転生とらぶる   作:青竹(移住)

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2007話

 ゆかりと召喚魔法の件で約束した翌日の影時間……俺の姿は、今までにも何度か来ている草原にあった。

 ゆかりやコロマルとピクニックに来たり、倒れている荒垣を一旦避難させる為に移動したりした、あの場所だ。

 そこにいるのは、俺、ゆかり、コロマル……そして、美鶴、真田、荒垣、有里、山岸、アイギス、天田。

 影時間に関係する戦力が、全てここに集まっているといった感じだ。

 今の状況で幾月やタカヤに騒動を起こされれば、間違いなくこっちが一歩出遅れるのは間違いない。

 ただ、そんな事にはならないという確信が俺にはあった。

 もしあの2人が何らかの行動を起こすとすれば、それこそ何か大きな出来事があってからだろう。

 特に俺の戦力を知っている以上、幾月もタカヤも慎重に事を進める筈だ。

 何より……ここまで移動するのは、影のゲートを使って移動している。

 もし何らかの手段で巌戸台分寮を操ってるとしても、俺を追うような真似は出来ないだろう。

 ちなみに、本当にちなみにだが、巌戸台分寮の各部屋に仕掛けられているカメラの類は、全て撤去されたらしい。

 まぁ、分からないでもない。

 その辺については幾月もかなり詳しく関わっていたらしく、もしかしたら今の状況でもどこかでその映像が見られるようになっているかもしれない。

 そもそも、幾月が美鶴達の前から消えたのは、発作的に……って訳じゃなく、しっかりと計算した上での行動な訳だ。

 俺達の前から姿を消した……逃げ出した後でも、こっちの行動を把握する為に何らかの仕掛けをしていてもおかしくはない。

 ……内部監査が動いている状況で、それを行った手際というのは、素直に凄いと思うが。

 その可能性があるからこそ、監視カメラの類は全部外す事になった訳だ。

 

「ほう……東京の近くにも、このような草原があったのだな」

「まぁ、東京は東京でも、かなり端の方だしな」

 

 影時間の草原という、少し珍しい光景を見回しながら呟く美鶴に、俺はそう言葉を返す。

 幾月や順平の件で結構なショックを受けていただけに、今回のお披露目がいい気分転換になればいいと思うんだが。

 

「それで、アルマー。何か面白いものを見せてくれるって話だが、何を見せてくれるんだ?」

 

 表面上は既に立ち直っているような様子の真田の言葉に、その場にいる全員の視線が向けられた。

 ゆかりの視線も向けられているが……いや、お前は知ってるだろ? と突っ込みを入れたくなった俺は間違っていない。

 まぁ、召喚魔法とかの件で話はしたが、具体的に何を召喚するのかってのは説明してなかったしな。

 そういう意味では、これも当然なのか?

 そう思いながら、俺は口を開く。

 

「知っての通り、俺は刈り取る者と召喚魔法の契約を結んだ」

 

 その事については既に全員が知ってるので、特に驚く様子もない。

 いや、寧ろこの時点で驚かれたりしたら、それこそ俺の方が驚くだろうけど。

 

「で、その召喚魔法の契約を結んだ奴ってのは、当然のように刈り取る者以外にもいる訳だ。もし将来的にその2匹を同時に召喚するような事になった場合、お互いに面識がないと、色々と混乱する可能性もある。だから、今のうちに2匹を召喚しておいて、顔合わせをしておこうと思ってな」

 

 そこまで言われれば、俺の話を聞いていた者達も興味深そうな視線を向けてくる。

 まぁ、刈り取る者なんて化け物と召喚の契約を結んだんだから、他にもどのような存在と契約をしているのか……その事に興味を抱くなという方が無理だろうが。

 

「さて、そんな訳で……早速召喚といくか」

 

 そう言いながら、上手く召喚出来るのか? という疑問があった。

 いや、普通の時なら問題なく召喚出来ると思うが、今は影時間だしな。

 一応俺の血を使った契約を結んでいるから、多分大丈夫だと思うんだけど……大丈夫、だといいな。

 取りあえず召喚出来なかったら、それはそれって事にしておくか。

 そう判断し、呪文を唱え始める。

 

『我と盟約を結びし者よ、契約に従いその姿を現せ!』

 

 その呪文に、美鶴達が何か理解出来ないような視線を向けていた、

 一瞬何でだ? と疑問に思ったが、考えてみればこのペルソナ世界の魔法は、呪文の詠唱を必要としない。

 俺が知っている限りでは最強の魔法であるメギドラオンですら、魔法の名称を唱えればそのまま使う事が可能なのだ。

 ネギま世界の魔法に比べれば、随分と有利な特徴なのは間違いない。

 ……凛が知ったら、がーーーーーっ! って感じで爆発するんじゃないだろうが。

 ともあれ、そんな視線を向けられている中、俺の呪文の詠唱によって空間が歪み……

 

