転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0185話

 モルゲンレーテに出向が決まってから10日程。俺はともかく、キラはかなり忙しい時間を過ごしている。もっとも、出向と言っても夜にはアークエンジェルに戻って寝ているので特に違和感はない。

 ただ、オーブのモルゲンレーテにあるMS工場で連合軍の軍服を着て行動するのは困るらしく、最近はモルゲンレーテの作業着が普段着代わりになっている。キラも俺と同じく作業着を着てM1アストレイ用のOSを開発していた。

 そんな日々が続く中、俺はいよいよ以前から計画していた行動を実行に移す事にした。

 

「エリカ、ちょっといいか?」

 

 MS工場でストライクとブリッツのオーバーホール作業の指揮を取っていたエリカへと声を掛ける。

 

「何かしら?」

「ちょっと頼みたい事が2つ程あるんだが……構わないか?」

「ええ、貴方とキラ君の頼みは最優先で受けるように言われているから、私に出来る事なら構わないけど」

 

 ほう。さすがに自国の防衛の要であるMS開発用の技術スタッフとして協力を要請して来ただけあって、それなりに便宜が図られているらしい。

 

「まず、1つ目。なるべく早い内に、ウズミ・ナラ・アスハとの面談のアポを取って欲しい」

「ウズミ様と?」

「そうだな……オーブの防衛に関する事で話がある、と言えば恐らくアポを取る事が出来るだろう」

「……ちょっと待っててくれる? 一応上に相談しないといけないから」

「ああ、構わない」

 

 チラリと俺の方へと視線を向けると、近くにあった通信機でどこかへと連絡を取り始める。色々と突っ込んだ話をしていたようだが、数分後どこか疲れた顔をしたエリカがこちらへと戻ってきた。

 

「明日の夜、23時から30分程度なら面会が可能だそうよ。構わない?」

「ああ。場所は?」

「あまり人目に付きたくないという事で、出来ればこのMS工場のブリーフィングルームでという事だけど……構わないかしら?」

「そうだな、こちらとしても好都合だ」

「好都合?」

「いや、こっちの話だ。それと2つ目の頼みだが、明日の昼くらいまでにMS用コンテナを1つ用意して欲しい。空のな」

 

 俺のその言葉に不審気に眉を顰めるエリカ。

 

「空のコンテナ? 何に使うのか聞いてもいいかしら?」

「ウズミにちょっとしたサプライズプレゼントをな」

「……まぁ、いいでしょう。明日の昼までには用意しておくわ」

「悪いな。だが、オーブに不利益を与える行為でないという事は言っておく」

 

 エリカとの会話はそれで終わり、俺は一端アークエンジェルへと戻る事になった。

 ちなみに、キラはOS開発の仕事があるが、俺はそのOS開発が完了するまでは殆ど仕事がなかったりする。最初はナチュラルとしてのMS操縦に関するレクチャーを期待されていたようだが、俺のMS操縦はOSの不備をコーディネーター以上の身体能力で補っているようなものなので、早々に他のナチュラルに対しては使えない操縦技術だと判明した為だ。なので基本的には無職に近い状況だが、それでもこのMS工場へと呼ばれてパイロットとしてM1アストレイについての意見を聞かれたりと細々とした事をして過ごしていた。

 

 

 

 

 

「あら? アクセル、今日はもういいの?」

 

 アークエンジェルに戻って来たので、それを報告しにブリッジへと入ると俺を見つけたマリューがそう尋ねてきた。

 その口調がどこか嬉しそうなのは俺に会えた事が原因だと考えるのは自惚れか? そんな風に思いつつ、苦笑を浮かべる。

 そう言えば俺達の関係がナタルに知られてしまったとか聞いたが、特に小言を言われるような事はなかったようだ。……自分もムウといい雰囲気だからだろうか。おまけに隠していたつもりが、いつの間にか俺とマリューの関係はブリッジメンバーの中では公然の秘密となっていたらしい。……ブリッジでそれを匂わせる会話をした事もあるし、しょうがないのかもしれないが。

 

「ああ。キラのOS開発にもう少し掛かるみたいだしな。M1アストレイにしても今日は俺に意見を求めるような事はないって話だったから戻ってきた。……にしても」

 

 ブリッジの中を見回す。いつもならサイ達学生組が数人はいる筈なのだが、そこにいるのは元々このアークエンジェルを動かしていたクルー達だけだ。

 

「サイ君達は今頃両親と面会してるわ」

 

 俺の視線で考えている事を理解したのだろう。マリューがそう答えてくる。

 そうか、そう言えば両親との面会というイベントがあったか。……ん? でも確かその面会の日か、その翌日にはM1アストレイのOSが完成していたような気がしたが、キラが現在作っているOSはまだ完成していない。あるいはこれも俺が介入した結果か?

