終わりとなる。

 ちなみに具材は殆ど残っていない。

 俺が頑張れば全て食べる事は出来たんだろうが……ふんっ、今日はこのくらいにしておいてやるよ。

 そんな事を思いながら、食後のお茶を楽しむ。

 普通食後のお茶と言えば、緑茶とか玄米茶とか和風のお茶のイメージなのだが、今日はチーズフォンデュだったせいか、食後のお茶は紅茶だった。

 

「へぇ……美味いな」

「だろう? これは私も好きな葉なんだ」

「……ん? 好きな葉って事は……もしかして、桐条は紅茶が好きなのか?」

 

 そう尋ねた俺の声は、恐らく喜んでいた事だろう。

 だが、しょうがない。久しぶりに……本当に久しぶりに見つけた、紅茶派の人物だったのだから。

 いや、勿論紅茶を好んで飲む者というのは多い。

 実際、ホワイトスターにある俺の家では、全員が紅茶を飲む。

 元々紅茶でもコーヒーでもいいというのも何人かいたが、紅茶ばかりを飲んでいるうちに紅茶派になった、みたいな感じか。

 凛も紅茶派だったし……こうなると、コーヒー派を相手にこっちが優勢になるのもそう遠い話ではないだろう。

 ……まぁ、ホワイトスターに戻る事が出来るのがいつになるのかは、分からないのだが。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1389

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