転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1872話

 ゆかりの、シャドウ恐がり事件……名前だけを聞けばゆかりがシャドウを怖がって悲鳴を上げるかのようなイメージが思い浮かぶが、実際にはゆかりがシャドウを怖がるのではなく、シャドウがゆかりを怖がるというその事件があった日の翌日……俺はいつものように朝起きると、TVを見ながら朝食を食べて身支度をしてから影のゲートに身を沈めていく。

 転移魔法を通学に使うってのは……俺と同じ影の転移魔法を使うエヴァ辺りが知ったら怒りそうだな。

 そんな風に思いながら。

 ちなみに、昨日は結局ゆかりの件もあって、タルタロスにいた時間は1時間強といったところだ。

 影時間が大体3時間から4時間なのを考えると、随分早めに帰ってきたと言ってもいい。

 

「おはよう、アクセル」

「ああ、おはよう」

 

 そしてまた、いつものように特に約束をしている訳でもないのに、ゆかりと合流して学校に向かう。

 機嫌が悪そうに見えるのは、朝だから、月曜だから……といった理由ではなく、やはり昨日の件が尾を引いているのだろう。

 まぁ、女としてはあまり喜ばしい事ではないだろうしな。

 

「そう言えば、英語の宿題やってきたか?」

 

 昨日の件を話すと、より機嫌が悪くなりそうなので、取りあえず関係のない場所から話題を進める。

 

「え? ああ、やってきたわよ。……アクセルは英語が苦手じゃなくていいわね」

 

 急に話題が変わった事に気が付きながらも、シャドウを恐怖させたという点については、ゆかりにとっても面白い話ではないのだろう。特に異論なく、そちらの話題に食いついてくる。

 

「まぁ、俺の場合半ば母国語だしな」

 

 帰国子女にとっての大きな利益の1つは、英語の授業にあると言ってもいいだろう。

 ……まぁ、日本の英語とか、普通に英語を知っている者にすれば違和感しかないような授業だったりするのだが。

 それでも、注意すればある程度対処可能なのは、間違いない。

 

「ふーん……帰国子女、ね」

 

 まさかこの場で俺が他の世界からやって来たと言える筈もなく、ゆかりはジト目をこちらに向けてくる。

 

「まぁ、何だかんだと俺が英語を得意なのは間違いないので、その辺りは幾らでも誤魔化せるんだが」

 

 そんな風に会話をしながら歩いていれば、当然のようにゆかりのファンから嫉妬の視線を向けられる。

 最近はあまり気にしなくなっていたが、やっぱりゆかりを好きな奴ってのは多いんだろうな。

 そんな風に考えていると、ふと視線の先に見覚えのある姿を見つける。

 

「あ、順平だ」

「え? あ、本当ね。……けど、何だか見るからにテンション上がってない? 何かいい事でもあったのかしら?」

 

 ゆかりの言葉通り、順平はこうして遠目から見ても分かる程に上機嫌な様子を見せている。

 それこそ、傍から見れば怪しげな……と表現してもおかしくない程に上機嫌な様子を見せているのだ。

 本当に、何がどうしてああなったんだ?

 恐らく、余程いい事があったのは間違いないだろうが……

 

「どうする? 話し掛けるか?」

「そうね。あのままだとかなり恥ずかしい事になりそうだから、そうなる前に我に返してあげましょう」

 

 微妙な気分を抱きつつ、ゆかりと顔を合わせてから順平の方に近づいていく。

 

「おはよ、順平。随分機嫌がいいみたいだけど、何かあったの?」

 

 最初に声を掛けたのは、ゆかり。

 俺が声を掛けるより、ゆかりの方が順平の注意を引く事が出来るという判断からのものだが……この辺り、タルタロスでの連携訓練が上手く嵌まった形だ。

 もっとも、何をしてるんだと突っ込まれれば、こちらとしてもどうしようもないのだが。

 それでも効果はあった以上、決して無駄ではないだろう。

 

「ん? ああ。ゆかりッチ、おはよう。今日もいい天気だな。俺ッチを祝福してくれているようだ! わはははは!」

「……駄目ね、これは」

 

 テンションの高い順平に、ゆかりが小さく呟きながら首を横に振る。

 うん、それは俺も同様だな。

 

「ああ、アクセルもいたのか。あははは、うははは、わははは……相変わらずアクセルとゆかりッチは仲がいいようで何よりですなぁ。いやぁ、羨ましい」

 

 明らかに順平のテンションはおかしい。

 何だ? 何がどうなってこうなってるんだ?

