転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0173話

 夜明けの砂漠に数秒だけ広がった偽りの太陽。それを作り出した地雷原とそれによって破壊されたバクゥの群れを俺はアークエンジェルの甲板上で眺めていた。そんな時ブリッジからの通信が入ってくる。

 

「アクセル、無事ね?」

「ああ。取りあえずは何とかなったな」

「そうね、確かに今回は何とかなったわ。でも……」

 

 そこまで告げて、重い溜息を吐くマリュー。

 

「……どうした?」

「フラガ少佐から連絡があったわ」

「そう言えばさっきカタパルトデッキから発進していたな。この短時間で機体の調整を終わらせたというのは大したものだ。で、何と?」

「敵母艦はレセップス、だそうよ。傭兵のアクセルならこの意味が分かるでしょう?」

「敵は砂漠の虎、という訳だな」

「ええ、そうなるわ」

 

 アンドリュー・バルトフェルド。ザフトの中でも指揮官としての能力とMSパイロットとしての能力を持つ超一流の軍人で、ザフトでも知らない者はいないレベルの人物だ。もっとも、最終的にはザフトではなくラクス率いる三隻同盟へと所属する事になり、キラ達と手を組む事になるのだが……今の時点ではただの敵か。

 

「……厳しくなるな」

「そうね」

 

 甲板上から撤退していくザフト軍を見送りながらマリューと話す。

 そもそも俺は原作の流れを知っている分、アンドリュー・バルトフェルドを殺す訳にはいかないのだ。もし殺してしまったらエターナルがこちらの戦力とはならないだろう。あるいは、脱出時に撃沈されてしまうかもしれない。そうなると、俺が最近うっすらと考えている計画に支障が出る可能性がある。そうしない為には、上手い事俺が手加減をして殺さないように撃墜するか、あるいは原作通りにキラに任せるかのどちらかになってしまう。……こういう時に精神コマンドの手加減があると便利なんだが。

 

「まずはキラ君と合流するわ。フラガ少佐もそのうち戻って来るでしょうし」

「ああ、分かった」

 

 軽い浮遊感と共に、アークエンジェルが浮上してキラと合流すべく移動を開始する。

 

 

 

 

 

 夜も明けて朝になり、照りつける太陽の影響で砂漠特有の気温がジリジリと上がっていく。そんな中、アークエンジェルはエネルギーが切れて灰色の装甲に戻ったストライクの隣へと着艦していた。ムウの乗るスカイグラスパーは既にアークエンジェルへと帰還しており、ブリッツは未だにOSが宇宙用のままという事もあり砂漠に降りる事も出来ないのでアークエンジェルの甲板に陣取って艦の周囲に散らばっているレジスタンス、明けの砂漠を警戒している。

 

「アクセル、キラ君。私達は一度彼等と話してみるわ。何もないとは思うけど、一応警戒をお願い」

「はい」

「ああ。気をつけてな」

 

 それだけ言って通信を切り、アークエンジェルからマリューとムウが出て行くのを映像で捉える。それをただじっと待っている明けの砂漠の面々。

 そこから自分達の紹介が始まり、駆け引きが展開される。しかしさすがに交渉ごとに関してはマリューよりも明けの砂漠のリーダーであるサイーブ・アシュマンの方が上で、結局は俺もキラもMSから降りる事になってしまう。

 

「アクセル、ヤマト少尉、降りてきて」

 

 マリューからの通信に従い、乗降用ケーブルでブリッツのコックピットからアークエンジェルの甲板へと降り、そのまま跳ねるように跳び移りながら砂漠へと着地する。

 そんな俺の様子とパイロットスーツのヘルメットを脱いだキラの姿を見て驚く明けの砂漠の面々。

 

「まだガキじゃねぇか」

「と言うか、あっちの黒いののパイロットは本当にナチュラルか?」

「だが、この艦は連合軍のものだろう? ならコーディネーターって事はないだろう」

 

 そんな風にざわめく周りの仲間達に構わず、キラを見て驚愕の表情を浮かべる者が一人いた。我の強そうな目をしている金髪の少女、カガリ・ユラ・アスハだ。いや、この場ではカガリ・ユラか。その少女は拳を握りしめて俺とキラの方へと向かって来る。

