転生とらぶる   作:青竹(移住)

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機動戦士ガンダム編
2081話


 現在も、街頭TVではアナウンサーやコメンテーターが何かを言っている。

 それに対して、周囲にいる通行人もそれぞれ何かを言ってるのが分かる。

 分かるのだが……それでも俺は何を言っているのか、分からない。

 そう、頭の片隅で自分の思考が矛盾しているというのは分かるのだ。

 分かるのだが、分からない。

 何だ? 俺は、この世界を知っていた筈だ。

 間違いなく何か……そう、何か……

 そこまで考え、俺は少し前に行われた神との戦いを思い出す。

 ニュクスとの戦いで、俺は何らかの手段……精神的な手段で頭の中の何かを間違いなく食われたのだ。

 その時はSPブーストの効果に含まれるSP回復のおかげでどうにか対処したが……なるほど。食われたのは、俺の記憶。それもいわゆる原作知識だった訳か。

 激しく痛む頭を押さえながら、俺は無理矢理口元に笑みを浮かべる。

 元々俺の中にある原作知識は、今までの経験からその殆どがなくなっていた。

 ガンダム関係の知識だけが何とか残っていたが、その残っていた数少ない部分をニュクスに食われてしまったのだろう。

 それでも、全ての記憶を食われてしまった訳ではない。

 後ろによろめき、街灯の柱に背中を押しつけるようにしてズルズルと地面に座り込み、何とか切れ切れになっている記憶の中から、原作知識を思い出すべく集中する。

 その最中でも頭の中で激しい痛みが……それこそ、普通なら絶叫を上げてもおかしくないだろう痛みが常時そこには存在していた。

 くそっ、思い出せ……痛みに負けるな。俺は混沌精霊だ。シャドウミラーを率いる者だ。それがこんなところで痛みに負けて堪るか。

 頭痛を無視しながら、記憶に手を伸ばす、伸ばす、伸ばす。

 自分の中に存在する深い場所に潜っていき……そう、そこでようやく幾らかの知識を思い出す事に成功する。

 ガンダム……そう、アムロとシャアがライバル同士の戦い……そして、シャアの正体はジオン・ズム・ダイクンの遺児で、本当の名前はキャスバル・レム・ダイクン。そしてその妹が……

 

「ちょっと、貴方。大丈夫ですか!?」

 

 それを思い出そうとしている時、不意にそんな声を掛けられる。

 俺に声を掛けてきた人物は、金髪をした、10代半ばの今の俺よりも少し年上だろう女。

 地面に座っているので、逆光と何より頭痛のせいで視界が朦朧としてその顔をしっかりと確認する事は出来ない。

 出来ないが……俺はそんな女の顔を見ながら、今までの思考の流れから一つの名前を口にする。

 

「アルテイシア・ソム・ダイクン」

「っ!?」

 

 俺の口からその言葉が出た瞬間、間違いなく女は緊張した。

 頭の中の強烈な頭痛と闘いながらも、それが分かり……だが次の瞬間、女は俺に手を伸ばす。

 もし女が俺に対して殺意……とまではいかないが、敵意の類でも持っていれば、俺も何らかの対応は出来たのだろう。

 だが、女には俺に不審さを持ってはいても、害意の類は全く抱いていない。

 だからこそ、その女が俺に触れるのを防ぐような事はせず……そして次の瞬間、周囲には宇宙が広がった。

 いや、俺の姿が宇宙に移動したという訳ではなく……そう、例えば俺の精神のみが宇宙に見える、どこか別の異空間に移動した、と表現するのが正しいのか。

 そして不思議な事に……それでいて俺にとっては幸運な事に、この空間に精神が入った瞬間、俺の中にある強烈な頭痛は綺麗さっぱりと消えていた。

 俺が女を認識するのと同時に、女もまた俺を認識する。

 この宇宙空間のようにも見える場所に、俺と女……いや、この空間に入った瞬間に、俺は目の前の相手が誰なのかを理解していた。

 同時に、女……セイラ、もしくはアルテイシアもまた、俺の事を理解していた。

 どのような理由でかは分からないが、俺とセイラはこの空間の中でお互いを理解しあい……やがてセイラが何かを言おうとすると、その顔が苦しげに歪む。

 俺がそんなセイラに何か声を掛けようとした瞬間……俺とセイラ2人だけの異空間とも呼ぶべき場所は消え、周囲には普通にざわめきがある。

 あの空間の中にいたのが俺とセイラだけだった事もあり、どうやら、あの空間について認識していたのも俺とセイラだけだったらしい。

 そしてこの世界に戻ってくると、俺の中にあった頭痛は綺麗さっぱり、それこそまるで先程までの激痛が夢だったのかと思う程に消えていた。

 ……ただし、その代わりに俺の肩に手を置いていたセイラは先程の俺と同じような感じで頭痛を堪え、俺の隣に座り込み、身体を俺に委ねている。

 

