転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1961話

「うっひゃぁーっ! 海だよ、海! 凄えな、これ! なぁ、アクセルもそう思わねえ!?」

 

 屋久島に向かっているフェリーの甲板で、順平が興奮した様子で叫ぶ。

 俺はそれに対して、そうだなと頷きを返すものの、正直なところそこまで大喜びは出来ない。

 そもそも、俺が所属しているシャドウミラーは、海どころか宇宙を活動の場とする事も珍しくはなく……それどころか、今回のように異世界に来る事も珍しくはないのだ。

 ……まぁ、フェリーという乗り物に乗るという行為そのものは非常に珍しいので、そういう意味では結構珍しい体験をしているのかもしれないが。

 

「ちょっと、順平。あまりはしゃがないでよね。みっともない」

 

 ゆかりが甲板にいる他の客達の様子を気にするように、そう告げる。

 このフェリーも、別に桐条グループが所有する物ではなく、普通に一般の住民も利用出来る物だ。

 当然、現在このフェリーには俺達以外にも、多くの観光客の姿がある。

 甲板にいた、大学生と思われる3人の女達が順平を見て小さく笑っている光景があり、それがゆかりにとっては恥ずかしかったのだろう。

 もっとも、大学生と思われる女達が浮かべていたのは嘲笑の類ではなく、どこか微笑ましいものを見るような笑みだったのだが。

 意外と順平って、母性本能をくすぐったりするのか?

 その割には、ゆかりとか美鶴には散々な扱いを受けているけど。

 あ、でも山岸は結構親しくしているらしいな。……ただ、誰が山岸と一番親しいのかって考えると、やっぱり有里なんだよな。

 ……ちなみに、その有里、山岸、真田の3人は、どこか元気がない様子だ。

 こうして見る限りでは、恐らくこの前の美鶴の話が関係してるんだろう。

 美鶴の方は、そこまで落ち込んだ様子を見せていないが……話した方が落ち込んだ様子を見せるってのは、色々な意味で違うだろうしな。

 ともあれ、そんな感じで落ち込んでいる様子が強い。

 正直なところ、そこまで深く考える必要はあるのかと思うんだが。

 影時間という存在は色々と不都合なものだ。だからこそ、消してしまえばいい。

 それだけで影時間を消すのに問題はないと思ってしまうのは、俺が別の世界の人間だからだろうか。

 

「暗いわね」

 

 俺の近くにやってきたゆかりが、有里達に視線を向け、小さく呟く。

 

「そうだな。折角の旅行なんだから、もっと楽しめばいいと思うんだが。……にしても、ゆかりと海に行くって話をしてたけど、まさかこんな風に叶うとはな」

「あら、これで海に行く約束を果たしたつもりなの?」

 

 言葉では不満そうなものだったが、こっちを見る目はどこかからかっているようにも感じられるのは、きっと俺の気のせいって訳ではないだろう。

 そんなゆかりの様子に、周囲の海を見回しながら口を開く。

 

「そうだな、どこか南国の無人島辺りに行ってみるのもいいかもしれないな。能力とかそういうのを全く隠さなくてもいいし」

「私は、出来れば色々と買い物が出来る、外国がいいんだけど?」

「そっちもありなんだよな。その土地の名物料理を食べるってのは、旅行の醍醐味だし」

 

 ……恋人でもない男と一緒に海外旅行。

 それだけを聞けば、色々と怪しい響きなんだが、実際には日帰りで行くだけだから、そこまで怪しい事はないんだよな。

 だが……2人で海外旅行に向かうというのは、聞いた者にすればそんな風にしか聞こえない訳で……

 

「なっ!? お前達、何を考えているのだ!?」

 

 俺とゆかりの会話が聞こえていたのか、美鶴は当然のようにそう言ってくる。

 顔を真っ赤にしているのは、やはり俺が思ったような事を想像したからだろう。

 もっとも、そこまで過敏に反応するようになったのは、やっぱりラブホテルでの出来事が関係してるんだろうが。

 男女関係に関しては初心な美鶴だ。

 ラブホテルという場所で、一糸纏わぬ姿となり、その上で身体中を弄られるというのは……しかも、それが俺と2人だけならともかく、ゆかりも同じ場所で同じ姿で同じ行為をされたとなれば、やはり色々と思うところがあるのだろう。

 普段はそこまで表に出さないが。

 ただ、今回の場合は俺とゆかりが2人で海外旅行に行くという事で美鶴の中にあったその記憶が刺激されてしまった……といったところか。

 

