転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0193話

「傭兵としての契約云々で呼ばれた筈なんだが……な」

 

 そう呟きながら周囲を見回す。一目で高級品と分かる程のソファや家具等、どこからどう見ても傭兵を入れるような部屋ではない。どちらかと言えば他国の大使か何かを迎え入れる為の貴賓室とでもいうべき部屋だ。

 アラスカ基地から迎えに来た軍人にアークエンジェルからこのJOSH-Aへと案内されてから2時間程経つが、案内人にこの部屋で待機していて欲しいとだけ言われ、放っておかれている。

 この部屋を使わせているという事は、一応客扱いという事の証明なのだろう。テーブルの上には紅茶とクッキーが置かれてはいる。……だが、この基地の上層部はブルーコスモスで占められていると言っても過言ではないのだ。変な薬が入ってる可能性を考えると、とてもではないが口に入れる気にはならない。

 

「すまない、待たせたな」

 

 そう言って部屋に入ってきたのは、50歳程に見える初老の男だった。階級章は……中佐か。マリューやムウより一階級上だな。

 俺を呼んだのはサザーランドだった筈だが。そんな俺の様子にすぐに納得したのか口を開く。

 

「ん? あぁ。サザーランド大佐は色々と忙しくてな。代わりに私が君の相手をする事になった」

「そうか。……で、用件は? 雇用契約について何か話があると言う事だったが」

「そう話を急ぐ事もないだろう。……君のデータを見させて貰ったが、ナチュラルでMSを操縦出来るというのは軍としても非常に衝撃的だったよ」

「……」

「それで、一応念の為と言う事もある。髪の毛を一本貰えるかな?」

 

 なるほど、ブルーコスモスに引き込むのではなくコーディネーターのスパイか何かだと疑っているのか。

 

「アークエンジェルにあったデータでは足りないと?」

「何、あくまでも念の為だよ、念の為。軍の上層部にはどうしても自分の目で確認しないと信じない者も多くてね」

 

 ……ふん。お前もその一人だろうに。この部屋のドアの前に3、4、5……いや、6人か。それだけの人数を待機させている時点で俺をコーディネーターと見なしているのが丸分かりだ。もっとも、常人を越えた身体能力を持つ俺だからこそ分かった事だが。

 

「……まぁ、いいだろう。確かにどこの組織にも老害という存在はいるからな」

 

 目の前のお前のように、と分かる侮蔑の目で中佐を一瞥する。

 そして自分の事を老害と言われた事が分かったのか、中佐は顔を怒りで赤く染めながら俺を睨みつけてくる。

 その様子を口元に嘲笑を浮かべながら眺め、髪の毛を一本抜いて差し出す。

 

「ほら、これでいいんだろう?」

「いや、髪の毛を抜く作業はこちらでさせて貰う。おい!」

 

 中佐がそう声を掛けると、ドアから1人の男が入ってくる。研究者、あるいは科学者なのか、白衣を身に纏って両手にはゴム手袋をつけている。先程感じにくかった6人目はこいつか。

 

「悪いが、彼が直接君の髪の毛を採取する。下手なトリックは使わないように」

 

 アークエンジェルでの検査時は俺が誰か他の人物の髪の毛とすり替えたとか思っているのか?

 まあ、俺としては別に直接髪の毛を取られても問題無いので大人しくその研究者のやりたいようにやらせる。研究者は俺の頭から数本の髪の毛を抜き、持っていたビニールパックへと丁寧にしまってからそそくさと部屋を出て行った。

 

「さて、では次の用件に入ろうか」

「まだ何かあるのか?」

「ああ。どちらかと言えばこれが本題と言ってもいい。君は自分がナチュラルの傭兵であると言っていたそうだな?」

「ああ」

「だが、我々が地球連合軍に参加している国のアクセル・アルマーという人物のデータを探しても、該当件数は0だった。もちろん同姓同名の別人は数人いたが、それらは今現在どこにいるのかを確認済みだ。……さて、これはどう言う事か教えて貰えるかな?」

 

