転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1881話

「えっと、じゃあトロ肉しょうゆラーメンを2つ。片方は麺大盛りで。それと餃子とチャーハンを1つ」

 

 注文を終えると、俺は目の前に座っている人物に視線を向ける。

 はがくれに来るのは久しぶりだったのか、それともまた何か別の理由なのかは分からないが、ゆかりは物珍しそうに周囲を見回していた。

 

「トロ肉しょうゆラーメンって、このお店の名物なんでしょ?」

「ああ。コラーゲンたっぷりで美容にもいいらしい。もっとも、そういう関係がなくても美味いけどな」

 

 薬膳料理というのは、効能を重視している為に味という点は不味い……とまではいかなくても、いまいちというのが多い。

 だが、トロ肉しょうゆラーメンは効果はしっかりとあり、それでいながら味も美味い。

 トロ肉しょうゆラーメンを薬膳料理と呼ぶのは、ちょっと厳しいが。

 

「ふーん。そう言って桐条先輩もこの店に連れてきたの?」

「別にそんな訳じゃないけどな。ただ……そう、成り行きだな。向こうにとっては、俺の事を少しでも理解したかったとか、そう思っていたのかもしれないけど」

 

 そう告げつも、ゆかりは何故か小さく溜息を吐く。

 俺が桐条と一緒にこのはがくれに来たと知ったゆかりは、何故か機嫌が悪くなり……結果として、俺がゆかりをここに連れてくる事になったのだ。

 いやまぁ、はがくれのラーメンは美味いからいいんだけどな。

 

「それにしても、相変わらずよく食べるわね」

「あー、俺の場合は幾ら食べても太らないし」

「……殺すわ」

 

 一瞬、本当に一瞬だったが、間違いなくゆかりの身体から殺気が漏れていた。

 どうやら今の一言はゆかりにとっても許せる事ではなかったのだろう。

 もっとも、ゆかりも普段はタルタロスで……それも俺のフォローはあれど、基本的には1人で15階のシャドウと戦っているのだ。

 当然のように、それだけ運動していれば、ゆかりも太るようなことはない。

 それどころか、普段よりも多く食べないと痩せていってしまう。

 ……だが、それでもゆかりにとっては、俺が食っても太らないというのは、面白くなく……許容出来ない事なのだろう。

 その辺は女にとって譲れない場所といったところか。

 

「あー、ほら落ち着けって。取りあえず今日はタルタロスに行って身体を動かせば、ここで食べた分は簡単に消費出来るだろ」

 

 その言葉に、ようやくゆかりも落ち着いた様子を見せる。

 はがくれは偉大……って事にでもしておくか。

 そんな風に思っていると、やがて最初にラーメンが運ばれてくる。

 

「へぇ、これが……美味しそうね」

「ん? もしかして、ゆかりもはがくれに来るのは初めてなのか?」

「当然でしょ。そもそも、女の子がラーメン屋に来るとかあまりないし」

「……そうでもないと思うけどな」

 

 ラーメンのスープをレンゲで飲みながら、周囲を見回す。

 店はそこまで広い訳ではないが、それでも客の数はそれなりに入っている。

 そして今の客の中には、女の客も何人かいた。

 それに今まで結構この店を利用しているが、その中で女の客を見た事も多い。

 

「私は、ちょっと来にくかったのよ」

 

