転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1981話

 夏祭り、当日。

 午後6時近くになり、少しずつだが薄暗くなってきている中で、俺は長鳴神社の階段の下で待っていた。

 ちなみに、俺の服もいつもの私服ではなく、甚兵衛だったか? それだ。

 ……こういうのは当然持ってないので美鶴に頼んだんだが……何だか微妙な顔をされつつも、取りあえずこの甚兵衛を用意してもらったのだ。

 俺の近くには、他にも何人もの男女がいる。

 ここで何をしているのかといえば……

 

「あ、ごめん、水木君。待たせちゃった?」

「ううん、大丈夫だよ。……それにしても……」

「ちょっ、何よ。その……似合わない?」

「ううん。似合う。あまりにも似合いすぎて、びっくりした」

「もう、馬鹿」

 

 お前が馬鹿だ、お前が。

 こういう気分、どう表現するんだったかな。……そうだ。口から砂糖を吐く、だったか?

 普段であれば、別にそこまで気にするような事はないのだが、ここで待っている人物は相手が来ると全員同じような対応をするんだよな。

 イチャイチャするのを間近で聞いている俺としては、一度や二度ならともかく、何度も繰り返されるとさすがにうんざりとしてくる。

 ともあれ、イチャついていた2人が階段を上っていくのを見送り、周囲を見る。

 コロマル辺りがいれば、まだ時間を潰す事も出来たんだろうが……残念ながら、今日はコロマルがいないんだよな。

 やっぱり夏祭りをやるということで、コロマルがいると色々と問題になるからってのが大きいんだろう。

 知ってる人はコロマルの事を当然知っているが、知らない奴は当然のようにコロマルの事を……ここの神主が以前飼っていた犬の事を知らない者が多いだろうし。

 そして、夏祭りをやるために屋台を用意するとなれば、当然のようにその屋台をやる人は地元の人間ばかりって訳じゃない。

 食べ物の店をやる以上、そこにコロマルのような犬がいると、色々と不味いのも事実だ。

 やっぱり、コロマルをこっちで保護した方がいいのか?

 けど、俺のアパートは当然のように、ペット禁止だしな。

 特にアパートはかなり古いから、壁とかもそこまで防音がしっかりとしている訳ではない。

 そうなれば、当然のように鳴き声とかが他の部屋にも聞こえる訳で……

 部屋を借りてるけど、実際には帰ってきてないって奴が多いアパートだが、それでも全員が必ずしもそうだという訳ではない。

 だとすれば、コロマルの鳴き声がうるさいと感じる奴もいるだろうし。

 ……これがホワイトスターと自由に行き来出来る状況であれば、それこそホワイトスターで保護するという手段もあるんだが。

 それが出来ないとなると……巌戸台分寮?

 いや、けどな。幾月のいる場所にコロマルを住まわせるような真似をしたくはない。

 俺の認識では、既に幾月は敵だ。

 そんな場所に、コロマルが……それも、犬でペルソナ使いという、極めて珍しい存在を連れて行けばどうなるのかは、それこそ考えるまでもないだろう。

 一応武治の方に手を回して、召喚器としても使えるコロマルの首輪を調べて貰ったが、そちらの方は特に問題がないらしい。

 今にして思えば、俺もよく幾月にコロマルの召喚器を任せたよな。

 下手をすれば、それこそ何か仕掛けられている可能性は否定出来なかった筈だ。

 

「アクセル!」

 

 そんな風に考えていると、不意に名前を呼ばれる。

 声のした方に視線を向けると、そこにはゆかりの姿があった。

 それも浴衣姿の、だ。

 普段は活動的で動きやすい格好を好むゆかりだったが、今日は赤……いや、ピンクよりか? それと白のチェック柄の浴衣だ。所々に何かの花もあり、見る者の目を引く。

 

「その、どう……かな?」

「ああ、似合ってるぞ。普段は活動的なゆかりが浴衣を着ているってのは、どこか新鮮なところがある」

「もう、馬鹿」

 

 どこかで聞いたような言葉で照れるゆかり。

 うん、そうだよな。どこかで聞いた覚えがあると思ったら……さっき俺が待っている時に待ち合わせした奴が同じようなやり取りをしていたな。

 ふとそれに気が付いて周囲を見ると、やはりというか、待ち合わせをしている男達が俺に向かって嫉妬の視線を向けていた。

 まぁ、ゆかりはかなりの美人で月光館学園の中でも人気のある女だ。

 そういう相手が浴衣姿で俺とイチャついていれば、当然嫉妬を向けてくるのも当然だろう。

 別に俺の場合は嫉妬されたからって……それこそ、絡んできてもどうとでも出来るのだが、そうなれば折角の夏祭りなのにゆかりも気分を害するだろう。

 そんな事にならないように、取りあえずこの場を離れるか。

 

