転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0184話

 オーブに技術協力員として招かれ、連れてこられた場所。司令部とも言えるその部屋からは3機のM1アストレイの姿が見えていた。

 

「アサギ、ジュリ、マユラ」

「はーい」

 

 エリカの呼びかけに3人の声が返ってくる。この3人がいわゆるアストレイ3人娘なのだろう。

 

「あ、カガリ様?」

「あら、本当」

「なぁに、帰ってきたの?」

 

 そんな通信が聞こえてくる。その口調はカガリを様付けで呼んではいるが仲がいいのだろう、どこか気安い態度に感じる。

 

「悪かったな」

「始めて」

 

 ふてくされたようなカガリの態度に構わず、エリカが命令する。

 

「はい」

 

 そう答えて動き出したM1アストレイだったのだが、一歩進むのに数秒掛かり、格闘戦でもしているつもりなのだろうが演舞の如くゆっくりとした肘討ちを繰り出している。その鈍くささは、それこそ亀の如くと表現するのが正しいだろう。

 カガリもその様子を見ながら、呆れたように口を開いた。

 

「相変わらずだな」

「これでも倍近く速くなったんです」

 

 その言葉に思わず顔を見合わせる俺とキラ。

 

「……これで、か?」

「ええ。Gのパイロットとして正直な感想を聞かせて貰える?」

「えっと……アクセルさんお任せします」

 

 ちゃっかりと俺に答えを振るキラ。その様子に苦笑を浮かべながら肩を竦める。

 

「敵の的以外の何物でもないな。これならまだメビウスやスカイグラスパーなんかのMAの方が役立つだろう」

「ひっどーい! ちょっと自分がMSに乗れるからって!」

 

 俺の言葉が聞こえていたのか、通信から不満の声が聞こえてきた。

 

「その、アクセルさんは言い過ぎだと思いますが……これで戦場に出るのはちょっと」

 

 キラもやはり俺と同じ意見らしい。少なくてもこのM1アストレイ相手ならグラスゴーでも有利に戦えるんじゃないだろうか。

 

「ほらほら、気を抜くとまた転ぶわよ。……2人の言ってる事は残念ながら事実よ。だから、私達はアレをもっと強くしたいの。ストライクやブリッツのようにね」

「え?」

「キラ君にお願いしたい技術協力というのは、アレのサポートシステムのOS開発よ」

「こうして見る限りでは、機体自体の完成度はそれなりに高そうだが……」

 

 よろよろと動いているM1アストレイの様子を見ながら、前々から気になっていた事を尋ねてみる。

 

「シモンズ主任、M1アストレイを見ていて疑問に思った事があるんだがいいか?」

「ええ、何かしら? それとこれからは一緒に仕事をするんだしそんな堅苦しい呼び方はしないでいいわよ」

「分かった。では以後エリカと呼ばせてもらおう。それで先程聞いたオーブの理念云々を考えるに、基本的にこのM1アストレイは防衛用のMSと考えていいんだな?」

「そうね」

「……なら、なんで地上用なんだ?」

「え?」

「空戦用……というのは無理にしても、島国のオーブで何で陸戦用なんだ? オーブを戦場にしない為にも領海に入った敵を撃破するなりなんなりする為には水中用MSを最優先で開発した方が良かったんじゃないのか?」

 

 オーブは島国という地形上、敵がオーブに上陸する事は即本土決戦となってしまう。そうなれば当然オーブの国民にも被害が出る訳で、そうならない為には敵が侵入してきたのを察知したら水中用MSを発進させて本土に近づく前に撃墜してしまうのが一番早い。だが、何故かオーブが開発しているM1アストレイは地上戦闘用の機体なのだ。

 ちなみにベストなのは空を飛ぶ事の出来るMSなのだが、5機のガンダムですら完全に飛行可能な能力を持っていないのだからその辺はさすがに無理だと分かっている。

 俺のその質問に、エリカは溜息を吐く。

 

「確かに普通はそう考えるわね。私もそう思うわ。……でもモルゲンレーテ社の上層部や政府の一部による高度な政治的判断という奴で水中用MSではなく地上用MSの開発が最優先されたのよ」

 

 確かに一番MSを欲したのは連合軍で、そしてMSの活躍の場は水中と陸のどちらが期待されているかと言えばオーブのような特殊な地形では無い限りは、やはり陸だろう。そういう事情があったのなら水中用MSではなく陸戦用MSを開発したのもしょうがないのかもしれない。

 

「それと、水中用MSを開発するといってもやっぱりベースとなる機体はどうしても必要なのよ。一から水中用MSを作るにしてもMS自体のノウハウがないとどうにもならないしね」

