転生とらぶる   作:青竹(移住)

2015 / 4305
1943話

 食事会そのものは、最初に俺と桐条の父親、桐条武治が話をする時の微妙に雰囲気が悪い状態とは違い、和やかに進んでいく。

 もっとも、武治は決して喋り上手という訳ではく、美鶴の方も父親に対して上手く言葉には出来ないのか、どこか遠慮したような雰囲気がある。

 そうである以上、この場で色々と話題を提供する事になるのは、俺の役目だった。

 

「ほう、それでアルマー君が有里君と模擬戦をしたのか」

「はい、お父様。その……私としては情けないのですが、どうしてもタルタロスの攻略状況ではアクセルに追いつけず、門番シャドウと呼ばれているシャドウは全部アクセルに倒して貰っている状況です。それはいいのですが、そうなるとどうしてもこちらの戦闘経験が少なくなり……」

 

 美鶴の言葉に、武治は納得したように頷く。

 

「何にせよ、経験というものは色々と重要なのは間違いない。特に美鶴達が挑んでいるのは、命懸けの戦いだからな」

「はい」

「まぁ、今は山岸も美鶴達のチームに入るようになって、美鶴も戦闘に参加するようになったんだ。攻略速度は今までよりは上がるだろ。……もっとも、山岸を守る人員を残す必要を考えると、戦闘が可能な人数は少ないが」

「うむ。……そこが痛いところだ。出来れば全戦力をタルタロスの攻略に投入したかったのだが……お父様、死神という存在については報告したと思いますが」

「ああ。あの強力なシャドウだな。……正直、報告にあったような強力なシャドウがタルタロスの中を自由に動き回っているというのは、非常に危険だと思うのだが……」

 

 悩ましい表情を浮かべる武治。

 娘の事が心配なのだろう。

 また、見るからに色々とストレスを感じているようにも見える。

 ……まぁ、影時間の事を考えれば、それも当然かもしれないが。

 

「そこまで気にする事はないと思うけどな」

 

 なので、そんな武治のストレスを少しでも解消してやろうと、酢豚を食べながらそう告げる。

 ちなみにこの酢豚、普通の酢豚とは違ってタマネギやニンジン、ピーマン、タケノコといった野菜や、パイナップルは入っていない。

 豚肉だけを使った、黒酢の酢豚だ。

 ……個人的には、パイナップルが入った酢豚ってのは結構好きなんだが。

 豚肉の濃厚な旨みと、黒酢の酸味が口の中で合わさり、かなり美味い。

 そんな黒酢の酢豚を食べながらの俺の言葉に、武治は視線を向けてくる。

 

「どういう事かな?」

「簡単な事だ。あの死神は、今のところ俺の前にしか現れていない。向こうがどんな意図を持っているのかは分からないが、俺にご執心というのは間違いないらしい」

 

 実際、あの死神がどんな意図で俺を狙っているのかというのは、全く分からない。

 考えられるとすれば、一番強いという点で俺を狙っているのか……もしくは、ペルソナ使い以外を狙ってるのか?

 ただ、あの死神は時々妙な行動を取るんだよな。

 戦いの最中にこっちをじっと見ていたり、満月の夜に出てくるイレギュラーシャドウとの戦いをじっと観察していたり。

 何を思ってそんな行動を取るのか、正直俺には全く理解出来ない。

 

「ふむ、アルマー君でもその死神に勝てないのかね?」

「正直なところを言えば、俺1人で戦って、死神が逃げなければ勝てると思う」

「……1人で? 確か君は他に2人と一緒に行動しているという話だったが」

「ああ。岳羽ゆかり、荒垣真次郎。どっちも聞き覚えのある名前だろう?」

 

 まさかここでその話題に触れてくるとは思わなかったが、いい機会だし、ここでちょっと探りを入れてみるとしようか。

 

「……そうだな」

 

 俺の問い掛けに、数秒沈黙した後で武治はそう頷く。

 当然のように、ゆかりの事については気が付いていたのだろう。

 岳羽という名字で気が付いてもおかしくはないし、何より幾月や、美鶴からの報告もある以上、ここで知らない振りは出来ないだろう。

 

「アクセル!」

 

 美鶴も、俺が何を言おうとしているのか……それを責めようとしているのかを理解したのか、慌てて言葉を挟んでくる。

 だが、意外な事に、それに対して待ったを掛けたのは、俺ではなく武治の方だった。

 

