転生とらぶる   作:青竹(移住)

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2002話

 取りあえず、何をするにしても武治に連絡を取る必要があるのは間違いない。

 幾月が何をしようとしていたのか、この寮から抜け出してどこに行ったのか。

 その辺りのヒントは、美鶴達だけではどうしようも出来ない。

 いや、幾月の部屋を調べれば、何らかのヒントが残っている可能性があるが、それでも確実にとは言えないのは間違いない。

 万が一……本当に万が一にも、実は幾月がちょっと出掛けていただけで、帰ってくるような事になった時、実は幾月の部屋の中を漁っていたという事になれば、ちょっとどうしようもないし。

 ともあれ、そんな訳で俺達は悶々として影時間が終わるのを待つ。

 もっとも、イレギュラーシャドウを探したり、それを倒したりといった具合に、既に影時間になってからかなり経っており……影時間が終わるまで、そう時間は掛からなかった。

 そうして影時間が終わり……

 

「美鶴、お前から武治に電話を掛けてくれ」

「分かった」

 

 本来なら、こんな時間に電話を掛けるというのは非常識だろう。

 特に相手は桐条グループの総帥という立場にいるのだから。

 だが……武治は影時間については絶対に解決するという強迫観念に似た思いすらもっている。

 そうである以上、影時間の研究で大きな力となっていた幾月が行方を眩ましたという事になれば、それを放っておく事は出来ない。

 特に、内部監査をしていたという事もあって、よりその思いは強いだろう。

 

「もしもし、こんな時間にすいませんお父様。……はい、イレギュラーシャドウの件は問題なく倒す事が出来ました」

 

 もし幾月が何も行動を起こしていなければ、美鶴が武治にイレギュラーシャドウの件を報告するのも喜びが強かっただろう。

 今回のイレギュラーシャドウとの戦いでは、美鶴が最初にその居場所に駆けつけて戦ったのだから。

 俺も協力したのは間違いないが、今日の一件で誰が一番活躍したのかと言えば、それは間違いなく美鶴だった筈なのだから。

 

「それで、イレギュラーシャドウを倒して寮に戻って来たのですが……その、理事長がいなくなっていて。……はい、はい。そうです。え? あ、はい、一緒にいます」

 

 携帯で話しながら、美鶴が俺に視線を向けてくる。

 これは、間違いなく俺がいるかと武治に聞かれていたのだろう。

 実際、武治に幾月の事を説明したのも俺だし、何度か相談にものっていたのだから、電話の向こうで武治が俺がいるかどうかを聞いてもおかしくはない。

 

「はい、分かりました。少々お待ち下さい」

 

 そう言い、美鶴が携帯を持って俺の方に近づいてくる。

 

「お父様が、アクセルに代わって欲しいらしい」

「分かった」

 

 真剣な表情を浮かべている美鶴だったが、やはりその表情にはどこかショックを受けている様子が見える。

 いや、ショックを受けているのは美鶴だけではない。美鶴と同じく幾月と一緒に影時間を解決しようと数年間頑張ってきた真田や、途中で一旦S.E.E.Sを抜けだが、それでも幾月との付き合いはそれなりに長い荒垣、他にも何だかんだと寮で一緒に暮らしている有里、山岸、天田といった面々も多かれ少なかれショックを受けているのは間違いない。

 

「もしもし、電話を変わった」

『うむ。それで……幾月の姿が消えたという話だが、それは間違いないか?』

 

 電話の向こうの武治は、特に焦っているようには思えない。

 いや、勿論最初に美鶴から幾月がいなくなった話を聞いた時には驚いたのだろうが、取りあえず今は驚いていない。

 

「ああ、間違いない。俺達がイレギュラーシャドウを倒す為に出掛ける時は寮に残っていたんだが、戻ってみればどこにもいなかった。一応寮に住んでいる連中に寮の中は隅々まで調べて貰ったけど、どこにもいなかった」

『……そうか。どう思う?』

「どう思うと言われてもな。やっぱり自分のやってきた事が知られそうになったのを察して、逃げたんじゃないのか?」

 

 何だかんだと、それが一番可能性が高い。

 

「逃げ出すのに、今日程丁度いい日がないってのも、事実だし」

 

 イレギュラーシャドウが現れる、満月の日。

 そうである以上、当然俺達の全戦力はそちらに向けられる事になるのは当然だろう。

 

