転生とらぶる   作:青竹(移住)

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2003話

 イレギュラーシャドウと戦い、幾月とタカヤ、順平の3人がいなくなった翌日……日曜である以上当然のように学校の授業は休みなのだが、そんな中、俺は何故か巌戸台分寮にやって来ていた。

 わざわざ俺がこの巌戸台分寮にやって来たのは、桐条グループの面々が幾月の部屋にあるPCや本、書類……それ以外にもさまざまな物を持っていって調べるに辺り、もしかしたら何らかの罠が仕掛けられている可能性は否定出来なかった為だ。

 幾月が行き当たりばったりで行動したのであれば、その辺は心配する必要がないのだが……残念ながらと言うべきか、幾月が行方を眩ましたのは行き当たりばったりとか何でもなく、間違いなく計算ずくでの行動だ。

 そうなれば、当然のように桐条グループが自分の手掛かりを探してこの寮にやって来るのは分かりきっている。

 そうである以上、少しでも桐条グループの動きを鈍くする為に何らかの仕掛けをしておいてもおかしくはない。

 ……まぁ、問題なのは幾月にその手の仕掛けを作ったり出来るかって事なんだろうが。

 研究者として優れているらしいが、だからといってそんな仕掛けを作れるかと言われれば、普通は無理だろう。

 もっとも、幾月はタカヤを助けた……と思われる以上、何をするにしても妙な手段に出ないとは限らないのだが。

 ともあれ、そんな風に何か起きた時にすぐ対応出来るように、俺はここにいる訳だ。

 

「すまんな、アクセル。わざわざ来て貰って」

 

 ソファに座って玄関から幾月の部屋にあった様々な物が運ばれていくのを眺めていると、そんな声が掛けられ、俺の前に紅茶の入ったカップが置かれる。

 誰がこのような真似をしたのかというのは、それこそ考えるまでもなく明らかだろう。

 

「悪いな、美鶴」

「気にするな。無理を言ってわざわざ来て貰ったのだ。これくらいは構わんさ」

 

 そう告げる美鶴だったが、表面上は気丈に振る舞っていても、実際にはかなりショックを受けているのは明らかだ。

 当然だろう。美鶴は幾月と共に何年もの間、影時間を解決するべく頑張ってきたのだから。それこそ、美鶴にとって幾月というのは頼るべき存在だったのだろう。

 そんな幾月が自分を裏切って姿を消した。

 これは、美鶴にとってもかなり堪えた出来事なのは間違いない。

 美鶴が俺の隣に座り、並んで美鶴の淹れた紅茶を飲む。

 ……うん、美味い。

 基本的には缶やペットボトルの紅茶しか飲まない俺だが、そんな俺にしても美鶴の淹れてくれた紅茶は十分以上に美味いと断言出来た。

 ただ……普通こういうのってメイドがやるんじゃないのか?

 桐条グループの令嬢自らの手で淹れた紅茶というのは、かなりレアな品なのは間違いない。

 

「うん、美味い」

「そうか、そう言って貰えて私も嬉しいよ」

 

 そこから数分、紅茶について少し話し合う。

 もっとも、俺は紅茶派ではあるが、紅茶の産地とか茶葉についてとか、そこまで詳しい訳ではないので、どうやって紅茶を飲むのかとか、どのようなお茶菓子が紅茶に合うのかとか、そういった内容だった。

 

「そう言えば、他の連中はどうしたんだ?」

「明彦は部活だ。……色々と感じているようだからな。サンドバックを相手に、その胸の中にあるモヤモヤをぶつけてくるのだろう」

「……なるほど」

 

 荒垣が途中でS.E.E.Sを抜けてから、真田は美鶴と共に戦ってきた。

 そうした2人をバックアップしていたのが幾月なのだから、美鶴程ではないにしろ、色々と思うところがあるのだろう。

 せめてもの救いは、真田の苛立ちをぶつけられるのがボクシング部員ではなく、サンドバックな事か。

 取りあえず、ボクシング部員で怪我人が出るという事はない筈だ。

 

「他の連中は?」

「有里と山岸とアイギスは3人で出掛けている。伊織を探すらしい。天田と荒垣の2人はそれぞれ自分の部屋にいるよ」

 

 総じて、全員元気がない……といったところか。

 いや、別に美鶴が言葉に出してそう言った訳ではないが、それでも美鶴の様子を見れば、大体そうなのだろうというのは予想出来る。

 見るからに落ち込んだ様子だしな。

 他の連中はともかく、真田は自分の苛立ちを解消する為に部活にいかずに、美鶴を励ますなり何なりすればいいものを。

 

