転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1878話

 結局俺達がタルタロスの2階からエントランスに降りてきたのは、影時間もそろそろ終わりになるだろうという時間だった。

 3階に上る階段も見つけて、当然のように順平は3階に行きたいと言ったのだが……真田がそれを許可する筈もない。

 いやまぁ、俺は行きたいなら行っても構わないと思ったんだけどな。

 2階と15階なら出てくるシャドウの強さはかなり違うが、2階と3階ならそう大差はないと思うし。

 寧ろ、俺という戦力がいる今のうちに、それを経験しておいた方がいいと思ったんだが……まぁ、真田だけではなく有里も反対していたので、それ以上は俺も何も口にはしなかった。

 今回の俺は、あくまでもオブザーバー的な立場であって、このパーティがどのように行動するのかを決める立場ではない。

 それは、このパーティだと有里の役目なのだから。

 ……もっとも、順平は未だに有里がリーダーをやってるのに納得している様子はないのだが。

 ただ、俺が今日行われた幾つもの戦闘を見た限り、有里の指示は若干手間取るところはあったが、それでも基本的には的確だったし、有里がリーダーで十分やっていけると思うんだがな。

 

「お疲れ、どうだった?」

 

 エントランスで俺達を迎えたのは、当然のようにゆかりだった。

 桐条は未だにペンテシレアを使って何か調査している様子だ。

 一応桐条はペンテシレアで俺達の様子を窺っていたのだろうが、ゆかりの場合は特にこっちの様子を見るような方法があった訳でもない以上、桐条に聞くしかなかったのだろう。

 で、桐条に聞くよりは俺達から直接聞いた方がいいと思ったのか、それともこっちのバックアップをしている桐条の邪魔をしたくなかったのか。

 その理由は定かではないが、ともあれゆかりが聞いてきた以上、それを答えるのは特に問題ないだろう。

 

「そうだな。……オブラートに包んで言えば、まだ未知の力が眠っているんだろうから、将来性に期待といったところか」

 

 その言葉だけで、ゆかりも俺が何を言いたいのか分かったのだろう。

 順平に視線が向けられる。

 まぁ、真田は前からタルタロスに挑んでいたし、有里がそこに入って行われた戦いでも特に問題はなかった。

 その時と今日で違うのは、追加されているのが順平というだけ。

 

「……何だよ。俺は今日が初めてだったんだから、少しくらいミスってもしょうがないだろ!」

 

 ゆかりの視線が自分に向けられていることに気が付いたのか、順平が不機嫌そうに叫ぶ。

 順平にしてみれば、自分は選ばれた存在であるが故に、シャドウと戦う時も大活躍してヒーローになれると、そう思っていたのだろう。

 だが、実際は違った。

 そして、真田はともかく自分と同い年の有里に比べて、順平は幾つもミスをしてしまった。

 おまけにそのミスを俺を含めた他の3人に注意されてしまい、それが順平には屈辱だったのだろう。

 今日の戦闘を見ても思ったが、順平はどこかこの状況を現実として認識していないように感じられる。

 言うなれば、ゲームや漫画、アニメといった世界に入っていったような……

 いやまぁ、恐らくこの世界も原作があるという意味で決して間違っている訳ではないのだろうが、残念ながら原作があろうとなかろうと、この世界は現実なのは間違いない。

 お前、そのうち死ぬぞ。

 本当ならそう言った方がいいのだろうが、もしそんな風に言えば、恐らく……いや、間違いなく順平は余計に意固地になるだろう。

 だとすれば、ここで言うのではなく、もう少し順平が落ち着いてから言った方がいいだろう。

 

「あのね、ミスしたのをしょうがないって言ってるようだと、後でどうにかなっても知らないわよ? 2階や3階のシャドウはそこまで強くないかもしれないけど、上に行けばもっと強いシャドウが一杯いるんだから。それに……死神とか……」

 

 ゆかりの言葉の最後、小さく呟かれた死神という言葉に、順平は不思議そうな表情を浮かべる。

 

「は? 死神? 何だよ、それ」

「便宜上死神と呼んでるだけだが、そういう強いシャドウが1匹いるんだよ。それも階層とかそういうのは全く無関係に、姿を現す」

「ふーん、アクセルでも勝てない相手か。なら、俺がそいつに勝ったら……」

「無理だ」

 