 

「なるほど。ヘリオポリスがあの状態だったんだし、家族との面会は喜んでいただろう?」

「ええ、無事だと分かってはいても実際にその目で確認できるまでは安心出来なかったでしょうしね」

 

 ……っと、そうだ。明日の予定を言っておかないとな。

 

「マリュー、悪いが明日の夜にちょっと用事がある。モルゲンレーテ関連だ。なので22時くらいから外出許可を貰えるか?」

「……モルゲンレーテで22時、ねぇ」

 

 何故かジト目で俺の方を眺めてくるマリュー。その目にはどこか俺を非難するような色がある。

 

「別にやましい事は無いぞ?」

「へぇ。……キラ君に聞いたんだけど、エリカ・シモンズ主任って言ったっけ? 凄い美人らしいじゃない。その彼女が勤めている所に夜も更けてから出向くのにやましい事はない……ねぇ」

 

 マリューの言葉を頭の中で反芻して考え……マリューが何を考えているのかを理解する。

 

「ちょっと待て! エリカは人妻だぞ!? 幾ら何でも俺はそこまで節操無しじゃない!」

「……私の他に恋人が2人もいるのに?」

 

 まさに絶妙のタイミングで放たれたと言ってもいいだろうその言葉に、ぐうの音も出せなくなってしまう。

 そんな俺を眺めながら、溜息を吐くマリュー。

 

「まあ、いいでしょう。今回は信じて上げます。ただし、以後誤解されるような行動は慎むように」

「悪いな」

「全く、恋愛は惚れた方が負けとか、惚れた弱みとか良く言うけど……事実よね」

「なら、俺の負けじゃないか?」

「っ!? アクセル、貴方ねぇ……よくも臆面もなくそういう事を言えるわね」

 

 顔を赤くしながらそう言ってくるマリューだが、自分だって似たような事を言っているのに何故俺だけが怒られないといけないんだ?

 とにかく明日の夜の外出許可は貰ったのでその場は大人しく撤退する事にした。

 

 

 

 

 

 翌日、現在時刻は22時40分を過ぎた所だ。俺はモルゲンレーテのMS工場にあるブリーフィングルームで1人、面会相手……否、交渉相手を待っていた。

 MSコンテナに関しては、今日の昼のうちにシーリオンを空間倉庫から出して入れてある。ロックもしてあるので、他の整備員達に見られる事もないだろう。

 まだウズミが来ていないが、頭の中で今日の目的を整理する。まずは、連合がマスドライバーとモルゲンレーテ目当てでオーブを攻める可能性がある事を示唆する。それと以前にエリカに話したような理由で水中用MSの重要性を話し、その参考にしてもらう為にある機体を譲渡する事を話して格納庫へ。コンテナを開いてシーリオンを渡す、と。

 尚、シーリオンに関しては動力炉である核融合ジェネレーターはそのままにしてある。最初は動力炉を抜いて渡す事も考えたのだが、俺一人でその作業をするのはちょっとキツイし、なによりもこのシーリオンを譲渡する最大の目的はオーブ政府が信頼に値する組織であるかどうかを確認する為だ。Nジャマーを打ち込まれたせいで核分裂が出来ないこの世界で、核融合ジェネレーターはどんな組織でも喉から手が出る程に欲しいものだろう。それは地熱発電があり、他の国程Nジャマーの効果を受けていないオーブとしても同じだ。

 もし、シーリオンの各種技術を欲して俺を拘束するなりなんなりするのなら……悪いが、オーブには今ここで消滅して貰う事になる。シーリオンに関しても遠隔操作で自爆が可能なように設定してあるので、いざという時の保険にはなる。