「……なぁ、アクセル。理事長は最初から私達を……私を、騙すつもりだったのだと思うか?」

「そうだな、美鶴にとっては面白くないだろうが、俺はそうだと思う。今だから言うが、俺は最初に会った時から幾月の事が気に入らなかった。……いや、生理的に合わなかったと言ってもいい。だからこそ、俺はそんな幾月が最初から美鶴を騙す為に近づいてきていた……そう言われても、不思議には思わない」

「生理的に合わなかった、か。それで相手の善し悪しが分かるというのは、羨ましいな」

 

 少しだけ笑みを浮かべてそう告げてくる美鶴だったが、念動力……だけではなく、純粋に勘が鋭い俺としては、そこまで珍しい事じゃないんだけどな。

 だからって、完全に……100%絶対的に信じられるかと言われれば、また話は別なのだろうが。

 

「私は……理事長を信じていた。まさか、こんな風に裏切られるとは全く思っていなかったし、そんな風に見られているとも思っていなかったんだ」

「その辺は、幾月の演技が上手かったんだろうな。そもそも、俺だって幾月を生理的に気に入らない相手だとは思っていたが、あれが本当に演技だったのかどうかというのも、分からないし」

「だが……理事長は、私達をあっさりと切り捨てて逃げ出した。……何故だ? 何を考えている?」

 

 顔を振っている美鶴の様子は、当然のようにかなり弱まっているように感じられる。

 それこそ、いつもの凛とした雰囲気を身に纏った桐条家の長女という立場ではなく、桐条美鶴という、1人の女としての美鶴。

 

「何を考えているのか、か。正直それは俺も知りたいところだな」

 

 薄らと瞳に涙を浮かべている美鶴にハンカチを渡しながら、そう告げる。

 実際のところ、幾月が心の底で何を考えているのかというのは、俺にも分からない。

 ただ……それでも予想するとすれば、タカヤを助け出した事か。

 破滅願望を抱いていると思われるタカヤだけに、色々と洒落にならない事を考えている可能性は否定出来ない。

 そうである以上、そのタカヤを助けた幾月も、そんなタカヤと似たような事を考えているのは間違いなかった。

 もっとも、これまでの幾月の性格から考えると、恐らくタカヤ達と本当の意味で手を組むのではなく、あくまでも戦力として利用しようとしている……といったところだろうが。

 S.E.E.Sや俺達という戦力を使えなくなった以上、幾月は新たな戦力が必要となった。

 それが、タカヤ達。

 

「ともあれ、幾月が何を考えていようと、俺達がやるべき事は変わらないだろ? ようは、今まで通りイレギュラーシャドウを倒して、影時間を解決させる。……それだけだ。違うか?」

「それは……そうだが……アクセル、君は……強いな。羨ましい。全く、こうして1人で嘆いて、そして悲しんでいるのが馬鹿らしくなってくるくらいだ」

 

 そう言い、美鶴は隣に座っている俺の肩に寄りかかってくる。

 まだ秋と呼ぶには厳しい暑さを持つだけに、美鶴も夏らしい服装……つまり、それなりに身体が露出している格好だ。

 そんな格好で俺に寄り掛かってくるのだから、当然のように美鶴と俺は密着し、身体と身体が触れあう事になる。

 

「思えば、4月から……いや、それ以上前から、私はアクセルに助けられてばかりなような気がするよ」

「そうか? お前もS.E.E.Sを率いる立場として、十分立派にやっていたと思うけどな」

「ふふっ、それはアクセルがいたからだよ。実際、タルタロスの攻略に関しても、私達は殆ど何もしていない。門番シャドウを倒しているのは、全てアクセル達だ。……もし、アクセルがいなければ、恐らく私達はタルタロスをここまで攻略出来たかどうか」

「問題なく、攻略出来たと思うぞ」

 

 これはお世辞でも何でもなく、純粋に俺の本心からの言葉だ。

 そもそも、この世界の原作では恐らくタルタロスという存在に美鶴達も挑んでいた筈だ。

 俺が介入した事により、ゆかり、コロマル、荒垣がS.E.E.Sではなく、俺の仲間として行動している。

 いやまぁ、荒垣は天田の件もあってS.E.E.Sに戻ったが。

 ともあれ、ゆかりとコロマルはどちらも非常に優れたペルソナ使いだ。

 ゆかりのイオはその重量を活かした突撃攻撃を得意とし、回復魔法を使える。そしてゆかり本人も弓矢で遠距離から攻撃するという大きなアドバンテージがある。

 コロマルは、犬だが人間の言葉をしっかりと理解出来る頭があり、犬ならではの高い身体能力で戦闘を有利に進める。また、ペルソナのケルベロスも非常に高い潜在能力を持っており、一線級の戦力と言ってもいい。

