転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1959話

 衝撃的な話……影時間がどうやって誕生したのか……そして何より、どうすれば影時間が終わるのかを聞かされた日の翌日、学校の授業が終わると、ゆかりと俺は長鳴神社の境内にいた。

 本当なら、俺の部屋で話をしようと思ったのだが、今回の件では俺達だけではなくコロマルにも関係してくる。

 荒垣にも連絡をしたのだが、今日はどうやら荒垣とは繋がらない日らしく、連絡が取れない。

 まぁ、荒垣と連絡が取れないのは最近だと結構あるし、恐らく荒垣も色々と考えたい事があるのだろうと、取りあえずはそう考えて放っておく事にしたのだが。

 

「わん! わんわん!」

 

 ドッグフードを食べ終わったコロマルが、そんな風に吠えてくる。

 どうやら満足したので、遊びたいと……そう考えているのか?

 まぁ、幾ら頭が良くても、コロマルは結局のところ犬だ。

 他の連中みたいに、難しい事は考えたりしないんだろう。……多分。

 

「ほら、ゆかり。取りあえず難しい事を考えたりはしないで、これでコロマルと遊んでやれよ」

「え? 私?」

 

 空間倉庫から取り出したフリスビーを渡すと、ゆかりの口から驚きの声が出る。

 いきなりの行動だったのを思えば、それも無理はないが。

 

「この神社の境内は結構広いし、力加減を間違えなきゃ大丈夫だろ」

「……それはそうだけど……」

「そもそも、ゆかりはそんなに悩んでないんじゃないのか? 順平達は結構悩んでたみたいだけど」

「そうね」

 

 ゆかりが頷いた通り、昨日の話を聞いた順平や有里、山岸……そんな連中は結構悩んでいるように思えた。

 だが、真田や荒垣の方は、そこまで気にしている様子はなかったように思える。

 もしかして、あの2人は元々その辺りの事情は知ってたのか?

 いや、昨日の様子を見ればそんな感じはしなかった。

 そうなると、多分それだけ美鶴を信じているって事なんだろうな。

 何だかんだと、2年の俺達よりも荒垣や真田の方が美鶴との付き合いは長い。

 その分だけ、信頼というのがあるんだろう。

 もっとも、俺の場合は昨日の説明を聞いても特にどうという事は思わないし、タルタロスに挑むのを躊躇うような事はない。

 そもそも俺の場合、恐らく……本当に恐らくだが、この影時間ってのが俺がホワイトスターと連絡が取れなくなっている原因だと思われるから、これを解決しない事には、どうしてもホワイトスターに自力で戻る事は出来ない。

 まぁ、レモン達の性格を考えれば、俺が何かをするよりも先に向こうからこっちの世界にやってくるという可能性は否定出来ないのだが。

 それ以外にも様々なマジックアイテムを入手するという目的もあるし……正直に美鶴に言えば怒られるかもしれないが、俺にとってタルタロスというのはマジックアイテムの入手場所として結構ありがたい場所だったりする。

 

「風花達、どうするかしら」

 

 ゆかりにとって、山岸は同じペルソナ使いの女という事で、良好な友好関係を築いているのか、心配そうに呟く。

 同じ女という事であれば、それこそ美鶴もそうだし、ゆかりは何だかんだと美鶴とは友人として付き合っている。

 メールのやり取りもしているみたいだし。

 ただ、今回の場合、美鶴はタルタロスに挑まないという選択肢はないんだよな。

 祖父の件で桐条グループとしての責任を感じているのは間違いないし、同時に父親……武治がそれについてかなり責任を感じているというのも分かる。

 そして美鶴はその外見とは裏腹にファザコン気味の性格だ。

 そうなれば、父親が気にしている今回の一件で何もしない……という選択肢は有り得ないだろう。

 自分で決めたのではなく、父親の為というのが、正直なところ微妙な感じがするが、美鶴の決意は固い筈だ。

 それこそ、俺が何を言っても無意味なくらいには。

 そんな訳で、取りあえず今のところ美鶴は影時間の一件から外れるという選択肢はない。

 

「わん!」

 

 投げられたフリスビーを取ってきたコロマルが、それを地面においてもう1回、もう1回と吠える。

 人間の言葉を理解していると思われるくらいに頭の良いコロマルだったが、やはり犬の本能には逆らえないという事なのだろう。

 いや、犬である以上、それは当然かもしれないが。

 

「ふふっ、分かったからちょっと待って」

 