 しかし、もしこちらの要望を全て通したとしたら……その時、このオーブという国は俺達シャドウミラーが手を組むに相応しい組織であると認める事が出来るだろう。

 今は無理でも、アークエンジェルが再びこのオーブへと戻ってきた時に俺の正体を明かして同盟を組む事を提案するつもりだ。

 

「済まない、待たせたかな」

 

 考え事に熱中していたのか、いつの間にか23時を過ぎていたらしい。そう声をかけて入ってきた人物の声で我に返る。

 入ってきた人物は、口の周りに髭を生やした中年の男だった。黙っているだけでもその存在感はなかなかのものだ。

 なるほど、これがオーブの獅子ウズミ・ナラ・アスハか。

 

「いや、俺が時間よりも前に来すぎただけだ。気にしなくていい。それよりも座ってくれ。あまり時間はないのだろう?」

「うむ、では早速本題に入ろうか。私に話があると聞いたが? それも、オーブの防衛に関する事で」

 

 俺にそう言いながら、向かいの席へと座るウズミ。それを確認してから俺は口を開く。さて、交渉の始まりだ。

 

「そうだな……こちらからの用件は2つある。まずはその1つ目、近いうちに連合がこのオーブを攻める可能性がある」

「何? それはどこからの情報かね?」

「情報筋を教える事は出来ないが、傭兵としての情報網からだと言っておこう」

「だが、何故連合がオーブを攻める必要がある?」

 

 オーブの獅子の本領発揮と言うべきか、強烈な視線で俺を見ている。

 

「ザフトがパナマ攻略を狙っている、という情報は得ているか?」

「うむ。近々大規模な作戦を行うという事は聞いている」

「俺が仕入れた情報では、パナマへの攻撃というのはブラフだ。狙いは……アラスカ」

「パナマではなくアラスカだと!? 一気に司令部を落とすつもりか!」

 

 驚きの表情で俺を見るウズミだが、それはまだ早い。

 

「当然連合軍もザフトの攻撃目標はパナマだと判断しているからそちらに戦力を集中している。結果的にアラスカを落とされそうになった連合軍はサイクロプスを使用し防衛部隊ごと自爆する」

「……防衛部隊ごと、だと? わざわざ味方を巻き添えにしてか?」

「ああ。だが、アラスカの防衛部隊はその大部分が大西洋連邦ではなくユーラシア連邦の部隊であり、大西洋連邦から出されている部隊も上層部に疎まれたり問題行動を起こしたりしている部隊だ」

「それはつまり……大西洋連邦はザフトの作戦を知っている、という事か?」

「そうだな。そして地球に存在しているザフトの多くはアラスカで消滅する。しかしザフトもそのまま黙っている訳はなく、ある特殊兵器を使ってパナマを陥落させる事になると思われる」

「特殊兵器?」

「それは今は関係ないから今は置いておく。さて、質問だ。最後のマスドライバー施設があるパナマを落とされた連合軍はどうすると思う? 新たにマスドライバー施設を建設? まさか、そんな悠長な事はしないだろう。ないのならある所から奪えばいい。……さて、ウズミ代表。このオーブには確かカグヤというマスドライバーがあったな? おまけにブリッツやストライクを開発したモルゲンレーテという兵器会社もある。……分かるか?」

 

 俺の言葉に唸りながら目を閉じるウズミ。数秒沈黙していたがやがて口を開く。

 

「確かに君の話が正しければ連合軍はオーブに攻めてくる可能性が高い。だが、あくまでも君の話が正しければ、だ。オーブを代表してここにいる以上、私は君の話を無条件で信じる事は出来ない。何か証拠はあるのかね?」

「具体的に示せるようなものはないな。ただ、俺が今言った事が起こる可能性があると頭の片隅にでもおいておけばいい」

「……よかろう。君の話を全面的に信じる事は出来ないが、注意はしておこう」

 

 重々しく頷くウズミを見て、今回の交渉の3分の1は成功した事を確信した。さて、それでは次の話に行くとしようか。今回の交渉の最大のターニングポイントに。気をつけてくれよ、ウズミ代表。俺はまだオーブを滅亡させたくはないんだからな。




名前:アクセル・アルマー
LV:36
PP:115
格闘:254
射撃:274
技量:264
防御:264
回避:294
命中:314
SP:446
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    ???
    ???
    ???
    ???
    ???

撃墜数:278

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