転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1996話

「よお、アルマー。……元気だったか?」

 

 新学期初日、いつも通りゆかりと共に登校して席に座った俺に、友近がそう言って近づいてくる。

 そんな友近の様子は、かなり……そう、くたびれている。

 それこそ朝に見るのではなく、仕事が終わった後のサラリーマン的な……そんな感じか?

 以前の様子だと、叶の件はもうあまり影響がなかったように思えたんだが……こうして見る限りだと、そうでもなかったのか?

 

「新学期初日だってのに、随分怠そうだな」

「そりゃそうだろ。高校生活最後の夏休みが終わったんだぜ? そりゃあ、こうもなるってもんだ」

 

 あー、なるほど。叶の件じゃなくて、夏休みが終わった事でだらけていたのか。

 いや、けど……

 

「高校生活最後の夏休み? 俺達は、まだ2年だぞ?」

「あのなぁ。来年の夏休みにゆっくりと遊んでいられると思うのか? まず間違いなく、勉強、勉強、勉強って感じになるぞ」

「受験勉強か」

 

 受験生にしてみれば、高3の夏休みのすごし方で大きく違ってくる筈だ。

 勿論、中には高3の夏休みでも遊んでいるようなのもいるだろうが、そういうのはそれこそ進学しないで就職が決まっている者か、推薦入学か……はたまた、もう諦めているか。

 ああ、もしくは入試のない専門学校に行くとか?

 ともあれ、そんな訳で普通に大学に進学しようとしている高校生にとっては、3年の夏休みというのはとても遊んでいられるような状況ではない。

 そういう意味では、友近が口にした高校生活最後の夏休みという表現も、決して間違っている訳ではないのだ。

 ……まぁ、それはあくまでも普通の高校生にとってはであって、俺の場合は元々大学に進学するつもりも、どこかに就職するつもりもないので、来年までペルソナ世界にいたままであれば、結局のところは夏休みを楽しめるだろうが。

 もっとも、残るイレギュラーシャドウの数を考えると、恐らく今年中には影時間の決着が付くのは間違いない。

 そうなれば、俺達が高3になる頃には俺は月光館学園から消えて、シャドウミラーの代表として動いているのは確実だろう。

 シャドウミラーの代表としてではなく、実際にはまたこのペルソナ世界みたいにどこかの世界で行動しているという可能性の方が高いが。

 

「受験生ってのは大変そうだな」

「は? 何言ってるんだよ? アルマーだって来年受験だろ?」

「ああ、俺は受験しないから」

『ええええええええええええええええええ!?』

 

 何故か友近だけではなく、俺やゆかりの周辺にいる他の生徒達までもが驚愕の声を上げる。

 いや、お前等全員俺の話を盗み聞きしてたのかよ。

 

「おいおい、マジか?」

「マジだ」

 

 ああ、もし何か異変があって、イレギュラーシャドウを倒しても影時間が解決しない場合は、それこそ美鶴が作る対シャドウ対策チームに入れて貰って働くというのも少し面白そうだな。

 

「テストで連続1位を取ったアルマーが大学に進学しないって……学校が納得しないんじゃないか?」

「その辺の心配はいらないだろ」

 

 もし月光館学園が普通の学校なら、俺みたいにテストで連続1位を取るような生徒が進学しないという事は絶対に許されないだろう。

 いや、表向きはその辺りを決める事が出来るのが本人だけという事もあるから、強制はしないだろう。

 だが、ひたすらに説得をしてくるのは間違いない筈だった。

 それこそあの手この手といった具合に。

 学校にとって、大学への進学率というのはかなり大きな意味がある。

 それを確実に上げる事が出来る俺という存在を、見逃す筈がない。

 だが……それは、あくまでも普通の高校の場合だ。

 この月光館学園は、桐条グループの私立校で……そして俺は、その桐条グループと深い関係にある。

 そんな桐条グループと関係の深い俺に、月光館学園の教師がどうこう出来る筈もない。

 

「何だか、色々と羨ましいな」

「そんなに羨ましいなら、友近もテストの成績で1位を狙ってみたらどうだ? そうなれば、友近も学校の方から色々と便宜を図って貰えるかもしれないぞ」

「あのなぁ、人間出来る事と出来ない事ってのがあるんだよ」

「それはあるだろうけど、これに関しては別に出来ないって訳じゃないと思うがな。さすがに1位になれってのはともかく、上位10位以内に入るとかなら、友近も頑張れば出来ると思うぞ」