 世迷い言を口にした順平の言葉を、一刀両断にする。

 実際、死神はフェイトと同じくらいの力を持つ。

 今の順平程度が……いや、順平以外でも、死神と戦って1分保つ奴なんて存在しないだろう。

 それこそ、文字通りの意味で一蹴されて終わりの筈だ。

 

「待てよ! 何でそう言い切れるんだよ! もしかして、自分以外がその死神って奴と戦って勝ったら、アクセルよりも強いって事になって、困るからそう言ってるのかよ!?」

「ちょっと、順平! 馬鹿な事を言わないでよ! あんたは、死神を自分の目で見た事がないからそんな風に言えるのかもしれないけど、あれは普通の人にはどうしようもない相手なんだから!」

 

 エントランスにゆかりの声が響く。

 まぁ、実際にゆかりは死神をその目で見ている。

 それだけに、自分が……少なくても今の自分では絶対に勝てない相手だというのを、骨身に染みているのだろう。

 だが、それは逆に言えば、死神を直接その目で見ているからこそ言える事であり、見ていない者にとっては言葉では理解出来ても、実感として理解出来る訳ではない。

 

「へぇ、死神って強いシャドウがいるのか。なら、そいつを俺が倒せば……」

 

 だからこそ、順平の口からそのような言葉が出たのだろう。

 その言葉に反応したのは、死神についての情報を聞いているという点では同じでも、より長い時間タルタロスで活動しており、俺の実力をよく知っている桐条と真田。そして……

 

「おい、順平。お前、戯れ言をほざくのもその辺にしておけよ?」

 

 空間倉庫から取り出したゲイ・ボルクの穂先を順平の眼前に突きつけた、俺だった。

 

「なっ……な、何だよ!」

「お前が調子に乗りやすい奴だってのは知ってるし、同時にペルソナ使いとして覚醒したから自分が特別な人間だと思っているというのも分かる。今までは、それも一過性のものかと思って強く注意はしなかったが……お前が本当に死神に挑む気なら、最低限俺と数分は戦えるだけの実力は必要になるぞ? 今では、それこそ1秒と俺の前には立っていられない程度の実力しかないお前が、だ」

 

 最初何を言われてるのか分からなかったのか、全く理解出来ていない様子の順平だったが……やがて何を言われたのか理解したのだろう。怒りに顔を赤くする。

 

「ふざけるな! 何が1秒だよ! お前がそんなに強い訳がないだろ!」

「そう思うのか? 本当に? 言っておくが、寮の屋上でやった模擬戦は手加減に手加減を重ねてものなんだがな。あれで俺の本当の力を理解したと思われるのは、ちょっと困るな」

「……いいぜ。じゃあ、アクセルの本気って奴を見せてみろよ! そんなに強いんなら、まさか見せないなんて言わないよな!?」

「この槍を突きつけた時点でその辺りの事情は分かっていてもおかしくはないと思うんだがな。まぁ、いい。幸いこのエントランスは広いし、少し自分の実力がどれくらいなのか、知ってみるか?」

「おい、待てアルマー。何もそんな真似をしなくてもいいだろう」

 

 俺と順平の会話に、桐条が割り込む。

 桐条にとって、順平はようやく見つけた――有里が見つかってからすぐだが――ペルソナ使いだ。

 このような事で自信をへし折られたくはないのだろう。

 その気持ちは分かる。分かるが……

 

「悪いが、その言葉は聞けない。今のままだと、順平はそう遠くない内に自分の実力に驕って死ぬ。いや、死ななくても仲間を危機に陥れたりとか、そんな事態をもたらす筈だ」

 

 実際、順平は自分がリーダーに選ばれなかったのが面白くなかったらしく、有里にも突っかかったりしていた。

 このままだと、そのうち不満を募らせていき……やがて有里の指示を無視してシャドウに向かって突っ走っていくというような真似をしかねない。

 勿論その前に自分の現状に気が付く可能性はあるが、気が付かない可能性もある。

 その辺りを考えると、やはりここで一度徹底的に増長した心をへし折っておいた方がいい。

 それと、どこかゲーム感覚、もしくは小説や漫画の主人公だと思っている辺りも打ち壊しておきたい。

 今は色々と駄目な奴だが、俺の初めての高校生活で出来た友人だ。

 そんな下らない事で死ぬような真似は、出来るだけ見たくない。

 じっと桐条を見ていると、やがて俺の気持ちを理解したのか……それとも通信を聞いていて桐条も順平を危ういと思っていたのか、やがて不承不承ではあるが頷いた。

 

