転生とらぶる   作:青竹(移住)

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2026話

 秋になってからまだそれ程経っていないとはいえ、当然ながら夜になれば太陽が沈み、月が姿を現す。

 季節が進んだと、そう感じるのは……やっぱりこうして太陽の沈むのが早くなった時とかだな。

 ともあれ、学園祭は無事に終了して、現在は後夜祭が行われていた。

 もっとも、後夜祭とは言ってもそこまで派手なものではない。

 グランドの中央でキャンプファイヤーをしており、そこには月光祭で使った物が燃やされてる。

 もっとも、燃やされるのはあくまでも木や紙を始めとして、普通に燃える物だけだ。

 プラスチックの類とかは、色々と問題があるという事で燃やすのを許可されていない。

 他にも来年以降に使えるような代物も寄せられており、燃やされるのは本当に今年だけしか使えない代物だ。

 

「何だかこういうのを見ると、終わった……って、そういう気がしてくるわね」

 

 キャンプファイヤーを見ながら、ゆかりがしみじみと呟く。

 にしても、本当に今更だが、キャンプをしてる訳じゃないのにキャンプファイヤーって言っても本当にいいのか?

 他にどう言えと言われれば、それはそれで困るんだが。

 

「何だかんだとこの学園祭も色々とあったけど、十分に楽しかったしな。それだけに、こうして文化祭が終わるというのは、どことなくもの悲しい気分になる」

「あはは。何それ。アクセルらしくないわよ」

 

 ゆかりが俺の言葉に笑みを返してくる。

 まぁ、俺も自分で言っててらしくないって気持ちが分からないでもないしな。

 

「これが終わって一段落したら、影時間前に巌戸台分寮に行くけど、構わないよな?」

「ああ、あのチドリって娘の事でしょ? それは別にいいわよ。……けど、ストレガの一員だったのに、本当にいいの?」

 

 少しだけ心配そうにしてるのは、やはり幾月の事があるからだろう。

 美鶴の信頼出来る仲間だった筈の幾月は、あっさりと裏切った。

 であれば、チドリのような人物を味方に引き入れるのは危険ではないか、と。

 その気持ちも理解出来ない訳ではない。

 だが、順平の事を考えれば、チドリを迂闊に扱えないのも間違いない。

 今の順平は、S.E.E.Sの中でもかなりの戦力として活躍している。

 それだけに、下手に順平の許容出来ない事をしたりすれば、順平はS.E.E.Sを抜ける可能性すらあった。

 もし影時間に対応しているのがS.E.E.Sだけであれば、順平も迂闊に抜けるなどという真似が出来ないだろう。

 だが、俺達がいる。

 S.E.E.Sとは協力関係を築いているが、同一の存在という訳ではない。

 つまり、最悪順平は俺達に合流するという可能性があるのだ。

 そんな訳で、原作程に強い態度は取れない訳だ。

 いやまぁ、このペルソナ世界の原作を知らないので、実は普通にチドリも仲間になっていた可能性はあるが……ないか?

 チドリが助かったのは、あくまでもイクシールという規格外の魔法薬、それこそ文字通りの意味で別世界の魔法薬を俺が持っていたからこそだ。

 そして当然ながら、俺という存在は原作には出てこない。

 つまり、原作ではチドリは死んでいた可能性もある。

 ……もっとも、死んでいたという意味で考えれば、荒垣も相当危ないんだが。

 制御剤の副作用に加えて、天田の母親の仇という……フラグが2つも建っている状態なのだから。

 フラグ建築士というのは、多分荒垣みたいな奴の事を言うんだろう。

 まぁ、そのフラグをことごとく破壊している俺は、フラグクラッシャーと呼ばれてもおかしくはないのかもしれないが。

 

「まぁ、大丈夫だろ。順平にかなり好意を抱いてるみたいだし、それこそ美鶴が順平に対して妙な真似をしなかったりすれば、何の問題もない……と、思う」

「最後で一気に不安になったんだけど」

 

 そう言うゆかりだったが、順平が以前俺に噛みついてきた事を考えれば、その可能性も皆無という訳にはいかないし。

 それに、俺の目的はあくまでも影時間を解決してホワイトスターと行き来出来るようにする事だ。

 もし影時間を解決する事が何らかの問題を引き起こすとしても、俺はそれを止めるような真似はしないだろう。

 そうなれば、順平……いや、S.E.E.S、もしくはゆかりを含めて俺の敵になる可能性は十分にあるのだが。

 

