転生とらぶる   作:青竹(移住)

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2025話

 取りあえずクラスの連中を驚かせつつ煙に巻いてその場を脱出した俺は、屋台の片付けを残りの者達に任せると美鶴に連絡を取る。

 もっとも、この学園祭の最中だけに、美鶴がどこにいるのかは……探そうと思えば一応探せるだろうが、無理をしてまで探す必要はない。

 今回の場合は単純に情報を得られればいいだけなんだから、携帯を使えば十分だった。

 そんな訳で、早速俺は携帯に登録されている数少ない番号の1つに電話を掛ける。

 数秒の呼び出し音の後、美鶴が出る。

 

『もしもし? アクセルか。どうした?』

「屋台にチドリが来たんだけど……」

『む? ああ、その件に付いては既に有里から連絡を貰っている』

「ああ、そうか」

 

 どうやら、有里からもう連絡がいっていたらしい。

 

「なら、いいけど。……何でもうチドリを退院させたんだ? 月光祭に連れて来たのは、順平に会わせようとしてだと思うけど」

『アクセルの事だ。もう、大体予想出来ているんじゃないか?』

「そう言うって事は、やっぱりチドリをS.E.E.Sに所属させるつもりなのか?」

『そうだ。……というより、正直なところチドリを守るにはそれが最善の選択肢だと判断した』

「……なるほど」

 

 美鶴の言葉は、決して否定出来ない事実だ。

 もし辰巳記念病院にチドリを入院させておけば、それこそいつタカヤやジンといった連中がやって来ても、それに対処出来る人員は決して多くはない。

 一番に上げられるのは俺や美鶴達のように、タルタロスに挑む面子だろうが……影時間にそちらに手を回すとなると、それこそ下手に戦力を分散する事になってしまう。

 実際、桐条グループには影時間に動けるようになる装備を持っている奴もいるが、それが一般的な意味での戦闘ならともかく、ペルソナとかを使って戦闘になるとそこまで頼りにならない……出来ないというのは、それこそ幾月が行方不明になって、タカヤが脱走した時の事を考えれば明らかなのだから。

 そうなると、チドリをS.E.E.Sに組み込んでしまった方が安心だという意見には納得出来る。

 これで、もしチドリが制御剤の副作用でろくに戦えないようなら、そんな無茶も出来なかっただろうが、今は俺の持っていたイクシールのおかげでチドリの体調は万全だ。

 もっとも、その為に順平は俺に対して大きすぎる借りを作ったのだが。

 ……もしホワイトスターに戻れるようになったら、いっそ順平をネギま世界の魔法界にある闘技場にぶちこんでみるか?

 ふとそう思ったが、拳闘士の強さは多少ペルソナを使えたくらいでどうにかなるようなものじゃないから、順平がイクシールの分の料金を稼ぐには相当な時間が掛かりそうだ。

 

「じゃあ、チドリの件は取りあえず放っておいてもいいんだな?」

『ああ、問題ない。ただ、一応チドリの説明をする必要があるから、影時間前に寮の方に来てくれないか?』

「分かった。一応ゆかりにも話を通しておく」

『すまないな。……違う、それは向こうの方に持っていってくれ。そうだ。……すまないが、こちらも今は色々と忙しい。何か問題があったら、改めて連絡をくれ』

「ああ、そうさせて貰うよ」

 

 その後、一言二言くらい言葉を交わすと、美鶴との電話は切れる。

 生徒会長だけあって、学園祭中の今は色々と忙しいのだろう。

 昨日は一応俺と一緒に回るだけの時間があったが、今はその分だけ忙しくなってるとか……だったりするのか?

 一瞬そう思ったが、考えてみればそれは有り得ないだろうと判断する。

 いや、けどこの世界の原作の展開によっては、実はそういう事もあったりするのか?

 

「まぁ、その辺は今更考えてもしょうがないか。今は取りあえず……学園祭を楽しむとしよう」

 

