転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1888話

 モノレールの暴走事件の2日後の月曜日、俺はゆかりと共に普通に学校に通学していた。

 いつも通りに他の知り合いと軽く言葉を交わしながら、教室に入ったのだが……珍しい事に、既にそこには順平の姿があった。

 友近と何かを話していた順平は、俺達が教室に入ってきたのを確認すると、すぐに気まずそうな様子で視線を逸らす。

 順平も一昨日の件は色々と気にしているのだろう。

 

「ふん」

 

 そんな順平の様子を見て、ゆかりは不機嫌そうに鼻を鳴らす。

 当然だろう。ゆかりは一昨日の一件がどのようにして起こったのか、しっかりと理解している。

 有里がリーダーになっている事に対して嫉妬し、それが気にくわないからといって暴走。結果としてシャドウの群れに突っ込んでいき、最終的にはあのイレギュラーシャドウとの戦いとなり……自分が先走って気絶して意識を失い、有里と真田の2人を危険な目に……それこそ死んでもおかしくない程に危険な目に遭わせたのだから。

 その理由が、ゆかりから見れば下らない嫉妬だけに順平に対する好感度は地に落ちたといったところか。

 順平とゆかりは、前はそれなりに仲がよかったのだが……順平がペルソナ使いとして覚醒してからは、2人の仲はかなり悪くなっているな。

 まぁ、その理由は順平にあるのは間違いないのだが。

 自分がペルソナ使いとして選ばれた存在だと認識し、優越感を抱いている順平だ。

 ましてや、タルタロスに挑むのもどこかゲーム感覚があり、その辺りの状況を考えると、色々な意味で危険なのは間違いない。

 本人が一昨日の件で反省してくれればいいんだが……さて、どうなんだろうな。

 ただ、正直なところ順平があの状況のままで全く態度を変えないというのであれば、こっちでも色々と考えなければいけなくなる。

 桐条達とは協力関係を結んでいるが、それでも……いや、だからこそ順平の暴走行為により、危険な目に遭わせるのは出来るだけ避けたい。

 もし順平が今のまま変わらないのだというのであれば、いっそ順平を影時間に関わらせなくした方がいいかもしれないな。

 勿論ペルソナ使いとして覚醒している以上、影時間に関わるなと下手に言っても、本人は納得しないだろう。

 それどころか、自分の力を俺達に証明する……いや、見せつける為にも、影時間に関わってくる筈だ。

 そのような事にならないようにする為には、それこそ順平に戦闘への恐怖を感じさせる程に痛めつけるか……もしくは、鵬法璽を使ってもいい。

 個人的にはあまりやりたくない事ではあるのだが、順平のこれからを考えれば、そうした方がいいのは確実だった。

 そんな風に考えつつ、席に着き……ゆかりと話していると、やがて鳥海が姿を現して、朝のHRが始まる。

 その日の授業は、特に何かおかしな事もないままにすぎていく。

 授業、休み時間、昼休み、午後の授業……そのような時間が経過し、やがて帰りのHRとなる。

 鳥海が面倒そうに連絡事項を口にし、そしてHRが終わろうとした頃……不意に教室の中に放送の声が響く。

 

『2-Fの、アクセル・アルマー、有里湊、伊織順平、岳羽ゆかりの4人は、生徒会室に来て下さい。繰り返します……』

 

 そんな放送の声が。

 生徒会室と言えば、当然のようにそれで真っ先に思いつくのは桐条だろう。

 そして俺と桐条は色々と噂になっているのだから、好奇の視線が向けられるのは当然だった。

 それでも、俺の名前だけ呼ばれなかったのは、運が良かったというべきか。

 もしこれで俺の名前だけが呼ばれていれば……色々な意味で面倒な事になっていただろう。

 もっとも、呼ばれた名前では俺の名前が最初に来ていたが……これは単純に、五十音順だから、俺の名前が最初に来ただけだろう。……多分。

 

「あら、どうやら呼ばれているみたいね。呼ばれた4人は生徒会室に行くのを忘れないようにね。……じゃあ、これで終わります」

 

 鳥海の言葉と共に帰りのHRは終わり、生徒達はそれぞれ帰っていく。

 

「アクセル、行きましょ」

「ん? ああ」

 