 

 なるほど。ファーストガンダムではザクⅡをベースにザクマリンタイプを開発し、そのノウハウを用いてゴックやアッガイ等の水中用MSを開発したのと同じような事か。

 この情報は使えるな。水中用の機体、シーリオンのような既に実戦証明付きの機体を提供すれば、そこからのノウハウで水中用MSなりなんなりを作るのはそう難しくない筈だ。特にこのオーブのような島国では多少先を見える目を持ってるものなら水中用MSの重要性は理解出来るだろう。

 ウズミ・ナラ・アスハとの交渉カードとしてはかなりの武器になるな。

 

「質問の答えは大体分かった。だが、オーブが戦場になる可能性がある以上水中用MSは出来る限り早く開発しておいた方がいいと思うぞ」

「それは地上でザフトのMSと戦ってきた経験からのアドバイスかしら?」

「ああ。インド洋でザフトの水中用MSに襲われたが、かなり手間取る事になった。ブリッツに水中で使える武器が少ないというのもあるが、海という地形はそれだけ絶大な効果を発揮する」

 

 海の地形適応がSである俺にしてそうなのだ。その辺の普通のパイロットがM1アストレイで水中の敵と戦うというのがどれだけ厳しいものかは想像するしない以前の問題だろう。

 

「キラはグーンと海中で戦ってどう思った?」

 

 近くで俺とエリカの話を聞いていたキラへと尋ねる。海中での戦いに関して言えば殆どをストライクに任せていたのだから、俺の意見よりは参考になるだろう。

 

「そうですね、とにかく実弾兵器しか使えないのに海水による抵抗でこちらの攻撃はかなり遅くなってしまいます。それに比べるとグーンは海中での移動が素早くて最初はかなり翻弄されましたね。僕の場合は幸い敵の方から突進してきてくれたので、至近距離からアーマーシュナイダーを突き刺す事でどうにかなりましたが」

「と、言う事だ。平和の国と呼ばれているこのオーブを火の海にしたくないのなら、早い所水中用MSを開発する事を提案する」

「ありがとう。でも、水中用MSを開発するにしても、まずはそのベースとなるM1アストレイを完成させないとどうにもならないのよ。けれど現場の、しかもナチュラルのMSパイロットの意見だし是非上に上げさせて貰うわ。他に何か気が付いた事はある?」

「……そうだな、空中用MSが無理なのは分かっているがザフトのグゥルのようなものを開発してみるというのはどうだ? 幸い俺が鹵獲したものがアークエンジェルの格納庫にある筈だ。マリュー達と交渉して、解析なり分析なりしてM1アストレイ用に同じような物を作る事が出来ればMSの展開能力も大分違うかもしれないな」

 

 俺の話を聞いたエリカが近くにある通信機を使い、どこかに連絡を取っている。恐らくアークエンジェルに対する交渉か何かの準備だろう。

 

「ありがとう。参考になったわ」

「参考になったようで何よりだ。……それで話は戻るんだがキラの仕事はナチュラル用のOS開発とあったが、俺は何をすればいいんだ?」

「アクセルさんにはM1アストレイのテストパイロットをお願いするわ」

「テストパイロット……ねぇ」

 

 今だ視線の先でノロノロと動いている機体を眺める。正直今の状況でテストパイロット云々というのはまだ早い気がする。

 俺の視線の先を見て、何を言いたいのか分かったのだろう。苦笑を浮かべながらエリカが口を開く。

 

「もちろん、今のアストレイじゃないわ。キラ君のOS開発が終わった後の話よ。それとナチュラルである貴方のMS操縦に関するレクチャーなんかもお願いしたいのだけど」

「レクチャーか。俺としては別に構わないが……どう思う?」

 

 微かに眉を顰めているキラへと声を掛ける。するとキラは軽く首を振った。

 

「話は分かりますが、やめておいた方がいいと思います。アクセルさんの操縦はどちらかと言えばコーディネーターのようにOSの不備を身体能力で補っているので。……いえ、正確に言えばコーディネーター以上の身体能力、ですね」

「……俄には信じられないけど……本当?」

「ええ。ブリッツはストライクと同じ数値に設定したOSを使っていたんですが、アクセルさんの反応速度がOSの処理速度を超えていてOSが落ちた事があったんです」

 

 キラのその言葉に以前の戦いを思い出す。……まさか戦闘中にOSが落ちてブリッツが使えなくなるとは思えなかった。ああいうのを肝が冷えたと言うんだろう。

 

