転生とらぶる   作:青竹(移住)

2012 / 4302
1940話

 有里と模擬戦をしてから、数日。

 日に日に夏に近づいていく気温は、梅雨という事もあって高い湿度をもたらしていた。

 

「うわぁ……こんな中で体育とか……最悪だな」

 

 夏の暑さにうんざりとした言葉を口にするのは、友近だ。

 現在、俺達の視線の先では、俺達以外のチームがバスケットをやっている。

 その片方には有里と順平の姿があり、現在6-16と始まってからまだそれ程時間が経っていないにも関わらず10点差をつけていた。

 

「この時季だけはな。せめて、バスケットだった事に感謝したらいいんじゃないか?」

 

 バスケットであれば、試合をやっている2チーム以外は観戦という事になり、身体を動かさなくてもすむ。

 ……もっとも、ずっと試合を見ている訳にはいかない以上、どうしてもいずれ俺達も試合をする事になるのだが。

 

「そう言われてもな。……せめて、雨が降ってなきゃもう少し快適なんだろうけど」

 

 忌々しそうな視線で窓の外を見る……いや、睨み付ける友近。

 その気持ちも分からないではないが、だからといってそんな真似をしても意味はないだろう。

 友近の眼力で雨雲を消滅させる事が出来るのであれば、話は別かもしれないが。

 

「剣道部の練習に比べれば、そこまで厳しくはないけどな」

 

 俺と友近の話を聞いていた宮本が、苦笑を浮かべながらそう告げてくる。

 

「あー、剣道部は防具とかが凄いって話を聞いた事があるな」

 

 宮本の言葉に、友近がそう告げる。

 ……そうなのか? と一瞬疑問に思ったが、考えてみればそれも当然なのか。

 幸か不幸か、今まで俺は剣道をするといったことはなかった。

 だからこそ、そんな悪臭を嗅ぐような真似はなかったのだが。

 友近の言葉を否定しないところを見ると、どうやら剣道部の防具は色々と厳しいらしい。

 

「剣道部か。……順平はどんな感じなんだ? 2年になってから入部ってのは珍しいんだろ?」

「そうだな。ただ、正直あそこまで才能があるとは思わなかった。いや、寧ろ才能というか……実戦経験か?」

 

 鋭い。

 実際、順平が普通の剣道部員よりも優れているのは、その実戦経験の部分だ。

 毎日のように……とはいかないだろうが、結構頻繁にタルタロスに挑んでいるのだから。

 文字通りの意味で命懸けの実戦経験を積んでいるのだ。

 そういう意味では、すぐに剣道部の中でその能力を発揮してもおかしくはない。

 

「ただ……以前も言ったと思うが、時々妙なところを攻撃しようとしてくるんだよな。それで戸惑って、その隙を突かれるという事が結構ある」

「ああ、言ってたな」

 

 宮本の言葉に、納得する。

 その辺りはシャドウを相手に剣道をしている訳ではない以上、どうしても相手が隙を見せれば手を出してしまうのだろう。

 半ば反射的な行動であるが故に、自分でもそう簡単に止める事は出来ない……といったところか。

 

「あれさえなければ、レギュラーに入っていてもおかしくないんだけどな」

 

 心底残念そうに告げる宮本。

 そうか、何だかんだと順平もかなり剣道部の中で実力を発揮してるんだな。

 そんな風に思っていると、ピーッ、というホイッスルの音が聞こえてくる。

 

「試合終了! 次、3班と4班!」

 

 教師の言葉に、宮本と友近がコートに向かう。

 6班の俺は、ただそれを眺めて勝利に嬉しそうにしている順平といつものように面倒臭そうにしている有里に声を掛けるのだった。

 

 

 

 

 

「なぁ、アルマー。今日はどうする? はがくれにでも行くか?」

 

 学校の授業が終わった後、友近がそう話し掛けてくる。

 ゆかりと順平、宮本の3人は既に部活に行っており、有里は何やら山岸と用事があるとかで既に教室の中にはいない。

 そんな訳で、馴染みのメンバーは俺と友近の2人だけになっていたんだが……

 

「悪いな、俺も今日は用事があるから、はがくれには付き合えない」

「そうなのか? つまんねえの」

 

