転生とらぶる   作:青竹(移住)

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2032話

「で? 悩んでるのは、やっぱりペルソナの進化の事か?」

 

 秋という季節であっても、今日は日差しがそれなりに強く、風もそれ程強くない事もあって、そこまで寒いという訳ではない。

 勿論夏とかとは比べものにならない程の涼しさ……いや、寒さではあるが、それでも雪が降る程ではないし、持っている焼き芋の熱もあって、こうして話している分には、今の状況はそこまで問題ない。

 

「……うむ。そうなのだが、分かるのか?」

 

 石焼き芋を一口食べ、その甘さにだろう、小さく笑みを浮かべつつ美鶴は俺にそう尋ねてくる。

 

「まぁ、何だかんだと俺も美鶴との付き合いはそれなりに長いしな。……半年くらいだけど」

「ふっ、半年は半年でも、正直なところ私が今まで生きてきた中で、ここまで濃密な半年はなかったがな」

「そこは、せめて充実したって言ってくれないか? ……うん?」

 

 石焼き芋を食べながら美鶴と話をしていると、不意に走ってこの場から逃げ出していく人物の姿が見えた。

 着ている制服は月光館学園のもので、何か後ろ暗いところでもあるのか? という風に思わないでもなかったが、取りあえず何か緊急な事情という訳でもないし、今は美鶴との話を優先させる方が先だった。

 

「どうした?」

「いや、何でもない。それで……濃密よりは充実したって表現の方が、人聞きが良くないか?」

「そうか? 濃密という表現もそう捨てたものではないと思うがな」

 

 濃密……うーん、そこまで良い印象があるか?

 俺の場合、悪い印象もないが良い印象もない……といった感じなんだが。

 

「とにかくだ。濃密でも充実してるでもいいけど、それなりに深い付き合いをしているんだから、美鶴の事は全て分かる……とまでは言わないが、大体何となくは理解出来る」

 

 普通に考えれば、美鶴の悩みに付き合うのは、それこそ何年も一緒に行動をしている真田の方が相応しいと思うんだけどな。

 ただ、ゆかり曰く俺の方がいい、という事らしい。

 そんな訳で、現在俺はこうして美鶴と一緒に石焼き芋を食べてる訳だ。

 

「そうか? ……考えてみれば、アクセルには色々と恥ずかしいところも見られてるしな。そう考えれば、相談する相手としては相応しいのかもしれないな」

「恥ずかしいところか。個人的にはハイレグアーマーを着ているところとか……いや、冗談だよ」

 

 ハイレグアーマーという単語を聞いた途端、美鶴の視線が冷たくなる。

 それこそ、秋の中でも暖かいだろう今の公園の空気よりも冷たく、真冬の朝方の如き冷たい視線。

 

「お前がそういうのに興味があるのは色々と耳に入っているが……それを、私に着ろと?」

「ああ。ハイレグアーマーを着て戦えるようになれば、人間的に成長するんじゃないか?」

 

 美鶴は、高校生離れした……それこそ20代と言ってもいい程に成熟した女の魅力を持っている。

 ゆかりも平均以上のスタイルの持ち主だが、それはあくまでも高校生としての平均だ。

 それに比べると、美鶴は大人の女としての平均以上……と言っても間違いではない。

 

「どこを見ている!」

 

 胸元に視線が向けられているのに気が付いたのか、美鶴は石焼き芋を持っていない方の手で胸を隠す。

 ……これで美鶴が水着でも着ていれば、間違いなく胸がひしゃげた光景を見る事が出来たんだろうけどな。残念。

 

「いや。それでハイレグアーマーは?」

「着るか! そもそも、そんな破廉恥な物を着て、人間的に成長するとは思えん!」

 

 羞恥心とかの成長で、ペルソナが進化……とか、ちょっと面白いような気がしないでもない。

 もっとも、それを言えば本気で美鶴に処刑されてしまうだろうから、言ったりはしないが。

 

「そうか、残念だな。……そうなると、美鶴が人間的に成長するような要素が思いつかない」

「あのな……」

 

 呆れたように言う美鶴だったが、実際美鶴は成績優秀、運動神経抜群、人徳もあってその辺の芸能人とかは問題にならないくらいの美形。

 そして桐条グループ総帥の令嬢で、生徒会長を務めている。

 どこの完璧超人だって感じなのは間違いない。

 ……寧ろペルソナとかシャドウとかよりも、美鶴の存在こそがこの世界が何らかの原作のある世界だという証拠なのかもしれないな。

 そんな風に思ってしまう程に、美鶴は完璧な女だった。

 もっとも、本当に完全無欠で1つの欠点すらもないのかと言えば、答えは否なのだが。

 色恋沙汰に全く耐性がなく、そっち系統でからかうとすぐに処刑をしようとする。

 また、極度のファザコンで世間知らずの一面が強い。

 うん、これだけ欠点のある完璧超人というのも、ちょっと珍しいよな。

 