 そう来たか。確かに俺は転移者である以上この世界のデータベースなりなんなりに俺のデータがある訳がない。ここはプラント支援国である大洋州連合辺りの出身という事にしておくか? ……いや、わざわざそんな分かりやすい穴をそのままにしておかないだろう。となると、コーネリアにした説明をそのまま流用するか

 

「残念ながら生まれてからこっち、ずっと戦場を渡り歩いて来たんでな。生まれがどこの国かなんてのは俺自身が知りたいくらいだよ」

「……さて。そんな話を本気で私が信じるとでも?」

「そう言われても、事実は事実としか言えないな」

「なるほど、頑固だな。そうなると君にはしばらくの間このJOSH-Aに留まって貰う事になるが、もちろん否とは言わないだろうね?」

「ふん、その為に廊下に兵士を待機させているんだろうに」

「……連れていけ」

 

 中佐がそう言うと、ドアから5人の兵士が入って来て俺へと銃口を突きつける。

 

「君が真実を話すまではこのJOSH-Aに滞在してもらおうか。話をしたくなったのならいつでも私を呼ぶといい」

 

 兵士5人に、いかにも実戦には縁のなさそうなひ弱なエリート中佐が1人。こいつら程度ならすぐにでも無力化出来るが……いや、しばらくはこのJOSH-Aに潜伏している方が逆に動きやすい……か?

 取りあえず逃げ出すのはいつでも出来るので、この場はこいつらに従って大人しく連行される事にした。

 

 

 

 

 

 俺が連行された先は、一見すると普通の士官部屋のようだった。ただ、扉の前に銃を構えた数人の見張りがいるのが特徴と言えば特徴だろう。てっきり牢屋や独房なんかに連れて行かれると思ったんだが……一応俺が本当にナチュラルである可能性を考え、その場合に向こうに悪印象を抱かせない為の措置なのだろうか。

 ……あの中佐がいる時点で印象は最悪に近いんだがな。

 とは言っても、コーディネーターと疑っている俺を閉じ込めている部屋だ。本当に何も無い普通の部屋という訳はないだろう。

 

「……寝るか」

 

 そう呟き、上着を脱いで身軽な格好になってからベッドに横になる。そして薄い掛け布団を掛けてカメラがあっても俺の身体が見えないようにしてから空間倉庫を展開。スライムを糸のように極細な状態で出現させ、眠った振りをしながらスライムで部屋の中を探る。

 ……あった。隠しカメラが1、2、3個か。幸い盗聴器の類は仕込まれてはいないようだ。隠しカメラが設置されているのはドアの上と、換気扇の側、トイレの入り口付近か。

 死角になる位置も把握したのでスライムを空間倉庫へと戻す。

 特にやる事もないので、そのまま本当に眠りについた。

 

 

 

 

 

 翌日。朝食としてパンを1つ見張りに渡された。

 そのパンを持ち、監視カメラの死角へと移動してから空間倉庫の中へと放り込む。それと入れ替えにサンドイッチを取り出し、そのまま監視カメラの死角で素早く食べる。

 俺をコーディネーターと思い込んで軟禁している以上、恐らくパンには何らかの薬が混ぜられていると思っていいだろう。後期GAT-Xシリーズのパイロットであるブーステッド・チルドレン達を見るまでもなく、この分野ではザフトよりもブルーコスモスの方が技術的に上なのだから注意しておくに越した事はない。

 飲み物に関しても、部屋の水道ではなく空間倉庫から適当に飲み物を取り出して飲むようにした。

 もちろん監視カメラがある事を考慮して飲んだり食べたりする振りはしているのだが。

 そしてそんな日が4日程続いたある日、珍しい事に見張り以外の人物が部屋を訪れる。……とは言っても例の中佐なのだが。俺を警戒しているのか、銃を持った護衛の兵士を数名伴っていた。

 

「さて、何か私に言いたい事はないかな?」

「コーンポタージュで顔洗って出直してこい」

「……何?」

 

 何故か俺の顔を見て驚く中佐。……どうやら食べ物や飲み物には何らかの薬物が入っていたと見て間違いないようだ。

 