「いいんだ、美鶴。彼女とその母親を酷い目に遭わせたのは、間違いなく桐条グループの仕業なのだ。そうである以上、桐条グループの総帥として、私はそれを受け入れる必要がある」

「お父様……」

 

 武治の言葉に、美鶴はそれ以上何も言えなくなる。

 なるほど。こうして見たところ、武治が感じている強いストレスの原因の1つにはゆかりに……岳羽家に対して行った一件も含まれている訳か。

 もっとも、ストレスを感じているからゆかりにしてきた一件が解決するかと言われれば、それは間違いなく否なのだが。

 

「お前が何を考えて、ゆかりの父親をスケープゴートにしたのかは分からない。だが、そのせいでゆかりが悲しんだのも事実だ。……正直なところ、もしゆかりが今の状況を望まないと言えば、恐らく俺は桐条グループとの関係を断って、敵対する。そして、俺と敵対するというのがどういう事か……それを一番分かってるのは、美鶴だよな?」

「っ!?」

 

 俺の視線で美鶴の動きが止まる。

 実際、俺と敵対した場合、四六時中暗殺の危機を感じるのだから、どうしようもないのは間違いない。

 影のゲート……それと監視カメラの類がある場所では殆ど役に立たないが、気配遮断のスキル。

 そして、ペルソナのように一旦召喚してから魔法を使うのではなく、その気になれば手の一振りで魔法を使えるという能力。

 それら全てが、俺と敵対した場合はその相手を狙う牙となり、爪となる。

 美鶴はそれを知っているからこそ、ここで口を挟む事が出来ないのだ。

 武治の方は……へぇ。プレッシャーを感じている様子ではあるが、それでも取り乱したりはしていない。寧ろ、覚悟を決めた様子すらある。

 それを見て、武治の方に殺気を向ける。

 じわり、と次第に強くなっていくその殺気は、美鶴には一切の影響を与えず、武治だけにその効果を向けていた。

 武治も、自分が今どのような状況にあるのかという事は、しっかりと自分では理解出来ていないのだろう。

 だが……いや、だからこそ、現状が危険だと理解しつつ、それでも取り乱さない武治の様子に感心する。

 

「へぇ。……思ってたより、度胸はあるな」

 

 その言葉と共に、放っていた殺気を解く。

 殺気を受けてみっともなく騒ぎ立てるような真似でもすれば、恐らく俺は武治を切り捨てただろう。

 その切り捨てるというのが、実際に切り捨てるという意味なのか、もしくは影時間に関しての協力態勢を切り捨てるのか……そのどちらになるのかは分からなかったが、それでも明日以降の協力態勢とならなかったのは間違いない。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……」

 

 殺気から解放された事により、武治が荒い息を吐く。

 そこまで強力な殺気という訳ではなかったんだが……このペルソナ世界のような一般的な世界で暮らしている者にしてみれば、十分強力な殺気だったのかもしれないな。

 

「アクセル! お父様に一体何を!?」

「安心しろ。別に特に何もしていない。ちょっと殺気を当てただけだ」

「……殺気?」

 

 俺の言葉に、意味が分からないといった様子で呟く美鶴。

 まぁ、この世界だと殺気とか気配だとか、そういうのはあまり重要視されてないしな。

 そうである以上、俺の言ってる事を理解出来なくてもおかしくはない。

 死神辺りとの戦いになれば、殺気とかそういうのを感じる能力も必要になってくるんだが……幸か不幸か、今のところ死神が狙うのは俺だけだしな。

 

「ああ。武治の事を心配なのは分かるが、少し落ち着け」

 

 実際には、それこそ心臓が悪かったりすれば、殺気を受けた衝撃で死んだりするという事もあるらしいが……今の殺気程度では、到底そんな事にはならない筈だった。

 

「……分かった」

 

 若干不承不承ながら、それでも美鶴は俺の言葉を聞いて大人しくなる。

 そんな美鶴を見てから、改めて武治に視線を向け、口を開く。

 

「ゆかり……岳羽の家にお前達がした事は、俺にとっては許せる事ではない。だが、結局のところ、その問題はゆかりの問題だ。俺が手を出すような事じゃない」

 

 なら、何で今俺がそれを口にしたのか……という問題はあるのだが、ゆかりは俺にとって大事な存在だ。

 このペルソナ世界で、唯一本当の俺という存在を知っている相手なのだから。

 そんなゆかり――正確にはその父親――に対して、冤罪を着せるような真似をして自分達だけ安全な場所にいた。

 それを聞いて、許せるかと言われれば、答えは否だろう。

 