「そうだな、だとすれば……美鶴は何か、これをやってみたいってのはないのか?」

「うん? 何だ、いきなり。……そうだな。好きなバイクで走ってみたいというのはある」

「バイク、か。そう言えば、美鶴はバイクが好きだったか」

 

 桐条グループの令嬢の趣味として相応しいかどうかはさておき、美鶴がバイクを趣味にしているのは俺も知っている。

 そもそも、山岸が来る前はバイクに乗せた機器を使って、探索のサポートをしていたのだから。

 

「うむ。だが、家の者達……桐条グループの上層部にいる者達も、私がバイクの免許を取るのをよく思わなくてな。幸いペンテシレアは探索やサポートを得意という訳ではないが、可能なだけの能力を持っていたから、それにかこつけてバイクの免許を取る事に成功した」

「へぇ。完全無欠の生徒会長様にしては、意外と小狡い真似をするんだな」

「ふん、何とでも言うがいい。私はバイクの為であれば、そのくらいの非難は幾らでも受けよう」

「そこまでバイクが好きか」

 

 そう尋ねた俺の言葉に、美鶴は真顔で……それこそ、どこがおかしい? といった様子で頷いてくる。

 この様子を見る限りでは、バイクを愛するという事に関しては他の者の言う事を聞かないのは間違いない。

 ……ちなみに、乗り物全般的な意味で好きだったりするのか? だとすれば、実働班の方にも引っ張っていける可能性はあるかもしれないが。

 まぁ、その辺りは結局のところ、ホワイトスターに繋がってから……って話になるんだろうが。

 

「当然だ」

 

 後ろめたい事など何もないと言わんばかりに、そう告げる美鶴。

 

「そうか。……そうなると、意外と美鶴が人間的に成長する要素は、そのバイクにあるのかもしれないな」

「……バイクに?」

「ああ。勿論何かの確信がある訳じゃなく、あくまでも可能性の1つとしての話だと思ってくれ」

 

 だが、それは何の根拠もない話という訳ではない。

 今までペルソナが進化してきた者達の原因を考えれば、そこにあるのは何らかの理由で自分にとって重要な何かがあったから、というのは否定出来ない。

 そういう意味では、美鶴のペルソナが進化する理由の1つとして、バイクが関係してくるという可能性は決して否定出来ない事実だ。もしくは……

 

「美鶴が、バイク以上に何か重要に思っている何かがあるのなら、そっちかもしれないが」

 

 そっちの点でも、予想は出来る。

 美鶴が小さい頃から……それこそ小学生の頃から、影時間を解決する為に頑張ってきたのは、父親がそれを望むからという理由があった筈だ。

 である以上、それが美鶴のペルソナを進化させる要因になる可能性は十分以上にある。

 

「バイク以上に重要に? ……っ!?」

 

 一瞬俺に何を言われたのか分からない様子の美鶴だったが、少し考え……ふと、何かに気が付いたかのように、息を呑む。

 同時に、美鶴の背後に女の形をしたペルソナではあるが、両手に1本ずつ剣を持つのではなく、鞭を持っているペルソナが姿を現した。

 ……って、おい!?

 慌てて周囲を見るが、幸いそこには誰の姿もない。

 

「ふぅ」

 

 思わず安堵の息を吐く。

 ペルソナというのは、シャドウに対する為の能力ではあるが、その姿はペルソナの才能を持つ者でなければ見えない……というものではない。

 そもそもの話、俺がペルソナを見る事が出来る時点で、それは明らかだ。

 一般人にも普通に見える以上、人前で使えば騒ぎになるのは確実だった。

 まぁ、この場でいきなりペルソナが進化するというのは、俺にとっても美鶴にとっても、完全に予想外の事だった。

 そう考えれば、しょうがないのだろうが……つくづく、今の季節が秋で、それも夏から秋に変わったばかりの頃ではなく、冬に近いくらい寒い事がありがたい。

 おかげで、この公園には俺と美鶴の2人だけだったのだから。

 俺や美鶴みたいに、買った焼き芋を外で食べる為に公園にやってくるような奴がいてもおかしくはないのだが。

 

「……すまない。まさか、このようにいきなり進化するとは思わなかった」

 

 俺の息を吐いた様子を見て、問題がないと判断したのだろう。美鶴がすまなさそうに謝ってくる。……のはいいんだが、何だか美鶴の顔が赤くないか?

