転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0188話

 M1アストレイのOS開発から数日、俺はアークエンジェルのブリッジでマリュー、ナタルやブリッジクルーと共にキサカの話を聞いていた。ブリッジの外、ドックの中では今この瞬間もアークエンジェルの補修作業が続けられており、あちこちでモルゲンレーテの技術者達が動き回っている。

 

「目下の情勢の最大の不安材料はパナマだ。ザフトに大規模作戦ありとの噂のおかげでカーペンタリアの動きはかなり慌ただしい」

「どの程度まで分かっているのですか?」

 

 キサカの言葉に、ナタルが質問する。連合軍の軍人としては出来るだけ情報を集めておきたいのだろう。

 

「さあな、オーブも難しい立場にある。情報も欲しいが藪蛇は御免でな。だが、アラスカに向かおうという君等にはかえって好都合だろう」

「万一追撃戦があったとしても、北回帰線を越えればすぐにアラスカの防衛圏ですからね。奴等もそこまでは深追いしてこないでしょう」

 

 ブリッジに表示されている周辺の地図を見ながら、ノイマンがそう呟く。

 そのノイマンの言葉に頷き、マリューがキサカへと声を掛ける。

 

「ここまで追って来た、例の部隊の動向は?」

「一昨日からオーブ近海に艦影はない」

「引き上げた、と?」

「また外交筋ではかなりのやり取りがあったようだからな。そう思いたい所だが」

「アスハ前代表が当時、この艦とMSの事をご存じなかったというのは本当ですか?」

「バジルール中尉!」

「確かに、前代表も知らなかった事さ。うちの閣僚が大西洋連邦の圧力に屈して独断で行った事だ。モルゲンレーテとの癒着も発覚した。オーブも陣営を明らかにすべき、という者達の言い分も分かるがな。そうして巻き込まれれば、火の粉を被るのは国民だ。ヘリオポリスのようにな。それだけはしたくないと、ウズミ様は無茶を承知で今も踏ん張っておられるのさ。君等の目には甘く見えるのかもしれんがな」

 

 ……はたして、本当にそうか? この前ウズミと実際に会った俺が感じた印象は本物の政治家だという事だ。そこら辺にいる政治屋ではなく。あれ程の器量を持つ人物が、果たしてMSという有効な兵器の開発を躊躇するだろうか?

 国民に火の粉を被らせたくないというのも分かるが、実際に連合なりザフトなりに攻められた時にMS相手にこれまでの通常兵器で対抗するのが厳しい事は連合軍が証明している。あのオーブの獅子がそんな事を理解出来ないなんて事はない筈だ。そうなると大西洋連邦からの圧力というのも、ある意味では渡りに船だったのかもしれない。少なくてもオーブだけでMSを開発するよりは期間を短縮出来たのだから。

 

「修理の状況は?」

「明日中には、と連絡を受けています」

「後少しだな。頑張れよ」

 

 そう言ってくるキサカに敬礼をするブリッジクルー。俺は軽く手を振るだけにしておく。

 そんな俺の様子を見て、苦笑を浮かべつつもマリュー達に敬礼を返すキサカ。

 そのままブリッジを出て行こうとするキサカをマリューが呼び止める。

 

「キサカ一佐」

「ん?」

「本当に色々とありがとうございます」

「いや、こちらも助けてもらった。既に家族はいないが、私はタッシルの生まれでね。一時の勝利に意味はないと分かってはいても、見てしまえば見過ごす事も出来なくてな。暴れん坊の家出娘をようやく連れ帰る事も出来た。こちらこそ、礼を言うよ」

 

 軽く頭を下げて、今度こそキサカはブリッジを出て行った。

 それを見送り、俺もブリッジを出る。

 

「アクセル?」

「ちょっと格納庫にな。ブリッツやストライクのオーバーホールも完了したって話だし、調子を見ておきたい」

「そうだな。もうすぐオーブを出る事になる。そうすれば恐らくまた例のザフト部隊とやり合う事になるだろう。アクセル・アルマー、頼む」

 

 以前と比べてどこか柔らかくなったナタルに軽く手を振ってブリッジを出る。……やっぱりムウのおかげだろうか?