 友近は短くそれだけを言うと、つまらなさそうに教室から出ていく。

 いつもであれば、俺も友近と一緒にはがくれにでも行ってただろうが、用事がある以上はそうもいかないのは事実だ。

 ……にしても、友近はバイトをしている訳でもないのに、よく毎日のようにはがくれに行くだけの余裕があるな。

 何だかんだと、はがくれで食べれば、メニューにもよるが700円前後する。

 高いメニューになると、1000円を超えるものすらあるのだ。

 俺の場合は1回の注文で3品、4品は当たり前だから、3000円くらい掛かる。

 もっとも、俺は金に困っている訳ではないのでその辺りは特に問題ないのだが。

 だが、そんな風に金に困ってない俺と違って、友近は普通の高校生だ。

 順平や有里のように影時間にタルタロスに挑んだりして、桐条から報酬を貰っている訳でもない。

 聞いた話ではバイトをしているような感じもないし……そうなると、毎日のようにはがくれに行く為の資金はどうしてるんだろうな?

 実は友近の家は金持ちで、小遣いには困ってないとか?

 ……有り得ないとは思うが、恐喝とかして金を奪ってるなんて事は……ないか。

 友近の外見は別に怖い訳ではないし、喧嘩もそんなに強くはない。

 そうである以上、不良のようにどうにか出来る……というのは、ちょっと考えられなかった。

 まぁ、多分俺が知らない何らかの金儲けの手段があるんだろう。

 それこそ、株とかFXとか、短時間で金を稼げる手段とかはあるんだし。

 それを友近が出来るのかどうかは、別の話だが。

 ああいうのって、18歳以上とか、そういう決まりがあったと思うし。

 友近が去っていった廊下の方を見ながら、そんな風に考える。

 ともあれ、現在俺がやるべきなのは別の事だ。

 教室にある時計を見ると、時間は午後3時20分すぎ。

 となると、そろそろ移動した方がいいか。

 教科書やら何やらが入ったバッグを持って、教室を後にする。

 そうしてやって来たのは……

 

「待たせたか?」

「いや、構わん。こちらも今来たばかりだからな」

 

 教室の一室で、俺より前にいた桐条が少し緊張した様子でそう告げる。

 何だ? 話があるから、この空き教室に来て欲しいってメールがあったから来たんだが、今更俺を前に緊張するような事はないだろうに。

 そもそもの話だが、俺に何か用件があるのであれば、それこそメールやら電話やらでその内容を話せばいいだけなのだ。

 その辺りの事情がどうにも気になる。

 

「それで? わざわざこんな人気のない場所に呼び出して、何の用件だ? これが漫画とかだと、愛の告白とかなんだが……」

「愛の……? っ!? こ、この馬鹿者が! そ、そ、そんな訳ないだろう!」

 

 一瞬、俺の言葉の意味を理解出来なかったのか、少し考える様子を示した桐条だったが、次の瞬間にはしっかりと言葉の意味を理解出来たのだろう。顔を真っ赤に染めながらそう叫ぶ。

 

「しょ……処刑。処刑だ!」

「落ち着けって。冗談だ冗談」

 

 どこからともなく召喚器を取り出した桐条の姿に、沸点低いんじゃないか? と思いつつ、そう告げる。

 にしても、ゆかりもそうだが……桐条も、この手の話に弱いよな。

 2人共、かなり人気が高いんだし、当然のように今までにも告白された事はある筈だ。

 にも関わらず、何故こうもこの手の攻撃……いや、口撃に弱いのか。

 ともあれ、俺の言葉で桐条はようやく落ち着き、ジト目を向けつつも頭部から召喚器を外す。

 誰もいないとはいえ、まさか学校内でペルソナを召喚しようとするとは、思ってもみなかった。

 ともあれ、落ち着いたのを見て、これ以上は怒らせないようにと早速本題に入る。

 

「それで? 結局俺は何でここに呼び出されたんだ? こうして直接会わなければならなかったって事は、重要な用件なんだろう?」

 

 普通の用件……それこそ、影時間についての相談とか、もしくは一緒に何か食べに行くかといった内容であれば、わざわざ呼び出すような事はしない筈だ。

 となると、迂闊に携帯とかで喋れないような、そんな事が何かあるのは間違いないだろう。

 もっとも、それが具体的にどのような理由なのかといった事は、俺にも分からないのだが。

 

「う、うむ。……その、以前話したと思うが、お父様と一度会って欲しいと言ったのを覚えているか?」

「あ? あー……うん。そう言えば言われたな」

 

 結構前に、桐条からそんな話を聞いた覚えがある。

 だが……ここでそのような話題を出してくるということは……

 