「だが、これからの桐条グループの態度次第では、いつでも俺はお前達と敵対する事になる。それをしっかりと理解した上で、桐条グループがゆかりに……岳羽一家に対して行った事について、どう説明するのか。それを楽しみにさせて貰うよ」

 

 そう告げ、俺は再びターンテーブルの上にある料理に手を伸ばす。

 フカヒレの姿煮……この料理は、中華料理の代名詞として有名な料理だが、実際にフカヒレ自体に味がある訳ではない。

 フカヒレを煮込んだスープの味が染みこんでいる。

 勿論不味いって訳でもないが、声も出ない程に美味いかと言われれば……うーん、人の好みによるとしかいえないだろうな。

 まぁ、不味いか美味いかで言えば、間違いなく美味いのは間違いないんだが。

 

「そうか。……その言葉はしっかりと覚えておこう」

 

 武治の言葉を聞きながら、次に皿に取ったのは海鮮餡かけチャーハン。

 普通のチャーハンはパラリとした食感が魅力的なのだが、このチャーハンは海鮮餡かけとの相性を考えているのか、しっとりとしたチャーハンになっている。

 そのしっとりとしたチャーハンが、エビやイカ、貝といった海鮮餡にしっかりと合っている。

 パラパラとした食感のチャーハンとも合うと思うんだが……これはちょっと予想外。

 

「そうしてくれ。お互いに良好な関係を築く為にもな」

 

 冷たいウーロン茶で口直しをしてから、次に小籠包をレンゲに取る。

 小籠包というのは、小さい肉まんみたいな感じだが、中にスープが入ってるんだよな。

 だから、レンゲの上でその皮を破ってから食べる……って話を、以前超包子で聞いた気がする。

 神楽坂がそんなの勿体ないとか言って、そのまま小籠包を食べ……口の中でスープが爆発したという流れでオチがついたが。

 俺の場合はその辺りを気にしなくてもいいのだが、取りあえず普通に食べる事にする。

 レンゲの中に広がるスープ。

 そのスープと一緒に小籠包を食べる。

 うん、美味い。

 スープもそうだが、一流店だけあって、しっかりと具にも気を使っている。

 次に手を伸ばすのは、エビチリ。

 俺がよく行くスーパーでも総菜としてエビチリは売っているのだが、そのエビチリは……何だろうな。エビの身が殆どないんだよな。

 甘エビくらい、下手をすればそれよりも小さいエビに衣を付けて大きく見せかけているといった感じのエビチリ。

 まぁ、本格的な中華料理店って訳じゃなく、あくまでもスーパーのエビチリだというのを考えれば、それはしょうがないのかもしれないが。

 それに比べると、ここで出されたエビチリのエビは非常に大きい。

 エビフライとかに使うような、そんなエビをエビチリに使っており、しっかりとエビの食感と味を楽しむ事が出来る。

 うん、このプリっとした歯応えが美味いんだよな。

 その後は青椒肉絲や回鍋肉といった料理も食べ、かに玉も食べる。

 かに玉って中華料理なのか? いや、分類的に考えれば中華料理なのかもしれないが、どちらかと言えば家庭料理的なイメージがあった。

 だが、このかに玉はしっかりとカニの身が大量に使われており、このような店で出されるのに相応しい味付けとなっている。

 他にもツバメの巣のスープ……何でも赤いツバメの巣というのは非常に希少らしいが、それを食べたり、壺を空けた途端にもの凄く美味そうな匂いが広がるスープを食べたりと、十分に満足する事が出来る食事だった。

 武治や美鶴も、取りあえず暗い話題に関しては今のところは置いておき、食事に専念する。

 

「ふむ、なるほど。美鶴は生徒会長としてしっかりやっているのか」

「ああ。かなり人気の高い生徒会長だぞ。陰でお姉様とか呼ばれたりもしているが」

「なっ! ア、アクセル! それは別にお父様に言わなくてもいいだろう!」

 

 普段は冷静な美鶴が、顔を真っ赤にしながら俺の言葉に割り込んだり……

 

「そうか。……美鶴にはまだ良い人がいないのか」

「高嶺の花って奴なんだろうな。人気があるのは間違いないし」

 

 俺の言葉に、羞恥で顔を赤くしたり……

 

「昔から美鶴は元気でな。よく周囲の者を困らせていたものだ」

「お、お父様……その、アクセルにそのような事は……」

 

 武治の言葉に、美鶴が恥ずかしそうにしたり……

 色々とあったが、何だかんだと結局は楽しい食事会となるのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1389

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