転生とらぶる   作:青竹(移住)

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2082話

「入ってちょうだい」

 

 そう言われ、俺は部屋の中に入る。

 セイラの体調もよくなったし、あれ以上公園で話をする訳にもいかず人のいない場所で話をするという事になり……そうしてやって来たのが、セイラの家だった。

 飾り気のないシンプルな部屋で、部屋の整理もきちんとされているが、何も知らない者であればここが女の部屋だとは全く思わないだろう。

 勿論、ジオン・ズム・ダイクンの1人娘の部屋だとは、到底思えない。

 医療ボランティアに小さいとはいえ一戸建てを貸し出すのもどうかと思うが……サイド7の現状を考えれば、それくらいはおかしくないのか。

 まぁ、アルテイシアよりもセイラとして生きてきた方が長いのだから、不思議でも何でもないのだが。

 ともあれ、部屋の中にあったテーブルと椅子のセットに俺とセイラは向かい合うように座る。

 

「警戒もなく女が男を自分の部屋に入れるのは、危険だと思うけどな」

「あら、アクセルがそんな事をなさって?」

 

 そう言われれば、俺も小さく肩を竦めるしかない。

 ただ、俺の場合は何もしないが、他の奴なら話は別だ。

 セイラは、間違いなく美少女……いや、美女と呼ぶに相応しい美貌を持っている。

 大人っぽさという点では、ゆかり以上美鶴以下といったところだが……それは、少女から女に羽化しかけている時期だからだ。

 

「ありがと、そう褒めてくれると嬉しいわ」

「……俺、何か言ったか?」

「いいえ、言ってなくても……何となくそう感じたのよ。ニュータイプ。これはそういう能力なんでしょう?」

 

 ニュータイプ。

 この世界の知識が殆ど消滅してしまった俺でも、その単語は覚えている。

 いや、詳しい定義とかじゃなく、大体の要素を覚えてるって感じなんだが。

 物事の本質を感じる事が出来たり、仲間のピンチを察知出来たり、相手が何を考えているのかを理解出来たり……いわば、念動力の下位互換、もしくは別方向に進化した念動力って感じか?

 だが俺の虫食いの知識でも、分かっている事がある。

 それは、セイラはそこまで強力なニュータイプだったか? という事だ。

 シャアの妹、ジオン・ズム・ダイクンの1人娘という事もあって、ニュータイプとしての素質があるのは間違いない。

 しかし俺の知識で優れたニュータイプとして戦ってるのは、あくまでもアムロとシャアだった筈だ。

 

「セイラは、そこまで強力なニュータイプだったか?」

「いえ、違うわ。私にそういう素養があったのは間違いないと思うけど……こうまで急にニュータイプ能力が高くなったのは、アクセルに触れて、あの妙な空間を体験したからよ」

 

 そう言われ、俺はセイラに触れられた時の事を思い出す。

 あの時、俺とセイラは間違いなく異空間と表現してもいいような場所にいた。

 つまり……あの行動によって、言わば、セイラのニュータイプ能力が上がったのか?

 俺で言えば、念動力のレベルが1から5や6くらいといったくらいに。

 ニュータイプが念動力と似たような能力――俺のイメージ的には下位互換といったところだが――で、俺の念動力のレベルが10であるのを考えると、もしかしてセイラが俺に触れた事により、ニュータイプレベルが上がったのか?

 そうなると、俺はニュータイプには迂闊に触れられないという事になるが……

 いや、でも公園にセイラを連れていく時には肩を貸していたし、公園でベンチに座ってセイラが落ち着くまで待っていた時は、疑われないように周囲からは恋人同士に見えるように肩を抱いてもいた。

 そうしてセイラの体温を思い出しているとニュータイプ能力で俺の考えを察知したのか、セイラの頬が薄らと赤くなり、視線を逸らして小さく呟く。

 

「……軟弱者」

「いや、軟弱者って、その表現はどうなんだ? ……まぁ、いい。ちょっと俺の手を握ってみてくれないか?」

 

 そう言い、手を伸ばす。

 セイラも俺が別に冗談でそのような事をしているとは思っていないのか、テーブル越しに手を伸ばしてくる。

 その手をそっと握り返すが……特に何かが起きる様子はない。

 

「ん?」

「誰にでも起きる、とは限らないのでしょうね。恐らく相性のようなものがあるのではなくて?」

「どうだろうな。もっとも、その考え方だと俺とセイラの相性は良いって事になるけどな」

「……軟弱者」

 

