転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1899話

 順平のヘルメスが攻撃を外したブラックレイヴンを影槍で貫くと、そのまま他の面子に視線を向ける。

 順平は本来ならまだこの階層にくるような強さを持っている訳ではない以上、こうして力を貸したが……ゆかりと荒垣は、話が別だ。

 何だかいきなり活躍の場を奪われた順平が不満そうにこっちを見ているような気もするが、取りあえずそれは置いておくとして。

 ゆかりは、嘆くティアラの放ったアギの一撃を素早く回避し、召喚器を自分の頭部に向ける。

 

「イオ、ガル!」

 

 そうして召喚されたイオは、ゆかりの指示通りに嘆くティアラに向かって風の刃を放つ。

 当然嘆くティアラも、自分に向かってくる攻撃をそのままにしておく筈もなく、マハラギを使って広範囲に炎を生み出す。

 その炎がガルで生み出された風の刃と一瞬拮抗し……だが、風の刃は押し負けるかのように消えていった。

 それで嘆くティアラが勝ったかのように思ったが……その炎の隙間を縫うように、矢が1本、2本と嘆くティアラの身体に突き刺さる。

 ペルソナ使いの長所として、ペルソナを召喚する……つまり、ペルソナ以外にも自分という攻撃手段があるのだ。

 勿論ペルソナと違って特殊な能力を使ったり出来る訳ではないのだが、それでも今のように弓で攻撃するのは十分なだけの強さを持つ。

 そしてシャドウは別にペルソナの攻撃でなくても、倒せる。

 結果として、嘆くティアラはゆかりの射った矢によって、あっさりと消えていくのだった。

 そして、最後……ゆかりの戦いが終わったのを確認してからそちらに視線を向けると、そこではカストールとブラックレイヴンが戦っていた。

 いや、この場合は戦っていたという表現より、追いかけっこをしていたという表現の方が正しいのか?

 一瞬にしてカストールの強さを理解したのだろうブラックレイヴンは、何とかカストールから距離を取ろうとするものの、カストールは馬に乗った騎士といった様相だ。……半分だが。

 ともあれ、その機動力は高く、ブラックレイヴンであっても完全に逃げる事は出来ない。

 いや、ブラックレイヴンは何とかこの場所から離れようとはしているのだが、荒垣はカストールを操ってブラックレイヴンがこの場から逃げ出そうとするのを先回りして止めているのだ。

 そうしてペルソナを上手く使っている光景を見る限り、とてもではないがペルソナを暴走させた事があるようには思えない。

 もっとも、カストールを操っている荒垣の方を見ると、その表情は厳しいものを浮かべているのだが。

 実際昨日一度カストールを暴走させているだけに、今は必死に暴走させないようにしているのだろう。

 昨日は俺だけだったが、この場には俺以外にもゆかりと順平がいる。

 そうである以上、ここで暴走させるような事になってしまえば、他の者に被害が出る可能性は否定出来ないのだ。

 

「やれ、カストール!」

 

 荒垣の叫びと同時に、カストールの乗っている馬から生えている長くて鋭利な角がブラックレイヴンの身体をあっさりと貫く。

 そしてシャドウを倒したのに満足したのか、やがてカストールの姿は消えていった。

 暴走はしなかった、か。

 後は俺の予想が正しければ、カストールのレベルを上げて、荒垣もそのカストールのコントロールに慣れるようにしていけば……恐らく暴走する危険性は減っていく筈だ。

 そういう意味だと、今の状況が一番暴走しやすいって事になるんだが……こうして見る限り、何とかカストールという荒馬を乗りこなしているようで何よりだ。

 

「よし、全員無事に戦闘が終わったな。まずは何よりだ」

「待てよ、アクセル! 何で俺にだけ手助けしたんだよ!」

 

 不満そうな様子で俺に迫ってくる順平。

 その気持ちは分からないでもないが……

 

「何でだって? それは俺が言わなくても、お前が一番分かってるんじゃないか?」

「ぐっ!」

 

 俺の言葉に、順平は言葉に詰まる。

 実際、順平とヘルメスはそこまで強い訳ではない。

 それこそ、この17階ではシャドウの方がまだ強いと言えるだろう。

 桐条も、それを承知の上で俺に順平を預けたんだから、俺からそれを否定出来る筈もないんだが。

 ともあれ、俺の一言で黙り込んだ順平だったが……何故かその視線は、俺ではなくゆかりに向けられていた。

 

「ゆかりッチは、いつもこんな戦いをしてるのか?」

「こんな戦いってのがどういう戦いなのかは分からないけど、今日はアクセルが戦ってくれてるんだから、楽な方よ」

「これで楽なのかよ」

 

