「おう、アルマー。何だか随分と久しぶりだな」
木曜のテストが終わり、今日は特に誰とも約束がなかったので、昼食を食べにはがくれにやって来たのだが……店の中で荒垣に遭遇する。
荒垣の前には、野菜たっぷりの担々麺。常連しか頼む事が出来ない隠しメニュー、坦々タン麺だ。
まぁ、隠しメニューでも、そこまで特殊な料理って訳じゃない。
名前通り、担々麺+タンメン。
正確には、担々麺の上にタンメンの具材を乗せるといった麺料理だ。
勿論はがくれで出す以上、単純に担々麺に野菜を追加しただけ……というのではなく、きちんと具材にも細かな仕事が加えられており、しっかりと野菜が担々麺のスープに合うようにされているらしい。
らしいというのは、このメニューは常連しか頼めないからだ。
残念ながら、俺はまだ常連という訳ではないので、頼む事が出来る裏メニューははがくれ丼のみだ。
「はがくれ丼と、トロ肉しょうゆラーメン、それと餃子とチャーハン」
荒垣の隣に座ってから、即座に注文する。
俺の注文した量に驚いているのか、荒垣は唖然とした視線をこっちに向けていた。
俺がかなり食うというのは、それこそ荒垣も知ってた筈だが。
「最近、テストで忙しかったからな。それに、三馬鹿トリオに勉強を教える必要もあったし」
「……三馬鹿トリオ？」
「ああ、俺のクラスの頭の悪い連中だ。……非常に遺憾な事に、俺の友人でもある。よって、俺が勉強を教える事になってしまった訳だ」
「教えられるのか？」
冗談でも何でもなく、純粋に素の状態で尋ねてきた荒垣。
いやまぁ、うん。荒垣にしてみれば、まさか俺の成績がいいとは到底思えないのだろう。
「言っておくが、俺はそれなりに勉強出来るぞ」
「……マジか」
数秒の沈黙の後、短くそれだけを言う。
「ああ。元々勉強はそこまで嫌いって訳じゃないしな。それに……」
「それに？」
「いや、何でもない。とにかく、そのおかげで色々と忙しかったから、荒垣にも連絡出来なかった訳だ」
担々タン麺を食べている荒垣を見ながら、そう告げる。
俺の視線に何を感じたのか、荒垣は丼を僅かに動かし、口を開く。
「ま、元気なようで何よりだ」
「へい、お待ち」
最初に運ばれてきたのは、はがくれ丼と餃子。
早速はがくれ丼を食べながら、荒垣との会話を続ける。
「それで、こっちはそんな感じだったけど、そっちはどうだったんだ？」
「別に、いつも通りだったよ。ああ、だが……夜に時々アキに会ったな」
この場合の夜というのは、文字通りの意味の夜ということではなく、影時間を誤魔化した言い方だろう。
学校に通っていない荒垣はともかく、真田はこの時期にも関わらず影時間の中を歩き回っていたのか。
まぁ、ストレス発散的な意味もあるんだろうが。
それに、時々シャドウがタルタロスから出てくるのも間違いない事実だ。
そうである以上、誰かが見回る必要はある。
影時間は文字通りの意味で今日と明日の時間の狭間だ。
そう考えれば、影時間に外に出ていても特に問題はない、か。
はがくれ丼と餃子を食べ終わると、そのタイミングを待っていたかのようにトロ肉しょうゆラーメンとチャーハンが出される。
世の中にはしっとり系のチャーハンとかもあるし、俺もそれは嫌いじゃない。
だが、やっぱりチャーハンといえば、このパラパラ感のあるチャーハンが美味いと感じる。
具材はシンプルにチャーシューやメンマの切れ端を使っており、他にも卵や長ネギが入っている。
「……なぁ、荒垣」
「うん？ どうした？」
「以前、釜玉うどんの作り方を教えて貰っただろ？」
「ああ」
「チャーハンも、こういうのを作れるようになるか？」
レンゲでパラリと解れたチャーハンを見ながら尋ねると、荒垣は小さく首を横に振る。
「それはちょっと難しいな。釜玉うどんは基本的に茹でるだけだ。勿論拘るのなら色々とあるんだろうが、俺が教えたのは基本的に誰でも出来る簡単なやり方だ。だが……チャーハンは、かなり難しい。正直なところ、俺だってこの店のようなチャーハンを作るような事は出来ねえよ」
「そんなもんなのか？」
以前四葉にチャーハンを作って貰ったけど、これよりも美味かったと思う。
まぁ、四葉は日々料理の研究に手を抜いたりはしないし、ホワイトスターから行ける様々な世界の料理も味見している。
結構前に聞いた話だが、マクロス世界の料理はかなり珍しかったとかなんとか。
ともあれ、このチャーハンは美味いが、それでも四葉の作ったチャーハンには及ばない。