 ゆかりの言葉に頷き、俺も席を立つ。

 有里と順平達は……と思ったが、向こうも立ち上がろうとして、友近達に話し掛けられているのが見える。

 一瞬一緒に行くか? と思わないでもなかったが、もしそのような真似をしていれば間違いなく途中でギスギスとした空気に包まれる事になる。

 それはちょっとごめんだったし、俺だけではなく向こうもそれは同様だろう。

 そんな訳で、結局俺とゆかりは有里達に声を掛けることもないまま、生徒会室に向かう。

 

「何の用件だと思う?」

「……そうだな、普通に考えれば一昨日の件だろ」

 

 俺達4人が呼ばれたのだから、当然のように影時間だったりシャドウに関係する事に決まっている筈だった。

 まさか、俺達を呼んで生徒会の仕事を手伝って欲しいとか言う訳もないだろうし。

 ……いや、実は有り得たりするのか?

 ふとそんな思いを抱かないでもなかったが、すぐに首を振ってそれを否定する。

 元々生徒会には仕事の出来る面子が揃っている筈だ。

 であれば、わざわざ俺達を呼ぶような理由があるとは思えない。

 まぁ、俺は何だかんだと成績がいいし、ゆかりと有里も平均以上の学力は持っている。

 だが、順平の学力は決して高いとは言わない。

 それどころか、友近から以前聞いた話が事実であれば、毎回のようにテストでは赤点の前後を行ったり来たりしている筈だった。

 勿論学校の成績と生徒会の仕事が必ずしも比例する訳ではないのだが。

 そんな事を考えながら俺とゆかりは歩き続け、やがて生徒会室前に到着する。

 

「さて、じゃあいい?」

「ああ」

 

 俺が頷くと、ゆかりが小さく深呼吸してから、生徒会室の扉をノックする。

 随分と緊張しているようだが、もしかしてゆかりは生徒会室に来た事はないのか?

 ……いや、普通ならそう来るような場所じゃないか。

 寧ろ、殆どの生徒は学校生活の中で1度も生徒会室の中に入るような事はないだろう。

 そう考えると、こうして俺達が呼ばれるのは色々と特別なんだろうな。

 

「ああ、よく来てくれた。……うん? 他の2人はどうした?」

「あの2人なら、ちょっと友達に話し掛けられたりしてたので、もう少し時間が掛かると思います」

「む、そうか。……しょうがないな。友人達との関係も重要だ」

 

 ノックの音と共に扉が開き、桐条が姿を現すと、ゆかりと短く言葉を交わしてから、中に入るように誘う。

 俺とゆかりはその言葉に従って生徒会室の中に入り……表情が嫌そうな顔に変わりそうになるのを、何とか我慢する。

 何故なら、生徒会室の中には俺が生理的に受け付けない相手……幾月の姿があったからだ。

 他にも真田の姿があり、握力を鍛える……ハンドグリップだったか? それを手に、この短い時間でも身体を鍛えていた。

 

「やぁ、わざわざ来て貰って悪かったね。ただ、ちょっと重要なことが判明したから、君達にも知らせておこうと思ったんだ。……他の2人はどうしたのかな?」

「あの2人は友達に話し掛けられていたので、少し遅れます」

 

 ゆかりが桐条にしたのと同じ説明をすると、幾月は納得したように頷く。

 

「そうか。学校生活では友人達との関係も色々と重要だからね。君達は……その辺り、どうなのかな?」

「それなりに友達はいる方だと思いますよ?」

「ふむ。なるほど。では……」

 

 と、俺に視線を向けた幾月だったが、俺が何かを言うよりも前に再び扉がノックされた。

 そうして中に入ってきたのは、当然のように有里と順平の2人。

 有里はともかく、順平の方は俺の方を見るも、視線を逸らす。

 

「……さて、関係者が全員揃ったところで、早速本題に入ろうか。出来れば荒垣もいてくれればよかったのだがな」

 

 一瞬だけ残念そうな表情を浮かべる桐条。

 以前は自分達と行動を共にしていただけに、この場にいないというのが気になるのだろう。

 だが、すぐに気分を切り替えるように小さく首を振り、口を開く。

 

「ああ、いや。本題の前にこれは言っておいた方がいいか。モノレールの件は、問題なく片付いた。多少の被害はあったが……」

「そうなんですか? でも、学校でもそれなりに話題になってましたよ?」

 