「それはつまり、アクセルさんはコーディネーターのキラ君よりも反応速度が上と考えてもいいのかしら?」

「そうですね。純粋な身体能力で言えば僕はアクセルさんの足下にも及びません。何せヘリオポリスでは元々ブリッツにインストールされていた、欠陥品と言ってもいいOSでジンを仕留めているんですから」

「あのOSで!?」

 

 驚愕の表情を貼り付け、俺の方を見てくるエリカ。この驚きようから見ると初期のOSをある程度は知っているのだろう。

 

「と言っても、本当にギリギリだったがな」

「……貴方、本当にナチュラル?」

「少なくても、検査では俺がナチュラルという事になっているな」

 

 まぁ、単純に遺伝子検査では俺のチート的な能力を判別出来ないというだけの話なんだが、俺がナチュラルだという事で油断してくれるような馬鹿も多いしその点は存分に利用させて貰おう。

 そんな事を考えていると、俺達の側にある扉が開き一人の男がどこか慌てた様子で入ってくる

 

「シモンズ主任! 一体何なんですかあの機体は!」

 

 整備員らしきその人物は司令部へと入って来るなりそう叫ぶ。その声の大きさは司令部にいる面々の注目を集めるのに十分なものだった。

 

「声が大きいわよ。それで、機体ってストライクとブリッツの事?」

「ええ。ストライクもですが、特に問題なのはブリッツです。電磁流体ソケットの摩耗が限界ギリギリです。他にも関節駆動部も限界近くまで損耗していますね。恐らくですが、もう数回戦闘に参加していれば関節がポッキリといってましたよ。あれってヘリオポリスで造られてたっていう新型ですよね? よくもまぁ、こんな短時間であんなに機体を酷使したものです」

「……ですってよ?」

 

 どこか面白そうな笑みを浮かべながらこちらへと視線を向けるエリカ。それに対して俺は苦笑を返す事しか出来なかった。

 

「そう言われてもな。一応これでも機体の事は考えて使ってたつもりなんだが」

「あんたがブリッツの?」

 

 司令部に飛び込んできた整備員が俺の方を見る。と言うか、視線でロックオンという表現がピッタリな感じだ。

 

「ああ。それ程酷いのか?」

「酷いと言うか何と言うか……そうだな。最新鋭の車だったのが、ふと気が付けば20年程乗り回した中古車になってたって言えば分かりやすいか?」

「中古車、ねぇ」

「ともかく、よくあの状態で今まで戦って来られたな。アークエンジェルの整備員達の実力もあるんだろうが」

「実力?」

「ああ。最新鋭の機体を、しかもこの短期間であれだけ酷使したものを毎回毎回整備していれば、それだけで整備員の実力は上がっていく。そして実力が上がっているからこそ、あの状態の機体を何とかここまで保たせる事が出来た訳だ」

 

 機体が人を育てる、みたいな話か。

 

「どのみち、オーバーホール……どころじゃないな。部品によっては完全に新規生産品に総取っ替えする必要のある場所もあるし、かなり時間が掛かるな」

「具体的には?」

「そうだな……まぁ、アークエンジェルの修理が完了するまでにはギリギリ何とか、という所か」

「すまんが頼む。それと関節部分に特に負担が掛かってるらしいが……」

「アレは機体がパイロットの反応速度について行けてないからこその消耗だな。機体のスペック以上の能力をOSで強引に引き出している弊害だろう」

 

 その言葉にキラがどこか申し訳なさそうに口を挟んでくる。

 

「すいません。OSの設定は僕がやりました。でもアクセルさんの反応速度に対応させるにはどうしてもどこか無理をさせるしかなくって」

「いや、分かってる。俺だって整備のプロなんだから、機体の状態を見れば大体の予想は出来る。……ようは、パイロットの腕についていくには機体自体がスペック不足なんだろうな。一応対応は幾つか考えられるからこっちでなんとかしてみるよ。……ただ、アクセルさんだっけ? そもそもの原因は機体の性能があんたの能力に追いついていない事だから、泥縄的な対処以外は出来そうにないな」

 

 機体自体のスペック不足ね。グロウセイヴァーでもなければ俺の能力をフルには使えないって事なんだろう。一応計画通りに行けばそのうちグロウセイヴァーの出番はあると思うが……それまでは多少セーブしてブリッツを使うしかない、か。

 こうしてモルゲンレーテへの出向生活は幕を開けた。




名前:アクセル・アルマー
LV:36
PP:115
格闘:254
射撃:274
技量:264
防御:264
回避:294
命中:314
SP:446
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    ???
    ???
    ???
    ???
    ???

撃墜数:278

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