 ヘリオポリスで別れた筈のキラがストライクに乗っている事に驚いているのだろう。つかつかと小走りにキラの前まで移動してきて口を開く。

 

「お前……」

 

 その様子にただ事ではないものを感じたのか、ムウが腰の銃へと手を付ける。だがそれを阻止するかのように巨漢の男がムウとマリューの前へと立ち塞がった。

 この女を止めるか? と視線でマリューへと尋ねるが、マリューは黙って首を振ったので成り行きを見守る。とは言っても、そこからは原作と同じ流れで進んだのだが。

 キラに突っ掛かるカガリ。殴ろうとするがその手を受け止められ、キラがカガリの事を思い出して声を掛けるがそれを無視したカガリがキラを殴る。そしてそれを呆然と見ている周囲の者達、といった感じだ。

 結局最終的には明けの砂漠と手を組む事になり、この砂漠にアークエンジェルを置いておくとただの的にしかならないという理由で情報交換も兼ねてアークエンジェルごと明けの砂漠のアジトへと移動する事になった。

 移動可能な道幅がアークエンジェルギリギリという状況で特に大きな事故もなく明けの砂漠のアジトまで辿り着けたのは、ノイマンの操船技術によるものが大きい。

 ……と言うか、なんだかんだで実はノイマンはかなりチート的な操船技術持ちだったりするんだよな。海に出てからだが、アークエンジェルでバレルロールをしながらゴットフリートを撃ったりするし。いや、ゴットフリートに関してはC.I.C.の担当か。

 そんなこんなで、アークエンジェルもなんとか明けの砂漠のアジトに到着し、マリュー、ムウ、ナタル、そして俺の4人はサイーブの案内でアジトの中を進んでいた。

 ちなみに、キラには今のうちにブリッツのOSを地上用に調整して貰っている。ストライクのOSと同じ数値に調整するだけだと以前のように機体の処理速度が俺の反応速度についてこれないでOSが落ちる可能性もあるので、俺の反応速度にある程度対応出来るようにOSの設定をしている為に多少時間が掛かるらしい。……昨夜の出撃時のような傲慢な態度を取るかと思いきや、そんな事もなく大人しくこちらの要望を聞いてくれた。てっきり修正コースに入るかと思っていたのだが。

 サイーブが前を進むアジトの中には、ザフトや連合のマークが入ったコンテナが所狭しと並べられており、それぞれの横流し品であると証明していた。そして歩き続ける事数分、明けの砂漠の指揮所とも言える場所へと辿り着く。

 とは言っても岩をくりぬいたような空間に簡単なコンピュータを数台持ち込み、壁にでかいモニタが据え付けられてあるだけの簡素な部屋だが。部屋の中央には大きめのテーブルがあり、そこにはこの周辺の地図が広げられている。

 

「ここは前線基地だ。皆、家は街にある」

 

 コーヒーをカップに入れて、口に運びながらサイーブが告げる。

 

「まだ、焼かれてなければな」

「街?」

「タッシル、ムーラ、バナディーヤから来ている奴もいる。俺達は、そんな街の有志の一団だ」

 

 マリューの質問に答えるサイーブ。有志の一団と言えば聞こえはいいが、ようは寄せ集めという事だろう。

 そのまま部屋の中央に置かれているテーブルへと移動する。

 

「艦の事、助かりました」

 

 マリューのその言葉にチラリとカガリへと視線を向けるサイーブ。砂漠での話し合いの中、カガリの言葉でこのキャンプに俺達を引き入れたのだからそれなりに発言力はあるのか。もっとも、その発言力の殆どはカガリの持っている金の力だと思われる。いくらカガリの父親でオーブ最大の権力者であるウズミ・ナラ・アスハと面識があるサイーブでも、自分の知人の娘というだけで厚遇はしないだろう。

 

「彼女は?」

 

 そんなサイーブの様子に気が付いたのか、ムウが尋ねる。

 