 ゆかりもコロマルと遊ぶのは嬉しいのか、笑みを浮かべてフリスビーを手に取る。

 そうして再び境内の中でフリスビーを投げるが、その動きが大きかったせいか、ミニスカートの太ももが自然と目に入る。

 普通鍛えていたりすれば……それこそ、ゆかりのように、戦う人間であれば多少は太ももとかが筋肉で太くなってもおかしくはないのだが、ペルソナの効果なのか、それともゆかりの体質なのか、その太ももは若さに溢れた程度に魅力的ではあるが、それでも筋肉が太くなっているようには見えない。

 

「ちょっ、このスケベ! どこ見てるのよ!」

 

 俺の視線に気が付いたのか、フリスビーを投げ終えたゆかりが、顔を赤くして叫ぶ。

 だが、それでも白河町の経験からか、以前のように真っ赤になる……という程ではない。

 もっとも、そういう風に思うのは、相手にもよるんだろうが。

 

「いや、よく考えたら、もう七夕が終わってるんだと思ってな」

「え? 七夕? ……まぁ、そうね。七夕は……っ!?」

 

 そうして七夕の日の事を思い出そうとしたゆかりが、顔を真っ赤に染める。

 一瞬何でだ? と思ったが、よく考えてみれば七夕の日は満月で、イレギュラーシャドウが出てきた日だったな。そして、白河通りにあるラブホテルで……ゆかりが顔を真っ赤にする理由が理解出来てしまった。

 

「アークーセールー……」

「あれ、お兄ちゃん! お姉ちゃんも! どうしたの?」

 

 爆発寸前だったゆかりに声を掛けたのは、まだ小学生くらいの女……舞子だった。

 そう言えば最近見なかったな。

 ちょっと前までは、梅雨で雨が多かったから、こうして外で遊ぶというような真似はなかなか出来なかったのかもしれないが。

 

「舞子ちゃん、あのお兄ちゃんとお姉ちゃん、知ってるの?」

「うん。よくここで遊んで貰ってたんだ」

「ふーん。羨ましいなぁ」

「えへへ、そうでしょ」

 

 よく見れば、舞子以外にも何人か子供がいる。

 会話を聞く限り、どうやら舞子の友人らしい。

 

「わん? わんわん!」

「わ!」

 

 嬉しそうに吠えるコロマルだったが、そのコロマルの声に驚いたのは舞子……ではなく、その友人達。

 いきなりコロマルに吠えられたが、その声が険悪なものではないとすぐに理解したのだろう。

 次々にコロマルを撫でていく。

 

「良かったな、コロマル。可愛がって貰えて?」

「コロマル? お兄ちゃん、この子、コロマルって名前なの?」

 

 舞子が俺の方を見てそう尋ねる。

 そう言えば俺がコロマルを犬と呼んでいたのと同様、舞子はコロマルをわんちゃんと呼んでいたか。

 あの時はまだ、コロマルの名前とかが分からなかったしな。

 

「ああ、そうだ。俺も知らなかったけど、どうやらコロマルって名前だったらしいな。今度からはコロマルって呼んでやってくれ」

「うん! よろしくね、コロマル!」

「わん!」

 

 舞子の言葉に、コロマルは嬉しそうに吠える。

 うん、こうして見ると、やっぱりコロマルって犬とは思えない程に頭がいいよな。

 元々、犬というのは頭がよく、人間のパートナー的な動物という一面もある。

 狩猟犬とか、盲導犬とか、そういうのが一番特徴的だろう。

 だが、コロマルの頭の良さはそのような犬達と比べても一線を画していると、そう思えるのは俺だけではないだろう。

 その後、三十分程の間は舞子やその友人達がコロマルと遊んでいたが、やがてそれにも飽きたのか、それとも次の用事があったのか……ともあれ、境内から去っていった。

 その後ろ姿を見送ったコロマルはやがてこっちに戻ってくる。

 

「わん、わんわん!」

 

 もっと遊んでと言っているのか、それとも腹が減ったからドッグフードちょうだいと言ってるのか。

 その辺りは微妙に分からないが、それでもこうして懐いてくれるのは、こっちとしては嬉しい。

 

「ゆかり、フリスビー貸してくれ」

「いいけど、アクセルがやるの? 珍しいわね」

「別にそこまで珍しいって訳でもないだろ? そもそも、フリスビーでコロマルと遊ぶってのは、前から俺がやったんだし」

「その割には、今日は私に任せてたみたいだけど? エッチな目をこっちに向けて」

 

 ミニスカートから覗く太ももが目に入った件を言っているのだろう。

 ……まぁ、見ていた以上、それは否定出来ないのだが。

 

「何となく、コロマルと遊びたくなっただけだよ。なぁ、コロマルも俺と遊びたいよな?」

「わう?」

 