 ゆかりの言葉に溜息を吐く順平。

 実際、俺がこうして手を出すのは結構珍しいので、そういう意味ではゆかりの言ってることは決して間違っている訳ではないのだが。

 

「そうよ。15階までは、よっぽどの事がない限り、私1人で戦ってたもの」

「何だよそれ、それって、ゆかりッチに戦闘を完全に任せてるって事か? それで、何でゆかりッチはそんなに平然としてられるんだ? 戦闘だぞ? 命を懸けた戦いなんだぞ?」

「……それを順平が言うの?」

 

 冷たい視線を向けられた順平は、何かを言おうとするも……結局それが何の意味もないのだと理解すると、黙り込む。

 実際、俺達のパーティは元々ゆかりを鍛えるというのが主目的だったのだから、ゆかりが戦うのは当然なんだよな。

 実際、そのおかげでゆかりは現在最強のペルソナ使いとして君臨してるんだし。

 まぁ、荒垣もペルソナを使うようになった以上、最強のペルソナ使いの座は危ないかもしれないが。

 

「で、どうだった?」

 

 ゆかりと順平が話しているのをそのままに、俺は荒垣に尋ねる。

 俺の方を見た荒垣は、特に表情を変えた様子もなく口を開く。

 

「そうだな、そこまで気にする必要はねえと思う」

 

 平然とそう告げる荒垣だったが、実際に先程の戦闘ではかなり厳しい表情を浮かべていたのだ。

 それを見ている以上、そう簡単に荒垣の言葉を信じられる筈もない。

 元々荒垣は頑固というか、そういう自分の苦しいところを隠すのが上手いからな。

 

「本当だな? もしお前がここで無理をして、その結果ペルソナが暴走して他の連中に被害が出るような事になれば、後悔するぞ?」

「……大丈夫だ」

 

 自分に言い聞かせるように、荒垣がそう告げる。

 

「幸い……って言い方はどうかと思うが、昨日お前を相手に暴走した事もあって、何となくカストールを操る方法が分かった気がする。まだ完全に大丈夫って訳じゃねえから、気は抜けねえがな」

「それは幸い……って言えばいいのか?」

「好きにしろ」

 

 そこで荒垣との話を切り上げ、改めて周囲に向かって口を開く。

 

「よし。じゃあ先に進むぞ。何があってもすぐ対処出来るようにするのを忘れるなよ」

 

 そう告げ、最初と同じ陣形でタルタロスの通路を進み始める。

 数分程進むと、やがて通路がY字路になっている場所に辿り着く。

 さて、こうなると次にどっちの方に行くかだが……

 

「左だな」

「理由は?」

 

 即座に左と告げた俺の言葉に、順平がそう尋ねてくる。

 まぁ、取りあえず喧嘩腰の様子じゃなくっただけマシか。

 勿論これで完全に順平の俺に対する感情のしこりがなくなったとは思わないが。

 

「何となくだな。直感だ」

「……いいのかよ、それで」

「ま、別にいいんじゃない? どっちに行けば正解なのかなんて、実際に行ってみないと分からないんだし」

 

 順平の疑問に、ゆかりがそう答える。

 地図か何かがあれば話は別だが、双方向ターミナルのある階ならまだしも、ここみたいに毎日構造が変わる階だと、地図とか意味がないしな。

 今日必死に地図を作っても、その地図は明日になれば全く役立たずになるんだし。

 結局そうなると、こういう風に道が2つ、3つとなっている時に重要なのは、勘なんだよな。

 ただ、個人的には宝箱を取り逃さないように、行き止まりに宝箱のある道を最初に選びたいものだ。

 

「……俺は部外者だし、ここではどうこう言わねえよ」

「そうした方がいいでしょうね。それで、そっちのパーティはこういう分かれ道に遭遇した時、どうやって選んでるの?」

「桐条先輩からのナビ頼りだな。……ただ、それでも分からない時は、結局勘で選ぶ事になる」

 

 その勘を発揮するのは誰なのかと言えば……勿論順平という訳ではなく、パーティのリーダー……つまり有里なんだろう。

 順平にとっては、それも面白くない理由の1つといったところか。

 そんな風に考えながら、俺達は左の道を進んでいく。

 そうして真っ直ぐ移動すると、今度はT字路に到着する。

 

「で? これはどうするんだよ?」

「ここも左だな」

 

