転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1989話

 死神……いや、刈り取る者と召喚の契約を結んだ翌日、俺はゆかりと共に荒垣の見舞いに行った後、再び俺のアパートに戻ってきていた。

 男の部屋に俺と2人きりでいるにも関わらず、今のゆかりには特に緊張した様子はない。

 ……まぁ、俺の部屋に来るのはこれが初めてって訳でもない。

 それどころか、付き合う前も付き合い始めてからも、ゆかりがこの部屋に来るのは珍しい話ではないのだから。

 

「荒垣さん、いつ目を覚ますのかしらね」

 

 ゆかりが冷えた麦茶の入ったコップを口に運びながら、そう告げてくる。

 ゆかりにとって、荒垣はずっと一緒に――といっても数ヶ月だが――タルタロスに挑んできた仲間だ。

 ましてや、ペルソナを召喚出来るようになったゆかりに対し、ペルソナの使い方を1から教えた、ある意味では教師ですらある。

 そんな荒垣が意識不明になって入院しているのだから、心配になるのは当然だろう。不幸中の幸い……と言うべきか、荒垣が入院しているのは桐条グループの資本が入っている辰巳記念病院で、影時間やシャドウの類について深く理解している奴が多いし、何より入院費の類は請求しないと武治から聞いた事は、荒垣にとっては運が良いのは間違いない。

 何気に、入院費とかって結構するからな。

 特に荒垣の場合は1人暮らしをしているから、その辺りの金のやり取りも色々と厳しいだろうし。

 ともあれ、何が理由でああなったのかは分からないが、病院でのやり取りを見ている限りでは、ペルソナの暴走……なんて簡単な話ではないのは間違いない。

 そもそも、ペルソナの暴走だとすれば、他のペルソナ使い達も荒垣のような症状に襲われる可能性が出てくる訳で……出来ればそんな可能性は考えたくないというのが、俺の正直なところだ。

 

「そうだな。出来るだけ早く目を覚まして貰わないとな。俺の料理もあくまでレトルトをメインにちょっと具材を追加する……って感じのものしか教わってないし」

 

 もっとも、最近のレトルトや冷凍食品はかなりのレベルにある。

 勿論本職の料理人が作った料理には及ばないが、ちょっとした料理上手……といった者が作るよりは美味いものが多い。

 もっとも、それはあくまでも味ではそうだという事であって、実際に人が作った料理と冷凍食品、味が同じくらいならどっちを食いたい? と言われれば、大抵は前者だろう。

 少なくても俺はそうだ。

 

「もしかして、アクセルが荒垣さんに無理に料理を教えて貰ったのが影響して……なんて事はないわよね?」

「それはない」

 

 と思いたい。という最後の言葉は取りあえず黙っておく。

 だが、実際に最近は荒垣と連絡が取れなくて、とてもではないが料理を教えて貰うという事は出来なかったんだが、荒垣が今の状態になったのは、俺が原因という可能性は少ない筈だ。

 そこからは荒垣の事から、別の事に話は移っていく。

 そう、例えばそろそろ夏休みが終わりだとか、そんな感じで。そしてシャドウや影時間といった話になったところで……今日の本題に入る。

 

「そう言えば、昨日タルタロスに行ったんだよ」

「え? また1人で? それとも、コロマルを連れて?」

「いや、俺1人だ」

「また宝箱を集めようとでもしたの? 気をつけなさいよ。アクセルの強さは知ってるけど、それでも絶対に無敵って訳じゃないんでしょ? それこそ、またあの死神が出て来たら……」

 

 そこまで告げると、ゆかりは死神の……刈り取る者と遭遇した時の事を思い出したのか、自分の身体を抱きしめるように震える。

 夏服で薄い生地のワンピースだけに、そんな風にすれば当然ゆかりの平均以上の大きさの胸の谷間も強調されるんだが……これは誘ってるのか?

 まぁ、恋人同士になって俺の夜の生活を聞かされた割には、俺はゆかりに手を出していない。

 いや、実際に幾らか手は出しているんだが、それでも途中までで最後まで抱いた事はないというのが正確か。

 キスや身体に触れるといった真似はしてるのだが、そこまでだ。

 ともあれ、そんなゆかりの言葉に対し……そっと視線を逸らす。

 

「……ちょっと、アクセル。今、視線を逸らしたわよね? もしかして死神と戦ったの?」

 