「分かった。ただし、あくまでも行うのは模擬戦だ。命に関わるような怪我はさせないようにな」

「大丈夫ですよ、桐条先輩。アクセルは強いかもしれないけど、結局ペルソナを使えないんだ。それなら俺が負ける筈がない」

 

 あー、うん。その辺りの誤解もあったのか。

 実際、俺がペルソナを使えないのは事実だ。

 それは、俺がこの世界の人間ではないから当然だが……だからって、ペルソナが全てに勝ると思い込むのも、正直どうかと思うけどな。

 

「そうだな。なら1秒で終わってしまったら意味がないか。ハンデだ、順平がペルソナを召喚したら、模擬戦開始といこう」

「いいのかよ? アクセルが強いったって、ペルソナが相手じゃ……」

「全く問題ない。そうだな、1つ例え話をしてやろう。1匹の獅子が、生まれたばかりの子鹿を見つけた。その子鹿が1匹であろうと2匹であろうと、それで獅子に勝てると思うか?」

「……何だよ、俺がその子鹿で、アクセルが獅子だってのかよ?」

「そうだな。今の例え話だとそうだが、実際はそれ以上の力の差があると思っていい。それより、早く始めるぞ。まさか、怖がってる訳じゃないんだろう?」

「はっ、いいぜ! なら……ヘルメス!」

 

 そう告げ、順平が大剣を左手で持ち、右手の召喚器を頭部に向け、ヘルメスを召喚する。

 だが、ヘルメスが召喚された瞬間、既に俺の姿は順平のすぐ前にあり、ゲイ・ボルクの穂先を順平の眼前に突きつけていた。

 

「……へ?」

 

 順平の口から間の抜けた声が上がる。

 当然だろう。5mは離れた場所にいた俺が、気が付けば自分のすぐ前にいて、ゲイ・ボルクを突きつけていたのだから。

 ……そう言えばこの世界にも魔法はあるんだし、その気になれば瞬動とか使えるようになるのか?

 そんな事を思いつつ、口を開く。

 

「さて、どうだ? 俺がその気になっていれば、もう順平の命はなかったんだが」

 

 実際、ゲイ・ボルクの鋭さは、宝具というだけあって並外れた物がある。

 コンクリートとかも容易に斬り裂けるのだから、順平の顔も当然のように斬り裂けるだろう。

 

「待て! 待て待て待て! 今のはちょっとしミスだよ。もう1回だ!」

「……死神にも、今のはなしでもう1回と言って聞いて貰えればいいんだけどな」

「う、うるせえな! 今のは偶然だって! だからとにかくもう1回だ!」

「まぁ、いいけどな」

 

 そう告げ、再びさっきの位置に……順平から5m離れた場所に戻る。

 

「いいか、行くぞ」

「ああ、好きに始めてくれ。今回はさっきとは違った戦い方を見せてやるから」

「っ!? 偶然勝ったからって、いい気になるなよ! ヘルメス!」

 

 そう叫び、再度ヘルメスを召喚した瞬間……俺は気配遮断を発動した。

 

「……え?」

 

 そんな声を発したのは、当然のように順平。

 まぁ、気が付けば俺の姿を認識出来なくなっていたんだから当然だろう。

 声を出したのは順平だけだが、驚いているのは順平以外の面々も同様だ。

 ああ、ゆかりは以前俺が気配遮断を使ったのを見た事があるからか、そこまで驚いていないが。

 サーヴァントでも今の俺を見つける事が出来ないという事は、当然のようにペルソナでも俺の姿を見つける事が出来ないのだろう。

 召喚されたヘルメスも、俺を攻撃する事が出来ない。

 機械的な手段であれば、俺を見つける事は可能なのだが……ああ、けど黄昏の羽根を使っている機械とかはどういう扱いになるんだ?

 そんな風に思いながら、俺はそのまま特に攻撃することもなく、遠回りして順平に近づいていく。

 何故真っ直ぐに進まないのかは……ヘルメスが順平の指示により、自分の周辺を手当たり次第に攻撃しているからだ。

 そうして順平の後ろに到着すると、ゲイ・ボルクの柄の部分で順平の頭を軽く殴る。

 攻撃の動作を取った事により、気配遮断の効果は消えて他の連中にも俺の姿は見る事が出来るようになる。

 順平は、いつの間にそこへ……といった驚愕の視線を俺に向けていた。

 

「さて、どうする? これで俺の2連勝だが」

 

 そう告げる俺の言葉に、順平は目を吊り上げてもう1度と言うのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1389

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