 屋台をやっていた場所に戻れば、まだ色々と仕事はある筈だ。

 だが、戻れば間違いなく順平とチドリについて色々と聞かれるだろう。

 幸い……って言い方はどうかと思うが、俺はクラスの連中とも殆ど携帯の番号やメールアドレスの交換はしていない。

 そうである以上、俺にメールは……

 チロリン、とメールの着信音が耳に入ってきた。

 あー……うん。クラスの連中と殆ど交換してなかったけど、クラスの中でも何人か……友近や宮本とかとは、普通に交換してたな。

 そして届いたメールは、予想通りに友近のもの。

 内容は、案の定順平とチドリについての情報を寄越せというものだった。

 取りあえずそのメールは無視しておくとして、さて、これからどうするか。

 ゆかりがいれば一緒に回ったんだが、今のゆかりは色々と忙しいからな。

 母親の再婚の件、ペルソナの進化の件、屋台の件……それ以外にも色々と。

 また、ゆかりの場合はナンパしてくるような相手もいるだろうから、それの対処も必要となる筈だ。

 ナンパ避けとして、俺が一緒にいればいいのかもしれないが……まぁ、取りあえず会ったらどうするか聞くとしよう。

 そんな訳で、適当に屋台やら喫茶店やらを覗きながら歩いていると、不意に視線の先で不愉快な光景を見つける。

 見るからに不良っぽい……それこそ、ポートアイランド駅の裏側にいるような数人の男が、1人の女に絡んでいるのだ。

 絡まれている女の方は……へぇ、随分と大人っぽい。

 ただ、制服を着ている以上、間違いなく月光館学園の生徒だろう。

 

「ねぇ、ねぇ。ちょっと俺達と付き合ってよ。この学校に来るのは初めてだから、出来ればしっかりと案内して欲しいんだ」

「そうそう。折角の学園祭なんだし、君みたいな美人と一緒にすごしたいんだ」

 

 女が逃げられないように、男達は周囲を固めた上で女を誘っている。

 ……いや、あれは誘いとかじゃなくて、寧ろ強要していると言ってもいい。

 そんな訳で、こっちとしても見てしまった以上は放っておく訳にもいかなかった。

 ここで放っておいたら、後でゆかりや美鶴に文句を言われるのは間違いないし……それに、折角の月光祭なのに、ああいう馬鹿のせいで妙な騒動になっても困るしな。

 

「おい、その辺にしておけ。嫌がってるだろ」

「ああっ!? てめえ、誰に向か……」

 

 誰に向かって言ってるんだ。

 恐らくその類の事を言おうとしたのは間違いない。

 だが、反射的に叫ぼうとしたその男は、俺の姿を見た瞬間に動きを止める。

 ……どうやら、俺の事を知ってる相手だったらしい。

 いやまぁ、ポートアイランド駅の裏側にいるような相手なんだから、そっちで何だかんだと有名な俺の事を知っていてもおかしくはなかったが。

 

「さて、俺が誰だか分かるな? どうする? それでも突っかかってくるなら、俺はそれでもいいけど? 幸い、今日は月光祭だ。多少うるさくしても、特に問題にはならないだろうし」

「……ちっ、行くぞ!」

 

 俺と話していた男が忌々しそうに叫ぶと、その男がリーダー格だったのだろう。

 他の男達も文句を言わず、そのまま去っていく。

 そうして結局この場に残ったのは、俺と絡まれていた女のみ。

 女の方は、自分に絡んでいた男達をあっという間に追い払った俺を見て、少し驚いた様子を見せながらも、話し掛けてくる。

 

「その……ありがとう」

「気にするな。こういう賑やかな場所だと、ああいう馬鹿も増えるからな」

 

 そう言い、俺は改めて女の方を見る。

 やはり、高校生とは思えないくらいに大人っぽい。

 いや、大人っぽいという意味では、それこそ美鶴なんかは社長秘書に見間違われるくらいに大人っぽいのだが、この目の前の女は……そう、女子大生くらいの年齢、もしくはOLになったばかりといったくらいの年齢に見える。

 

「ありがとう。私は2年の長谷川沙織。君は……アルマー君よね?」

 

 長谷川と名乗った女が、俺の事を知っていても特に不思議ではない。

 2年という事は俺と同学年だし、テストの成績も含めて何だかんだで俺が目立っているというのは理解しているのだから。

 これで助けたのが有里とかだったら、もっと確実に向こうは知っていたと思うんだが。

 

「ああ。それで、お前は1人なのか? いや、1人で行動している俺が言うべき事じゃないだろうが」

「ふふっ、そうね。……その、残念だけど、私には親しい友達がいないから」

 

 長谷川の口から出た予想外の言葉に、驚く。

 長谷川は、間違いなく美人と呼べるだけの顔立ちをしている。

 それこそ、人の好みにもよるがゆかりや美鶴よりも長谷川の方がいいという者がいてもおかしくない程に。

 だが、実際に学校の中でそこまで噂になっていない……ゆかりと美鶴の2大派閥に及ばないまでも、ファンクラブの類が出来ていないという事は、客観的に見て長谷川はそこまで人気がないということなのだろう。