 俺の視線を追い、そこに女……女子大生くらいか? そのくらいの年齢の女が2人、俺達と同じトロ肉しょうゆラーメンを食べているのを見ながら、ゆかりがそう言ってくる。

 まぁ、個人的にラーメン屋に行きたくないという意見を否定はしないし、そういうラーメン屋があるというのも、理解はしている。

 だからそれ以上は言わず、ラーメンを食べる。

 そもそも、ラーメンはゆっくり食べていれば、麺がスープを吸ってしまう。

 勿論すぐにそうなる訳じゃないが、それでも食べるのは早い方がいい。

 ……食事はゆっくりと食べた方がいいんだけどな。

 そんな風に思いながら、長時間煮込まれて柔らかくなっている角煮をゆっくりと味わう。

 殆ど顎に力を入れなくても、解けていく肉の線維がえもいわれぬ快感をもたらしてくれる。

 麺もしっかりと歯応えがあり、スープに絡む。

 うん、美味い。

 ゆかりの方に視線を向けると、ラーメンの美味さに驚きの表情を浮かべているゆかりの姿があった。

 何気にラーメンはカロリーの高い食べ物で、今回は更にそこに豚の角煮も乗っていたりする。

 だが、以前から言ってるように、このくらいのカロリーであれば、ゆかりはタルタロスで容易に消費出来るだろう。

 幾ら食べても太らないという俺の体質はゆかりを始めとした他の者達にしてみれば羨ましいかもしれないが、ゆかりの状況も羨ましがられるには十分だろう。

 もっとも、だからって現在のゆかりの状況と代わるか? と言われても、それを許容する者がそうそういるとは思えないのだが。

 でも、ダイエットに対する女の貪欲さを思えば、代わって欲しいという奴が出てこないとも限らない。

 ……まぁ、命懸けの戦闘をするくらいであれば、それこそ走ったりすればいいだけだと思うんだが。

 

「どうやら口に合ったみたいだな」

「ええ、美味しいわ」

 

 少しだけ悔しそうにしているのは、今までこのラーメンの美味さを知る事が出来なかったからか。

 

「お待ちどう」

 

 店員がそう告げ、俺の前にチャーハンと餃子を置く。

 その際に俺を見た視線の中に嫉妬が混じっていたのは……まぁ、以前桐条を連れてきて、今日はゆかりを連れてきたんだから、分からないでもない。

 何だかんだで俺の姿は目立つし、はがくれをかなり利用している。

 当然店員が俺の事を覚えていてもおかしくはない。

 もっとも、店にしてみれば大量の注文をする俺は良客だと思うんだが。

 

「へぇ、いい匂いね」

 

 餃子とチャーハンの匂いに、ゆかりは羨ましそうに告げる。

 ゆかりにしてみれば、食べたい。食べてみたいが……同時にカロリーも気になるといったところか。

 

「取りあえずちょっと食べてみるか?」

「う……ちょ、ちょっとだけよ?」

 

 料理の香りには勝てなかったのか、ゆかりはそう言って餃子に箸を伸ばす。

 出来合の皮を使っている訳ではなく、餃子の皮から手作りされている餃子は、外側はカリッとしており、皮はもっちりとしている。

 中の具もしっかりと練られており、餃子のタレにこれ以上ない程に合った。

 うん、やっぱりはがくれの餃子は美味いな。

 餃子の味に満足し、次のチャーハン。

 チャーシューの端の部分やメンマのみじん切り、長ネギ、椎茸といった具材の、シンプルなチャーハン。

 だが、シンプルなだけに味に誤魔化しがきかないのは間違いのない事実だった。

 白米が卵でコーティングされているその技術は、それこそその辺の本格中華料理店の料理人ですら難しい代物だった。

 

「美味しい……」

 

 餃子に続き、チャーハンも食べたゆかりは、その味に驚く。

 

「だろ? この店が流行ってる理由は、これで分かったと思うんだが?」

「そうね。完敗だわ。他にも、はがくれ丼とかいう隠しメニューがあるんでしょ?」

「……この店に来た事はなかったけど、よく知ってるな」

「そりゃそうよ。来た事はなかったけど、この店は有名だし……それにはがくれ丼って隠しメニューを店長に提案したのって、うちの学生なのよ?」

「本当か、それ」

 

 はがくれ丼ってのは、ラーメンに使っているチャーシューがメインとなっている丼だ。

 それだけを聞けば、確かに簡単な料理に聞こえるだろう。

 だが、実際には単純な料理ではなく、細かいところに色々と手が入れられている。

 勿論その全てを提案した月光館学園の生徒が決めた訳ではなく、この店の店長や料理人が出されたアイディアに工夫を加えていって今のはがくれ丼が出来上がったのは間違いないだろうが……それでもやはり、一介の生徒が、と驚く場所ではあった。

 あ、でも中学生で屋台とはいえ店を経営していた四葉の件を考えると、そこまでおかしな話じゃないのか?

 

「ええ。何でもグルメキングって呼ばれているらしいわ。ここ以外にも色々と美味しいお店を知ってるとか」

「へぇ、今度話してみたいな」

「あー……それはちょっと止めた方がいいかも」

 

 俺の言葉に、何故かそう告げてくるゆかり。

 今までは結構問題ない感じだったのに、何でだ?