具材はネギと卵だけのチャーハンなのだが、飯粒全てが卵によってコーティングされており、それがチャーハンのパラパラ感をもたらす。
具材だけを見ればかなり安い料理と言えるのだが、四葉の腕によって絶品のチャーハンに仕上がっている。
黄金炒飯として、超包子でも売れ筋商品の1つだ。
ちなみに神楽坂もこの黄金炒飯が好きらしく、店でよく見かけるらしい。
まぁ、そこまでのチャーハンを作りたいとは言わないが、それでもそこそこの炒飯が作れたら、と荒垣に頼んでみたんだけど……どうやら無理らしい。
「いいか、チャーハンってのは簡単に見えるが、このチャーハンのように本当に美味いチャーハンを作るには、かなりの技量が必要になる。料理を殆どやった事がないアルマーでは、まず無理だ」
「そうか」
荒垣の言葉にそれだけ告げ、俺はレンゲを口に運ぶ。
「それに、こういうチャーハンは火力の強いガスコンロが必要になる。普通の家にあるような調理器具だと、作るのはちょっと難しいだろうな。まぁ、一応それでもある程度の味に出来る裏技はあるが、それもまたある程度止まりでしかない」
そう言えば、超包子のキッチンにもかなり立派な調理器具があったな。
ああいう火力が必要なのか。……火力、火力……待てよ？ なら、炎獣を使えば……いや、それ以前に俺の混沌精霊としての力で火力の高い調理は出来るんじゃないか？
そう思わないでもなかったが、そうなったらなったで色々と面倒な気がする。
麺の上にトッピングされた豚肉を口に運びながら、そんな風に考える。
トロ肉と題されているだけあって、この肉はかなり美味い。
それこそ、コラーゲンたっぷりだと納得出来る程には。
「……本当に美味そうに食うな」
俺の方を見て、羨ましそうに告げる荒垣。
坦々タン麺を食べているのに、こっちを羨ましがるって……
いやまぁ、その気持ちは分からないでもないけどな。
坦々タン麺は本当の意味での裏メニューだが、トロ肉しょうゆラーメンはこの店の看板メニューだ。
どっちが美味いかというのは、それこそ甲乙付けがたいが、それでもこのトロ肉しょうゆラーメンが美味いというのは間違いのない事実だ。
「何だよ、そんなに食いたかったら、頼めばいいだろ」
「……昼飯にそんなに金を使えねえよ」
不機嫌そうに荒垣が呟く。
そう言えば、以前も思ったんだが……荒垣の奴、どうやって金を稼いでるんだ？
特にバイトらしいバイトをしているようには見えない。
かといって、まさか他の不良みたいにカツアゲとかそういうのをするような性格にも思えないし……荒垣の性格的に桐条から援助して貰っているという可能性も考えられない。
となると、やっぱり俺が知らないだけで実はバイトしてるとか。
それはそれで面白そうだが。
「アキの奴、かなり悔しがってたぞ」
「ん？ 何にだよ？」
「俺達がかなり先行してるからな。アキにとっちゃ、早く追いつきたいってのが本音の筈だ」
友人についての話題だからか、荒垣の表情が微かに緩む。
いつもは不機嫌そうな顔をしているだけに、それはちょっと意外だった。
「真田の場合、やる気はあるし実力もある。仲間にはペルソナチェンジなんて特殊な能力を持った奴もいる。エントランスからは桐条がフォローしている。ここまで充実してるんだ。そう遠くないうちに俺達のいる階までやってくるだろ」
あ、順平を入れ忘れた。
けど、ムードメーカーとしてならともかく、純粋な実力という事になれば、順平は恐らくペルソナ使いの中でも一番下の存在なのは間違いない。
持ってるペルソナ自体は結構強いんだけどな。
物理攻撃を得意としながら、火の魔法も使える。
いわゆる、魔法戦士型と言うべきか。
そんな訳で、順平自身が十分に使いこなす事が出来るのであれば、ヘルメスという順平のペルソナは、間違いなく戦力となる。
今現在そんな風になっていないのは、単純にまだまだ順平の実力が足りない為だ。
もっとも、その順平もこのテストが終われば剣道部として活動を始める訳だし、その内自然と実力は上がっていくだろう。
勿論それは、順平が部活や訓練を真面目にやるというのが前提となっている話なのだが。
もしここで不真面目に……それこそ練習が厳しいからといって、部活を無断で休むとかしようものなら、それはそれでしょうがない。
現在の順平は、桐条も含めてペルソナ使いとしての信用は決して高くはない。
今の状況でそのような真似をすればどうなるか、わかってはいる筈だろう。
「にしても、テストねぇ。学生さんは大変だな」