 もしかして、俺の審美眼とかが普通と違う……と、そういう可能性も十分にあるが。

 ああ、でもゆかりや美鶴を美人だと感じているのを考えれば、その辺りに問題があるとは思えない。

 

「そうか? なら、俺と一緒に回ってみるか? そうすれば、さっきのような妙な奴に絡まれるような事もないけど」

「えっと……それってもしかして、デートのお誘い?」

「そういう訳じゃないんだが……まぁ、そういう風に思ったんなら、それでも別に構わないぞ」

 

 この件がゆかりに知られれば若干不味そうな気がしないでもないが、長谷川をこのまま放っておくと、また面倒に巻き込まれそうになるのは、ほぼ確実に思えた。

 ……長谷川に絡んでいた男達が、また姿を現す可能性も皆無という訳じゃないし。

 

「ちょっと嬉しいんだけど……ごめんなさい、クラスの方の出し物で私も色々と働く必要があるから」

「そうなのか? まぁ、それならそれでいいけど」

 

 長谷川が1人でいるから、ああいう連中に絡まれるのだ。

 なら他の連中と一緒に動けば、その辺りが問題になるような事もないだろう。

 

「いえ、誘ってくれて嬉しかったわ。よければ、また私を見かけたら声を掛けてくれる?」

 

 笑みを浮かべつつそう言うと、長谷川はそのまま去っていく。

 出し物をやっているという自分の教室に向かったのだろう。

 長谷川がそう判断したのなら、俺もこれ以上は何も言う事はない。

 すぐに長谷川の事を忘れ、俺は再び月光祭を楽しむべく学校の中を歩き回る。

 

「……へぇ」

 

 そんな中で、ちょっと珍しい屋台を見つけた。

 売ってるのは、餅。

 餅を売る屋台ってのは、かなり珍しい。

 正確には、焼いた餅に醤油を塗って海苔で巻いた……何だったか。磯辺餅? そんな感じの餅だ。

 まぁ、雑煮にしなかったのは、納得出来る。

 餅は日本でも多く食べられているが、その雑煮の種類ともなれば、それこそ数え切れない程にある。

 中には聞いただけで、え? と思うような雑煮もあるのだから、そう考えれば素直に餅だけを売りに出したというのは褒められてもいいと思う。

 まぁ、餅にしても醤油、きな粉、納豆、大根おろし……色々な食べ方があるんだが。

 ただ、この屋台の場合は一種類だけにしているので、その辺りで揉める事もない。

 ……ああ、でもそうなれば、雑煮とかでも出し汁を1種類だけ用意しておけば問題はなかったのか?

 そう思いつつ、金を払って餅を買う。

 うーん……高校の学園祭である以上はしょうがないんだが、出来れば餅は手作りの餅にして欲しかったな。

 几帳面に切られているその餅は、スーパーとかで買ってきた餅で間違いないだろう。

 勿論、そういうスーパーとかで売られている餅も、一昔前に比べると大分美味くなってきている、らしいのだが。

 ともあれ、海苔で巻かれた餅は食べ歩きという意味では問題ない。

 これで海苔が巻かれていない普通の餅に醤油を付けただけだったりすれば、持ち歩くのにも面倒臭い事になっていたのは間違いないんだろうが。

 

「お?」

 

 餅を食べ終わった俺が、次に向かったのは体育館。

 色んな出し物が行われている場所だ。

 中には劇をやるようなクラスもあるらしいが、残念ながら今はやっていない。

 いや、劇は当然長い時間見なければいけないので、残念じゃなくて幸いながら……か?

 そんな風に考えている俺の視線の先では、有志なのか軽音部なのかは分からないが、バンドが歌っていた。

 そこそこ人気があるらしく、聴いている客達も歓声を上げている者が多い。

 バンドの歌が上手いのかどうか、正直なところ俺には分からない。

 元々、俺は歌とかについては詳しくないしな。

 ……それでも、シェリルの歌に比べれば明らかに劣るのは分かった。

 そもそも、学校の中で歌っているバンドと、銀河の歌姫とまで呼ばれるようになったシェリルとを比べる方が間違っているのだろうが。

 そんなバンドが終わると、次は有志による手品が披露されることになるが……こちらは中々にレベルが高かった。

 素早く手を動かすとか、そういうのだと俺は種をあっさり見破る事が出来るのだが、そういうのではない手品は種を見破るのも難しく、俺は十分に手品を楽しむ事が出来たのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1389

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