 そう尋ねるゆかりの口調には、心配と呆れがそれぞれ半分程といったところか。

 呆れなのは、俺が刈り取る者に負けるとは思っていないからか。

 ともあれ、このゆかりの様子を見れば、これから話す内容で間違いなく怒ると思われる。

 いやまぁ、ゆかりの立場というかこれまでの経験から考えれば、当然なのかもしれないが。

 ともあれ、そんなゆかりに対して俺は覚悟を決めると口を開く。

 

「そう言えば、今まで言ってなかったが、俺の持つ能力の1つに召喚魔法って魔法があるんだよ」

「……は? 何よ、いきなり」

 

 話題を逸らされたと思ったのか、若干不満そうな視線を向けてくるゆかりだったが、それでも一応は黙って俺の話を聞くつもりになったのは、召喚魔法という言葉に興味を惹かれたからか、それとも恋人の話は最後まで聞いた方がいいと思ってからか。

 その理由はともあれ、黙っているゆかりに対して俺は説明を続ける。

 

「召喚魔法。その名の通り、契約したモンスターとかそういうのを召喚する魔法だな。基本的にそこまで難易度の高い魔法じゃない。……まぁ、契約を結ぶ相手は大抵がモンスターだからか、自分の方が上だというのを認めさせる必要があるけどな」

 

 俺の場合はグリにしろ、刈り取る者にしろ、どちらも戦って力を見せ、どちらが上なのかをはっきりとさせる事で、契約が可能になった。

 だが、以前エヴァから聞いた話によれば、相性によってはそれこそ魔法初心者であっても強力なモンスターや精霊とかといきなり契約出来るという事もあるらしい。

 これはエヴァが口にした通り、完全に相性によるものであり、実力とかそういうのは全く関係がない。

 ……羨ましい話だ。

 

「ただ、基本的には難易度が高くない魔法だが、これが俺の場合になると偉く難易度が高くなる。その最大の理由が、契約を結ぶ相手に召喚魔法を使う魔法使いが自分の血を数滴与える必要があるんだが、俺の場合は知っての通り人間じゃなくて混沌精霊という種族で、その魔力もかなり強力だ。それだけに、俺の血にはもの凄い魔力が濃縮されている」

「血? 魔力? 具体的にはどのくらい?」

 

 俺の説明が若干分かりにくかったのか、ゆかりはそう尋ねてくる。

 まぁ、今の説明じゃちょっと分かりにくいのは間違いないか。

 そもそも、このペルソナ世界では血に魔力があるのかどうかすら分からないし。

 

「そうだな。このペルソナ世界にも吸血鬼の伝承くらいはあるだろ?」

「え? うん、勿論」

「俺の仲間には600歳を超える幼女吸血鬼もいるんだが……」

「って、え? 何よいきなり。ギャグ?」

「正真正銘の事実だ。子供の時に吸血鬼化したらしく、その年齢から成長はしていない。……幻術とかを使えば話は別だけどな」

 

 実際、幻術を使って大人になったエヴァは、まさしく美女と呼ぶに相応しい容姿をしている。……もっとも、幻術は所詮幻術でしかないのだが。

 ただ、シャドウミラーは色々な世界に行く事が出来る。

 それを考えれば、いつかはエヴァでも成長が可能になるような技術、魔法、マジックアイテム……といった代物が手に入る可能性は少なくないし、レモンを始めとした技術班がその辺りの技術を開発する可能性も否定は出来ないのだが。

 

「ともあれ、だ。吸血鬼は血を吸って魔力を回復させる以上、当然魔力を持っている相手から吸血すれば効率的に魔力を回復出来る。けど、一口俺の血を吸ったエヴァは、その魔力の濃密さにそれ以上吸う事が出来なくなった……と言えば、分かりやすいか?」

「ちょっと、吸血鬼に血を吸わせても大丈夫なの?」

「ん? ああ、その辺りは問題ない」

 

 エヴァによれば、俺の魔力は巨大すぎて……それこそ馬鹿魔力と呼ぶだけの魔力があるらしく、とてもじゃないが吸血鬼化させる事は不可能らしい。

 

「ふーん。……で? その血が何か関係してるの?」

「正解だ。普通の魔法使いなら、召喚魔法の契約をするべき相手に血を与えればそれで成功するんだけど、俺の場合はどうしても血に宿っている魔力が強すぎて、契約を結ぶべき相手がそれに耐えられない。それこそ、耐えても俺の魔力の影響で身体が変質してしまう。そして身体の変質に耐えられればそのまま召喚の契約を結べるが、もし俺の魔力に耐えられなければ……死ぬ」

 

 俺自身の持つ魔力の強さ故に、召喚魔法の契約を結ぶ事が出来ない。

 正直、これが俺が召喚魔法をそこまで多く使わない理由だ。

 召喚魔法の契約が成功したグリも、その身体の大きさから出せる場所が決まってるしな。

 

