転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1978話

 結局タカヤは、俺がここで見張っているということになった。

 美鶴にしても、先程の反応からタカヤを武治の下に連れていくのは不味いと思ったのだろうし、同時に俺がいればタカヤが妙な真似をするとは思えなかったし、同時に俺がここに残ればルキアを使って戦闘している者をフォローする山岸の護衛に丁度いいという思いもあったのだろう。

 そんな訳で、俺はこうして山岸とタカヤの2人、そして取りあえずこっちに残した子猫の炎獣と共に、広い空間にいた。

 

「言っておくが、妙な真似はするなよ。その炎獣は、見た目は可愛いけど、純粋に戦闘力も高いからな」

 

 実際、炎獣は数を揃えればという前提ではあるが。MSですら倒す事が可能だ。

 幾らペルソナを使えるとはいえ、ただの人間――ペルソナ使いをそう呼んでもいいのかは微妙だが――が炎獣を相手に何が出来る訳でもない。

 

「分かりました。では、私はここで大人しく待っているとしましょう」

 

 タカヤはその言葉通り、大人しく俺から距離を取ると地面に座り込む。

 この汚い床に座れば間違いなく汚れるのだろうが、本人は全く気にした様子もない。

 まぁ、そういう性格をしていると思えば、そうなんだろうが。

 そんなタカヤを一瞥すると、戦闘している連中と何かを話している山岸を見る。

 正直なところ、ここに俺とタカヤ、山岸というメンバーを残されても、いったいどういう会話をしたらいいのやら。

 まさか、この3人で愉快に話し合え……なんて事は、考えてないよな?

 美鶴は時々妙な方向にぶっとんだりするから、もしかしたら……本当にもしかしたら、そんな風に思ってしまっても、仕方がない、か?

 いや、ないない。まさか、幾ら何でも美鶴がそんな風に思うことはない筈だ。うん、多分。

 ふと思いついたその内容を忘れるように、俺は空間倉庫の中からペットボトルに入った紅茶を取り出して口を付ける。

 喉を潤す冷たい紅茶の味に満足していると、ふとタカヤが俺の方を見ているのに気が付く。

 

「どうした?」

「いえ、その飲み物……一体、どこから取り出したのかと思いましてね。先程の槍もそうでしたが、それが貴方の能力なのですか?」

「さて、どうだろうな。もしかしたらそういう効果のあるマジックアイテムを持っているのかもしれないぞ?」

「……貴方が言っていた、力。それは一体どのようなものなのか、お聞きしても?」

 

 タカヤはこの機会に少しでも情報収集をしようというところか。

 いや、その気持ちは分からないではない。

 俺以外の面々は、ペルソナ使いという事でその能力もどのようなものなのかは大体想像が出来る筈だ。

 勿論コロマルのように犬のペルソナ使いだったり、有里のように様々なペルソナを好き放題に使えるペルソナチェンジの能力を持っているというのは、予想外だったろうが。

 

「そうだな。力というのは別にペルソナだけじゃない……とだけは言っておくか。お前にとってそれが認められるのかどうかは分からないが」

「……力はペルソナだけではない……」

 

 俺の口から出た言葉が、予想外にタカヤに衝撃を与えたらしい。

 さっきも同じような事を言ったんだし、そこまで衝撃を受けるような事ではないと思うんだが。

 ただまぁ、タカヤが衝撃を受けるのであれば、こっちにとっては間違いなく利益となる。

 まだ明確に敵対した訳ではないが、それでも敵対するのは時間の問題なのだから。

 こちらは影時間を消したい、タカヤ達は影時間を消したくない。

 他の点はまだしも、この一点だけはお互いにどうしようもないのだ。

 

「あ、戦闘に入りました! 戦車!? 向こうは……2匹です!」

 

 律儀に報告する山岸の声に、少しだけ驚く。

 イレギュラーシャドウが2匹いるのは今までの経験から納得出来る事があったが、そこに戦車という言葉が入っていた為だ。

 戦車というのは、ペルソナの属性……という訳ではないだろう。

 ここが旧陸軍基地であった事を思えば、本物の戦車という可能性が高い。

 生憎と旧陸軍がどのような戦車を使っていたのかというのは俺にも分からないから、その戦車が具体的にどんな戦車なのかというのは分からないが。

 

「向こうだけでどうにかなりそうか? もし無理なようなら、援軍に向かうけど」

 

