転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1898話

「……で? 結局順平も一緒にタルタロスに行くの? この忙しい時に?」

 

 桐条からの依頼を口にすると、ゆかりはかなり不満そうにそう告げてきた。

 まぁ、分からないではない。

 荒垣は恐らく数年ぶりになる、ペルソナを使った戦いに参加しようとしているのだから。

 しかも、荒垣のペルソナのカストールは、荒垣本人の未熟さもあって暴走する可能性が高い。

 もっとも、これは荒垣だけが特別に未熟だという訳ではなく、カストールの潜在能力の高さ故だろうが。

 特にシャドウとの戦闘を任されているゆかりにしてみれば、いつカストールが暴走するのか分からない中での命懸けの戦闘となる訳で……

 ましてや、ゆかりの召喚器も使い慣れた物ではなく、全く新しい奴だ。

 そうである以上、当然のようにゆかりは今日の戦闘で色々と気を配ったりする必要がある訳で……そこに、最近ゆかりが嫌っている順平が入ってくるとなれば、到底それを承服出来ないという思いを抱いても仕方がないというのが、俺の正直な思いだった。

 もっとも、そんなゆかりの気持ちを理解出来るからといって、今回の件をなかった事に出来るかと言われれば……答えは当然否なのだが。

 

「悪いが、この件は既に決まった事だ。ゆかりには色々と不満があるかもしれないが、それを理由に却下するということはない」

 

 きっぱりとそう告げると、ゆかりはまだ若干不満そうな様子はあったが、それ以上文句は言わなかった。

 

「荒垣の方は、それでもいいのか?」

「ああ。アルマーが決めたんなら、それでいい。ただ……アルマーが昨日見た通り、俺のペルソナは暴走する可能性がある。伊織の奴に危険が迫ったら……その時は、アルマーに任せてもいいんだな?」

「任せておけ。例え暴走しても、どうにかしてみせる。……一応今回の戦闘には、順平も来るという関係で俺も参加するからな」

「まぁ、それがいいんでしょうね」

 

 先程までは少しだけ不満そうな様子のゆかりだったが、俺が戦闘に参加すると聞くと、安堵の息を吐く。

 17階ということで、まだまだ未知のシャドウが多いというのもあるが……やっぱり、ゆかりにとって1人で戦闘をするというのは、色々と厳しいのだろう。

 まぁ、ゆかりの武器が弓である以上、そもそも1人で戦闘をさせるというのが厳しいんだろうが。

 ただ、そのおかげでゆかりの戦闘技術がかなりの速度で上がっているのも、間違いないんだよな。

 そんな風に考えつつ、取りあえずゆかりと荒垣に納得して貰ったのを確認し、影のゲートを展開する。

 そうして影に沈んだ俺達が姿を現したのは、桐条達の住んでいる寮の前。

 理解はしたけど、納得はしてないといった様子のゆかりと、これから恐らく数年ぶりのペルソナを使って戦闘――昨日の件は抜きにして――という事で緊張しているだろう荒垣の2人を引き連れたまま、扉をノックする。

 するとすぐに有里が顔をだす。

 ……有里が顔を出すのは珍しいな。

 いやまぁ、真田は何だかんだと年上の先輩だし、桐条はボス的な存在で、順平は俺との間に確執がある。

 そう考えれば、やっぱり顔を出すのは有里で不思議はないんだろう。

 

「待ってて。すぐに皆を呼んでくるから」

 

 それだけを告げ、寮の中に戻っていく有里。

 俺達は有里の言葉通り、そのまま寮の外で待つ。

 するとそれから1分もしないうちに、桐条達が全員寮の外に出てきた。

 ……うん? 全員と表現したが、幾月の姿がないな。

 まぁ、俺は性格的に幾月と合わないし、あの下らない駄洒落を聞く必要もない。

 そう考えれば、幾月がいないのは運が良かった……と言ってもいいだろう。

 勿論、それを表沙汰にしていない以上、わざわざここで口にするような真似はしないが。

 真田がどこか嬉しそうに荒垣に話し掛けているのは、荒垣が召喚器を手にしているからだろう。

 恐らく、桐条から荒垣がタルタロスの攻略に参加する……つまり、ペルソナを召喚してシャドウと戦うことになったというのを聞いたのだろう。

 幼馴染みだけに、真田は荒垣が戦闘に参加する事になって喜んでいる……といったところか。

 もっとも、真田の本心として言えば、出来れば自分達と一緒に行動して欲しかったのが、正直なところなのだろうが。

 