「チーズフォンデュで顔洗って出直してこいと言ったんだよ、老害」

「き、貴様……本当に何者だ!?」

 

 驚きというよりも恐怖を顔に浮かべる中佐。と言うか、この様子を見る限りでは余程強力な薬を盛っていたらしいな。

 

「さて、俺はこう答えるしかないな。アクセル・アルマー。傭兵をやっている極々普通のナチュラルだ」

「ふざけるなっ! 普通のナチュラルがあれだけの……」

「あれだけの、何だ?」

「……いや、何でも無い。だが、今日ここで大人しく私の言う事に従わないと後悔出来ないようになるがどうするかね?」

 

 最後のチャンス、とばかりに脅しに掛かった中佐に嘲笑を浮かべて答えてやる。

 

「トムヤムクンで顔を洗って出直してこい」

「っ!? 私に従わなかった事を後悔しろ!」

 

 中佐は顔を真っ赤にしてそう言い捨てると護衛と共に部屋を出て行った。

 にしても後悔出来ないようになる、か。つまりザフトのオペレーション・スピットブレイクが行われるのが近いのだろう。

 

「……寝るか」

 

 そう呟いてからベッドに横になり、布団を被って監視カメラから見えないようにして空間倉庫からスライムを1mm程度の細さで伸ばしていく。そのまま部屋の換気扇を通してアラスカ基地へとその触手を伸ばして情報収集を開始する。

 当初は忙しさの愚痴や、次の休暇で結婚を申し込むんだ的フラグの会話等を拾い上げていたが、30分程通風口や通路の隅を通っているとようやくサイクロプス云々と話している人物がいる部屋を発見。スライムを伸ばして盗聴する。

 

「それで、サイクロプスの準備はどうかね?」

「既に終わっております。後は明日のザフトの作戦が予定通りに進めばあの化け物共をかなりの数処理できるでしょう」

「そうか。パナマの方は?」

「ストライクダガーの量産は順調に。現在は第13独立部隊がMS運用を研究している所です」

「ふむ、そちらも順調か。サザーランド大佐、アズラエル理事からは何か?」

「いえ、特には。ただし出来るだけ多くの化け物共をこの作戦で処理してくれる事を希望する、とだけ」

「なるほど。青き清浄なる世界の為に」

「青き清浄なる世界の為に」

 

 オペレーション・スピットブレイクは明日か。となると俺が脱出するのも明日だな。

 空間倉庫から伸びているスライムに触り、そのまま収納を完了する。

 さて、そうなると明日からは忙しくなるな。まずはこの部屋を脱出して……俺一人でアークエンジェルに向かうよりも、ムウと合流するのがいいか。ムウがサイクロプスの情報を持っていけばアラスカを脱出する契機にもなるし。

 ただ、原作と違ってマリューでは無くてナタルとくっついたムウがアークエンジェルに戻って来るかどうかが不透明だな。合流出来ない場合は俺一人で何とかアークエンジェルまで戻る必要がある。

 後はキラのフリーダムが間に合うかどうかだが、これは間に合うと信じるしかないだろう。最悪の場合は俺がどうにかするしかないが、それは出来れば遠慮したい所だ。

 ……原作で捕虜のディアッカやバスターがアークエンジェルにそのまま置かれていたって事を考えたら、ブリッツもそのままアークエンジェルに置きっぱなしと考えていいんだよな?

 一応、ブリッツが連合軍に持って行かれている時の為に何か適当な兵器をJOSH-Aの格納庫から色々パクっていった方がいいな。……MSはまずないから、戦車や戦闘機くらいだろうが。

 こうして、翌日にオペレーション・スピットブレイクを控えた俺は身体を休める為にも休養を取る事にした。……もっとも、この部屋に軟禁されてからはずっとこうした生活を送っていたのだが。




名前:アクセル・アルマー
LV:36
PP:115
格闘:254
射撃:274
技量:264
防御:264
回避:294
命中:314
SP:446
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    ???
    ???
    ???
    ???
    ???

撃墜数:278

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