転生とらぶる   作:青竹(移住)

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2059話

「さぁ、今日は俺の奢りだ! 存分に食ってくれ! ……あ、でもアクセルは3杯までな」

 

 はがくれの中に、真田の声が響く。

 何がどうなってそうなったのかは分からないが、今日は真田がラーメンを奢ってくれるらしい。

 新学期が始まってから、4日。今日は1月12日。

 つまり、運命の日まで残りは19日。

 運命の日に向けた決起集会……的な感じか?

 まぁ、ご馳走してくれるというのであれば、ありがたく奢られるが。

 

「一応聞いておくけど、ラーメンは3杯なんだよな?」

「ん? ああ。金に余裕はあるけど、そのくらいにしておいてくれれば助かる」

「なら……はがくれ丼は? ラーメンじゃないけど」

「駄目に決まってるだろう」

 

 一応、駄目元で聞いてみたのだが、やっぱり駄目だったらしい。

 そんな訳で、大人しくラーメンだけにした。

 ……餃子も3皿まで頼んでもいいと妥協してくれたのは、真田なりの優しさなのだろう。

 ともあれ、S.E.E.Sの面々と俺、ゆかりの2人だけに、それなりに大人数だ。

 本来ならコロマルも俺達の仲間なのだが、まさかラーメン屋にコロマルを入れる訳にもいかないしな。

 巌戸台分寮での食事会とかなら、コロマルも普通に参加出来るだけに残念だ。

 この店のおすすめメニューのトロ肉しょうゆラーメンを注文し、それが来るまでの間、皆で色々と話す。

 特にどのラーメンが好きなのかという話題になると、醤油、塩、豚骨、味噌で派閥が出来るし、その派閥の中でもご当地ラーメンといったものが出てくると細かく分かれる。

 それ以外にも担々麺、汁なし担々麺、沖縄そば……といった勢力もいるし、色々な意味で激しい舌戦となる。

 ちなみに俺は……基本的には味噌ラーメン派だな。ああ、でも担々麺とかも捨てがたい。

 その割には頼んだのはトロ肉しょうゆラーメンだったのだが、それはそれ。

 別に味噌ラーメンと担々麺しか食べられない訳じゃないし、どうせ食べるのなら店の名物がいいのは間違いない。

 そうして話している間にもそれぞれの前に完成したラーメンが置かれ……食べ始める。

 

「うん、やっぱりトロ肉しょうゆラーメンは美味いな」

「味噌ラーメンじゃなかったのかよ」

 

 呆れたように順平が言ってくるが、それはスルーだ。

 餃子も焼きたてでパリッとしていて、ラーメンによく合う。

 

「そう言えば、最近何だか妙な人が増えてない?」

 

 ラーメンを食べている途中で、そんな風に言ったのはゆかり。

 当然、変な奴ってのは? と他の連中から視線を向けられたゆかりは、俺の方に視線を向けてくる。

 

「ほら、この前美鶴先輩と3人で帰った時に、破滅だぁっ! とか言いながら叫んで走ってた人がいたでしょ? ああいう感じの人」

 

 その言葉に、何日か前の事を思い出す。

 そう言えば、そんなのがいたな。薬でもやっているのか、それとも酔っ払っているのかと思っていたのだが。

 だが、ゆかりの様子を見る限りではそういう訳でもないらしい。

 

「ああいうのが増えてるのか? 何でまた?」

「さぁ? 私に聞かれても分からないけど、何か部活の後輩とかもそういう人を見たって言っていたし」

「あー……そう言えば、俺ッチの後輩も言ってたな」

 

 そう告げる順平は、一時期剣道部を休みがちだったのだが、今月末の件がはっきりしてからは今まで以上に熱心に稽古しているらしい。

 3年が完全に部活を引退した今、剣道部の実質最強は順平だという話だ。

 ……まぁ、相変わらず試合になれば咄嗟に本来なら叩いてはいけない場所に攻撃をしてしまうので、レギュラーという扱いは出来ないらしいが。

 何でも、3年が時々練習を見に来て、その3年とやっても今では勝率8割を超えてるらしい。

 これで、しっかりと剣道が出来れば……と宮本が嘆いていたのを覚えている。

 剣道部という武道系の部活だけに、途中から入部した順平であっても、最強という点で後輩に好かれているのだろう。

 そこで、今のような情報を得る事が出来たと。

 

「……おい。それって、タカヤの仕業じゃねえのか?」

 