「さて、ではタルタロスに向かうか。詳しい打ち合わせは向こうのエントランスで行おう。アルマー、頼む」

 

 桐条の言葉に頷き、俺は再び影のゲートを使ってタルタロスのすぐ側に移動する。

 ……ちなみにこの間、順平は一切俺と視線を合わせようとする様子はない。

 順平にしてみれば、恐らく俺と一緒に影のゲートで移動するのも嫌だったのだろうが、それでもここで断るような真似をすれば自分の立場が悪くなるというのは、理解しているのだろう。何か不満を漏らすような真似はしなかった。

 そうして影のゲートでタルタロス前まで移動すると、全員でエントランスに入っていく。

 

「さて、ではこれからタルタロスの攻略を行うが、今日は事前に説明しておいた通り、伊織をアルマー達のパーティに参加させて貰う。……分かってるな?」

 

 エントランスの中で桐条が順平に向けてそう告げる。

 順平も、前もってその事は言われていたのか、不服そうではあったが、口答えをする様子はない。

 それを確認し、桐条は有里の方に視線を向ける。

 

「有里、今回はお前達のパーティからは伊織が抜けるから、くれぐれも注意するように。本来なら、私も戦闘に参加したいところなのだが……」

「何とかしますから、大丈夫ですよ」

 

 いつものように、面倒臭いとか、どうでもいいとか言わず、有里はそう告げる。

 何気に結構本気なのだろう。

 ……まぁ、順平がこっちのパーティに入るという事は、向こうのパーティは有里と真田の2人だけになってしまう。

 真田はシャドウとの戦闘経験がそれなりにあるし、有里はペルソナチェンジを使って様々なペルソナを使える。

 そう考えれば、2人でタルタロスに挑むのも、そこまで無謀って訳でもないんだろう。

 桐条のバックアップもあるし。

 

「お前達の事は信じているが、それでも何かあったらすぐに撤退するように、安全を第一に挑んでくれ」

「任せておけ。伊織がいない分、戦力的には多少厳しいが……それでも有里と一緒ならどうにか出来るだろう。シャドウの相手もそれなりに慣れてきたしな」

「慣れてきた時が、一番危ないのだ」

 

 真田の言葉を遮るように、桐条の鋭い言葉が飛ぶ。

 まぁ、何でも慣れてきた時が一番危険というのは、よく聞く話だ。

 そう考えれば、桐条の心配は決して間違っていないのだろう。

 

「伊織、お前が色々とアルマーに対して思うところがあるのは知っている。だが、そろそろお前もきちんと自分を見つめ直す頃合いだろう。今回のタルタロスの探索で、それが分かるようになる事を期待している」

 

 これが最終判断なのだという事は、一切言葉に出さずに桐条が告げる。

 そう言われた順平の方は、色々と思うところはあるのだろうが、頷きを返す。

 

「じゃあ、俺達は先に進むから、これでな」

「うむ、気をつけてくれ。伊織の事を、くれぐれも頼む」

 

 そう告げる桐条に頷きを返し、俺達はターミナルに向かって入っていくのだった。

 

 

 

 

 

「ここが、17階……」

 

 ターミナルを通って、そこから階段を上がって17階に到着すると、周囲の様子を見て順平が小さく呟く。

 まぁ、その気持ちは分からないでもない。

 この17階は、16階までとは全く違う様子なのだから。

 床や壁紙が顕著な差異だろう。

 

「順平、この景色に目を奪われるのもいいけど、しっかり戦闘準備してよ。この階層で出てくるシャドウは、15階までのシャドウよりも強いんだから」

 

 弓を手に周囲を警戒している様子のゆかりが、大剣を手にしている順平を見ながら注意する。

 その声が半ば攻撃的なのは、最近の順平の行動をゆかりが不愉快に思っているからだろう。

 ……本来なら、俺が一番に順平を不愉快に思わないといけないんだが……まぁ、俺の場合は順平の行動にそれ程嫌な思いをしていないしな。

 それに、学生生活を経験するという意味では、友人との喧嘩というのはあって当然だろう。

 何より、こう言ってはなんだが、今まで俺が経験してきた悪意を持つ相手とのやり取りを思えば、順平が俺に向けてくる敵意はそよ風程度の認識しかないし。

 

「わ、分かってるよ!」

 

 そう言いながら、順平はいつ敵が出てきてもいいように大剣を構える。構えるんだが……その握り方は、それこそ野球でバットを持つかのような握り方であり、とてもではないが大剣を握るのに相応しくはない。

 

「順平、お前……桐条達のパーティに加わってタルタロスに挑んでるのに、何か訓練とかはしてないのか?」

 

 そんな順平に思わずといった様子で声を掛けるが、順平は俺に一瞬視線を向けるものの、すぐに視線を逸らす。

 ……まぁ、ここで噛みついてこなくなっただけ、改善したと言えるのか?

