転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1917話

「終わったぁっ!」

 

 そんな声が教室の中に響き渡る。

 その声を発したのは、当然の如く順平。

 ただ、順平以外にも同じように感じている者は多いのか、嬉しそうにしている者が多い。

 俺がこの月光館学園に転入してきてから、初めての定期テスト。

 そのテストが、今日無事に終わったのだ。

 当然このテストの為に全身全霊の力を振り絞った順平……三馬鹿トリオにしてみれば、色々な意味で疲れ切ったのだろう。

 そして、それだけにこれ以上ない程の解放感に包まれるのも、また当然だった。

 もっとも、それを言うなら三馬鹿トリオ程に頭が悪くなかった者達にしても同様の思いを抱いているのだろうが。

 

「はいはい、じゃあHRを始めるわよ」

 

 テスト用紙を手に、教室から出ていった教師と入れ替わるように入ってきた鳥海がそう告げる。

 その言葉を聞いた生徒達は、少しでも早く本当の意味で自由になりたいと、大人しくなる。

 それは、俺もまた同様だった。

 もっとも、今回のテストは色々な意味で疲れたのは事実だ。

 出来るだけ早く解放して欲しいと思うのは、当然だろう。

 鳥海もその辺りは理解しているのか、全員が大人しくなったところで口を開く。

 

「明日は休みだけど、テストが終わったからといって羽目を外しすぎて問題を起こさないように。テストの成績は月曜には発表されるから、自信のある人は楽しみにしてなさい」

 

 その言葉に、生徒達の反応は幾つもに分かれる。

 俺のように成績に自信のある者は、特にこれといった様子を見せたりはしないが、順平達のように今回のテストで後がないような者達は、テストが終わったばかりにも関わらず、地獄にでも落とされたかのような表情を浮かべる。

 赤点の心配はないが、成績上位者として張り出される心配がない者は、それぞれが独自の表情を……といった具合に。

 ともあれ、こうしてテストが終わり……

 

「アルマー、打ち上げしないか?」

 

 真っ先に俺に向かって尋ねてきたのは、友近だった。

 まぁ、今日はテストが終わった打ち上げをする者が多く出てきそうだが。

 

「俺はいいけど、他の面子は?」

「あー……宮本と順平の2人は、早速部活だってさ」

「ああ、なるほど」

 

 元々順平は剣道部に入る事になっていた筈だ。

 だが、丁度それを決意したのがテスト期間に入っている時だという事もあり、剣道部には参加していなかった。

 だが、テストが今日で終わったからには、当然のようにこれから部活に一直線となる訳だ。

 一応聞いた話によると、順平は毎日のように走り込みはしていたので、身体が鈍るという事はないと思うが……まぁ、それも含めて、具体的にどれくらいの事を順平が剣道部として出来るのか、少し楽しみではある。

 

「じゃあ、俺と友近の2人だけか?」

「いや、有里も来るって」

 

 有里が来るという事は、多分山岸も来るのだろう。

 だが、山岸のような内向的な性格の持ち主が女1人だけとなると、色々と居心地も悪そうだ。

 となると……

 

「ゆかり、どうだ? 山岸も来るらしいし」

「え? 私? うーん……まぁ、弓道部は今日ミーティングだけだから、15分くらい遅くなってしまうかもしれないけど、それでもいい?」

「……って事だけど、どうだ?」

 

 友近に視線を向けると、問題ないと頷きを返す。

 まぁ、友近にしてみれば男だけで打ち上げをやるより、そこに女も一緒にいた方がいいという判断なのだろう。

 友近にとって、同い年の女が女と認識されているのかどうかは、分からないが。

 いや、女と認識はされていても、異性として……つまり恋愛感情を抱く対象として思われていないといったところか?

 

「そ。じゃあどうする? どこかに先に行ってるなら、それでもいいし。ここで待っててくれるなら、それはそれで構わないけど?」

 

 そう告げてくるゆかりに、どうする? と視線を向ける。

 

「うーん、そうだな。今すぐに帰ろうとしても、間違いなく混んでるだろうし。暫くここで待ってるって事でいいか?」

「ああ、それはそれで構わない。有里は?」

「僕もそれでいいよ」

 

 ふわぁー……といった感じであくびをしながら、有里が返事をする。

 そう言えば、有里の成績ってどの辺なんだろうな。

 いやまぁ、普段の授業を見ていると三馬鹿トリオくらいに馬鹿って訳じゃないのは間違いないけど。

 気怠そう、もしくは面倒臭そうな様子の有里だったが、ここで待つとなると山岸を呼んでこようと思ったのか、教室から出ていく。

 ……ああして、クラスまでわざわざ山岸を迎えに行くような真似をすれば、有里のファンが山岸に対して不愉快に思うような気がするんだが……その辺り、本人はどう考えてるんだろうな。