「俺達の勝利の女神」

「へぇ。……で、名前は?」

 

 無言でムウへと視線を向けるサイーブだが、ムウはそれに軽く肩をすくめる。

 

「女神様じゃ、知らなきゃ悪いだろ」

「カガリ・ユラだ」

「ふむ……勝利の女神、か」

 

 そんなサイーブの様子に、思わず口に出してしまう。

 

「何だ? 何か文句でもあるのか?」

 

 俺のその言葉にどこか含みのあるものを感じたのだろう。カガリが俺へと視線を向けて突っかかってくる。

 

「いや、勝利の女神がいきなりうちのパイロットを殴りつけようとするとは思わなかったんでな。……そうなると、キラは勝利の女神に嫌われているのか?」

「お前には関係ない事だろ! 何も知らない癖に口を出すな!」

 

 ……ふぅ。これは一度ここでへこませておくべきだな。この調子で自分勝手な行動をすると俺達に負担が来る。どうせここから出る時には共に来るんだろうし。

 

「関係あるんだよ。さっきはマリューから止めなくてもいいと言われたから見逃したが、お前の行動でキラが怪我をしたら俺達の戦力は大幅に下がるだろう。お前のせいで、だ。そうなる前にその原因を排除する、というのはいい考えだと思うが……どうだ?」

 

 徐々に殺気を込めてカガリへと叩き付けてやる。周囲にいる者も次第に俺の発する殺気を感じ取ったのか、そろそろと自分の武器へと手を伸ばしている。

 

「うっ……」

 

 カガリはと言えば、当然他の連中のように剥き出しの殺気に耐性がある訳でもないのでピクリとも動く事が出来なくなっていた。

 一触即発の雰囲気だったが、それを止めたのは案の定マリューだ。

 

「アクセル、お願い」

「いいのか? このままだと本当にこの女の為にキラが……と言うか、アークエンジェルがやばい事になる可能性もあるぞ?」

「ふ、ふざ……っ!?」

 

 そんな俺の言葉に再び口を開こうとしたカガリへと視線を向けると、息を呑み込んで黙り込む。

 

「……すまない。カガリの代わりに俺が謝るから許してやってくれないか。カガリも反省している筈だし、あのような行いはもうさせない」

 

 そう声を掛けてきたのは、浅黒い肌にざんばらな髪。どこかインディアンという印象を受ける男だった。

 

「お前は?」

「レドニル・キサカだ。カガリの護衛を任されている」

 

 あぁ、この男がキサカか。ウズミにカガリの護衛……というよりはお守りを頼まれた、ある意味苦労人。

 

「アクセル、お嬢ちゃんを苛めるのはその辺にして殺気を収めろよ」

「……」

 

 ムウからの声を聞き、カガリの方を改めて見る。剥き出しの殺気……という程に殺気を出してはいないが、それでもここまでの殺気を感じたのは初めてなのか微妙に足がガクガクとしている。

 

「ま、いいだろう。だが俺はマリュー達みたいに正規の軍人じゃない。外様の傭兵だ。それだけに軍人では取れない方法を色々知っているし、それを実行するのに躊躇いも無い。……俺の言いたい事は判るな?」

 

 直訳すれば、アークエンジェルに被害を出すような行動をした場合は殺すという事だ。もっとも、俺としても本当にカガリを殺す何て事は考えていない。と言うか、もしカガリを殺してしまってはオーブに寄港も出来なくなってしまうしな。

 

「あ、ああ。分かった。あいつにも後できちんと謝っておく」

 

 青い顔をしながら頷くカガリを見て、殺気を収める。

 

「さて、情報の交換と行こうか」

 

 そう告げる俺を、その場にいた明けの砂漠のメンバーはどこか畏怖を含んだ目で見ていた。そのつもりはなかったが、結果的にはこの交渉のイニシアチブを取る事に成功したらしい。




名前:アクセル・アルマー
LV:35
PP:525
格闘:246
射撃:264
技量:256
防御:253
回避:281
命中:303
SP:422
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:B
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    ???
    ???
    ???
    ???
    ???

撃墜数:262

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