 

 もっとも、今の友近は赤点にならない程度の成績だ。

 そこから成績を上位に持っていくのは、それこそ遊ぶ暇もないくらいに勉強漬けにならなければ無理だろうが。

 ただ、友近は宮本や順平と違って部活をやっている訳でもない。

 ましてや、俺やゆかりのように影時間にタルタロスで戦っている訳でもない。

 そう考えれば、友近本人がその気になれば問題なく目指す事が出来るだろう。

 

「無茶を言うな、無茶を。……それより、順平の話を知ってるか?」

 

 自分の勉強の事になり、このままだと色々と不味いと思ったのだろう。友近は視線をどこかボーッとしている様子の順平に向ける。

 

「何がだ?」

「いや、だから順平に恋人が出来たって話。他のクラスにいる俺の友達が、ポートアイランド駅前で順平がデートしているところを見たって話だ」

「付き合ってるのかどうかは分からないけど、順平が気になっている相手がいるってのは、知ってるぞ。ん? いや、これは友近から聞いたんじゃなかったか?」

「あ? そうだっけ? まぁ、取りあえず……くっそぉ、1人だけ恋人作りやがって。羨ましい。悔しい。妬ましい……」

 

 心の底から嫉妬している友近を見ながら、俺は隣の席のゆかりに視線を向ける。

 すると、ゆかりも俺の方を見ていたのだろう。視線が交わる。

 だが、すぐにゆかりは友近の方を見てから、そっと視線を逸らす。

 ……まぁ、友近の性格を考えれば、ここで俺とゆかりが付き合ってるって話を聞かされれば、こっちにまで嫉妬の視線が向けられるのは間違いないだろうしな。

 それに、友近は叶の件もあるし。

 寧ろ、これは空元気に近いのかもしれない。

 そんな風に思いながら、俺は友近の話に付き合うのだった。

 

 

 

 

 

「アルマーさん!」

「……おう?」

 

 聞こえてきた声に、視線を向ける。

 新学期初日も終わり、本来ならゆかりと一緒にどこかに行きたいと思っていたのだが、今日は部活があるという事で、ゆかりは一緒にいない。

 順平と宮本は剣道部に向かい、有里は山岸と2人だけでどこかに行った。

 友近は、何だか幼馴染みがトラブルに巻き込まれたとか何とかって事で、そっちに向かった。

 一応友近に俺も行くか? と聞きはしたのだが、友近は自分だけでどうにかすると、そう言われた。

 多少気になったが、友近がそう言うのであれば……という事で、特に急ぎの仕事もない俺は、スーパーによって買い物でもしようと、そう思っていたのだが……月光館学園の校門から出たところで、そう声を掛けられたのだ。

 そうして声のした方を見ると、そこにいたのは小柄な人影、天田だ。

 

「天田? どうしたんだ? 美鶴か真田に用事か? 有里と山岸はもう帰ったけど」

 

 ここで順平の名前が出てこないのは、微妙に頼りにならないという印象を俺が順平に抱いているからだろう。

 いや、それはあくまでも印象で、実際には順平は剣道部で鍛えた事もあって、かなり強くなってるんだが。

 強豪と呼ばれている剣道部でも、次期レギュラー間違いないと言われてるらしいし。

 もっとも、順平が剣道部に所属しているのは、あくまでもシャドウとの戦いの為だ。

 本気で剣道をやるという訳ではないので、多分レギュラーを打診されても断るような気がする。

 そんな風に思いながら天田の返事を待つが、その口から出て来たのは俺に取って完全に予想外の言葉だった。

 

「いえ、今日はアルマーさんに用事があったんです」

「……俺に?」

 

 俺と天田の関係というのは、限りなく薄い。

 そもそも、天田はまだ小学生で、俺が通っているのは月光館学園だ。

 巌戸台分寮に住んでいる天田と違い、俺は別のアパートに住んでいる。

 S.E.E.Sに所属している天田だが、俺は美鶴達とは別の勢力という扱いになっている。

 ……同じような行動をしていながら、ここまで関係性が薄い相手というのもちょっと珍しい。

 そんな中、敢えて俺と天田の関係性を上げるとすれば……荒垣関係の事だろう。

 天田の事が心配で、俺達から美鶴達の方に移っていった荒垣。

 色々と納得しての事だったから、特に恨みを持っている訳ではない。

 だが、それだってまさか天田の母親の件を口に出来る筈もないし、天田が俺を訪ねてきた理由が全く分からない。

 