 まぁ、有里にしてみれば、自分がそこまで人気があるとは思っていない可能性も高いだろうけど。

 

「じゃ、私もちょっとミーティングに顔を出してくるわね」

 

 そう告げ、ゆかりも教室から出ていく。

 残ったのは、俺と友近の2人だけ。

 勿論教室にはまだ他に何人も生徒の姿があるが、そっちはそっちでグループを作ってこれからどうするかといった事を話している。

 

「それで、打ち上げって言ってたけどどこに行くのか決めたのか?」

「うーん、実はまだ。男だけだったら、はがくれでもいいんだけど、女もいるとなると、そういう訳にもいかないだろ?」

「……それ以前に、はがくれは打ち上げとかをやる場所じゃなくて、ラーメンを食う場所だからな。貸し切りにしたならともかく、普通なら食い終わったら出ていけって言われるんじゃないか?」

「俺もそう思う」

「こういう時は、大抵カラオケとかそういうのじゃないか? もしくは、誰かの家に集まって打ち上げをするとか。ああ、ファミレスとかもあるな」

「アルマーの家に行くのは、ちょっとな。折角の打ち上げが、あの勉強漬けの日々に上書きされてしまう」

「何で後からやる打ち上げの方が上書きされるんだよ」

 

 そう突っ込むも、友近の気持ちも理解出来ない訳ではない。

 それだけ、友近にとって俺の部屋でやった勉強会は厳しかったのだろう。

 

「なら……」

「ちょっと、何とか言いなさいよ! あんた、最近彼氏が出来たからって、いい気になってるんじゃないの!?」

 

 どこに行く? とそう言おうとした俺の言葉を遮るかのように、そんな声が廊下から聞こえてくる。

 彼氏がどうとか言ってたし、痴話喧嘩か?

 まぁ、俺には別に関係ないから……そう思い、改めてどこに行くのかを友近と相談しようと思ったのだが、友近は俺の存在をすっかり忘れたかのように、廊下へ……声の聞こえてきた方に向かって歩き出していた。

 一瞬どうするか迷ったが、友近が行くのならついでに覗いてもいいかと考え、俺も後に続く。

 そうして廊下に出た俺が見たのは……予想外な事に、有里の姿だった。

 山岸を後ろに庇うようにして、3人の女達の前に立ち塞がっている。

 へぇ。いつもは面倒臭そうにしている有里だけど、女を守るとかになればきちんとやるんだな。

 少しだけ感心しながら、有里と対立している女達の方に視線を向け……昨日の朝、俺達が通学してくる時に敵意に満ちた視線で俺達――正確には山岸――を見ていた女だと気が付く。

 ああ、山岸を苛めてた奴か。

 で、その山岸が有里と一緒にいるようになって苛める事が出来なくなり、その苛々が爆発した。

 恐らくそんなところなのだろう。

 だが、あの女達は失敗したな。

 有里や山岸に絡むのなら、それこそ誰もいない場所でやればよかったのだ。

 こうして人目のある場所でそのような真似をすれば……

 

「ちょっと、何よあの女。有里君に絡んで」

「何でも自分が相手にされないからって、怒ってるみたいよ?」

「うわ、何それ。身の程知らずじゃない。少しは鏡でも見た方がいいと思うけど」

「ほら、あの子達って不良でポートアイランド駅の裏側に遊びに行ってるらしいわよ」

「うわぁ……なら湊様に手を出そうとするなんて馬鹿な真似をしないで、自分達のレベルに合った相手に股を開いてればいいのに」

「何でも不良達からも相手にされなくなって、それで有里君に擦り寄ってきたらしいわよ?」

「うわ、最悪」

 

 ……うん、何だか分からないが、もの凄い勢いで話が作られていってる気がする。

 いや、もしかしたら事実なのかもしれないが。

 ともあれ、人前でこうして有里と敵対すれば、当然のように有里のファンとも敵対する事になる。

 しかも周囲で喋っている内容は、3人の女達にも聞こえる程度の大きさなのだ。

 そんな周囲で話している言葉を嫌でも聞かされた3人は、羞恥か怒りか分からないが、顔を真っ赤に染めて自分の陰口――聞こえるように言うのも陰口というのかは分からないが――を言っている周囲の女達を睨み付ける。

 だが、数では圧倒的に有里のファンの方が勝っている以上、それで退くような真似はしない。

 それどころか、こちらもわざと聞こえるようにクスクスとした嘲笑が周囲に響く。

 

「風花、あんたねぇ……私達にそんな態度をとってもいいと思ってるの?」

 

 ビクリ、と。

 女の1人が呟くと、有里の後ろに隠れている山岸の動きが止まる。

 ……何か弱みでも握られてるのか?