「う……」

「セイラ、大丈夫か? おい、セイラ」

 

 俺の中にあったこの世界、ガンダムという原作の記憶の殆どは消えて虫食い状態……よりも更に酷い状態になっているが、それでも俺に体重を預け、17歳にしてはゆかりに勝るとも劣らぬ程に女らしい身体を俺に押しつけているのが誰なのかというのは、きちんと覚えていた。

 だが……ちっ、どうする?

 今はまだ周囲にいる面々はジオンについてのニュースに注意を向けている者が多く、こうして地べたに座っている俺とセイラを気にしている者は多くはない。

 ……多くはないという事は当然のように何人かはいる訳で、別に公園でも何でもない普通のアスファルトに俺とセイラような2人が座っているのは、当然目に付く。

 取りあえず、どこか公園にでも……

 

「あっちよ」

 

 俺が何かを言うよりも前に、セイラはそう言い、俺が歩いてきたのとは別の方向を指さす。

 俺が何を言いたいのか、雰囲気か何かで感じたのか?

 

「公園があるのか?」

「……ええ。そこに行きましょう」

 

 そう言い、セイラは立ち上がろうとし……再び足をよろけさせ、俺の方に倒れ込んでくる。

 

「っと」

 

 そんなセイラを支え、取りあえずこれ以上はここにいない方がいいだろうと判断し、俺はセイラと共にその場を去るのだった。

 

 

 

 

 

「思っていたよりも、公園にいる奴の数は多くないな」

 

 公園に到着し、そこに数人程度しかいないことに気が付き、呟く。

 勿論公園とはいっても、自然公園とかのような広大な公園を想像していた訳ではない。

 それこそ子供が遊ぶような公園で、子供を連れた母親と思しき者達が数人いる。

 だが、逆に言えばそれだけしかいないのだ。

 冬ならともかく、俺がイメージする公園であれば、それこそ会社の営業のサボりで休んでいたりするような人がいてもおかしくはないというのに。

 そのおかげでこうして俺とセイラが座るベンチを確保出来たのだから、それは決して悪い事ではないのだろうが。

 ともあれ、まだ頭痛が止まらないのか、眉を顰めているセイラをベンチに座らせ、身体を俺に傾けてその肩を抱く。

 取りあえずこうしておけば、俺とセイラの様子を傍から見ても恋人同士がイチャついているだけであり、何か訳ありなのだという風には思われないだろう。

 実際、子供を連れている何人かの母親は俺とセイラの様子に気が付き、微笑ましそうだったり羨ましそうだったりといった視線を向けはするが、俺とセイラの様子を怪しんでいる様子はない。

 

「セイラ、おい。大丈夫か? 医者……に連れていくのは無理だけど」

 

 そもそも、セイラは医療ボランティアとしてサイド7に来ていたのだから、ある程度医療の知識はある。

 そして何より、あの空間に俺と一緒に入った事が、明らかに今回の頭痛の原因である以上、それを医療的な意味で解決する手段があるとは思えなかった。

 ……となると、俺に出来るのは取りあえずこうしてセイラの様子を見ているだけだ。

 もっと明確な怪我なら、イクシールを使うという方法もあったんだが……この様子を見る限りでは、イクシールを使っても意味はなさそうなんだよな。

 取りあえず何か飲み物でも……と思ったが、そもそも俺はこの世界の金を持っていない。

 空間倉庫の中から何かを取り出すにしても、向こうで母親がこちらに意識を集中しているのが分かる以上、迂闊な真似は出来ない。

 なので、結局俺が出来るのは……こうして恋人同士の振りをし、セイラの頭痛が治まるのを待つだけだ。

 そのまま20分程が経ち……ようやく母親達の視線も俺から自分の子供達に向けられた頃、セイラは顔を上げる。

 

「……離して下さる?」

 

 それが何を言ってるのか分からず、一瞬首を傾げる。

 だが、次の瞬間セイラが自分の肩を抱いていた俺の掌に視線を向ければ、さすがにどういう意味なのかを理解し、肩を抱いていた手を離す。

 

「言っておきますけど、私は他の人達のように簡単にアクセルを好きになるという事はないわよ」

「いや、それは別に……待て」

 

 何でもないように話してきたセイラの言葉に返そうとして、俺は言葉を止める。

 もしかしたら、息も止まっていたかもしれない。

 今、明らかにセイラは俺の事を知っているかのように喋らなかったか?

