転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1886話

 瞬動を使っての移動は、この世界の人間ではそう簡単に追いつく事は出来ない。

 それは、桐条が乗っているバイクでも同様だ。

 特にモノレールの線路の脇は砂利道となっている為に、バイクでも思うような速度は出せないだろう。

 ましてや……その瞬動の上に精神コマンドの加速を使っているのだから、桐条との差は開くばかりだった。

 後ろからは何やら桐条が叫んでいる声が聞こえてこないでもないのだが、それは聞き流すとする。

 とにかく、今は桐条に構っているような余裕はなく、ポートアイランド駅に突っ込もうとしているモノレールを何とかするのが最優先だったからだ。

 そんな訳で線路に向かって真っ直ぐに走っていると、やがて視線の先にこの影時間の中でも動いているモノレールの姿が見えてくる。

 ちっ、てっきり1両かと思ってたが……10、いや11両編成か?

 これから俺がやろうとしている事は、普通に考えれば常識外れと呼ぶに相応しい行為だ。

 だが、それをやろうと考えていたのは、あくまでもモノレールが1両だと思い込んでいた為だ。

 11両編成となると、いっそ別の方法を考えた方がいいか?

 そう思わないでもなかったが、ここからどうにかするにはそれこそニーズヘッグを出すといった手段が手っ取り早くなってしまう。

 もしくはスライムを使うか?

 どっちも今はまだ秘密にしておきたい代物だけに、止めておいた方がいい。

 どうするべきかを考えている間に、俺とモノレールとの距離は次第に縮まっていく。

 ちっ、これ以上考えても意味はないか。

 とにかく今は、モノレールを停める方が先だ。

 一切速度を緩める事がないまま、モノレールはポートアイランド駅に向かっているのだから。

 ……そうだな。今更、ちょっと俺の特異なところを見ても、桐条ならそれも影時間をどうにかする為の力だと、そう判断してくれるだろう。

 そもそも、これから行う事を見た上で俺を敵に回す気が起きたら、それはそれで凄いと思うが。

 影の転移ゲートを持っているという時点で、俺と敵対したらただで済むはずはないというのは、明らかなのだから。

 ともあれ、その辺りの事は吹っ切って……気にしない事にする。

 そう判断するのと、こっちに向かって走ってくるモノレールと俺が接触するのは、殆ど同時だった。

 俺が何をするのか……それは、特に難しい事ではない。

 単純に、俺の力でモノレールを……強引に停めるのみっ!

 

「うおおおおおおおおっ!」

 

 モノレールの先頭車両に触れ、そのまま踏ん張る。

 当然モノレール……それも11両編成と俺という個人での正面からのぶつかり合いだ。

 普通であれば、それこそ一瞬の拮抗もなしに俺が吹き飛ばされて終わりだろう。

 

「アルマーッ!」

 

 実際、背後からは桐条の血を吐くような叫びとでも表現するのが相応しい声が聞こえてきてるし。

 だが……その声は、次の瞬間途切れる。

 まぁ、分からないでもない。

 モノレールに正面からぶつかっていった俺が、まさか吹き飛ばされず……それどころか、モノレールに押されてはいるが、それでも平気な顔をしているのだから。

 いや、今はモノレールの先頭車両に触れているんだから、顔は見えないか。

 モノレールの冷たい感触に若干の違和感を抱きつつ、俺は足に力を込める。

 モノレールが走る為の線路がかなり壊されているのが感触で理解出来るが、それは仕方がない。

 影時間に壊れた物とかは、影時間が終わるとそれに相応しい形でどうにかなるって話を聞いた覚えがあるから……その辺は桐条グループがどうにかしてくれるだろう。

 そもそも、こうなっている原因は有里達がこのモノレールの暴走を停められないのが原因なのだから。

 少しずつ、少しずつ……俺が触れている先頭車両を破壊しないように力を込めていく。

 そうして力を込めていくに従って、モノレールの速度も次第に落ちてくる。

 

「ぬう……」

 

 モノレールがぶつかってきた威力自体はそこまで強力ではないのだが、その大きさが厄介な代物だった。

 だが、それでも俺というブレーキがいればいずれは速度が落ちていくのは当然であり、モノレールの速度が急速に落ちていく。

 

「アルマー、おい、アルマー!」

 

 離れた場所から桐条の声が聞こえてくるが、生憎と今はそれに答える余裕はない。

 体力的にという意味じゃなくて、身体全体でモノレールに引っ付いている現在の状況的な意味で。

 そのまま時間が経っていき、数十秒……もしかしたら1分以上? 俺がモノレールの線路を削りながら進み続け……やがて、その動きが停まる。

 モノレールの方に被害は出なかったが、線路の方にはかなりの被害が出てしまった。

 これは寧ろ、普通にモノレールが壊れるよりも被害は大きいんじゃないか?