「境内の方に行くか、ゆかり」

「うん。……その、アクセルもその甚兵衛似合ってるわよ」

 

 俺に浴衣を褒められた照れか、自分が俺を褒めた照れか、はたまた俺と夏祭りでデートをするのが気になったのか……ともあれ、ゆかりが俺の方を見てそう言ってくる。

 

「そうか、そう言って貰えると着てきた甲斐があったな。もっとも、浴衣じゃなくて甚兵衛を褒められるってのは、ちょっとどうかと思わないでもないけど」

 

 浴衣を褒めるというのは、よく聞く言葉だ。

 だが、甚兵衛を褒められるというのは……あまり聞かないような気がする。

 まぁ、褒められて嬉しくないかどうかと言えば、間違いなく嬉しいのだが。

 

「じゃあ、行くか」

「うん」

 

 そっと手を手出すと、布袋……巾着って名前だったか? ともあれ、それを持っていない方の手で俺の手を握るゆかり。

 指と指を絡める繋ぎ方で手を繋ぎ、夏祭りが行われている長鳴神社の境内に向かう。

 何だか背後から舌打ちの類が聞こえてきたような気がするが、きっと、多分、恐らく気のせいだろう。

 ……まぁ、そういう行為をした奴だって、結局のところ恋人、もしくはそういう仲に発展しそうな相手と待ち合わせをしているのだから、その相手が来れば俺と同じような行動をして、まだ残ってる奴に同じように舌打ちされるんだろうが。

 

「浴衣なんて滅多に着ないから、ちょっと動きにくいわね」

「階段に躓かないようにしろよ」

「躓いたら、助けてくれるのが、その……か、彼氏の役目じゃない?」

 

 まだ赤いままの頬をより一層赤くしながら告げてくるゆかりに、俺はそっと握っている手を引く。

 転ばないように、引っ張り上げるように。

 そんなやり取りをしながら階段を上りきると、そこではまさに夏祭り……といった光景が広がっていた。

 普段であれば人は殆どいない長鳴神社の境内には、それこそどこからこれだけ集まってきたのかと言いたくなるような者達が集まっている。

 そして、多くの屋台。

 綿飴、たこ焼き、お好み焼き、焼きそば、イカ焼き、かき氷……その他ざまざまな屋台が幾つも並んでいる。

 型抜き、金魚すくい、お面屋、射的といった定番以外にも、紐を引くくじ引きがある。

 紐の先には最新式のゲーム機やデジカメなんかが結構あるけど……こういうのって、本当に紐に繋がってるのか?

 こういうくじ引きで当たってる客を見た事がないんだが。

 まぁ、そういう雰囲気を楽しむものだって言われれば、そうかもしれないけど。

 

「うわぁ……凄い人ね」

 

 客の数を見ながら、ゆかりが呟く。

 実際、歩くのにも苦労しそうなくらいの人がここには集まっている。

 もっとも、東京の人混みに比べればそこまで酷くはないのだが……やっぱり、この境内だからこそ、余計に多く感じるというのもあるんだろう。

 

「さて、じゃあ……まずどの屋台に行く? 定番のたこ焼きからか? オクトパシーで店を出してるらしいから、外れはないと思うけど」

「えっと、そうね。……あ、やっぱり夏祭りに来たら、まずはこれでしょ」

 

 そう言ってゆかりが指さしたのは、お面屋。

 アニメのキャラから特撮のキャラ、もしくは動物……色々なお面が売りに出されている。

 まぁ、これも夏祭りの屋台で定番だよな。

 そんな風に思いながら、俺は狐のお面を、そしてゆかりは犬のお面を買う。

 普通にお面を被るのではなく、頭の横に被るような感じにしながら、夜店を楽しんでいく。

 最初に寄ったのは、たこ焼き屋。

 オクトパシーの出店ということで、味については他の何も知らない店よりは安心感がある。

 ……まぁ、オクトパシーのたこ焼きそのものが、材料にタコ以外の何かが入っているという噂があるんだが……取りあえず俺が今まで食べてきた感じだとそういうのが入っていた事はなかった。

 

「うん、やっぱり美味いな」

 

 夏祭り風と言うべきか、船型の入れ物に入っているたこ焼きはかなりの味だ。

 たこ焼きの本場と言えば大阪だけど、多分それに負けてないんじゃないだろうか。

 いや、大阪のたこ焼きは食べたことがないから、何とも言えないが。

 

「ね、アクセル。あれ、ちょっとやってみない?」

「うん? ……ああ、輪投げか。またレトロなものを……」

「夏祭りっぽくない?」

 

 そう言われれば、夏祭りっぽい……か?