「……随分と怖い魔法なのね」

 

 そう言う割には、ゆかりの表情にはそこまで俺を恐れている風には見えない。

 恋人の俺がそういう事をするようには思えない……という風に思っている事にしよう。

 

「それで? 結局今まで召喚魔法について長々と語ってきたけど、それは何で?」

「ああ、そうだったな。その辺りの話をまだしていなかった。……言った通り、召喚魔法の契約を結べばそいつは召喚獣という扱いになる。つまり……出てこい、刈り取る者」

 

 そう言った瞬間、座っている俺の影から刈り取る者が姿を現す。

 座っている状態だったので、影自体はかなり小さく、本来なら刈り取る者が姿を現す事が出来ないような大きさ。

 だが、実際にはその辺りはまるで関係ないかのように、刈り取る者が姿を現す。

 まぁ、影のゲートの件とかを考えても、大きさとかは関係なく、取りあえず少しでも影があればいいって事なんだろう。

 

「な……」

 

 俺の言葉で突然影から姿を現した刈り取る者を見て、ゆかりは完全に動きを止めていた。

 フリーズしてる、という方がこの状況に関しては的確な表現か?

 ともあれ、ゆかりはただ唖然としながらこっちを見て……そのまま数分程が経ち、ようやく再起動する。

 

「捨ててきなさい」

 

 第一声がそれだった。

 

「いや、犬猫じゃないんだから無理を言うなよ。それに、さっきも言っただろ。召喚の契約をしたんだから、その辺りはもう大丈夫だ。襲われるような心配はない」

 

 ゆかりにとって、刈り取る者は自分のペルソナを覚醒させる切っ掛けになった存在だが、同時に恐怖の象徴でもあるのだろう。

 実際、刈り取る者の力はかなりのもので、現状でも勝てる可能性があるのは……自由にペルソナを変更出来る有里くらいしか思いつかない。

 そんなゆかりだけに、刈り取る者を脅威と感じるのは理解出来る。

 

「あのね、契約だ何だって言っても、そんな存在が近くにいるという事、そのものが怖いのよ。そもそも、何か以前と変わってない? 前は羽根なんかなかったわよね? しかもご丁寧に、天使とかの翼じゃなくて、悪魔の羽根なんて。……まぁ、その姿で天使の翼を持ってれば、そっちの方が怖いけど」

 

 ゆかりの言葉に刈り取る者の姿を見ると……まぁ、その感想は納得出来なくもない。

 そもそも、刈り取る者はその仮面といい、身体に巻いてる鎖といい、持っている銃身の異様に長い拳銃といいい、色々な意味で悪者っぽい。

 そんな刈り取る者の背中に悪魔の羽根が生えてしまえば、それは当然かなりの威圧感を備えるようになるだろう。

 刈り取る者に視線を向けるが、本人……いや、人じゃないから数え方は匹なのか? ともあれ、本人は特に何も感じている様子はない。

 俺に自分から召喚の契約を結ぶようにと態度で示したのを見れば分かる通り、全く自分の意思がないという訳ではない。

 

「俺の言う事には基本的に絶対服従だから、その辺りの心配はいらないぞ。それこそ、この場で盆踊りでもさせてみるか?」

「……止めてあげなさい、可哀想だから」

 

 何故か刈り取る者を召喚獣として使う事に反対のゆかりが、そんな風に言ってくる。

 刈り取る者も、態度には出さないがどこか不満そうな雰囲気を発していた。

 そもそも、刈り取る者は盆踊りがどんなものなのかを知っているのかどうかという問題もあるよな。

 もしくは、実は俺と繋がっている契約で俺が知っている知識は知る事が出来るのかもしれないが。

 

「そうだな。取りあえずゆかりがそう言うのなら止めておくか。……ただ、ゆかりも刈り取る者を受け入れてくれたようで良かったよ」

「ちょっ! ちょっと、待ちなさいよ! 私は別に受け入れるなんて言ってないじゃない!」

「けど、ゆかりは可哀想だって言ってただろ? なら、受け入れたんじゃないのか?」

 

 自分でも無茶を言ってるのは分かるが、何気に押しに弱いゆかりの事だ。

 こうして押していけば、そのうち……

 

「……言っておくけど、しっかりと躾して、関係ない人間に襲い掛からないようにしなさいよ。食べ物はどうなるのか分からないけど、散歩は影時間中にしっかりさせるのよ」

「いや、だから犬猫じゃないんだから」

 

 ゆかりの言葉に、思わず突っ込むのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1389

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