「落ち着け、このムッツリ。別にお前が考えているような事じゃないから」

「ム!? ……誰がムッツリだ」

 

 一瞬叫びそうになった美鶴だったが、それでも周囲の状況を考えれば、それを口にするような真似は出来なかったのか、周囲に聞こえてないように、それでいて自分は不満ですといった様子を隠さずに告げてくる。

 だが、俺はそれに動揺した様子もなく美鶴を指さす。

 

「人を指さすな。そして私は別にそのようなものではない」

 

 そう溜息を吐く美鶴の様子に、何故か俺の隣でゆかりは笑みを浮かべていた。

 

「ふふっ。桐条先輩、アクセルに口で勝とうとするのが、色々と無茶ですよ」

「……そうだな。今までの事でその辺は分かっていた筈だったのだが。……はぁ」

「そこで溜息を吐かれるのは、個人的には納得出来ないな」

 

 そんなやり取りをしている間にもフェリーは進み続け、やがて屋久島に到着する。

 

「へぇ、ここが屋久島か。……正直なところ、特にこう、南国風な感じとかはないな」

「まぁ、港だからな」

 

 真田の言葉に、そう返す。

 実際屋久島は九州よりも南にあるという点では、沖縄とそう大差はない。

 ……種子島のすぐ側にあると表現すれば、どのような位置にあるのかが分かりやすいだろう。

 当然そのような場所だけに、植生とかも沖縄の影響があり……真田が口にした南国風という点は間違いなくある筈だった。

 だが、それはやはり自然のある場所であればの話であって、こういう港ですぐにそれを分かれというのは難しいだろう。

 ああ、でも海の色とかは東京とかで見るよりも綺麗ではあるが。

 

「皆、こっちだ。別荘に行くぞ」

 

 真田と共に周囲の様子を見ていると、そんな風に声を掛けられる。

 美鶴の声がした方を見ると、そこでは以前俺が乗ったのと同じような、黒塗りの高級車の姿があった。

 ……勿論この車を東京からわざわざ屋久島まで運んできたとは思えないので、恐らくはこの屋久島にある別荘で使っている車なんだろうが……このレベルの高級車をほいほい用意出来る辺り、桐条グループの財力がどれだけのものかを示している。

 車の類には殆ど詳しくないが、それでも桐条グループの令嬢の美鶴が乗るような車ともなれば、外見だけが立派で中身はその辺の車と変わらない……なんて事はないだろう。

 となると、性能も見かけ同様のものであり、防弾だったり乗り心地だったりを突き詰めて設計されている筈だ。

 数十万、数百万程度では買えない……数千万、それこそ下手をしたら億単位の金が掛かっている可能性も否定は出来ない。

 そんな車を複数用意する辺り、桐条グループがこのペルソナ世界でどれだけの力を持っているのかを意味している。

 

「うわっ! この車ってかなり高いんじゃねえ?」

 

 順平が車を見てそんな風に騒ぐが、その審美眼は正しい。

 ……この場合、審美眼って表現は正しいのか?

 ともあれ、このままここにいれば悪目立ちするのは間違いないので、俺達はさっさと車に乗って桐条家の別荘に向かう。

 

『お帰りなさいませ、お嬢様』

 

 そうして車から降りると、別荘の前には多くのメイド達が待ち構えていた。

 

「うわ……」

 

 そう声を発したのは誰だったのか。

 ともあれ、メイド達の花道とでも呼ぶべき道の中を、俺達は進んでいく。

 当然他の面々も美鶴以外はそんな光景に慣れている筈がなく、呆然とした様子だ。

 有里のみは、いつものように動じた様子がなかったが……それが本当に動じていなかったのか、それとも単純に動揺を表情に出していなかったのかは、俺にも分からない。

 ともあれ、そんな感じで別荘の中に入ると、順平はようやく安堵の息を吐く。

 だが、その安堵の息も、すぐに別荘の中を見て止まってしまう。

 なかなかの広さを持つ別荘だけに、そうなってしまうのは当然だ。

 考えてみればメイドが20人近くいたんだから、その辺の事情を考えればそれだけの人数がいないと別荘の手入れが出来ないという事なんだろう。

 勿論、普段はこの別荘を維持出来る程度の人数がいればそれでいいんだろうから、これだけの人数が集まったのは、武治や美鶴が来るからというのが大きいんだろう。

 もっとも、それでもここまで人数が多いのは……俺に対する警戒感から?