 そんな疑問を抱くも、今の順平の様子を見る限りでは何を聞いても無駄だろう。

 何か余程いい事でもあったんだろうが……何があったんだ?

 順平の性格を考えれば、ちょっと聞けばすぐに答えてくれそうな気がしないでもないが。

 そうだな、駄目元で一応聞いてみるか。

 

「順平、お前何があったんだ? 随分と上機嫌だけど」

「ん? あー、悪いな。それは言えないんだよ。ただ、安心しろ。お前達は俺が守ってやるからな」

 

 本人としてはニヒルだと思っているのだろう笑みを浮かべている順平の様子に、俺は無言でゆかりに視線を向ける。

 だが、その視線を受けたゆかりは無言で首を横に振る。

 それは、これ以上順平に何を言っても無駄だから、構わない方がいいと言ってるようだった。

 いや、ようだったじゃなくて、実際にそう思っているのだろう。

 今の順平の様子を見る限り、何らかの理由で有頂天になっているのはまちがいない。

 であれば、今は何を言っても無駄だというゆかりの判断はそう間違ってもいないか。

 ともあれ、そんな感じで話をしながら俺達は学校に向かう。

 少しだけ……本当に少しだけだが、もしかしたら学校に到着すれば元に戻るかも? といった希望を抱いたのだが、当然のように元に戻るような事はなく……

 

「な、なぁ。アルマー。順平の奴、何かあったのか?」

 

 順平と話した友近が、俺の方に不思議そうな表情を浮かべつつ近づいてくる。

 まぁ、その気持ちは分からないでもないけどな。

 順平の様子は、いつにもましてテンションが高いのだから。

 何をどうすればああなるのか、それは俺も知りたいところだ。

 勿論、順平に何かあったのかを聞いても、教えるような事はないだろうが。

 

「有里は何か知らないのか?」

「知らない」

 

 有里に聞いてみても、やはり知っている様子はなかった。

 ……となると、完全に意味不明だな。

 自慢ではないが、順平と一番仲がいいのは、俺、有里、友近だ。

 それで俺以外の誰もが、何故順平がここまでテンションが高いのかという理由を知らない以上、それはどうしようもないという事になるのは当然だった。

 結局月曜日という、1週間の中で最も憂鬱と言われており、テンションが下がってもおかしくない日を、俺達は順平の妙なテンションに釣られるようにすごす事になる。

 そう考えてみれば、何気に今日の一件はそんなに悪くなかった……のかもしれないな。

 勿論ああいう順平と一緒にいるのは疲れるので、たまにであれば、という言葉が付くが。

 ともあれ、月曜日の学校の授業も終わり……

 

「なぁ、はがくれ寄っていかねぇ? はがくれ丼を食いたいんだけど」

 

 友近がそう言ってくる。

 

「へぇ、いつもはラーメンなのに、はがくれ丼ってのは珍しいな。俺はいいけど?」

「僕もいいよ」

 

 視線を向けると、有里は全く問題ないと頷く。

 ……チーズフォンデュの時もそうだったけど、細身の割に有里はかなり食うんだよな。

 いやまぁ、食った端から魔力として吸収し、実質的には幾らでも食う事が出来る俺が言うべき事じゃないかもしれないが。

 

「順平、お前は?」

 

 そう尋ねる友近だったが、その言葉にはまさか断らないだろうという思いがあった。

 実際、今まで何度かはがくれに一緒に行った事はあるが、大抵は断るなんて事はなかった。

 それだけに、今回も容易く頷くと思っていたんだろうが……

 

「悪い、今日はちょっと用事があるんだ。すぐに帰らないと」

 

 そう言って、軽く謝ってくる。

 実際、時間がないというのは間違いないのだろう。

 俺達にそう告げると、すぐに帰る準備をして教室を出ていく。

 

「順平がはがくれに行かないってのは、珍しいな」

 