 そんな戦力が美鶴達と共に行動していれば、間違いなく大きな力になっただろう。

 特にゆかりは、現時点で最強のペルソナ使いであるのは間違いないのだから。

 ……まぁ、タカヤやその仲間もペルソナ使いだとすれば、もしかしたらゆかりよりも強いという可能性はあるが。

 

「そう言って貰えると嬉しいな。だが……本当にそうなのか、私には自信がないんだ。だから……そう、今だけは私を甘えさせてくれないか?」

 

 俺に寄りかかりながら、潤んだ瞳で美鶴がそう告げる。

 そうして今まで以上に俺に密着してきて……

 

「き、桐条先輩。その……」

「あの、お嬢様。申し訳ありませんが、用件は済んだので、私達はこの辺で失礼させて貰いますね」

 

 

 

 

 

 

 そんな声が聞こえてきて、今まで俺に寄りかかっていた美鶴の動きがピタリと止まる。

 まるで錆びた人形のようにギギギ、といった感じで美鶴が声のした方を見ると、そこではいつ帰ってきたのか、山岸が顔を真っ赤にしながら美鶴に呼び掛けており、そんな山岸の隣では幾月の荷物を運んでいた男の一人がこちらも気まずそうにしながら美鶴に声を掛けている。

 そんな2人から少し離れた場所では、有里が少しだけ興味深そうにこちらを見ており、その隣ではアイギスがいつものように無表情で俺達の方を見ていた。

 

「な……なななな……」

 

 今のやり取りを思い切り皆に見られていたという事に気が付いたのだろう。美鶴の顔は急速に赤くなっていく。

 いや、別にそこまで焦るような事じゃないと思うんだが。

 そう思うのは、俺がこの手の事に慣れてしまっているからだろうか。

 

「これは、やはり上に報告の義務があるのでしょうか?」

 

 アイギスは何故かそんな風に呟き、美鶴を余計に慌てさせる。

 あー……でも、どこぞの某エターナルロリータの従者のように、ことあるごとに映像を保存するといった事をしないのは、まだマシな方なのか?

 いや、実はアイギスもどこかに映像を保存している可能性というのは十分にあるのだが。

 武治に、その事を聞いてみた方がいいか?

 いやまぁ、そうなると今のこの状況を武治に知られる事になって、何気に親馬鹿の一面を持つ武治がどういう行動に出るのか、ちょっと分からないが。

 取りあえず美鶴は慌てた様子で俺から離れると、報告する云々と口にしているアイギスをスルーして、荷物を運び出していた男達に視線を向け、口を開く。

 

「ん、コホン。そうだな。分かった。理事長の荷物の搬出が完了したという事については了解した。それを持って帰って、理事長が何を考えていたのかを突き止めてくれ」

「分かりました。では、私達はこの辺りで失礼しますね。……お幸せに」

 

 最後にボソッと呟かれたその言葉に、美鶴は半ば反射的に息を呑む。

 そうして顔を真っ赤にしながら、何かを言おうとするも……それは言葉にならない。

 

「なっ、なな……ななな……」

 

 そんな美鶴をそのままに、男はそのまま去っていく。

 男の隣でその言葉を聞いていた山岸は、その意味を理解して顔を真っ赤にしている。

 さて、この状況をどうしたものか。

 そう思うも、取りあえず落ち込んだ様子を見せていた美鶴が、多少なりとも元気になったようなので、良しとするべきか。

 いや、寧ろ美鶴をもっと元気に……落ち込んだ状況から回復させるためには、より大きく焦らせる方がいい。

 そう判断し、俺に体重を預けている美鶴の肩をしっかりと抱く。

 

「なっ!?」

 

 美鶴の方は俺の突然の行動に呆気にとられたように声を漏らす。

 普段の美鶴からは、ちょっと信じられない程に動揺し、そして何らかの行動に出る事も出来ない。

 肩を抱いた事により美鶴の身体はより強く俺に密着する事になり、年齢不相応なまでに大きく、柔らかい双丘が俺の身体に押しつけられて形を変えているのが分かる。

 ……結局この後は処刑だ! と言ってペンテシレアを召喚した美鶴から逃げ回る事になるのだが、落ち込んでいた様子の美鶴が少しでも元気になったのなら、俺に取っては嬉しい事だ。

 それに、最後には何だかんだと美鶴からは感謝の言葉を貰ったし。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1389

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