 一応俺はタカヤの監視と山岸の護衛という名目でこの場に残っているが、山岸の護衛という意味では子猫の炎獣がいれば十分だし、それはタカヤが妙な真似をしないようにという意味でも同様だ。

 ましてや、先程の会話からすると、タカヤは俺が持つ力を……自分の知らない未知の力を知りたがってる。

 そうである以上、ここでタカヤが迂闊な真似をするとは思えなかった。

 もっとも、本当に何かがあった時に炎獣で臨機応変に行動出来るかと言われれば微妙なところなので、出来れば俺がこの場に残った方がいいのは事実なんだが。

 だが、だからといって向こうを……ゆかりや美鶴達が戦車にやられてしまっては、何の意味もないのは事実なのだ。

 しかし、山岸の口から出たのは俺にとって予想外の事だった。

 

「大丈夫です。向こうは問題がないから、こっちを守っていて欲しいと」

「……なるほど」

 

 この言い方からして、山岸の意見という訳ではないのだろう。

 美鶴辺りの言葉か?

 まぁ、美鶴にとっても本当にピンチなら援軍に来て欲しいと言うだろうし、何よりタカヤという存在は色々な意味で重要な存在となり得る。

 まさか、自分達とは別口のペルソナ使いがいるとは、美鶴にとっても完全に予想外だったのだろうし。

 それにタカヤはジンと共に行動していた。

 これはつまり、俺達や美鶴達以外にもペルソナ使いのグループがある事を意味している。

 そして、もしかしたら……本当にもしかしたらだが、俺達、美鶴達、タカヤ達……それ以外にも、ペルソナ使いがいるかもしれないという事を意味している。

 もっとも、この世界では昔からシャドウやらペルソナ使いやらがいたらしいというのは記録に残っている以上、別口にペルソナ使いがいても全くおかしくはないのだが。

 いや、俺達と同じ地域にいるというのには多少違和感があるが。

 ともあれ、そういう意味でもタカヤという存在は貴重な情報源なのは間違いない。

 そのタカヤの監視をしっかりとしておけというのであれば、向こうがピンチにならない限り、俺はその指示に従おう。

 

「私を監視するのはいいですが、それで向こうが負けてしまえば、意味がないと思いませんか?」

 

 タカヤの口から出たのは、挑発染みた言葉。

 俺を動揺させようという為の言葉……ではなく、どちらかと言えばこっちの様子を探る為の言葉というのが正しい。

 勿論、それで本当にこっちの様子を探れる……などとは、思っていないだろう。

 だが、それでも向こうにとっては、試す価値があるという事か。

 ……まぁ、余程の事をしない限りは、情報を引き出されるよりも前に自分が殺されるなんて事はないと、そう理解しているからこその行動だろうが。

 自分が殺されない以上、今の状況で出来る事はなんでもやっておこうと、そう考えての行動なのだろう。

 それは別に、おかしな話ではない。

 いや、寧ろ敵に捕らわれた者としては、立派な行動であるとすら言えるだろう。

 もっとも、それが本当に効果があるかどうかというのは、また別の話なのだが。

 

「そうだな。負ければ意味がないかもしれない。だが、それはあくまでも負ければ、の話だ。逆に言えば、負けなければ意味はあるだろう?」

「あのような破滅の使者に勝てると、そう思っているのですか? 貴方のような戦力があればまだしも、彼等だけでは手に余るのでは?」

 

 破滅の使者、か。

 タカヤがどこまでシャドウや影時間についての情報を持っているのかは分からないが、破滅の使者なんて言葉が出てくるって事は、10年前に起こった事件の真実を知っていると考えて間違いはない。

 俺達ですら、つい最近知ったばかりの情報を、桐条グループとは何の関係もないタカヤが何故知っているのか。

 いや、武治の名前を出した時の反応を思えば、タカヤとジンが桐条グループと何らかの関係を持っていてもおかしくはない。

 ……もしかして、実は幾月と繋がっているって線はないよな?