 

 

 

 

 

 格納庫へと入っていくと、スカイグラスパーの周囲にキラやムウ、マードックが集まっている。そしてスカイグラスパーにはトールの姿が。

 そう言えばそうだったな。次の戦闘からトールがスカイグラスパーに乗って出撃して、その次の戦闘でアスランのイージスに撃墜される事になるのか。……阻止すべきだな。通常のザフトと戦うのならまだなんとかなるだろうが、赤服が揃っているクルーゼ隊――今はザラ隊か――相手に初心者では荷が重すぎる。

 

「大丈夫ですってば。シミュレーションだってもうバッチリ。やれますよ」

 

 どこか得意気なトールのその言葉を聞き、マードックが溜息を吐く。

 

「こいつが2機出られりゃぁ、確かに助かるでしょうがね」

「……やめておけ。死ぬのがオチだ」

 

 そんなマードックの言葉を遮るように声を掛ける。

 

「兄ちゃん」

「分かってる筈だぞ、マードック。戦争はそんな簡単なものじゃないって事は」

「アクセルさん、大丈夫ですよ! シミュレーションできちんと練習したんですから」

「シミュレーションは所詮シミュレーションでしかない。現実はゲームのように甘くないんだ。それに、追ってくる敵が普通のザフトなら俺も何も言わない。だが、分かっているのか? 敵は3機のGを奪ったザフトのエリート達だぞ?」

「それは……」

「Gに乗ったコーディネーター。つまりはキラと同じだ。お前は、キラとやり合って無事で済むと思っているのか?」

「だが兄ちゃん、地上……特に海上ではストライクとブリッツだけだとキツイだろう? 空中戦が出来るのがフラガ少佐のスカイグラスパーだけってのは幾ら何でも」

 

 マードックの言葉に、思わず苦笑を浮かべる。

 

「前回の戦いでグゥルを鹵獲したのを忘れたのか? オーブに貸し出されていたが、ブリッツと一緒に戻ってきている筈だ」

「あ、ああ。戻ってきてるが……アレを使うつもりなのか?」

「グゥルがあれば、空中戦力はブリッツとムウのスカイグラスパーの2機になる。アークエンジェルの護衛にはキラのストライクがある。トール、お前がわざわざ出る必要はない」

「でも! キラにばっかり戦いを任せて、俺達はのうのうと……」

「トール、僕はそんな事」

 

 思わず本音を漏らしたトールに、キラが声を掛けようとするがその肩を押さえて制止する。

 

「お前の気持ちは分かった。だが、お前が戦いという物の本質を理解出来ているとは思えないな」

「大丈夫ですよ!」

「……だから、ちょっとしたテストをしたい。それに耐える事が出来たのなら、俺はもう何も言わない。スカイグラスパーで戦場に出るなりなんなり好きにしろ」

「おい、アクセル!」

 

 先程俺がキラの肩を掴んだように、今度はムウが俺の肩を掴んでくる。

 ムウの方を向き、アイコンタクトで自分に任せろとだけ伝える。それを見たムウは渋々引き下がった。俺に任せるという事だろう。

 

「アクセルさんは傭兵であって、この艦の正式なクルーじゃないんですよね? なら俺にテストなんてする権限はないんじゃないですか?」

「……いや、俺が認めよう。お前さんが出撃してもいいかどうかはアクセルのテスト次第という事にさせてもらう。これでも一応少佐なんだ。その程度の権限は持っている」

 

 少佐であるムウにそこまで言われては、所詮二等兵であるトールにはどうする事も出来ない。スカイグラスパーから降りて、大人しく俺の前へと進み出る。

 

「それでテストって何をやるんですか?」

「何、簡単な事だ。俺の前に5分立っている事が出来れば合格だ。ただし、少しでも後ずさったり、あるいは腰を抜かしたりしたらその場で不合格とさせてもらう。構わないな?」

「え? それだけ?」

 