 後ろから聞こえてきた順平の言葉にそう告げると、再び左側の通路に向かう。

 このT字路で右に向かうと、もしかしたらさっきのY字路で右に進んだ方の道と合流するかもしれないが……いや、その辺りは後で考えればいいか。

 今はとにかく、左の通路を進むとしよう。

 そうして左に進んでいくと、やがて宝箱が姿を現す。

 

「予想通りだったな」

「は? 本当かよ?」

 

 俺の呟きに順平が不信感丸出しといった感じで言ってくるが、実際俺にとってはここに宝箱があったというのは、ベストの結果と言えるだろう。

 

「宝箱の中にあるのは、結構希少な物が多いからな。タルタロスを探索する上で、宝箱の重要度はかなり高い。……勿論、無理をしてまでって感じではないが」

 

 影時間は、限りある時間だ。それこそ体感時間で考えれば、3時間……どんなに長くても4時間くらいか。

 それだけに、宝箱だけを探して時間切れになるというのは避けるべきことだ。

 そもそも、タルタロスの中にいた状態で影時間が終わってしまえばどうなるのか……その辺りは、全く判明していないのだから。

 そんな訳で。現在は取りあえず通り道に宝箱があれば開けていくといった流れになっている。

 幸いにも、今のところは宝箱に罠の類があるということはないので、その辺りを特に気にする必要もないしな。

 

「じゃあ、開けるぞ」

「おい、ちょっと待てよ。罠は……」

「心配するな、今まで宝箱で罠が仕掛けられているというのは見た事がないからな。取りあえずタルタロスの宝箱に関しては、心配はいらない」

 

 そう告げ、そっと宝箱に手を伸ばす。

 まぁ、罠がないというのはあくまでも今までの事だからであって、この先の宝箱にも罠がないのかどうかというのは、分からないのだが。

 それでも、誰かが宝箱を開ける必要がある以上、こちらとしては躊躇ってはいられないのも事実なのだ。

 何かあっても大丈夫なように、ゆかり達が十分に距離を取ったのを見て……そっと宝箱を開ける。

 すると宝箱の中に入っていたのは、現金。

 6850円と細かいが、それなりの値段だった。

 ……現金かぁ。

 出来ればもっといい物……例えば魔法が込められた宝石とか、そういうのも欲しかったんだけどな。

 

「どうだったー?」

「現金だった」

 

 背後から聞こえてきたゆかりに、そう声を返す。

 それを聞き、ゆかりも少しだけ残念そうな表情を浮かべる。

 ゆかりにとっても、出来ればもっといい物の方がよかったのだろう。

 具体的には、現在使っているショートボウよりも強力な弓とか。

 

「まぁ、何もないよりはマシだろ」

 

 荒垣の方は、特に興味がないらしい。

 まぁ、この辺りは色々と人によって思うところは違うしな。

 

「結構入ってるんだな。俺ッチ達が探索している階だと、そこまでの金額は入ってないんだけどよ」

「より上の階になれば、入ってる金額も多くなるんだろうな」

「そうなのか」

 

 順平の呟きにそう告げると、思わずといった様子で順平がそう聞いてくる。

 もっとも、次の瞬間には俺に聞き返したのだと知り、微妙に気まずい表情を浮かべていたが。

 ともあれ、順平にとっては金額について色々と聞きたい事もあるのだろう。

 桐条達がタルタロスで見つけた現金をどう処理しているのかは、分からないが。

 

「さて、取りあえず宝箱も開けたし、さっきの場所まで一旦戻るぞ。次は右だ」

 

 そう告げ、俺達はそのまま先程の分かれ道まで戻ってくる。

 先程は左に行ったので、今度行くのは当然右だ。

 そうして進むと……

 

「階段だな」

 

 不意に姿を現した階段を見て、荒垣が呟く。

 そう。その言葉通り、現在俺達の視線の先にあるのは階段だった。

 いや、別に階段があるのは不思議な事って訳じゃない。

 実際、俺達は階段を求めて移動してるんだし。

 それでも、こうしていきなり階段が姿を現すというのは、かなり予想外の光景だったのだ。

 もっとも……

 

「じゃあ、次の階に行くか」

「え? いいのかよ? 宝箱とか探す必要があるんだろ?」

「階段を探している途中ならな。宝箱は、あくまでもついでだ。本命は、あくまでも階段なんだよ」

「けどよ……」

 

 先程現金を見つけた為か、順平は尚も言い募ろうとする。

 まぁ、バイトをしている訳でもない順平にとって、6000円を超える金額というのはかなりの大金だしな。

 そんな風に考えつつも、俺は18階に向かって上がっていくのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1389

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