「まぁ、普通に考えれば、その辺は心配しなくてもいいんじゃないか? 順平といい感じだったし」

「あー……そうらしいわね。でも、あの順平にねぇ……」

 

 意外、といった表情で呟くゆかりだったが、正直なところ俺はそれも同感だ。

 ただ、恋愛というのは色々と想定外の事があるしな。

 それを思えば、順平がチドリを射止めたとしても不思議はない。

 ……あの2人がまだ正式に付き合っている訳じゃないってのは、ちょっと意外だったが。

 

「物好きもいたものね。……まぁ、アクセルを選んだ私が言うべき事じゃないと思うけど」

 

 苦笑しながら、それでも俺に体重を預けてくるゆかりだったが、正直なところそれを言われると俺自身が思い切り納得してしまう。

 そもそも俺は人間ですらなく、異世界の存在で、更に本拠地のホワイトスターには10人以上の恋人達がいて、全員と同棲しており、毎晩のように全員を抱いていた。

 ……そんな相手を好んで好きになるような人物を、物好き以外に何て言えばいいのやら。

 ゆかりが自分の事を苦笑するのも、分からないではない。

 

「取りあえず、俺はその事についてはノーコメントという事で」

「そう? ……あ、そうそう。そう言えば今日の夜の件だけど、私のイシスも見せる事にするわ」

「……いいのか?」

「ええ。それに、どのみちイレギュラーシャドウと戦う時にはペルソナを召喚しないといけないんだから、隠してても意味はないでしょ?」

「一応、隠す手段はない訳じゃないけど……ゆかりがそれでいいのなら、俺は別に構わない」

 

 イレギュラーシャドウの数そのものがもう2匹だ。

 そうである以上、戦いになったらペルソナを召喚せずに、弓を使って遠距離から援護しているだけでゆかりは自分の役割を果たしているだろう。

 ゆかりが使っている弓も、以前と比べるとかなり強力な物になってるし。

 ……もっとも、ゆかりは現在最強のペルソナ使いだ。

 そんなゆかりがペルソナを召喚しないで戦うとなれば、色々と違和感を抱かれるだろうが。

 それでも、残り2匹であれば、どうとでもなるのは間違いない。

 だが、ゆかりはそんな俺の視線を向けられても、問題ないと頷いて口を開く。

 

「イレギュラーシャドウは強敵よ。アクセルが強いのは分かってるけど、いつもイレギュラーシャドウとの戦いでアクセルがいる訳じゃないでしょ?」

「まぁ、それは……そうだな」

 

 実際、先月のイレギュラーシャドウとの戦いではタカヤの件もあって俺が戦闘に参加出来なかったし、今月のイレギュラーシャドウとの戦いでも、皆が別個に行動していた為に、下手をすれば俺が戦闘に間に合わないという可能性もあったのだ。

 その辺を考えれば、いつでもきちんと戦う事が出来るようにというゆかりの姿勢は、好ましいものなのは間違いない。

 

「分かった。その辺は好きにすればいい。ただ、一応気をつけた方がいいとは思うけどな」

「……気をつけるって、何に?」

「チドリ」

「疑ってるの?」

「疑ってはいない。ただ、俺達はチドリの性格をよく知らない。今は順平のおかげでこっちに協力的だが、下手をすればタカヤに取り込まれる可能性はないとは言えないだろ?」

 

 俺が見た限り、チドリの性格は受け身というか受動的というか……ともあれ、自分から積極的に何かをするようには見えない。

 それだけに、タカヤ辺りに強く出られれば、特に抵抗もなくそれを引き受けてしまいそうな気がする。

 もっとも、言う事を聞かせようとしてやって来たのが幾月だったら、それを無視して呆気なく殺してしまいかねないような気もするが。

 そうなったらそうなったで、こっちにとっては嬉しい誤算という感じになるだろう。

 

「そう……言われれば、そうかしら? あら?」

 

 首を傾げたゆかりだったが、不意に流れている音楽が変わったのに気が付いたのだろう。数秒不思議そうな表情を浮かべ……やがて、納得した表情で頷く。

 俺もまた、ゆかりの視線を追って曲が変わったのが何を意味しているのかを理解する。

 そう、現在キャンプファイヤーの行われている校庭では、何人もの男女が踊っているのだ。

 こういう場合に踊るのって全員で踊るようなものかと思ってたのだが、どうやら月光祭は違うらしい。

 まぁ、後夜祭は全員参加という訳じゃなくて希望者だけだし、そう考えればおかしな話ではないのか? そう、踊りがフォークダンスであっても。

 

「……ねぇ」

 