 

「別に気にするな。どんなタイミングでペルソナが進化するのかなんてのは、普通なら分からないだろうし。それより、顔が赤いけどどうした? もしかして、風邪とかか?」

 

 美鶴はS.E.E.Sのリーダーだ。

 実際の戦闘では、ペルソナチェンジという特殊能力を使える有里に指揮を任せているが、それは戦闘指揮に限られており、軍隊的には前線指揮官的な意味だ。

 総合的にS.E.E.Sを仕切っているのが美鶴である以上、もし美鶴が風邪でダウンするような事になれば……特に今週末には満月で、最後のイレギュラーシャドウが出てくる事を考えると、最悪に近いだろう。

 

「風邪だったら、早く帰って寝た方がいいな。ここで俺と一緒にサツマイモを食べてる余裕はない。そうだな、ちょっと人影のない場所に行くか」

「ちょっ! い、いきなり何を言う!? 人影のいない場所に私を連れて行って、どうするというのだ!?」

 

 何を勘違いしたのか、余計に顔を赤くして叫ぶ美鶴。

 いや、こういう場所でそんな風に叫ばれれば、色々と外聞が悪いんだが。

 

「何をするって、決まってるだろ? 美鶴を寮まで送っていくだけだよ。風邪気味なんだから、こんな寒い場所にいるのは色々と不味いだろうし」

「いや、だから……私は風邪など引いてはいない!」

 

 叫ぶ美鶴だったが、顔が赤くなっているのは間違いない。

 ただ、こうして叫んでいるのを見れば、風邪を引いているように思えないのも、間違いないんだよな。

 

「なら、何で顔が赤いんだ?」

「それは!? ……その、だな」

 

 再び叫ぼうとした美鶴だったが、言葉の途中で何かに気が付いたかのように大人しくなる。

 いや、本当に何があったんだ?

 だが、1分くらい待っても、美鶴がその言葉の先を話すような事はない。

 となると、恐らくこれ以上待っても無駄だろう。

 

「取りあえず、風邪じゃないんだな?」

「うむ。それは間違いない」

「そうか。……なら、いい。美鶴が風邪じゃなくて良かったよ」

 

 そう言うと、何故か美鶴は少し驚いたような様子で、こちらを見つめてくる。

 

「良かった、のか?」

「ん? ああ、当然だろ。美鶴は俺にとっても大事な相手だからな。風邪を引かれたら困る」

 

 S.E.E.Sを指揮している美鶴は、影時間を解決する為には是非とも必要な人材だ。

 イレギュラーシャドウを倒すだけでよければ、それこそこちらの戦力を考えれば問題はないんだろうが、それでも影時間の解決は、力以外の要素も当然のように必要になってくる。

 そういう意味では、やはり桐条グループの力というのは、是非とも欲しいところなのだ。

 

「大事……」

 

 何だか美鶴がどこか潤んだ視線をこちらに向けてくる。

 本当に風邪とかじゃないよな?

 

「とにかく、風邪じゃないならそれでいい。……取りあえず、これからどうする? 本当なら美鶴に気分転換をさせるつもりだったが、悩みの原因が勝手に解決してしまったし」

「そうだな。まだ石焼き芋を食べきっていない事だし、もう少しゆっくりとしていきたいところだ」

「まぁ、お前がそう言うのなら、別にいいけど」

 

 そう言い、自分の分の石焼き芋は食べ終わってしまったので、買ってからすぐに空間倉庫に入れておいた分を取り出す。

 当然のように焼きたてのままのその石焼き芋を食べながら、俺はふと気になった事を美鶴に尋ねる。

 

「それで、結局のところ美鶴のペルソナが進化したのは、何でなんだ?」

「そ、それは……だな。まぁ、その……言うなれば、私が薄々そうではないのかと思っていた事を明確に自覚し、それを認めた。それが切っ掛けだろうな」

「……まぁ、認められなかった事を認めたという点では、ちょっとゆかりに近いか?」

「いや、別に私の場合は認められなかったという訳ではないのだが」

 

 そんな風に言いながらも、美鶴は結局その日、最後まで何が原因でペルソナが進化したのかを俺に教える事はなく……やがて、満月の日がやってくる。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1389

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