 驚きと共に友近が呟き、俺と有里は揃って頷く。

 もっとも、順平が帰ったからといって俺達がはがくれに行かないという訳ではなく……そうして友近達と一緒に教室から出ようとすると、携帯が着信の音を伝えてくる。

 ん? 俺に掛かってくるのは珍しいな。

 基本的に俺に電話を掛けたり、メールを送ったりするという相手はそう多くはない。

 それだけに、誰が電話を掛けてきたのか想像するのは、そう難しい話ではない。

 友近と有里はここにいるし、順平はついさっきまで一緒にいた。

 ゆかりかとも思ったが、ゆかりもさっきまでここにいたのは間違いない。……今はもう弓道部に向かったけど。

 眞宵堂の店主という可能性もあったが……そう言えば最近眞宵堂に行ってないな。

 宝石とかを調べるにも、桐条グループに頼めるようになったし。

 そんな風に連絡してきた相手の名前を見ると、そこに表示されているのは予想通り桐条だった。

 有里と友近から少し離れた場所で、桐条からの電話に出る。

 

「もしもし?」

『ああ、アルマーか。昨日の今日で申し訳ないが、今日の……そうだな、午後5時か6時頃、寮に来られないか? ちょっと紹介したい相手がいるんだが』

 

 桐条の言葉に、教室の時計に視線を向ける。

 そこに表示されているのは、午後3時をちょっと回ったところ。

 桐条が口にした5時という時間には、まだ十分な……それこそこれからはがくれに行っても問題ないだろう余裕はある。

 

「俺だけか?」

『いや、出来れば岳羽も連れてきて欲しい。荒垣は……可能であれば連れてきて欲しいが、こちらは恐らく無理だろう』

 

 あっさりとそう告げる桐条。

 実際、有里に事情を話す為に行われてたチーズフォンデュを食べる時にも荒垣は来なかったしな。

 今回向こうが何を考えているのかは分からないが、それでもあの時の事を考えれば、荒垣が桐条の寮に来るとは思えない。

 

「一応メールで誘ってはみる」

『そうしてくれ』

「それで、今回は何の用事なんだ? 今、俺の近くに有里がいるけど、何もそれらしい事は聞いてないみたいだぞ?」

 

 自分の名前が出たのが気になったのか、有里がこっちに視線を向けてくる。

 それに何でもないと手を振りながら、桐条の言葉を待つ。

 

『ああ、有里にもこの件は知られてない。……本来ならもう少しゆっくり進める筈だったのだが、向こうがせっかちでな』

 

 どうやら俺達に紹介したい相手がいるらしい。

 ……ついこの前有里が入ったばかりだと思うんだが、桐条の方にはよくこうも次から次に新人が入るな。

 あくまでも個人として動いている俺達とは違い、このペルソナ世界でも屈指のグループ企業、桐条グループだ。

 それこそ影時間に対して適性を持っていたり、それどころかペルソナ使いとして覚醒している者を探すのは、それ程難しい事ではないのだろう。

 

「とにかく、話は分かった。……じゃあ、5時か6時だな?」

『ああ、そうしてくれ。アルマー達にもその人物を紹介したいからな』

 

 そう告げ、通信……もとい、電話は切れる。

 にしても、俺に連絡をしてきたけど、有里には連絡をしなかったってのは……もしかして前もってその件は教えてあったのか?

 まぁ、同じパーティなんだから、それでもおかしくはないが……いや、それならそれで、有里が俺とゆかりを誘っても構わなかった筈だ。

 その辺は特に深く考えない方がいいか。

 そう判断し、俺はゆかりにメールを送る。

 すると、幸いにもまだ部活は始まってなかったのか、すぐに返事がきた。

 それによると、午後5時くらいなら問題ないらしい。

 まぁ、それでも部活を途中で切り上げる事になるらしいが……現在弓道部の中で名実ともにエースとして活躍しているゆかりにとっては、それくらいは問題ないのだろう。

 実際、タルタロスの中で命懸けの実戦を潜り抜けてきたゆかりの実力は、部活でしか弓道をやっていない他の部員達とは比べものにならない程の差がついてしまっているらしい。

 元々の才能もあったのだろうが、恐らく今のゆかりであれば、弓道の大会とかも相当いいところまで行くだろう。

 いや、弓道の大会でどんな風にするのかとか、そういうのはあまり分からないのだが。

 それでも弓道である以上、ゆかりが負けるというのはちょっと思いつかなかったが。

 ……W17、いや、ラミア辺りなら結構弓道が得意か?

 ふとそんな事を思うも、スパロボ世界とは随分と連絡が取れていないんだよな。

 ともあれ、ゆかりとのメールのやり取りを終えると、近くでは有里が誰かと電話をしている光景が見えた。

 いや、誰かという表現をしたが、それが誰なのかは容易に想像出来るんだけどな。

 そうして有里の電話が終わると、俺達は目的のはがくれ丼を食べる為にはがくれに向かうのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1389

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