 ラーメンを食べながら味の分析……スープに何が入っているのかとか、そういうのを真剣に考えていた荒垣が、不意に呟く。

 その視線の先にあるのは、少し離れた場所に置かれている1冊の雑誌。

 何故荒垣がその雑誌を見てタカヤの名前を出したのかというのは……その表紙を見れば分かった。

 何故なら、雑誌の表紙にこれでもかと言わんばかりにタカヤの姿があった為だ。

 何だ? と思って雑誌に手を伸ばして引き寄せてみると、そこに映っているのは間違いなくタカヤ以外の何物でもない。

 その雑誌によると、最近流行っているカルト宗教のメシア……いわゆる救世主がタカヤという事らしい。

 

「最近、変な奴がいると思ったら……これが理由か」

 

 面白くなさそうな表情で呟く真田。

 まぁ、正面から戦うことを好む真田にしてみれば、このような方法は面白くないなのだろう。

 

「タカヤがこの辺りに戻ってきてるのなら、それこそ影時間にでも探してみるか? 幸いチドリが向こうにいない以上、こっちが奴を探すのは難しい話じゃないと思うが」

 

 そう言うが、美鶴は難しそうな表情で数秒考え……首を横に振る。

 

「いや、毎晩のようにシャドウが出ているし、タルタロスの攻略もある。何より、タカヤが何を企んでいようと、今月の戦いが終われば、それは意味をなさなくなる。であれば、今は無気力症になる者を1人でも少なくする必要があるし、影時間に絶対に何らかの意味を持つタルタロスを攻略する必要がある」

 

 その言葉は正しい。

 実際、タカヤがカルト宗教を組織しているのも、タカヤの破滅願望とペルソナ使いとしての能力、そしてシャドウや影時間といったものが組み合わさって出来た、負のカリスマとでも呼ぶべきものの為だ。

 だから、今月末の戦いで俺がニュクスを殺して影時間やシャドウという存在を消去してしまえば、タカヤはペルソナ使いでも何でもない、どこにでもいるただの人間になる。

 だが……

 

「もし今月末のニュクスとの戦いで、タカヤやジンがちょっかいを出してくれば、厄介な事になる。なら、その前に対処しておく方が良くはないか?」

「……少し考えさせて欲しい。後でお父様に相談してみる」

 

 結局、その場ではそういう事になるのだった。

 

 

 

 

 

 ラーメン屋で真田に奢って貰ってから、数日……授業が終わり、ゆかりは今日は部活だという事で、帰ろうとしたのだが……

 

「アクセル」

 

 教室の中に響いた声に視線を向けると、そこにいたのは美鶴だった。

 それが美鶴だと知ると、当然のようにクラスの中がざわめく。

 

「美鶴? どうした?」

 

 そして、俺が美鶴を呼び捨てにした事でも、再びクラスがざわついた。

 いや、そのくらいの事でざわつくなよと思わないでもないが、それも仕方がないのだろう。

 俺が美鶴と付き合っているというのは、それなりに話は広がっているし、実際に美鶴のファンクラブの会員と思われる者から嫉妬の視線を向けられる事も多かった。

 だが、美鶴がこのクラスまでやって来たのは、初めてだったのだから。

 せめてもの救いは、既に授業が終わってからある程度時間が経っている事もあって、教室に残っている者は少なかった事か。

 もっとも、間違いなく今日中に……場合によっては1時間も経たないうちに、この件は広まるだろうが。

 ともあれ、美鶴と付き合うと決めた以上は、そんなのを気にしても意味はない。

 

「うむ。少し時間を作って欲しい」

「……今すぐに、か?」

 

 念の為にと尋ねるが、戻ってきたのは頷き。

 特に今日は何か用事がある訳でもなかったので、俺は素直に美鶴の言葉に従うのだった。

 

 

 

 

 

「すまないな、わざわざ来て貰って」

 

 美鶴に案内されたのは、月光館学園の理事長室。

 ただし、そこには幾月の後を継いで理事長になった者の姿はなく、そこにいたのは武治だった。

 

「いや、この学校は桐条グループの傘下なんだし、それは構わないが……桐条グループの総帥が、よくここに来るだけの時間があったな」

 

 桐条グループというのは、このペルソナ世界でも有数の企業グループだ。

 それを率いている立場にいる武治は、それこそ分単位、秒単位でスケジュールが決まっていてもおかしくはない。

 そんな武治がこの場にいるという事は、それこそ余程の何かがあったのだろう。

 そして、今の状況で何かそのような事があるのかと言われれば……まぁ、普通に思いつくのは、影時間関係の事だろう。

 