 モノレールだけであれば、それこそ車両を交換すればいいだけだ。

 だが、線路の方はこの駅を使っている全ての者に被害を与える事になる。

 ……まぁ、被害額という意味では、モノレールの方が大きかったんだろうが。

 それにモノレールには真田達も乗ってたって事だし、そういう意味では寧ろ助かった筈だ……と、思いたい。

 

「ああ、問題ない。取りあえずモノレールを停める事は出来たが、線路にかなりの被害が……ちっ!」

 

 桐条に説明している途中で気が付く。

 まだ、中では戦いが行われているのだと。

 モノレールの中から発せられている殺気や闘気といった代物は、十分にここからでも関知する事が出来た。

 つまり、桐条が言っていたイレギュラーシャドウはまだ健在といったところだろう。

 

「アルマー?」

「俺はこれからこの中に行くが、桐条はどうする? どうやら中ではまだ戦いが続いているらしい」

「何!? ……ペルソナ!」

 

 桐条が慌てたように己のペルソナ……ペンテシレアを召喚する。

 両手に剣を持った人型のペルソナは、なるほどサポート向けという風には見えない。

 思い切り戦闘向けといった印象が強い。

 寧ろ明確な武器を持っていない分だけ、ゆかりのイオの方がサポート向けに見える可能性が高いだろう。

 ……勿論、イオは巨大な牛の頭蓋骨という存在があるので、質量的な面ではペンテシレアよりも上なのだが。

 ともあれ、ペンテシレアはモノレールの方を向き……数秒と経たず、桐条の眉が顰められる。

 

「間違いない、まだ戦闘中だ。しかも伊織が戦闘不能になっている」

 

 何? と、口に出そうとしたが、現在の順平の状況を考えれば、寧ろそれは当然なのだろう。

 恐らくだが、有里や真田の言葉も聞く様子がなく、自分だけでどうにかなると思い、敵に向かって突っ込んでいった可能性が高い。

 

「頼む、アルマー。今の明彦達だけでは、このシャドウを相手にするのは難しい。助けてやってくれ」

「ああ、最初からそのつもりだよ」

「……すまん」

 

 小さく謝ってくる桐条。

 その声を聞きながら、俺は早速行動に出る。

 桐条をその場に残し、まず1両目のモノレールに向かったのだ。

 そうして扉を強引に開けようとするものの、当然のようにそう簡単にはいかない。

 そもそもの話、車体をシャドウによって乗っ取られて、外に出るに出られないって話だったのを思い出す。

 

「けどな!」

 

 開かない扉に、強引に指を突っ込む。

 扉の金属部分が熱せられた飴細工の如く、あっさりと俺の指によって曲げられる。

 車体がシャドウによって乗っ取られたって話だったが、結局この程度か。

 まぁ、金属を素手で千切り取るような握力がなければ出来ない事である以上、こうやって脱出しろと有里に言っても無駄だっただろうが。

 いや、もしかしたら生身では無理でも、ペルソナを使っての移動だったら可能だったか? それとも、車体を壊す事に忌避感があったのか……

 ともあれ、その辺りの事情は俺には関係がない事だ。

 メリメリといった音を立てながら、モノレールの扉が強引に開いていく。

 若干の抵抗はあっても、特に苦労するということはなく人が1人入れる隙間を作ると、そのまま中に入り……

 

「どうやら、こうして来て正解だったみたいだな」

 

 丁度俺が入った車両では、激しい戦いが繰り広げられているところだった。

 有里と真田がそれぞれペルソナを召喚し、シャドウと戦っている。

 ただし、そのシャドウは俺が今まで戦ってきたシャドウとは大きく違っていた。

 それこそ、どこか死神に等しい雰囲気を――圧倒的に存在感では劣っているが――感じられる。

 姿としては、女型のシャドウと表現するべきか。

 スカートのような物を履いており、身体の曲線も女らしい丸みを帯びたものとなってる。

 髪の毛……と表現してもいいのだろう、まるで帯か何かのようなそれは、右が白で左が黒と完全に色が分かれている。ちなみにスカートから伸びている足は、右が黒で左が白と、髪の毛とは反対になっていた。