 もしかして、あの妙な空間で俺がセイラの事を理解したように、セイラもまた俺の事を理解したのか?

 

「セイラ、お前……俺の事を知ってるな?」

「ええ、知ってるわ。アクセルがどこから来たのか……そしてどのような生活をしてきたのかも。何より、キャスバル兄さんが……」

 

 そこで感情が昂ぶったのか、セイラが言葉に詰まる。

 目の端には涙が溜まっており、それがセイラの受けた衝撃の大きさ、抱いている悲しみの強さを表していた。

 

「……何を知った?」

 

 セイラは、俺の中からこの世界に関する情報を得たのだろう。

 だが、俺の中にある記憶は、ニュクスに食われてしまった影響で、俺自身にもそれがどのような記憶なのかを知る事は出来ない。

 だからこそ、セイラが何を知ったのかは、俺の記憶ではなく……直接セイラに聞く必要があった。

 

「キャスバル兄さんが、コロニー落としみたいにして、巨大な小惑星を地球に……」

 

 コロニー落とし?

 一瞬その単語の意味が分からなかったが、巨大な隕石を地球にというのを聞けば、コロニー落としという言葉の意味を理解出来る。

 つまり、それは言葉通りの意味でコロニーを地球に落とすという方法の事だろう。

 ……何でわざわざ宇宙に住む者が、自分の住むべきコロニーを地球に落とすのかは、俺にもよく分からない。

 別にわざわざコロニーを落とさなくても、それこそ今セイラが言っていたように、小惑星か何かを落とせばいいだけだと思うんだが。

 まぁ、コロニーとかならきちんと規格とかが決められているだけに、落下計算とかそういうのが楽だというのがあるんだろう。

 ただ地球に落とせばいいだけなら小惑星でも問題はないが、きちんと狙った場所に落とす場合はコロニーが相応しいとか、そういう事か。

 

「なるほどな。……で、どうする? それを止めるというだけなら、方法は幾らでもあるぞ」

 

 それこそ、キャスバル……シャアは、現在名前を偽ってジオン軍で赤い彗星として動いているのだ。

 であれば、居場所を見つけるのも難しい話ではないし、その気になれば俺ならシャアを生け捕りにするのは難しい話ではない。

 ……まぁ、今の状況ではシャアがどこで戦っているのかを知るのが色々と大変になるが……その辺りは、サイド3に行ってハッキングなりなんなりをすれば、見つける事は可能だと思う。

 技術班謹製のハッキングツールもあるし。

 

「駄目よ」

 

 短く、だが断固とした決意を持って呟くセイラ。

 

「何でだ? シャアを確保するのが、お前が嫌な未来を迎えない為には最善の選択肢だと思うけど?」

 

 本当の意味で最善なのは、それこそシャアを殺してしまう事だろう。

 だが、どうしようもない程に追い詰められているのであればまだしも、幾つも打つべき手がある状態でセイラがそれを許容するとは思えない。

 幾らシャアが最終的に地球に小惑星を落とそうとしているのだとしても、今はまだ何もしていない、ただの1パイロットでしかないのだ。

 そんな状況で、今はもうこの世にたった1人残った血縁を……兄を、セイラが切り捨てられるとは思えない。

 

「アクセルの記憶の中にあるのが、本当にキャスバル兄さんなのかどうか、分からないのよ」

「……は?」

 

 セイラの口から出たいきなりの言葉に、疑問を抱く。

 シャアとキャスバルが同一人物というのは、俺の知識にあった内容だ。

 それをセイラも分かっている筈だ。

 なのに何故?

 

「キャスバル兄さんが名乗っていた、シャア・アズナブルという名前……アクセルは知らないようだったけど、実際にシャア・アズナブルという人はいたの。それも、キャスバル兄さんと瓜二つの。……もしかしたら、あのシャアは私の兄さんではなく……本物のシャア・アズナブルなのかもしれない」

「あー……セイラなら分かってると思うけど、俺の中にある知識はかなり曖昧なものになっている。俺にはお前の言ってる事が理解出来ない」

「ふふっ、私にしてみれば、アクセルの存在の方が理解出来ないわよ。何故この世界の未来を知っているのか……ともあれ、お互いに話をした方がよさそうね」

 

 落ち込んでいた気分を吹き飛ばすように、セイラはそう告げるのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:5
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.11
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1389

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