 そんな俺の疑問を感じたのか、ゆかりは少し言いにくそうにしながら口を開く。

 

「そのグルメキングって呼ばれてる人、美味しいお店の件に関しては信頼出来るんだけど、それ以外の面では色々と問題を起こしたりしてるのよ。それこそ誰かから金を騙し取ったとか、そういう噂も聞くわ。勿論それが本当の事かどうかは分からないけど。それに、学校の方でも特に事情を聞いたり処分をしたりはしてないみたいだし」

「……なるほど」

 

 何だか、色々と特殊な奴だな。

 美味い料理店に詳しいというのは、俺にとっても色々と興味深いところがある。

 だが……だからといって、金を騙し取られるような真似は、されたくない。

 もっとも、今の俺は実際はともかく、住んでいる場所が場所だけに、とてもではないが金持ちとは見られないだろうが。

 取りあえずグルメキングについての話は一旦そこで終わる。

 明日にでも友近辺りに聞いて、ちょっと話し掛けてみようかなと心に留めておくが、それ以上は口にしない。

 そうしてお互いに世間話をしながら、ラーメンを食べ、チャーハンと餃子をゆかりと一緒に食べていく。

 もっとも、8割は俺が食っているので、一緒に食べていくという言葉はあまり当てにならないが。

 店員が持ってきた取り皿に盛られたチャーハンが少なくなっていくのを見て、ゆかりが少しだけ残念そうな表情を浮かべていた。

 そうしてお互いに会話をしていると……不意に、ゆかりが深刻そうな表情で口を開く。

 

「それでアクセル。順平の事はどうするの?」

 

 ああ、なるほど。急に深刻そうな表情をしたと思ったら、それが理由だったのか。

 まぁ、順平の一件は、ゆかりにとっても他人事ではないしな。

 ゆかりは俺とパーティを組んではいるが、それでも順平とは去年から同じクラスで、それなりに話す仲だったらしい。

 だからこそ、俺と順平が喧嘩をしている今の状況が面白くないのだろう。

 もっとも、この件で俺がすべき事は既に終わっている。

 後は、順平がどういう結論を出すかによるだろう。

 正直なところ、俺としては順平が今のまま変わらないのであれば影時間にタルタロスに挑むのは止めた方がいいと、そこまで思っている。

 でなければ、恐らく……いや、恐らくなどという曖昧な表現ではなく、確実に桐条達を危機に陥れるだろう。

 今まで多くの戦場を潜り抜け、何人、何十人、何百人、何千人……それどころか、何万人といった兵士を見てきた俺の経験から、それはほぼ確定事項と言ってもよかった。

 

「どうにもしない、というのが正直なところだな。出来れば順平には自分でその辺りをきちんと把握して、直して欲しいとは思ってるんだが……」

 

 そう思ってはいるのだが、問題は順平が本当にそれを受け入れる事が出来るかどうかといったところか。

 順平があくまでも自分が主役で、特別である……そんな思いを殺す事が出来ないのであれば……最悪順平本人を殺さないようにする為に、手足の1本でも奪う必要が出てくるかもしれない。

 だが、これまで仲良くしてきた身としては、出来ればそんな真似はしたくないというのが正直なところだ。

 また、友人云々の私情を抜きにしても、そのような真似をすれば間違いなく桐条達との間に決定的な亀裂が入るのは確定だ。

 現在の俺達は、桐条グループにかなり世話になっている。

 俺の戸籍しかり、月光館学園への転入しかり、タルタロスで見つけたマジックアイテムの解析しかり、ゆかりの使っている矢の補充しかり。

 その辺りの事情を考えると、やはり桐条グループと手を切るというのは可能な限り取りたくない選択肢なのだ。

 勿論向こうでも、ゆかりという俺が知っている限り最強のペルソナ使いや、何より俺というイレギュラーな存在を逃したくないというのは、理解していると思うが。

 特に俺は、向こうが知らない技術を幾つも持っている。

 ネギま世界の魔法……は、向こうでも多少は研究が進んでいる可能性もあるが、習得するまでの難易度が高すぎるからな。

 魔法球でもあれば、多少は何とかなるかもしれないが……ここにそんなのがある筈もないしな。

 

「とにかく、アクセルと順平が喧嘩して、それが致命的な被害になる可能性もあるんでしょ? そうならないように、少し気をつけた方がいいんじゃないの?」

「そうかもしれないが、正直なところ今の順平を連れてタルタロスに挑みたいとは思わないんだよな。……順平を連れて死神に遭遇したらどうなると思う? 俺は順平が自分なら何とかなるなんて理由もなく楽観的になって、死神に挑んでいく光景が目に浮かぶが」

「それは……」

 

 ゆかりもそれは同じだったのか、俺の言葉に反論出来ず、黙り込むのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1389

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