 そしてシャドウらしく目の周りだけ覆っているような仮面を付けており……今は、モノレールの車内に座り込んでいた。

 普通の人間よりも圧倒的に巨大なその姿は、モノレールの車内に入りきらなかったのだろう。

 ……馬鹿? と一瞬思ったが、それでも有里や真田達がまだ倒せておらず、少し離れた場所では順平が意識を失って倒れているのを見れば、強敵なのは間違いないのだろう。

 ともあれ、一瞬でその辺りを見て取った俺は、そのままモノレールの中に入り込み、ひとまず髪の毛で襲われている有里と真田の前に立ちはだかって、ゲイ・ボルクを振るう。

 タルタロス程の広さがある訳ではない為か、思い切りゲイ・ボルクを振るうような真似は出来ないが……それでも宝具である以上、シャドウの髪の毛程度を斬り払うのは容易な事だった。

 

「アルマー!?」

「え? 何で!?」

 

 いきなり俺が姿を現したからだろう。2人は揃って驚愕の表情を浮かべ、こちらに視線を向けてくる。

 

「お前達が危ないって、桐条がタルタロスまで俺達を呼びに来たんだよ。そうしたら案の定……ちっ、少しは状況説明くらいさせろよな!」

 

 俺が話しているのを隙と見て取ったのか、シャドウは氷柱を放ってくる。

 ブフで生み出されただろうその氷柱は、当然のようにゲイ・ボルクによってあっさりと砕かれる。

 ……その砕かれた破片でモノレールの窓も砕けたりしたが、それは俺の知った事ではない。

 

「とにかく、こいつを黙らせる。この狭さだとそう多くは戦えないから、ここは俺に任せろ。……俺に任せて先に行け! とかいったら面白いかもしれないんだがな」

「……何だ、それは? 先に行けも何も、もうモノレールが停まっている以上、こいつを倒せば終わりだろう」

 

 そうだよな。ボクシングやら身体を鍛えるのに熱中している真田に、フラグとか言っても通じる筈がないか。

 折角フラグを立てようとしたのに、あっさりと潰された事を残念に思いつつ、俺はシャドウに向き直る。

 

「とにかく、お前達はそこで待ってろ。かなりの怪我をしてるみたいだしな」

 

 ブフをあっさりと弾かれた事から、俺を警戒しているのだろう。シャドウは先程のように攻撃をしてくるような事をせず、髪の毛を空中で揺らしながら俺の隙を窺っていた。

 そんなシャドウを前に、俺は有里と真田に下がっているように言う。

 実際、有里も真田もこのシャドウによってかなりのダメージを受けているのが見える。

 顔や身体から、何ヶ所も血を流しているのがその証拠だろう。

 ……気絶している順平を庇いながらの戦いだった、というのも多くの傷を負った理由なのだろうが。

 

「怪我は、この戦いが終わったらゆかりのイオで治して貰え」

「いや、大丈夫」

 

 そう告げる有里。

 オルフェウスも回復魔法のディアを覚えたのか?

 そう思った俺だったが……

 

「ピクシー、ディア」

 

 そんな声が聞こえ、俺はシャドウに注意しながらも一瞬だけ後ろを見る。

 そんな俺の視界に入ってきたのは、かなり小さい……10cmとかそのくらいの身長しかなく、背中にはトンボのような羽根を持っているペルソナだった。

 そのペルソナが、有里や真田、順平に向かって見覚えのある光を放つと、1人ずつではあったが、傷が癒えていく。

 ……何だ?

 シャドウを警戒しながら、改めて後ろで起こっている光景を見る。

 行われてる事は、そう難しい事ではない。

 ペルソナを召喚して、回復魔法を使っているだけにすぎない。

 だが……俺が知ってる限り、有里のペルソナはオルフェウスという、竪琴を持った男型のペルソナだった筈だ。

 どう間違っても、あのような……ピクシーという名前通りの可愛らしいペルソナではなかった筈だ。

 ペルソナは、変える事が出来るのか?

 そんな風に思っていると、やがてシャドウが我慢出来なくなったのか、再びこっちに向かって髪を伸ばしてくる。

 

「邪魔だよ!」

 

 瞬動を使って一気に相手の懐に入り込み、ゲイ・ボルクを突き出す。

 別に宝具を発動した訳でもない一撃。

 だが、その一撃は……いとも容易くシャドウのマスク諸共に頭部を貫き、やがてタルタロスで遭遇したシャドウのように消えていくのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1389

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