 拍子抜けした、といった様子で俺の前に立つトール。確かにそうだろう。普通に5分立ったままでいればいいと考えれば至極簡単に感じる筈だ。……俺が何もしなければ、だがな。

 

「ムウ……はこの試験を許可した立場上拙いか。マードック、時間を計ってくれ。5分だ」

「あいよ。では……開始!」

 

 マードックの合図と共に、テストが開始された。まずはただじっとトールの目を見る。それだけでどこか気圧された様子のトールだったが、2分目に突入した所で、ジワリと殺気を滲み出させる。トールは額に冷や汗を浮かばせながらキョロキョロと周囲を見回している。3分目。より濃密な殺気を叩き付ける。膝をガクガクと振るわせながらもまだトールは踏ん張っている。……ほう、なかなか。明けの砂漠のアジトではカガリはこの時点で限界だったんだが。そして4分目に突入し、濃密というよりは濃厚と表現した方がいいような殺気をトールへと叩き付け……次の瞬間にはトールは白目を剥いて気絶し、床へと倒れ込んだ。

 

「トール!」

 

 慌ててキラがトールへと近寄るその様子を見ながら、殺気を収めていく。

 ふと周囲を見ると、ムウにマードック、それに他の整備員の面々も顔を青くして俺へと視線を向けていた。

 

「言うまでもないが、テストは不合格という事で構わないな?」

 

 ムウへと視線を向け尋ねると、額に汗を掻きながらも頷く。

 

「あ、ああ。しかし、やりすぎじゃないか? 本気でお前さんに殺されるかと思ったぞ」

「そうか? 戦場にでるのならあれくらいの殺気は受け流せて当然だと思うが」

「馬鹿言うな。周りを良く見てみろよ」

 

 ムウに言われて周囲を見回すと、数人の整備員達が腰を抜かして床へと座り込んでいた。

 

「……俺としてはやりすぎのつもりはなかったんだがな」

 

 ウォーダンとの生身での戦闘訓練では、あれよりも強烈な殺気をお互いに叩き付け合うのが普通だっただけに、いまいちピンと来ない。

 結局はトールが戦場に出るのはまだ早いという事になり、しばらくはブリッジで今まで通りの仕事を続ける事になった。

 ただ、それでもなかなかに懲りないようで、気絶から気が付いた後に俺の前へとやってきて『次は負けませんからね!』と宣戦布告してブリッジへと戻っていった。

 ……実はなかなかに根性のある男だったんだな。ムウ並の軽い性格とミリアリアとの夫婦漫才が強く印象に残っていたんだが。

 

「で、ブリッツは? もう運ばれてきてるんだろう?」

「ん? ああ、いつもの場所に置いてある」

 

 近くにいたマードックへと尋ねると、いつもブリッツが置かれている方へと視線を向ける。確かにいつもの場所にブリッツは置かれていた。

 

「一応、関節部分の消耗が酷いという事で、その辺を重視して新型の関節駆動パーツへと変えたらしい」

「変更点はそんな所か?」

「何しろ時間がなかったからな。ストライクの方はそれなりに性能向上出来たんだが、兄ちゃんのブリッツは消耗が酷すぎたから、そっちに掛かり切りになったらしい」

「ま、使えるならなんとかなるさ。それよりもさっきも言ったがグゥルの調整をしておいてくれ。恐らくオーブから出航したらすぐに例の部隊と鉢合わせる事になるぞ」

「マジかよ」

 

 そう。原作通りに進んでいるのなら、モルゲンレーテの近くでキラとアスラン達は出会っている筈だ。そしてアスランはこのオーブにアークエンジェルが匿われている事を察する。

 

「俺の勘が正しければ、な」

 

 呆れた様子のムウとマードックにそう呟き、ブリッツの調整作業を開始する事にした。




名前:アクセル・アルマー
LV:36
PP:115
格闘:254
射撃:274
技量:264
防御:264
回避:294
命中:314
SP:446
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    ???
    ???
    ???
    ???
    ???

撃墜数:278

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