「一体俺に何の用件だ? 正直、天田が俺を尋ねてくる用件に想像がつかないんだが」

「実は、アルマーさんが槍を武器にしていると聞きまして」

「まぁ、それは嘘じゃないな。……取りあえず、ここをちょっと離れるか」

 

 当然だが、月光館学園の前に天田のような小学生がいれば、非常に目立つ。

 勿論、ただ学校の前を通っただけ……というのであれば話は別だが、今回はしっかりと校門の前で待っていたのだ。

 そして、天田が待っていたのが、月光館学園の中では多少なりとも名前が知られている俺。

 こんな組み合わせで、周囲の注目を集めない訳がない。

 まさかそんな場所で、シャドウがどうとか、影時間がどうとか、そんな話題を出されても困る。

 ……そういう意味では、それこそ槍を武器にしてるという話題も色々と不味いのは間違いないのだが。

 ただ、それだけであれば、それこそゲームについての話題だという風に勘違いをしてくれるだろう。……だと、いいな。

 ともあれ、そんな訳で俺は天田を引っ張って人の姿が見えない建物の陰に隠れると、影のゲートを使って俺のアパートに一気に戻る。

 いきなり足が影に沈む感覚には悲鳴を上げた天田だったが、これには慣れて貰う必要がある。

 そもそもの話、俺が一緒に行動している場合は、S.E.E.S組も影のゲートで転移するのだから。

 

「え? え? え?」

 

 混乱した様子で周囲を見回す天田。

 影に沈むなんて真似をした後で、いきなり俺の部屋に出てくるような真似をすれば当然か。

 

「落ち着け。美鶴や荒垣辺りから何も聞いてないのか? これは、俺の能力の1つ、影の転移魔法だ」

「あ……これが……」

 

 どうやら、一応話は聞いていたらしい。

 俺の言葉を聞き、ようやくその事に気が付いたのか、安堵した様子を見せる。

 

「ここからなら、巌戸台分寮までそんなに遠くない……取りあえず月光館学園よりは近いから、安心しろ。何なら、影のゲートで送ってやってもいいし」

「え? あの、その……」

 

 言葉に困る天田。

 ……まぁ、そんなに親しい訳じゃない俺の部屋にいきなり連れてこられたんだから、そんな風に思うのも当然か。

 

「ほら、取りあえず落ち着いて部屋に上がれ」

 

 そう言い、俺は玄関――と呼べる程に立派なものではないが――から部屋に上がり、エアコンのスイッチを入れる。

 俺だけであれば暑さは気にならないが、天田がいる以上はそうもいかないしな。

 靴を脱いで上がってきた天田に、冷蔵庫から取り出したペットボトルのジュースを渡す。

 一応リンゴ100%なので、身体に悪いって事はない筈だ。

 それを言うのなら、それこそ日本では身体に悪い飲み物なんて殆ど売ってないが。

 ああ、でもコーヒーとアルコールは俺が好きじゃない事もあって、売ってなくてもいいけどな。

 

「えっと、ありがとうございます」

 

 そう言い、取りあえずといった様子で蓋を開けてジュースを飲む天田。

 だが、部屋の中が暑いせいか、一口飲むと、そのまま二口、三口と飲んでいく。

 そうして一段落したところで、改めて俺は天田に尋ねる。

 

「で? 俺に何の用件だ? 武器が槍だからって話だったが」

「はい。……その、僕を鍛えて欲しいんです」

「……は?」

 

 いきなり何を言う?

 天田の言葉を聞いて、最初に思ったのはそれだった。

 実際、何でいきなりそんな事を口にしたのか、理解出来なかったからだ。

 いや、勿論俺も自分の強さには相応の自信がある。

 幾多もの戦場を潜り抜け、勝ち続けてきた俺が弱いとは自分でも思わない。

 だが……それでも、天田にそんな事が分かるとは思わない。

 天田に戦闘の才能があるのかどうかは分からないが、何故俺がそれを? と。

 

「頼む相手が違ってるだろ。俺はペルソナ使いじゃない。お前が強くなる為に必要なのは、ペルソナ使いだ。俺じゃなくてな」

「いえ、僕がアルマーさんに鍛えて欲しいのは、ペルソナを使っての戦闘ではなく……僕自身が強くなりたいからです。そして、それが一番効率的に出来るのは、僕と同じ槍を使うアルマーさんしかいないと、そう思いました」

 

 決意を込めた視線で、天田はそう告げるのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1389

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