 ただ、タルタロスに挑むというのを承知しているにも関わらず、それでも全くトレーニングをしていないというのは……自分が選ばれた存在であると認識していれば、それもおかしくはないのか?

 剣道部の宮本と一緒に行動する事も多かったんだし、いっそ剣道部に入部してもよかったと思うんだが。

 勿論、剣道部で使っているのは竹刀……つまり、武器的には大剣ではなく長剣の方が近いから、完全に順平の役に立つのかは疑問だが、それでも何もやらないよりはいいと思うんだが。

 

「しょうがない。戦闘は俺、次に順平、荒垣、ゆかりの順番で進むぞ」

 

 ゆかりが一番後ろなのは、弓という武器を手にしているからというのもあるのだが、やはり荒垣がペルソナを召喚した時に暴走して襲い掛からないようにだ。

 ……勿論この隊列での行動を考えれば、荒垣が召喚したペルソナが順平に襲い掛かる可能性もある。

 だが、その時は荒垣の後ろにいるゆかりが素早く注意する筈だった。

 ゆかりと順平を逆にしてもいいんだが、普段の生活ならともかく、戦闘が起きた時の順平は、信頼も信用も出来ないのは間違いない。

 特に誰も異論はないようだったので、俺達はそのまま17階を進む。

 

「な、なぁ、ゆかりッチ、ここで出てくる敵って、どのくらい強いんだよ?」

「そうね、そこそこってところかしら。何を怖がってるのよ。順平は選ばれた存在なんでしょう? なら、シャドウ程度、どうにでもなると思うけど?」

 

 一応話をしてはいるが、ゆかりの口調は冷たい。

 まぁ、順平に対して色々と思うところがあるのだろうし、それも当然といったところだが。

 そんな風に進んでいると、こっちに近づいてくる気配を感じる。

 

「来たぞ。数は……3」

 

 その言葉に、順平が緊張した様子を見せる。

 いや、緊張しているのは順平以外の2人も同様だ。

 ゆかりは、昨日までの召喚器ではなく、全く新しい召喚器を使う事に。

 そして荒垣は、自分のペルソナを暴走させないかと。

 当然の話だが、緊張の度合いという意味ではゆかりよりも荒垣の方が大きい。

 ……向こうを気にしておく必要もあるだろうな。

 そんな風に考えている俺の視線の先で、3匹のシャドウが姿を現す。

 桐条グループにシャドウのデータを提出したところ、ついた名前は嘆くティアラと、ブラックレイヴン。

 どちらも、昨日遭遇したのと同じシャドウだ。

 嘆くティアラが1匹で、ブラックレイヴンが2匹。

 

「敵の数は少ないな。まずは準備運動だ。ゆかりは新しい召喚器の様子を、荒垣はカストールの召喚を、順平は好きに戦え。誰かが危なくなったら、俺がフォローする」

「おいっ!」

 

 俺の指示に、順平が思いきり不満そうに叫ぶ。

 まぁ、その気持ちも分からないではないんだが……最初の戦いであるが故に、こっちはいつでも対処出来るように準備しておく必要がある。

 だが、それが順平には許せないのだろう。

 ……それとも、実は自分の指示が適当だった事に対する苛立ちか?

 それはそれで多少は気になるが、そもそも俺は順平がどういう戦いをするのか、殆ど知らないしな。

 いや、以前順平の戦いは見た事があるが、それは結構前で、それこそ順平がペルソナを召喚出来るようになったばかりの頃の話だ。

 である以上、今の順平の力は知らない。

 

「ちっ、俺の力を見せてやるよ。ヘルメス!」

 

 それ以上俺に何を言っても無駄と判断したのか、順平は自分のペルソナを召喚する。

 そして召喚されたヘルメスは、真っ直ぐブラックレイヴンに向かって突っ込んでいく。

 そしてヘルメスから放たれた一撃は、ブラックレイヴンに向かって放たれるが……

 

「くそっ!」

 

 当たれば恐らく一撃で倒せただろう一撃ではあったが、それもあくまでも当たればだ。

 シャドウならではの物理法則を無視したかのような移動をしたブラックレイヴンは……だが、俺の生み出した影槍にあっさりと貫かれるのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1389

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