転生とらぶる   作:青竹(移住)

1996 / 4303
1926話

 ポートアイランド駅の裏側。

 俺がこの世界に来た時から暫くの間は結構顔を出していたし、今でもタルタロスに行く時はここで荒垣を拾っていくし、ここに置いていく。

 だが……考えてみれば、夕方から夜に掛けての時間帯といった頃に来た事は殆どなかったように思える。

 ましてや、最近の俺の生活空間にここは入っていなかった。つまり……

 

「ああ、んだこら。こんなガキが俺を相手にどうすってんだよ! ああ?」

 

 もう初夏に近い時季にも関わらず、ニット帽を被っている男が俺を見て睨んでくる。

 うん、分かってた。

 そもそもこういう場所に来る奴の移り変わりというか、入れ替わりというか、そういうのは結構頻繁にあったりする。

 もしくは、その日によって来たり来なかったり……といった具合に。

 そうである以上、俺の事を知らない奴がいてもおかしくはないのだろう。

 

「いや、だからっすね。その、俺達話をちょっと聞かせて貰えれば……」

 

 何とか無事に話を収めようと、下手に出るが……こういう不良を相手に、その選択は失敗だぞ。

 

「髭帽子は黙って……ろ!」

「ぐぅっ!」

 

 ニット帽の男の隣にいた、ドレッドヘアとかいうのか? 編み込みをしている髪の男が、順平の腹を殴る。

 

「きゃー、いいぞー! もっとやれやれ-!」

「髭君、格好悪いぞー。もうちょっと男を見せなよ」

「しょうがないわよ。だってあの髭君、童貞臭いし」

「うわ、風呂に入って童貞臭さを洗い流してこいって感じ」

「そうよね。何だかベッドでも早そうだし」

 

 腹を殴られて地面に転がった順平を見て、少し離れた場所にいる女達が野次を飛ばす。

 順平は、腹を殴られた一撃より、その野次の方に大きなダメージを受けたらしい。

 精神的なショックから、立ち上がる様子はない。

 しょうがない。やっぱり俺が鎮圧して、適当に話を聞く必要があるか。

 そう思いながら前に出ようとしたのだが、それよりも前に動いた奴がいた。

 

「ちょっと、いきなり何をするのよ!」

 

 それが誰なのかというのは、考えるまでもない。

 ここに来たのは3人で、そのうちの1人は順平で地面に蹲っている。そして俺はまだ行動に移していない。つまり……残るのは1人しかいない訳だ。

 

「おお? お姉ちゃん、元気いいね。……へぇ。こうして見ると、結構いい女じゃん。なぁ、この女は俺が貰ってもいいよな?」

「えー、タケ、ずりー。前もそうやって女を持っていったじゃん。順番で考えれば、今日は俺だろ?」

「うるせえな。俺はこういう気の強い女がヒーヒー言うのを見るのが好きなんだよ。……なぁ、お姉ちゃん。お姉ちゃんもこんなヒョロイ雑魚より、俺の方がいいよな?」

 

 性欲という欲望に濁った目でゆかりを見るニット帽の男。

 これで、もしゆかりが普通の女であれば、怯えるといった行動をとっただろう。

 だが、ここにいるのはゆかりだ。

 それこそ、順平よりも……そして不良よりも実戦慣れをしている人物。

 ……まぁ、ゆかりは美人と呼ぶに相応しいくらいの顔立ちであり、身体に関しても同年齢の平均よりも発達している。

 それは、ゆかり本人も理解しているのだろう。

 欲望に濁った視線を向けられても、特に狼狽したりする様子は見せず、1歩後ろに下がって、自分に向かって伸ばされた手を回避する。

 本来ならゆかりの肩を掴む筈の手は、当然のようにゆかりの身体ではなく、空中を掴む事になり……ニット帽の男の顔に苛立ちが混じった。

 まさか、ゆかりがこんな風に抵抗するとは思わなかったのだろう。

 

「おい」

 

 周囲にいる仲間の前で恥を掻かされた事が気にくわなかったのだろう。

 苛立ちの混ざった声で短く呟き、再びゆかりに向かって手を伸ばす。

 だが……ゆかりは、今度も1歩退くことにより、その手から逃れる。

 しかも今回は、その腕を回避しただけではない。そのまま男の手首を掴んだのだ。

 そして次の瞬間、男は掴まれた手を急に引っ張られ、バランスを崩す。

 人間というのは2本足で立っている。

 その気になれば、バランスを崩させるというのは、難しい話ではない。

 ましてや、ゆかりは不良の喧嘩といったものではなく、命懸けの実戦を経験しているのだ。

 このような動き、特に問題なく可能でもおかしな話ではないだろう。

 