「一応、人為的な手段で普通の人間も影時間に適応させる事が出来るって聞いたような気がしたが……」

『ああ。これに関しては重要機密だけに、監査部の中でも限られた人員だけに渡してある。非常に稀少で、数も少ないからな。一応今日もしっかりと幾月を見張っていた筈だが……少し待ってくれ』

 

 そう告げ、武治は携帯から離れて何らかの操作を行う。

 そして数十秒が経ち……

 

『駄目だ。反応がない。本来なら、巌戸台分寮からそう離れていない場所に待機している筈なのだが』

 

 苦々しげな言葉で呟く辺り、やはり影時間中に幾月が何らかの行動を起こす可能性は考えていたのだろう。

 本来なら、もっと見張る人数を増やせばどうにかなったんだろうが……影時間に適性のない人物を影時間中に動かせるようにするというのは、武治が言っていたように稀少なマジックアイテム、もしくは稀少な物資が必要になるのだろう。

 実際、どのくらい稀少な代物なのかは分からないが、それでも武治の様子からすると、かなり無理をして用意したように感じる。

 となると、武治を責める訳にもいかないか。

 いや、寧ろ誰かをこっちに残しておかなかった事を……駄目か。

 監査部というのは、桐条グループの監査部だ。

 つまり、相応に身体を鍛えている者がいる可能性が高い。

 そのような者が無力化された以上、1人や2人ここに残していても、最悪殺されていた可能性すらあるだろう。

 ペルソナ使いというのは、極めて強力な能力なのは間違いない。

 だが、ペルソナを召喚する為には召喚器で自分の頭部を撃つという儀式――と呼ぶには少し大袈裟だが――を行う必要がある。

 幾月に不意を突かれるような真似をすれば、それこそあっさりと殺されてしまう可能性が高い訳だ。

 そう考えれば、俺が残るか……寧ろ誰も残さない方が良かったのは間違いない。

 で、俺がこの場に残っていれば、イレギュラーシャドウを相手にした時に上手く戦えていたかというと、少し難しいところだし。

 

「幾月を見張っていた奴の消息が不明になっているという事は、やっぱり今回の件は幾月が行動に出たという事で間違ってはいないだろうな」

『……そうだな』

 

 苦々しいといった様子で呟く武治。

 そもそも論だが、証拠を集めるとか何とか行動するよりも前に幾月を捕らえておけば、それが最適の結果になっていたのは間違いない。

 もっとも、幾月は影時間の研究者を纏めている立場でもあったらしい。

 そうであれば、何の証拠もなく幾月を捕らえたりしていれば、色々と不味い事になっていたのは間違いない。

 結局そうやって躊躇った結果が今の状況を生み出したのだが。

 ……うん?

 そこまで考え、ふと疑問を抱く。

 いや、これは疑問ではない。既視感か?

 前にもどこかで同じような事を感じた事が……いや、そう。これは……

 

「武治、タカヤはどうしている?」

『何?』

「タカヤだ。前回のイレギュラーシャドウの時に俺が捕らえた奴。今は、桐条グループの方で事情を聞いていた筈だな?」

『ああ。……いや、待て。もしかして!?』

 

 俺の言葉で武治も俺と同じ結論に達したのだろう。

 まさか、という思いと共に呟くと、すぐに再び携帯から武治の声が遠くなる。

 何かを指示している様子が窺えるが、それが何を指示しているのかは、それこそ考えるまでもない。

 そうして数分……美鶴を始め、他の者達から視線を向けられている中で、ようやく携帯から武治の声が聞こえてくる。

 

『確認した。タカヤと名乗ったあの少年の姿が、軟禁していた場所から消えていたようだ。見張りも含め、全員が死んだか、重傷を負っているらしい』

「……やっぱりか」

 

 もしかしてとは思っていたが、どうやら本当に俺の予想通りの流れになっていたらしい。

 だが、なるほど。タカヤにちょっかいを出すのであれば、影時間の時が丁度いいのも間違いない。

 いや、影時間中に何か異変があれば、それは自然な形で周囲に認識させるんだったか?

 となると、もしかしたら影時間じゃなくて、その前後に……いや、影時間が始まった時は幾月の姿はここにあった。という事は、影時間が終わった直後に何か行動したのか?