 桐条の言葉に、ゆかりがそう返す。

 そう言えば何人かがモノレールが夜中に勝手に移動していたといった話をしていたな。

 ただ、当然その理由はシャドウとかそういうのではなく、鉄道会社の方で何かミスをしたといった形になっていたが。

 この辺、影時間の凄いところだと言えるだろう。

 影時間中に何かが起きても、それは自然と納得出来てしまうという、奇妙な特性。

 もっとも、当然それだけだと色々と問題が起きるのも事実なので、その辺は桐条グループの方で頑張っているのだろうが。

 

「ああ、分かっている。だが、特に大きな騒動といったものはないままで終わらせられたのは、誰にとっても幸運だった。……ともあれ、その辺りは気にしなくてもいいとだけ言っておく。それで、本題だ。先月……有里が入寮した日に、イレギュラーシャドウと戦ったというのは覚えているな?」

 

 そう聞いてくる桐条だが、あれだけの騒動をそう簡単に忘れられる筈もない。

 順平もその辺りの事情は聞いているのか、特に口を開かずに黙って桐条の言葉を聞いている。

 

「先月イレギュラーシャドウが襲ってきた日、そして一昨日。それは、どちらも満月だった。私もアルマーに言われるまでは気が付かなかったがな」

「……それはもしかして、毎月満月になるとイレギュラーシャドウが襲ってくるって事か?」

 

 真田の言葉に、桐条は頷きを返す。

 

「勿論、偶然2ヶ月連続で満月に襲ってきた……という可能性も、否定は出来ない。だが、もしかしたら……本当にもしかしたら、と。そうは思わないか?」

 

 満月か。そう言えば一昨日その辺りをちょっと話したか?

 もっとも、桐条が言ってる通り、本当に偶然だという可能性もないではないのだ。

 ……次の満月にもイレギュラーシャドウが現れれば、それは半ば決まりって事でいいのかもしれいないが。

 2度ある事は3度あるなのか、それとも3度目の正直なのか……その辺りは、次の満月で決まる。

 

「次の満月か。具体的にはいつになる?」

 

 満月がいつになるのかといった事は、特に気にしていなければ、それがいつなのかは分からない。

 特に俺の場合は、様々な世界を行き来している以上、どうしてもその辺の認識が疎かになってしまう。

 

「ん? 分からないのか?」

 

 桐条が俺を見て、仕方がないなといった笑みを浮かべながら口を開く。

 

「次の満月は来月の8日だ。その日、もし今回と同じようなイレギュラーシャドウが現れた場合、この説は半ば確定という事になるだろう」

「8日か。……問題なのは、それまでどうするかだよな。普通に考えれば、戦力の強化に勤めるべきなんだろうが……」

「ねぇ?」

 

 俺の言葉に、ゆかりが苦笑を浮かべながらそう視線を向けてくる。

 そう、最強のペルソナ使いとして名を馳せている――あくまでも俺達の中では、だが――ゆかりは、既に1人でもタルタロスの15階にいるシャドウを相手にしても、勝てるようになっているのだ。

 である以上、そう遠くないうちに15階のシャドウも2階や3階のシャドウの如く、逃げ出すようになってもおかしくはない。 

 そうなると、それこそ相手は死神くらいしかいなくなるのだが、今のゆかりであっても死神を前にすれば勝ち目はないだろう。

 15階のシャドウと死神の中間……勿論本当の意味での中間であればゆかりに勝ち目はないので、15階のシャドウに近い強さのシャドウが出てきてくれる事が望ましい。

 そんな贅沢を言ってられるような状況ではないのは分かっているが、それでも……そう、それでもあまりこの状況が好ましくないのは事実だ。

 

「ふむ、岳羽もそうだが、私達もより強くなる必要がある。……もっとも、ナビゲートをする必要がある以上、私は戦闘に参加出来ないのだが」

「美鶴が戦闘に参加出来ないってのは、痛いよな。かなり強いってのに」

「そう言うな、明彦。アルマー達ならともかく、私達の場合はナビゲートが必須なのは分かるだろう?」

「それはそうだが……ああ、どうせなら俺達も鍛えるって事で、いっそアルマー達に鍛えて貰うってのはどうだ? それならペルソナ使いとしても、十分に強くなれると思うが」

 

 そう告げる真田に、俺は意外とそれもいい考えかも? と思う。

 現状では16階にある封印が解けておらず、それよりも先に進めない以上、やるべき事はともかく、やれるべき事そのものは多くない。

 であれば、その間に真田達を鍛えるというのは、将来的に見てもいいような、そんな感じがした。

 だが……

 

「俺は反対ですね」

 

 部屋の中に、そんな順平の声が響き渡るのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1389

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