「ギャアアアアアアアッ!」

 

 その空間の歪みから、そんな鳴き声と共に、グリが姿を現す。

 普通のグリフィンドラゴンと違うのは、召喚魔法の契約の際に俺の血を飲み、その血に宿った俺の魔力で、その姿が大きく変わったという事か。

 2本の角が後頭部から前に向かって伸びており、背中にはドラゴンの翼の他に、悪魔の羽根が1対生えている。

 この悪魔の羽根というのは、刈り取る者と一緒だな。

 ともあれ、鳴き声を上げながら出て来たグリは……いやまぁ、うん。

 

「お前、でかくなったな……」

「ギャルル?」

 

 伸びをするようにしたグリが、俺に顔を近づけてくる。

 その顔……というより、クチバシを撫でながら、呟く。

 俺の身体が20代ではなく、10代のものになってるからそう感じたのか? いや、違う。客観的に見ても、グリは間違いなく以前よりも大きくなっていた。

 

「ギャアアアア」

 

 それでも、こうして甘えるように鳴きながら顔を擦りつけてくる辺り、まだ甘えん坊……というか、召喚の契約を結んだ俺を親のように思っているのか。

 実際、俺の血によって生まれ変わったんだから、そういう意味では親と言われてもそう間違っているような気はしないが。

 こうして撫でていても、やはりグリは以前と比べて結構大きくなっているような気がする。

 まぁ、ここ最近はグリを呼ぶような機会が殆どなかったから、こうして大きくなっていても理解は出来るんだが。

 そのまま数分……俺がグリを撫でていると、やがて真っ先に我に返ったゆかりが、口を開く。

 

「ちょっ、ちょちょちょちょちょ……ちょっとアクセル! 何よこれ、何なのよこれ!」

「落ち着け。前もって言ってあっただろ? 俺が刈り取る者以外に召喚の契約を結んでいる奴を召喚するって」

「いや、それは……それは分かるけど、でも!」

 

 何かを言いたいけど、言えない。

 そんなゆかりの様子に、何故か他の面々も頷くだけだ。

 

「グリみたいなのが、出てくるとは思わなかった、と?」

「そう、それよ! 刈り取る者の件もあるし、もっと小さなのが出てくると思ってたら……何よ、これは!?」

 

 そこが、ゆかり以外の者にとっても、同様に気になる場所なのだろう。

 全員が頷いている様子を眺めながら、俺はグリを撫でつつ、口を開く。

 

「グリフィンドラゴンのグリだ。なぁ?」

「ギャアアア」

 

 俺の声に、グリは甘えるよう喉を鳴らす。

 もっとも、グリの大きさから考えると、喉を鳴らすという程度の鳴き声でも周囲にかなり響くのだが。

 

「グリフィンドラゴンだからグリって……安直な。もう少し、捻った名前を付けた方がよくない?」

 

 まだグリを恐る恐るといった様子で見ながらだが、ゆかりがそう言ってくる。

 

「そうか? グリもグリって名前を気に入ってるし、それでいいんだよ。な?」

「ギャア」

 

 俺の言葉に頷くように、グリが喉を鳴らす。

 

「……まぁ、本人……人? その、グリがそれでいいのなら、私からは何も言わないけど。……それでグリフォンドラゴンだっけ? どういう生物なの?」

「グリフォンドラゴンじゃなくて、グリフィンドラゴンな」

「そうなの?」

「ああ。まぁ、鷲の上半身とドラゴンの下半身を持ってるモンスターだから、グリフォンドラゴンって言いたくなるのも分かる気がするけど。グリフィンドラゴンって種族なのは間違いない」

「へぇ。……ねぇ、アクセル。ちょっとこの子を撫でてみてもいい?」

「構わない。危害を加えなければ、攻撃してきたりはしないからな」

 

 俺の言葉に従い、ゆかりはこっちに近づいてきてそっとグリの身体に手を伸ばす。

 もっとも、グリはかなり大きくなっており、頭の高さまでは15mくらいはあるんじゃないだろうか。

 だから、ゆかりが手を伸ばしても触れるのは足くらいなのだが……

 

「ギャ?」

 

 そんなゆかりに、グリは草原に座って撫でやすくする。

 俺と話しているということで、グリもゆかりを敵ではなく、俺の仲間と判断したのだろう。

 そうしてゆかりはグリの身体に手を伸ばし……

 