「うおっ!」

 

 また、ゆかりに余裕を見せつけるように、ゆかりに伸ばしていない左手をズボンのポケットに入れていたというのも、この場合は男にとって運が悪かった。

 結果として、受け身の類を取ることも出来ず、バランスを崩した動きのままゆかりにいいように振り回され、地面に倒される。

 ……せめてもの救いだったのは、ゆかりの力では地面に倒す事は出来ても、投げるといった真似は出来なかったことか。

 片手がポケットに入った状態のままもし投げられていれば……恐らく骨の1本や2本は折れていただろう。

 だが、不良の男にそんな事が分かる筈はない。

 最初、自分は何をされたのか分からない様子で、地面からゆかりを見る。

 ……その視線に、スカートの中を覗かれると思ったのか、ゆかりは微かに嫌そうな表情を浮かべると、そのまま数歩後ろに下がる。

 その行動が、地面の男を我に返らせる。

 

「この女、徹底的に犯してやる!」

 

 下着はともかく、恐らく太ももくらいは見たのか、男は怒りと性欲に満ちた目でゆかりを睨み付ける。

 そんなゆかりを庇うように、俺が前に出る。

 正直なところ、ここでゆかりに任せていても特に問題はなかっただろう。

 それこそ、この不良達程度ではどうあってもゆかりに勝てるとは思えない。

 だが……それでも、ゆかりにそのような視線を向け、更には犯すと口にした男を許す事は出来なかった。

 

「止めておけ、ゆかりはお前達程度が手を出せる女じゃない」

「ああ? んだと、こら!」

 

 ニット帽の男――地面に倒されてもまだ被ったままだった――の仲間の、ドレッドヘアの男が、俺の言葉が気にくわなかったらしく、こっちに向かって距離を縮めてくる。

 先程順平に精神的なダメージを与えた女達も、ニット帽の男が倒された時は驚きで声を止めていたが、ドレッドヘアの男が参戦したのを見て、再び何やらキャーキャー言っている。

 ……山岸の件で来られなくなった有里辺りがいれば、意外とあの女達はこっちの味方をしてくれたかもしれないな。

 そんな風に思いながら、俺は口を開こうとし……この場に新たに姿を現した人物を見て、それを止める。

 

「おう、どうした? 何の騒ぎだ?」

 

 そうして姿を現したのは、2人の男。

 基本的にこの辺りでは、皆がある程度の集団を作っている……という話を、以前荒垣から聞いている。

 それこそ、今ゆかりにいいようにあしらわれている男や、順平に精神的なダメージを与えた女達……といったように。

 基本的には人数の多い集団が大きな顔をしているのだが、そこには色々と例外もある。

 人数が少なくても、周囲に侮られないような……そんな者達。

 まぁ、その辺りには不良漫画っぽく色々な理由があったりするんだろうが、ともあれ、そんな感じで色々とあったらしい。

 で、こうして出てきた2人は、揃って身長180cmオーバーで、身体も明らかに何らかの格闘技をやっている、鍛えられたものだ。

 

「カ、カズさん、ジュンさんも……い、いや、何でもないっすよ。ただ、ちょっと俺達を馬鹿にした奴がいたから、身の程を知らせようと思っただけで……」

「あん?」

 

 その言葉に、カズと呼ばれた男の方が倒れている順平を見て納得した表情を浮かべ、自信に満ちた表情で立っているゆかりを見て不思議そうな表情を浮かべ……そして最後に、俺を見て驚愕の表情を浮かべる。

 

「って、おい、アクセルじゃねえか! お前等、アクセルに絡んだのかよ!?」

 

 突然カズと呼ばれた男の口から上がった言葉に、ゆかりを何とかしようと思っていた連中は驚愕の表情を浮かべ……やがて恐る恐るといった様子で口を開く。

 

「その、もしかしてこいつらはカズさん達のお知り合いですか?」

 

 その言葉に怯えの類が含まれているのは、自分がもしかしたらとんでもない相手に手を出したのではないか……そんな風に思ったからだろう。

 カズは先程男から聞いた話から、事情を察したのか……ジュンと顔を見合わせ、苦笑を浮かべつつ口を開く。

 

「知り合いっつーか……お前等冬の件を知らないのか? ギガントやクラッシュ、壊れ蜘蛛……他にメドゥーサやアラカルトの連中までこいつに潰されたんだぞ?」

 

 何やらチーム名、もしくはパーティ名? らしき言葉を口にするカズ。

 2人の出現に警戒していたゆかりと、腹を押さえている順平が、その言葉を聞きこちらに視線を向けてくる。

 いや、何の話だ?