 いや、何だかんだと武治との、そして桐条グループとの関係は悪いものではない。

 ここで武治が俺を警戒させるような真似をして、お互いに関係を悪くするという風になるというのは、ちょっと考えられない。

 だとすれば、何か他に理由がある筈なんだが……その辺は今はそこまで気にする必要はないか。

 どんな理由で桐条グループがここにメイドを配したとはいえ、それがこっちの不利益にならなければそれでいい。

 ……ん? 不利益? もしかして、ハニートラップ要員だったりしないだろうな?

 世の中にはメイドというのは一定の需要があるらしいし。

 ちなみにメイドの中には以前美鶴と武治と一緒に食事をした中華料理店で見た顔も何人かあった。

 

「皆様、まずはそれぞれのお部屋にご案内いたします」

 

 メイド……とはいっても、40代くらいのメイドだが、そのメイドに従って、俺達はそれぞれの個室に案内される。

 だよな。別にメイドも若い女だけって事はないよな。

 40代だろうが50代だろうが、メイドなのは間違いない。

 ちなみに、当然ながら男と女の部屋は離れた位置に用意されていた。

 この辺の判断は、武治じゃなくて美鶴辺りのものか?

 ともあれ、部屋に行って少し……丁度スライムでこの部屋に隠しカメラや盗聴器の類がないのを調べ終わった頃、順平が姿を現す。

 本当なら怪しむような真似はしたくなかったんだが、寮で実際に隠しカメラとかあったしな。

 

「アクセル、早速海に行くから準備、準備!」

「は? あー……まぁ、別にいいけど」

 

 俺は構わないが、他の連中の中には来たばかりだし少し休みたいって奴もいるんじゃないか?

 そう思うも、折角屋久島に来たんだから、早速泳ぐってのもいいだろうと判断し、順平の言葉に従って水着に着替える。

 水着は、特にこれといった特徴のないトランクス型の水着だ。

 ……いっそここでブーメランパンツとかでも、意表を突けた気がしないでもないが。

 そのまま別荘の外に出ると、そこでは先程のメイド達は全員既にいなくなっている。

 そう言えば部屋から別荘を出るまでにも特にメイドに会わなかったけど、普段はどこにいるんだろうな?

 仕事をしている場所が違うのか?

 

「アクセル! こっちだこっち! 遅いって!」

 

 声の聞こえた方に視線を向ければ、そこには俺に向かって手を振っている順平、そして何だか面倒臭そうにしている有里と、泳ぐ気満々の真田といった男達が揃っていた。

 

「ゆかり達は?」

「女の着替えは時間が掛かるって決まってるだろ? それより、少し早いけど海に行って場所を取っておこうぜ。東京とかと違ってそこまで人が多いとは思えないけど、それでも少しでも良い場所を取りたいだろ?」

 

 そう告げる順平の手には、飲み物が入ってるのだろうクーラーボックスや、海で使うでかい日除けの傘……ビーチパラソルだったか? それが何本かある。

 まさに、遊ぶ準備万端といったところか。

 

「そうだな。ここで待ってるよりは、そうした方がいいだろ」

 

 俺の意見に誰も異論はなかったのか、俺達はそのまま砂浜に向かう。

 桐条家の別荘から砂浜までは、そこまでの距離はない。

 ……屋久島だからこそ、それでもうるさくはないんだよな。

 これがもし、首都圏にある砂浜の近くだと、夜になれば花火やらバーベキューやらで、かなりうるさい事になっていただろう。

 そうして砂浜に到着すると……

 

「やーくーしーまー!」

 

 不意に叫び声が聞こえてきて、思わず驚きの表情を浮かべる。

 いや、もしこれで叫んだのが順平であれば、俺もそこまで驚くような事はなかっただろう。

 だが、叫んだのが普段は大人しいというか、面倒臭がりな有里となれば、驚いて当然だった。

 

「あ、有里……?」

 

 驚いたのは俺だけではなく、真田も同様だったのだろう。

 唖然としながら、有里に視線を向けていた。

 当然のように、順平も有里に驚きの視線を向けている。

 

「いや、ちょっと何となくエリザベスに言われてたから」

「誰だよ、エリザベスって」

 

 有里の口から出てきた女の名前に、思わずそう突っ込む。

 ……いや、けど本当にエリザベスって誰だ?

 山岸の名前が出てくるのであれば、特にそこまで気にするような事はなかったのだろうが、まさかここで他の女の名前が出てくるとは思わなかった。

 エリザベスという名前からして、外国人の女だろう。

 もしくは源氏名という可能性もあるか?

 そんな風に考えつつ……再び、『やーくーしーまー』と叫んでいる有里を、俺達は眺めるのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1389

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