 まさか、このタイミングで実はタカヤと幾月の件は全く無関係です……なんて事はないだろうし。

 

「恐らくはこの機会を狙っていた……となると、当然手掛かりの類も殆ど残っていないという事になるのか」

『……一応明日、いや、今日か。ともあれ、今日巌戸台分寮を含めて幾月が普段使っていた場所に人をやって、何か手掛かりがないのかを探す事にする。コンピュータのデータを消しても、場合によっては復元出来る可能性もあるからな』

「分かった、そうしてくれ。……ああ」

 

 武治の言葉に頷くと、ふとゆかりの顔が目に入り、思いついた事があった。

 

「一応、本当に一応だが、屋久島で見た映像の改変されていないデータがあるかどうかを調べてくれるか? もしかしたら、残っている可能性がある」

「アクセル……」

 

 俺の言葉で、その映像データが何を意味しているのかというのはすぐには分かったのだろう。

 ゆかりは驚きと嬉しさの混ざった様子で俺の名前を呟く。

 これは駄目元……という訳ではなく、純粋に勝算があっての事だ。

 もし万が一何かあった時に、あの映像の元データは何かに使えると、そう思って保存している可能性は十分に高いのだから。

 ゆかりの父親に対する想いを考えれば、それこそあのデータがあれば、もしゆかりがS.E.E.Sに所属していた場合、ゆかりを動かす原動力になりかねない。

 ……もしかして、原作ではそうやってゆかりを動かしたりもしたのか?

 

『うむ、分かった。幾月の件でコンピュータを調べさせる時には、その辺も注意しよう』

 

 武治が俺の言葉に頷き、取りあえずこれでもし映像データが残っているのであれば入手出来る可能性は増えた、と。

 

「そうなると、次に問題になってくるのは、これから影時間でタカヤに……そして幾月に遭遇したらどうするか、だな。いや、正確には遭遇する為にはどうするかといった方がいいか」

 

 もし遭遇する事さえ出来れば、それこそタカヤでも幾月でも……それから、以前タカヤと一緒にいたジンであっても、どうにでも出来る自信はある。

 だが、向こうも俺がどれだけの力を持っているのかは当然のように理解している筈だ。

 タカヤは実際にその身で俺がどれだけの力を持っているのかを味わっているし、幾月は美鶴達が何度も俺と共に行動した事により、ある程度の力については理解している。

 ペルソナとは全く関係のないその力は、幾月にとっては異常以外のなにものでもないんだろう。

 そうなると、俺と遭遇するというのは捕らえられる……場合によっては殺される事と同じ事になるのだから、そう簡単に俺の前に姿を現すとは思えない。

 つまり、俺と遭遇しないように最大限の注意を払って行動していてもおかしくはないという事になるのだ。

 

『うむ。間違いなく幾月であればそうするだろうな』

「そうなると、次の問題は……順平か」

 

 タカヤの件と同じく、わざわざイレギュラーシャドウが出てくる満月の夜に順平が姿を消したのだ。

 当然のように、今回の一件に順平が巻き込まれたのは間違いないだろう。

 もっとも、順平が無理矢理連れて行かれた……という訳ではないのは、順平の部屋が特に荒らされているという訳ではないらしいので、恐らく自分から幾月と行動を共にするという方を選んだのだろうが。

 だが、何を考えて順平は幾月に協力する事にしたんだ?

 そのメリットが、全く分からない。

 以前の……それこそ、俺に食って掛かっていた頃の順平であれば、俺に対する敵対心や、自分は特別だという思いから幾月に協力してもおかしくはないが……今の順平は、何だかんだと地に足を付けている感じだ。

 俺達を裏切ってまで幾月に協力するような馬鹿な真似をするとは、到底思えない。

 

『とにかく、こちらでも幾月の後は追う。そちらでも、いつ何があってもいいようにしておいてくれ』

「一応、俺はお前達の仲間って訳じゃないんだけどな。……かといって、幾月とタカヤなんて危険人物2人を放っておく訳にもいかないか」

 

 まさに、混ぜるな危険って奴だよな。

 あの2人が一緒に行動しているとなると、何が起こるか分からない。

 そうなると、取りあえず俺としては美鶴達と協力して事にあたった方がいい、という訳か。

 

『すまんな。この謝礼に関しては後で必ずさせて貰う。では、美鶴に変わってくれ』

 

 武治の言葉に従い、俺は携帯を美鶴に渡す。

 美鶴は数分武治と話し……やがて、通話が終わるのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1389

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