「そうだな、正確には大変って言うよりは面倒だな」
実際、テストで出される問題は、その殆どを理解出来ていると思う。
だが、わざわざそれをテスト用紙に書くのは色々と面倒だし、時々引っかけ問題とかもある。
その問題は理解出来るのに、その問題を解かせない為に引っかけ問題を持ってくるのは、正直どうだろうというのが俺の正直な思いだ。
もっとも、より問題を正確に理解しているのかを、しっかりと確認する必要があるという点では、決して悪い事ではないのだろうが。
だが、それはあくまでも教師の理屈であって、俺のように問題を解く方にしてみれば、引っかけ問題は面白くないというのが正直なところだった。
そこまで考え、ふと思う。
そう言えば荒垣は真田の幼馴染みだし、学校に通っていてもいいんじゃないか？
いやまぁ、今更……本当に今更の疑問なんだが。
以前に桐条達と一緒に活動していたって事は、恐らく荒垣も当時は学生だったんだろうし。
となると……その辺りどうなっているんだ？
実は荒垣は真田よりも年上で、もう高校を卒業しているのか、それとも休学しているのか。
その辺り、少し気にならないと言えば嘘になる。
もっとも、それを今ここで聞いたところで、恐らく答えは返ってこないだろうという思いもあるが。
ペルソナの暴走の件もあるし、色々と訳ありなのは間違いないだろう。
荒垣と下らない話をしながら、出てきた料理を全て食い終わる。
荒垣も既に坦々タン麺は食い終わっていたのだが、客の数がそれ程多くないという事もあってか、俺との話を切り上げて店を出たりせず、話に付き合っていた。
まぁ、俺の食う速度はしっかりと味わっていてもそれなりに早いし、そこまで待たせるような事はしなかったが。
そうして俺が料理を完食し、精算をしてから店を出る。
「あー、食った食った」
「……まさか、あれだけの量を本当に食うとは思わなかったな。正直なところ、残すと思ってたんだが」
「そうか？ 俺がかなり食うってのは、荒垣も分かってただろ？」
「それでも、あの量は多すぎると思ってたんだよ」
一応荒垣と共に食事に行った回数は、それなりにある。
その時の事で俺がどれだけ食うのかは荒垣も分かっていた筈だと思うが……まだ認識不足だったらしい。
まぁ、別にその事で何か不都合がある訳じゃないし、俺は別に構わないんだが。
そんな風に思いつつ、荒垣とは店の前で別れる。
何でもこれから用事があるらしい。
……さて、その用事というのが気にならないと言えば嘘になるが、だからって別にそのまま荒垣と一緒に行動するのも何か違う気がする。
テストも大分終わったという事もあり、少し気分転換したいところだが……
俺が遊びに行くべき場所って、そう多くはないんだよな。
一番行くのが長鳴神社だが、この前も行ったばかりだし。
犬は俺が行けば美味いドッグフードを食べられるという事で、喜びはするだろう。
だが、何となく気分じゃない。
そうだな、ちょっと本屋にでも寄ってから帰るか。
何か面白い漫画とかがあれば、それを買ってもいいし。
そう思いながら本屋に向かっていると……
「てめえ、誰に逆らっているのか分かってるのか？ ああ？」
そんな、聞き覚えのある言葉が聞こえてくる。
聞き覚えのある声ではなく言葉なのは、何だかんだで俺がそっちに関わる事が多かったからだろう。
声の聞こえてきた路地裏に向かうと……そこでは、有里が不良に囲まれている。
そして有里は気の弱そうな女を後ろに庇うようにしているのを見れば……何が起こっているのかというのは、考えるまでもなく明らかだった。
アクセル・アルマー
LV：43
PP：1435
格闘：305
射撃：325
技量：315
防御：315
回避：345
命中：365
SP：1415
エースボーナス：SPブースト（SPを消費してスライムの性能をアップする）
成長タイプ：万能・特殊
空：S
陸：S
海：S
宇：S
精神：加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル：EXPアップ
SPブースト（SPアップLv.9&SP回復&集中力）
念動力 LV.10
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法（炎）
魔法（影）
魔法（召喚）
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数：1389