 まぁ、紐で引くクジとは違って明確にインチキとかはされてないように思えるし、やってみても面白いだろう。

 そんな訳で、オクトパシーの屋台から少し離れた場所にあった輪投げに挑戦する。

 ちなみに、一番高額の商品は最新鋭のゲーム機なんだが……当然目玉商品らしく、簡単に取られないようにはなっていて、輪を入れる的のすぐ後ろにはTVが置かれて映像を流していた。

 うん、まぁ、狙いは分かる。高額商品だけに、そう簡単に取られてたまるかと、そんな意図なんだろう。

 そのTV画面が壁になり、少しでも勢いが強ければその画面にぶつかって跳ね返り、輪は目標に入らないようになっている。

 

「お、兄ちゃん。可愛い恋人連れてるね。どうだい、少しやってくかい?」

 

 そんな屋台の店主に金を払い、早速チャレンジ。

 まずは普通に取りやすい、キーホルダーを狙って……見事に輪が入る。

 そして次にお菓子やコップなんかの簡単な商品を狙っていき……その全てが成功し、幾つもの小物を入手することに成功した。

 当然一度も外すことなく輪を入れている俺の様子に、店主が難しい表情を浮かべていた。

 もっとも、別に念動力とかのようなイカサマの類はしていない。

 これは純粋に俺の身体能力や五感を使っての行動だ。

 

「さて……じゃあ、輪も最後の1個になったし、ラスボスを狙うとするか」

 

 そうして視線を向けたのは、TV画面の前に置かれている標的。

 そう、最新鋭ゲーム機を貰える標的だ。

 ラスボスらしく、輪が入る棒の部分も他よりかなり太くなっており、それこそ丁度スッポリと真上から落ちなければ入らないようになっている。

 だが、だからこそ、それを狙う価値があるのだ。

 

「よし、ラスト1回だ。好きな場所を狙ってみな!」

 

 店主の言葉に、俺は手の中にある輪をしっかりと握る。

 

「アクセル、頑張って!」

 

 そんな俺の横では、ゆかりが応援の声を上げていた。

 その声を聞きながら、俺は意識を集中し……そっと握っていた輪を投げる。

 ふわり、といった感じで飛んでいく輪。

 コースは間違いなく、軌道も問題ない。

 そうしてゆっくりと飛んでいった輪は……次の瞬間、見事に的に入る。

 

『うおおおおおおおおおおおおおおおっ!』

 

 いつの間にか、周囲には観客が集まっていたらしい。

 俺の投げた輪が的に入ったのを見て、歓声を上げている。

 ……あ。何人か見覚えのある奴もいる。いや、見覚えどころか、クラスメイトだ。

 俺がゆかりと一緒に夏祭りに来ていた件……これで、間違いなく広がるだろうな。

 まぁ、それは今更の話か。

 

「うぐぐぐ……やるなぁ、兄ちゃん。文句なしだ。ほれ、持っていけ!」

 

 店主はそう言いながら、最新鋭のゲーム機をこちらに渡してくる。

 ……いや、うだうだ言ってこっちにゲームを渡さないようにしない点は感謝するけど、だからって、箱のまま渡されてもな。

 せめて、持ち運びしやすいように袋に入れろよ。

 そう思うも、取りあえずその箱を受け取る。

 

「ゆかり、ちょっと暗いところに行かないか?」

「ちょっ! あんたいきなり何言ってるのよ!? 馬鹿じゃない? てか、馬鹿じゃない!?」

『おおおおおお』

 

 先程よりは小さいが、再び聞こえてくる周囲からの声。

 あ、そうか。今のはちょっと誤解を招きかねない言葉だったな。

 単純に、このゲーム機を空間倉庫の中に入れるか、もしくは影のゲートでアパートに置いてこようかと思ったんだが。

 

「っ!? ほら、行くわよ!」

 

 周囲の視線に耐えきれなくなったのか、ゆかりは俺を引っ張ってその場を離れる。

 そんな俺達に向かい、ヒューヒューといった囃し立てるような声が聞こえてきたが……正直、今更だしな。

 ともあれ、ゆかりに引っ張られて誰もいない場所に行き、空間倉庫の中にゲーム機を収納する。

 

「全く、何だってああいう紛らわしい事を言うのよ。もう少しTPOってものを……」

 

 そう言いながら、ゆかりと俺は再び屋台を見て回り……

 

「アクセル……」

 

 そんな声に振り向くと、そこには美鶴の姿があった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1389

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