「うわ、もっと硬いのかと思ったけど、柔らかいのね」

 

 ふさふさのその身体に驚きの表情を浮かべていた。

 撫でられるのが気持ち良かったのか、グリは嬉しそうに喉を鳴らす。

 

「アクセル、その……少しいいか?」

 

 グリを撫でているゆかりを見ていると、こちらもようやく動けるようになったのか、美鶴が俺に話し掛けてくる。

 ゆかりの方が先に動けるようになったのは……まぁ、俺がこの世界の人間ではないというのもあるし、火星に行った事もあるというのが大きいのだろう。

 

「ん? どうした?」

「その……このグリだったか? 正直、私はこのような生物はおろか、その原型となっているのだろうドラゴンもグリフォンも見た事はない。いや、勿論空想上の存在としては知っているが……」

 

 美鶴の言葉は、他の面々にとっても納得出来るものがあるようだった。

 この世界でそういうのが存在するとすれば、恐らくシャドウとかペルソナとか、そっち関係でしかないのだろう。

 だが、グリはどんな風に見てもそういう存在には見えない。

 だからこそ、どこからグリを連れて来た? と俺に向かって尋ねているのだろう。

 

「常識で考えられない存在というのはシャドウ以外にもいる。何も、この世界に存在する常識外の存在全てにシャドウやペルソナといったものが関わってる訳ではないというのは……それこそ、俺を見れば明らかだろう?」

 

 その言葉に、全員が黙って頷く。

 実際にペルソナやシャドウとは全く関係のない能力を使う俺がいるのだから、その説得力は非常に高い。

 だが……そんな俺の言葉に対しても、素直に納得するというのは、今回に限っては無理だった。

 なんと言っても、グリの存在感というのは強烈すぎたのだ。

 だからこそ、美鶴は俺に向かって再び尋ねようとし……

 

「悪いが、その質問にはそれ以上答えられない。言っておくが、俺達とお前達はあくまでも友好関係ではあるが、きちんとした仲間という訳じゃない。それは、分かるな?」

「……うむ」

 

 数秒の沈黙の後、美鶴は俺の言葉に頷きを返す。

 ここでこれ以上俺に対して強行に質問を繰り返し、お互いの関係を険悪にする事は避けたかったのだろう。

 

「その……仲間ではないから教えられないという事は、岳羽は……」

 

 美鶴の視線が、グリを撫でているゆかりに向けられる。

 その視線と、何より今までの会話の流れから美鶴が何を言いたいのか理解した俺は、頷きを返す。

 

「ああ。ゆかりは、大体俺の事情は知っている」

「そうか……」

 

 少しだけ寂しそうな様子を見せる美鶴。

 ……寂しそう? 悔しそうとかそういう風な感じかと思ったが、寂しそうか。

 まぁ、取りあえず今はその事を置いておくとしよう。

 

「……アルマー、僕もあのグリに触ってもいいかな?」

「ちょっ、湊君!?」

 

 不意に出て来た有里の言葉に、その隣で俺と美鶴の話を聞いていた山岸が、慌てたように口を挟む。

 山岸にしてみれば、俺と美鶴の話に首を突っ込むという時点でどうかという思いもあっただろうし、ましてや有里までもがグリを撫でたいと言うとは思わなかった……といったところか。

 

「ああ、別に構わない。何かよっぽど変な事をしない限りは、グリも嫌がったりはしないと思うから」

「アルマー、その……俺もいいか?」

 

 有里に続いて、真田も俺にそう尋ねてくる。

 いや、真田だけではない。その近くにいる天田も、グリに興味深い視線を向けていた。

 そして天田がグリに興味を持つという事は、いざという時に……本当に万が一、何らかの理由でグリが暴れた時、すぐに庇えるように荒垣もそっちに向かう。

 アイギスと山岸の2人は、有里が行く以上当然だろう。

 コロマルの方は……うん、若干警戒心を持っているようだが、それでもグリに興味を持っている様子が見て取れた。

 さて、そうなると……結局ここに残ったのは、俺と美鶴だけとなる。

 

「美鶴はいいのか?」

「そうだな。もう少し人数が減ったら行ってみるよ。それより、グリだったか? 見かけに寄らず、随分と大人しいな」

「召喚の契約を結ぶ前は、結構獰猛だったんだけどな。……さて、それじゃあもう少ししたら、いよいよ刈り取る者との顔合わせといくか」

 

 そう告げ、グリに群がっている面々を見ながら、美鶴と2人で話をするのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1389

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