 現在、限りなく黒に近い灰色の存在の幾月。

 俺の中では灰色どころか、完全に真っ黒の存在なんだが……まぁ、その辺はいずれ桐条グループの内部監査の連中がどうにかしてくれるだろう。

 

「手に余る、か。お前がどう思っているのかは分からないが、ゆかり達はかなりの遣い手だぞ。お前が具体的にどれくらい強いのかは、俺にも分からない。だが、恐らくゆかりと戦えば無事で済むとは思えないな」

「ほう? ゆかりというのは……どの女の人でしょうか? そこの人は調査型のペルソナですし、桐条グループの娘は桐条美鶴という名前だった筈。そうなると、あの髪の短い女ですね」

「そうだ。俺が知ってる限りだと、ゆかりが最強のペルソナ使いだ」

 

 才能という点では、そこまで突出したものがある訳ではない。

 だが、連日連夜タルタロスで戦い続けた事もあり、こと実戦経験という意味ではゆかりに敵う奴はそういない。

 そして戦いの中で重要なのは、才能もそうだが実戦経験も大きい。

 勿論、タカヤがゆかり以上に実戦を重ねていれば話は別だが……さて、どうだろうな。

 まぁ、いつくらいにペルソナ使いとして覚醒したかにもよってくるが。

 

「ほう、それは楽しみですね」

「……楽しみ?」

「ええ。それだけのペルソナ使いであれば、私が会うのを楽しみにしてもおかしくないのでは?」

 

 そう告げるタカヤは、特に何か隠していたりする様子はない。

 出来れば、タカヤをゆかりに近づけたくはないんだがな。

 タカヤの持つ破滅願望というのは、非常に厄介な代物だ。

 正直なところ、破滅願望を持つのであれば、自殺でもしてその破滅願望を満足させていればいいと思うんだが、何故かこういう奴程、自分だけではなく周囲の者達も巻き添えにして破滅する事を望むんだよな。

 

「っ!? 向こうから連絡が来ました。無事にイレギュラーシャドウを倒したそうです!」

 

 山岸の嬉しそうな声が周囲に響く。

 そうか、倒したか。

 2匹のイレギュラーシャドウだって話だったのを思えば、残り4匹。

 この調子で毎月2匹ずつイレギュラーシャドウが現れてくれれば、10月には影時間が解決する事になる。

 そして影時間が解決すれば、恐らくだが俺がホワイトスターに戻る事も出来るようになる筈だ。

 

「……ほう。どうやら貴方が言っていた事は、嘘ではなかったようですね。まさか、破滅の使者がこうも簡単に倒されるとは」

「ゆかり以外にも、強いペルソナ使いはいるしな」

 

 戦力的に大きいのは、有里とコロマルだろう。

 ペルソナチェンジという特殊能力で、相手の弱点を容易に突く事が出来る有里に、非常に高い潜在能力を持つケルベロスを操るコロマル。

 最近仲間になったアイギスも、ペルソナに加えて生身でも非常に高い戦闘能力を持っている。

 ……いや、武器を内蔵しているアイギスの場合、生身と表現するのが正しいのかどうかは微妙だが。

 

「興味深いですね。……ともあれ、その辺については後でもいいでしょう。それで、これからどうするのです?」

「ゆかり達が戻ってきたら、お前を運ぶ。何か企んでいるんだろうが、迂闊な真似はしないようにするんだな」

 

 そう言いつつ、召喚器を持っていないペルソナ使いってのは非常に厄介だ。

 召喚器を持っているのであれば、それを取り上げればペルソナを召喚する事は不可能になる……とまではいかないが、それでも召喚してもすぐに消えてしまう。

 それこそ、ゆかりやコロマルが最初にペルソナを召喚した時と同じような感じで。

 だが、タカヤの場合はそれが通じない。

 召喚器なしで召喚を出来るのであれば、それを止める手段は……それこそ、タカヤを昏睡状態にして意識を奪うといった真似をする必要がある。

 ……あ、でもペルソナについて研究している桐条グループなら、もしかしてペルソナを召喚させないようにする何らかの手段はあるか?

 いや、でもそうなると幾月に話を……どうせならもっと上の武治に直接話をすれば?

 うーん、正直微妙なところだ。

 そんな風に考えていると、やがて通路の向こう側から話し声が聞こえてくる。

 

「わん、わんわん!」

 

 真っ先に通路から走ってきたのは、その鳴き声通りコロマル。

 身体が土埃に塗れてるのは、それだけ激しい戦いであったという事の証だろう。

 もっとも、怪我をしている様子が見えないので取りあえず一安心といったところだが。

 

「アクセル!」

 

 そして次に戻ってきたのは、ゆかり。

 俺を見ながら、笑みを浮かべて声を掛けてきたのに、軽く手を振り返すのだった。

 どうやら、ゆかりも怪我をしていないようで何よりといったところか。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1389

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