 俺が尋ねると、コロマルは軽く首を傾げる。

 おのれ、こういう時に限って……

 そんな風に思わないでもなかったが、取りあえずゆかりから受け取ったフリスビーを投げる。

 空中を飛んだそのフリスビーを見た瞬間、コロマルは即座にそれを追う。

 それは、半ば本能のようなものなのだろう。

 コロマルも結局は犬だった。そういう事なのだろう。

 いや、別にそれが悪いという訳ではないのだが。

 

「あー……まぁ、取りあえずアクセルが何をしたいのかは分かったけど」

 

 どこか呆れたように俺を見てくるゆかりだったが、やがて気を取り直したように話題を移す。

 

「それにしても、影時間を終わらせる事が出来るってのが分かっただけでも、話を聞いた甲斐があったんじゃない? お寿司も美味しかったけど」

「そう、だな。あの寿司は美味かった。金にも結構余裕があるし、今度店を紹介して貰って数十人前くらい握ってもらうか」

「そんなに?」

「ゆかりも知ってるだろうけど、空間倉庫の中に入れておけば握ったばかりの寿司をいつでも食えるしな」

「……そうだったわね。羨ましいわ。けど、桐条先輩が……正確には理事長が頼むようなお店なんでしょう? 職人気質の人が、一気にそれだけ握って欲しいと言われても、すぐにはいそうですかって言えるかしら?」

「だから、美鶴に紹介して貰うんだろ?」

 

 お得意さんからの紹介ともなれば、店の方も無碍に断る事は出来ないだろう。

 勿論、より確実性を欲するのなら、美鶴ではなく父親の武治に頼んだ方がいいのだろうが。

 

「あのね。……まぁ、寿司の件はいいとして、私が言いたいのは影時間についてよ。残り6匹のイレギュラーシャドウ。それを倒せば、影時間の件も解決するんでしょう?」

 

 そう言ってきたゆかりの言葉に、俺は即座に返事をする事が出来なかった。

 もしこの説明をしたのが幾月ではなく、武治辺りであれば、恐らく俺もすぐにその言葉に納得していただろう。

 だが、その説明をしたのが幾月である以上、そう簡単に信じる訳にはいかないという思いがあった。

 どうしても、感覚的に幾月に対して好意を抱く事が出来ず、その言葉をそのまま信じるといった事が出来ないのだ。

 正直なところ、何故俺がそのように思っているのか……それは分からないのだが、ともあれ俺は幾月のその説明を完全に信じ切る事は出来なかった。

 ……実際に自分でその辺りを確認出来れば、話はまた変わってくるのだろうが。

 

「アクセル? どうしたの?」

「いや。……ゆかりは本当に幾月の言ってた事が正しいと思うか?」

「え? そりゃあまあ……だって、理事長はシャドウや影時間に関する研究の中でも、かなり偉い人なんでしょ? そうである以上、理事長が言い切ったんだから、間違ってはいないんじゃない?」

「そうだな。……俺の考えすぎか」

 

 そう言いつつ、それでもやはり完全に幾月を信用するような事は出来ない。

 ただ、イレギュラーシャドウという存在が色々な意味で脅威である以上、それを倒す必要があるのは間違いないのだ。

 であれば、結局のところは幾月が言ってた通り、自然とイレギュラーシャドウは倒されるのだろう。

 残り6匹……ここのところは2匹ずつ同時に出てきているので、同じペースでシャドウが出てくるのであれば、残り3ヶ月。

 10月にはこの影時間が解決するという事になる。

 もっとも、本当に2匹ずつ出てくるとは限らない。

 それこそ、1匹だったり、3匹だったり……下手をすれば、4匹、5匹、6匹が一緒に出てくる可能性もあるのだ。

 その辺りの事情を考えれば、油断するという真似が出来る筈もない。

 ……そもそも、今月のイレギュラーシャドウの時も油断した訳じゃないが、最後の最後で色々と大変な事になってしまったしな。

 そう思いながら、俺はゆかりと美鶴の裸を一瞬だけ思い出す。

 だが、その一瞬でゆかりが俺を見る視線が厳しくなったように感じ、慌てて別の話題に移す。

 

「とにかくだ。幾月の言葉が正しいのかどうかは、それこそ残り6匹のイレギュラーシャドウを倒せば分かる。……個人的には、それで解決して欲しいんだけどな」

 

 俺がホワイトスターと連絡が取れないのは、影時間が原因の可能性が高い。

 そうである以上、出来るだけ早くホワイトスターと連絡を取る為にも、影時間がなくなるのは最優先事項なのだから。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1389

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