「美鶴から聞いた、お前の提案。タカヤとジンという2人をニュクスとの戦いまでにどうにかするという件についてだ」

 

 そう言った武治の雰囲気から、何となく話の流れは理解出来てしまった。

 

「駄目か?」

「結論を言えば、そうなる」

「理由は?」

「単純にこちらの戦力不足だ。ペルソナ使いを相手に、普通の人間では相手にならん。それこそ相応の訓練を受けた兵士でも、ペルソナ使いを相手にしてはな……」

「遠距離からの狙撃は? 影時間じゃなくて、普通の時に」

 

 影時間は通常の機械が動かせなくなるし、影時間に適性を持っている者も多くはないので、見つかる可能性は高い。

 だが、通常の時間であれば人も多く、機械の類も普通に使える。

 そうして、タカヤがこっちに反応出来ないような距離から狙撃で一気に仕留める。

 最悪、タカヤは殺す事が出来なくても、その右腕たるジンを殺してもいい。

 勿論最善はタカヤを殺す事だが、次善の策という意味でジンを狙うのもいいだろう。

 ……チドリがいる場所では話せないな、これ。

 いや、だからこそこうして俺だけを理事長室まで呼んだのだろうが。

 

「残念だが、それは出来ん。どのような手段を使っているのかは分からんが、現在タカヤとジンと名乗っている2人は、どこかに身を隠している」

「……桐条グループの力があっても、見つからないのか?」

 

 世界有数の企業というのは、伊達ではない。

 それこそ、桐条グループは非常に高い能力を持っている。

 にも関わらず……

 

「残念ながら、見つける事は出来ていない。いや、寧ろこちらの手勢が消息を絶っている」

「なるほど」

 

 つまり、見つける事は見つけたが、それを向こうに気取られて逆襲されたという事か。

 あるいは、自分達を探している奴がいると知って、誘き寄せたという可能性もあるか。

 

「となると……つまり、向こうが出てくるか、それとも31日まで待つしかない、と?」

 

 まぁ、31日にニュクスが目覚めるというのは、それこそ俺達しか知らない情報だ。

 タカヤがそれを知らない以上、場合によっては31日になってもタカヤ達は出て来ないという可能性もあるか?

 いや、ないな。

 ニュクスという存在が具体的にどのような姿をしているのかは分からない。分からないが、それでもシャドウの母たる存在とまで言われ、神の名を持つ存在でもある。

 そうである以上、目覚めた時は何か大きな動きがあるだろうし、ペルソナ使いにはそれを感じられてもおかしくはない。

 であれば、やはりタカヤ達との戦いも31日になる可能性が高い、か。

 

「厄介だな」

 

 俺と同じ結論に達したのか、美鶴の口からそんな言葉が漏れる。

 実際、ニュクスと……そしてデスとしての本性を現した望月との戦いがあるのに、それにタカヤとジン……場合によっては、タカヤの率いているカルト宗教の連中までもが襲ってくる可能性がある。

 影時間だから、そんな心配がない……と言い切れないのが、厄介なんだよな。

 シャドウの母たるニュクスという存在が、どれだけの力を持っているのか。

 それが分からない以上、それこそ場合によってはこの世界の人間全てを影時間に適応させるなんて真似をしても、俺はおかしいとは思わない。

 

「それに……今更このような事を言うのも何だが、あの2人も桐条の犠牲者なのは間違いない。可能であれば、助けたいと思う」

「……チドリ、か」

「ああ」

 

 恐らく、最初は武治にもそのようなつもりはなかっただろう。

 だが、タカヤの仲間だったチドリが、S.E.E.Sに所属した事により、もしかしたらタカヤ達もどうにか出来るかもしれないと、そう思ったのだろう。

 もっとも、タカヤの性格を見る限り、恐らく無理だろうとは思うが。

 

「チドリの件は、偶然が幾つも重なった結果だ。それをもう1度期待するのは無理があるぞ。それに、手を抜いて結局世界が破滅したら、洒落にもならないしな」

「分かっている。勿論、可能であれば……という風にしか考えてはいない。そこまで馬鹿な真似はしないさ」

 

 そう告げる武治の表情は、嘘を言ってるようには思えない。

 であれば……本当に可能ならという事なのだろう。

 正直なところ、ジンはともかくとしてタカヤはどうしようもないと思うんだがな。

 ともあれ、そんな風に話は終わり……一応タカヤとジンの居場所は探すが、無理はしないという事になるのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1389

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