 

「止めなさい、今はもういいから、行くわよ」

「え? ちょっと、夏紀。いいの?」

 

 いいのかという仲間の女に、だが夏紀と呼ばれた女は特にそれ以上何も言わず、去っていく。

 他の2人も、主導的な立場にいるのだろう夏紀という女がいなくなった以上、ここにいても意味はないと判断したのか、すぐにその場を去っていった。

 取りあえず今のやり取りを見て思ったのは……女って怖いという事だろう。

 有里の敵には容赦しないと、そんな様子のやり取り。

 そして有里の前から3人の女がいなくなったのを確認すると、それぞれその場を去っていく。

 中には有里と短く言葉を交わしている奴もいるのだが……役得って奴か?

 不思議だったのは、思っていたよりも有里に庇って貰っていた山岸に対して嫌悪感を抱いている女がいなかった事か。

 有里のお気に入りという感じで、ファンクラブの女達には嫌われるのかと思ったんだが。

 

「どうしたの?」

 

 ちょうどそのタイミングで弓道部のミーティングから戻ってきたゆかりが、そう声を掛けてくる。

 もうテストも終わって下校している者も多いのに、何故か廊下にこうして生徒達が集まっているのが不思議だったのだろう。

 

「ちょっと山岸がな。幸い、結果的には特に何があった訳でもなかったけど」

「……ああ」

 

 俺の短い説明で何があったのか理解したのか、ゆかりはそれ以上言葉を発する事はなかった。

 まぁ、ゆかりも色々と人気が高いのを見る限り、今の有里と同じような経験をしているのだろう。

 

「それで、打ち上げはどこでするか決まったの?」

「あー……いや。おい、友近。どうするんだ?」

「うーん、候補としては、カラオケ、アルマーの部屋、ファミレスといったところか。どこがいい? 多数決で決めようぜ」

 

 俺、ゆかり、有里、山岸、友近。

 5人いるのを考えると、多数決をすれば決まらないって事はないだろう。

 ああ、でも2:2:1とかになったら分からないか?

 そうなったらそうなったで、他の方法で決めればいい。

 

「まずカラ……いや、アルマーの部屋で打ち上げをやりたい奴」

 

 友近がそう言うが、誰も手を挙げるような真似はしない。

 それは、俺も含めての話だ。

 まぁ、友近が言っていた通り、勉強会をやった場所ということで、印象がよくないのは間違いない。

 山岸が手を挙げなかったのは、その内気な性格から殆ど知り合いとは呼べない俺の部屋に行くのは抵抗があったのだろう。

 

「じゃあ、カラオケがいい奴」

 

 その言葉に手を挙げたのは、ゆかりと友近。

 もう2人が手を挙げていれば、それで決まったのだろうが……生憎と俺はファミレス派だ。

 カラオケボックスとかも美味い料理は出たりするらしいが、それでもやっぱりファミレスの方が美味い料理を出すだろうし。

 少しだけゆかりが恨めしそうな視線を向けてくるが、そちらはスルーさせて貰った。

 

「となると、ファミレスで決まりだな。問題はどこのファミレスに行くかだが」

 

 友近の言葉に、俺も少し考える。

 この近辺には幾つかファミレスがある。

 巌戸台駅の方に戻っても、幾つかファミレスがあるだろう。

 学生をメインターゲットにしているファミレスだけあって、味はそこそこだが量は多いタイプのファミレスが殆どだ。

 まぁ、実際にファミレスで食べる人は料亭で食べるような味を追求するとか、そういう事は基本的にないしな。

 そう考えれば、上手く棲み分けが出来ている……と、そういう事なのだろう。

 

「あそこは? ポートアイランド駅の近くにあるお店。デザートが充実してるって話を以前聞いたんだけど」

 

 気分を切り替えてそう言ってくるゆかりの言葉に、山岸も女らしくデザートという言葉に反応する。

 俺も甘い物は嫌いではなかったし、有里も賛成し……最終的にはゆかりの提案したファミレスに向かう事になるのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1389

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