「お前の父さんが、俺に会うつもりになったのか? 言われたのはかなり前だし、それっきり何の反応もなかったから、すっかりお流れになったのかと思ってたけど」

「お父様は桐条グループの運営で、それこそ毎日分単位、秒単位のスケジュールで生活しているのだ。寧ろ、これ程早く会えるといった事が出来たのは、私にしてみれば驚きだよ」

 

 冗談でも何でもなく、本当にそう思っているらしい桐条の言葉に、俺は少しだけ驚く。

 フィクションとかではよくそんなスケジュールを送っている人物を見る事はあるが、まさか実際にそのような人物がいるとは……と。

 ……ただ、考えてみればこの世界は恐らく何らかのゲームを原作とした世界なのだ。

 であれば、そのような人物がいてもおかしくはない。

 

「取りあえず、桐条の父さんが忙しい人なのは分かった。それで? 具体的にいつになる?」

「明日の夕飯を一緒にどうか、と。何でも美味いと有名な中華料理店に予約が取れたらしい」

「……へぇ」

 

 桐条の父親が、俺についての情報を具体的にどのくらい知っているのかは分からない。

 だが、桐条から少なからず俺についての話は聞いてるだろうし、幾月辺りも色々と調べているのは間違いない筈だ。

 だからこそ、中華料理店なのだろう。

 俺が食事を楽しむという情報を知っているからこその、選択。

 中華料理店になったのは……俺がはがくれに行く頻度が高いからか?

 桐条とも一緒に行ったしな。

 

「分かった。それで……その食事会に参加するのは俺だけでいいのか? ゆかりは?」

「岳羽にも会いたいと言っていたが、今はアルマーと会う方を優先させるらしい。それで構わないか?」

 

 ゆかりに対して桐条グループが何をやったのかを考えれば、それこそ最初にゆかりに会って謝るべきだと思うんだがな。

 ……もっとも、桐条の父親という立場にいる人物にしてみれば、俺という存在は現在のところ協力関係ではあるが、明確に仲間という訳ではないし、何より俺の過去をどうやっても調べる事が出来ないという事が怪しすぎるといったところか。

 

「そうだな。向こうがそうなら、俺はそれで構わない。色々と聞きたい事もあるしな」

 

 特に影時間についての一件とか。それと、やはりゆかりの父親に対する仕打ちについても同様だろう。

 それでいて、何のフォローもしてないというのは、責められても当然の出来事だ。

 

「あー……その、お父様は色々と尊敬出来る人なのは間違いない。あまり失礼のないようにな」

「その辺は、向こう次第だな。敵対的な行動を取るのなら、こっちも相応の態度を取る事になるだろうし」

 

 ないとは思うが、俺を生け捕りにしようなんて考えた場合には、それこそ腕の1本でも貰っておく必要があるだろう。

 向こうが友好的に接するのであれば、こちらも同様に対応するが。

 ……ただ、やっぱりゆかりの一件もあって、最初から点数が厳しめになるのはしょうがないんだよな。

 何をするにしても、とにかく向こうの対応次第、か。

 

「そうか。それなら安心だ」

 

 何故か桐条は、俺と父親の食事会が上手くいくと、そう決めつけている節があるのが多少気になる。

 

「ん? 一応聞いておくが、その食事会に参加するのは俺とお前の父さんだけか? お前は?」

「私か? 私も参加予定だぞ。……そもそも、アルマーとお父様を2人だけにすると、色々な意味で危険そうだからな」

 

 そう告げる桐条だったが、何かそんな風に思う理由があるのか?

 ああ、いや。寧ろ父親に俺が喧嘩を売る的な意味でか?

 ……実際、向こうの態度によってはそうなる可能性が高い以上、それは否定出来ないんだよな。

 

「なるほど。なら、雰囲気が重くなる事もないか」

「……待て。別に私だって、話が得意という訳ではないのだぞ? 話の流れを私に全て任されても、正直なところ困る」

 

 そう言う桐条だったが、隠しきれないように嬉しそうな笑みを浮かべているのを見れば、父親と一緒の食事というのは隠しようがない程に嬉しいのだろう。

 普通、高校生くらいになれば父親との関係はそこまで良好ではないという事が多いのだが……桐条はファザコンの気でもあるのかもしれないな。

 桐条の父親がどのような人物なのか……少し、楽しみではある。

 場合によっては、桐条との間にある協力関係が崩れる可能性もあるが、逆により強固に結びつくという可能性もあるだろう。

 そんな風に思いながら、俺は桐条と会話を交わすのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1389

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