 ゆかりがそう言いながら、俺に手を差し出してくる。

 それが何を意味しているのか、俺も分からない訳じゃない。

 その手を握り、やがて俺とゆかりはキャンプファイヤーに近づいていく。

 

「フォークダンスって言っても、色々と地域によって違ったりするんだって。知ってた?」

「いや。そうなのか?」

 

 元々俺は踊りの類はそれ程好まない。

 勿論パーティとかに参加するような事になれば、踊らない訳ではない。

 そういう時に踊るような、ある程度の踊りであれば、俺も踊れるし。

 ただ、好んで踊らないというだけで。

 

「そ。そんな訳で、こういう時の踊りは、どんな踊りでもフォークダンスという扱いになるのが一般的みたいよ。……まぁ、ある程度踊りの範囲は決まってるんでしょうけど」

 

 それは俺にも納得出来る話だった。

 後夜祭で、どこかしんみりとした空気や音楽の中、派手なダンスミュージックとかが必要な踊りをされれば、まさに空気読めという風に見られるだろう。

 順平曰く、空気詠み人知らず……ってのはこういう時に使うのか?

 ともあれ、俺はゆかりと共にキャンプファイヤーの側でダンスを楽しむ。

 ……何だか、少し離れた場所で生徒会長としてそこにいる美鶴がこっちを見ているような気がするが、俺の気のせいか?

 そんな風に考えつつも、ゆかりとの踊りは続く。

 かなり密着している状況なのはゆかりも理解しているのか、焚き火の明かり以外の理由で頬が赤くなっているように見える。

 同時に俺は、身体全体を使ってゆかりの身体の柔らかさを堪能する。

 

「うわっ、おい、ちょっと……あれ……」

「何て羨ましい真似を……いや、けしからん。全くけしからん」

「岳羽さん、羨ましい」

「な、なぁ。俺と一緒にああいう踊りをしてみないか?」

「嫌よ。私を誘うなら、せめて有里君くらい格好良くなってからにしてよね」

 

 うん? 何だか、他の場所で色々と騒がしくなっているような……まぁ、その辺りは別にいいか。

 そんな風に考えつつ、俺は踊り続け……気が付けば、周囲では俺達以外にも何人かが雰囲気を作っているのが分かる。

 学園祭を切っ掛けにして恋人とかが増えるって話を、以前友近から聞いた事があったが、恐らくそれはこういう事なんだろう。

 もっとも、それが長続きするのかどうかは分からないが。

 修学旅行前、クリスマス前……そんな風にイベントがある時、まだ独り身の男女は恋人を作る者が結構な数いるらしい。

 もっとも、当然そういうイベントを楽しむ為に恋人を作るというのだから、相手を好きな訳でもない。

 結果的に、イベントが終わってしまえば長続きせず、別れてしまう事も多いらしいが。

 そんな中で、本当に相性の良い……もしくはイベント中にお互いを意識し合うようになれば、続くこともあるらしい。

 もっとも、後者の可能性はかなり少ないらしいが。

 

「ほ、ほら……アクセルももうちょっと近づきなさいよ」

 

 少し照れた様子ではあったが、ゆかりがそう言ってくる。

 その言葉に従い、触れていた腰を抱き寄せる。

 ここまで近づけば、フォークダンスとは言えないような気もするが……取りあえずダンスはダンスという事で。

 キャンプファイヤーの明かりに照らされながら、ゆかりと2人、踊る。

 そうして10分程が経ち……やがてダンスタイムは終わった。

 

「……あ」

 

 ダンスタイムが終わってしまえば、当然ながらゆかりが俺とくっついていられる筈もなく、我に返ったゆかりは慌てて俺から離れる。

 

「……」

 

 そして、踊っている間の事を思い出したのか、顔を真っ赤にしてこちらを見てくる。

 うん、何だかんだとあったけど、やっぱりゆかりはまだまだこの手の事に慣れてないのは間違いないんだな。

 もっとも、そういうところがゆかりらしくていいんだが。

 

「その……踊って疲れたし、ちょっと休まない?」

 

 毎晩のようにタルタロスで戦っているんだから、この程度で疲れる筈もないんだが……それを口に出せば、俺が色々と不味い事になりそうだったので、大人しく少し離れた場所まで移動する。

 何故か美鶴がまだ俺の方を見ていたが、何か用事があれば後で言いに来るだろうと判断し、そのまま後夜祭を楽しむ。

 さて、チドリがどんな風に反応するのか……そしてゆかりの新しいペルソナ、イシスを見て美鶴達がどんな反応をするのか、少し楽しみだな。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1389

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