 正直なところ、俺にはこいつらが何を言ってるのか分からない。

 ああ、でも以前一緒に飯を食った不良がアラカルトとかいう奴の一員だってのは、飯を食ってる時に聞かされた覚えがあるな。

 

「ちょっ、ちょっと待って下さい。それってもしかして……2月に起こったっていう、魔王の日の……って事は……」

 

 魔王の日って……別に特定の日に何かをしたって事はないんだが。

 ただまぁ、何となく俺がそう呼ばれている理由は分かった。

 ここで暴れた――俺にはそんな自覚は殆どないが――時、戦った……いや、喧嘩した相手ってのは、この辺りでも有名な奴だったのだろう。

 それこそ、この男が口にしたような、チーム名? と思しきものがついている連中。

 

「そういう事だ。いや、凄いなお前等。まさか魔王に喧嘩を売るなんて」

 

 ……にしても、魔王か。

 大抵どこの世界に行っても、魔王やら大魔王やらといった風に言われる事が多いんだが、それは一体何でなんだろうな?

 俺がそれに相応しい暴れっぷりをしているからか。

 自分で自分に突っ込みを入れ、そのまま改めて俺の事を知ってるらしい連中に向かって声を掛ける。

 

「それで? お前達はどうするんだ? この際だ、やるなら相手になってもいいけど。……まぁ、ぶっちゃけ俺が何をしなくても、ゆかりがいればどうにでもなるけど」

「いや、俺達にあんたと……魔王様と戦う気はねえよ。どうせやるなら、もっとしっかりとした場所でいい。けど……この姉ちゃんが、ねぇ。うん、いい女だけど、十分強そうに見えるな」

「何よ?」

 

 カズの言葉が気に障ったのか、ゆかりが不機嫌そうに告げる。

 そんなゆかりの態度に、カズは何でもないと首を横に振った。

 

「いやいや、何でもないって。俺は別にあんた達に文句はねえから。……それより、何でこんな場所に? 荒垣にでも会いに来たのか?」

 

 これ以上ゆかりに構うと、被害が出るかも……と、そう思ったのだろう。

 言葉の途中で俺に向かって話し掛けてくる。

 

「違う。まぁ、荒垣がいれば話が手っ取り早かったのは間違いないけどな。ただ、荒垣とは連絡が付かなかったんだ」

「……あ? 少し前に荒垣は見たぞ?」

 

 何?

 いやまぁ、その話はともかく。

 今日俺達が来たのは、無気力症になった女についての情報を求めてだ。

 集まった情報によると、この辺りによく出没していたらしいのだから、何らかの事情を知っている奴がいるかもしれないという思いがあった。

 その件を尋ねると、カズは少し考えて首を横に振る。

 そしてゆかりにあっさりと倒された男達に視線を向ける。

 

「どうだ? お前達はアクセルが探している女は知らないか? 知ってるなら、機嫌を取る意味でも言っておいた方がいいぞ?」

「知ってます!」

 

 ゆかりにあしらわれたニット帽の男が、即座にそう告げる。

 ……ここまで綺麗に掌を返されると、それはそれでちょっと面白いな。

 ともあれ、情報を得られるのは助かる。

 

「それで? どういう奴なんだ?」

「えっと、その、女が3人で……なぁ、お前等の方があの森山とかいう奴等に詳しいだろ!」

「えー、あたし達? まぁ、いいけど。森山と……えっと、確か他にも2人いたよね?」

「いたいた。何だか最近は大人しい奴を弄って遊んでるとか言ってなかったっけ?」

「それはもうちょっと前でしょ。ほら、何だか学校が面白くないとか何とか……」

「言ってた。で、その原因の奴がムカつくとかなんとか」

「そうそう、で、何かやるって言って……ああ、それからはここに顔を出してないんだっけ?」

 

 学校が面白くないってのは、あれだろう。山岸を苛めようとして、それを庇った有里に絡み、結果としてそのファンクラブを敵に回した一件。

 その辺りの事情は分かっている。

 問題なのは、何故そいつらが裸で校内に放置されていたのかということだろう。

 何かやると言って、それ以降ここに姿を現していないという事は……つまり、あの件に山岸が関わっていると、そういう事だろうか?

 何か危害を加えようとして、逆襲されたとか?

 そんな風に思いつつ、情報を得た事に満足するのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1389

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