 今日2度目の軟弱者発言を貰ってしまったが、取りあえずこの話はこの辺りにしておくとして、俺は握っていたセイラの手を離してから、改めて尋ねる。

 

「さて、それで質問だが……シャアがキャスバルではないというのは、どういう事だ? シャア・アズナブルという別人がいたって話だったけど」

 

 そう、公園でセイラが言っていたその話の内容、俺に取っても聞き逃す事は到底出来ない代物だった。

 もしセイラの言ってる事が事実だとすれば、俺の知っている知識は全く当てにならないという事を意味しているのだから。

 もしくは、俺が知っていたがニュクスによって喰われた知識という可能性も否定は出来ないだろう。

 

「アクセルは、私とキャスバル兄さんがサイド3を脱出したのは知ってるのよね?」

「ああ」

「なら、脱出させたのがジンバ・ラルだというのは?」

「……いや、その名前も初めて聞いたな」

 

 俺の知ってるこの世界の……ガンダムの知識で残っているのは、アムロ、シャア、セイラの3人だけだ。

 ニュクスに記憶を喰われる前であれば、その名前を聞いて誰かを理解出来たのかもしれないが。

 

「とにかく、ジンバ・ラルという人に脱出させて貰って、その後地球に行って、そこでちょっと問題があってまたコロニーに……勿論サイド3ではない別のサイドだけど、そのコロニーで暮らす事になったの。その時、私達の世話を焼いてくれたのがアズナブル家の人達で、その家の子供がシャア・アズナブル」

「おい、ちょっと待て。じゃあ、今の赤い彗星として名前が知られてるのは……」

「キャスバル兄さんなのか、それとも本当のシャア・アズナブルなのか。その辺は分からないのよ。アクセルの記憶が色々と入って来たけど、そこにもその情報はなかったし」

「……セイラ。今更だけど改めて聞くが、お前は俺がどういう存在なのか、知ってるんだな?」

 

 恋人が10人以上……いや、人数はしっかり認識してる様子はなかったが、それでも複数いるというのは理解していた。つまりそれは、俺がセイラの事をあの空間で理解したのと同じように、セイラもまた俺の事を色々と理解したと思った方がいい。

 もっとも、セイラが俺の事をかなり多く理解したのと違って、俺の方はセイラがセイラであるという事くらいしか理解出来ていないのだが。

 お互いに交換した情報量に差がありすぎるような気がする。

 あの空間に移動したというのが運とか偶然とかそういうのでないのなら、その辺りの調査もしっかりとしておく必要があるだろう。

 

「ええ、理解しているわ。アクセル・アルマー。シャドウミラーという国の代表で、その国の本拠地は次元の狭間にある。……違って?」

「違わない。違わないが……よく、そんな事を信じられたな。この世界には、魔法とかそういうのもないだろうに」

 

 ニュータイプそのものが、魔法とかのファンタジー要素であるような気がしないでもないけど。

 

「あのような空間に入ったのよ? それを理解した上で、嘘だと思うような事はない、と思うわ」

「それで、セイラがわざわざ家に引っ張ってきたのは、その事を誰にも知られないようにする為ってだけじゃないんだろ?」

「ええ。ただ、その前に確認よ。アクセルは……いえ、シャドウミラーは、この世界でどうするつもりなの?」

 

 冗談でも何でもなく、真剣な表情で尋ねるセイラ。

 そう言われてもな。その辺まではセイラも読めなかったらしいが、俺がこの世界にやって来たのは俺の意思……というのもあるが、同時に念動力によってそう示されたという点も大きい。

 今まで俺の危機を何度となく救ってきた念動力だけに、いつもと違うとはいえ、それを疑うという選択肢は俺の中には存在しなかった。

 

「この世界に来て、どうするのか……か」

 

 改めてこの世界に来てみると、これからどうするべきか本当に迷う。

 例えばSEED世界では、この世界と同じように戦争が起きていたが、オーブを始めとして第三勢力と呼ぶべき者達が存在していた。

 同じガンダムの世界でいえばW世界もあるが、こちらは幸いな事に連合軍が穏健派のノベンタが率いていたので、そちらに協力した。

 ただ、その辺りはあくまでも原作知識があっての事だ。

 この世界でどこの勢力に味方をするのかというのは、正直なところ迷っている。

 取りあえずジオン公国は……コロニー落としとかやったのを考えると、ちょっと遠慮したい感じがする。

 だからといって連邦軍に味方をするのかと言えば、ちょっと聞いた限りでも相当に上が腐っているらしいのは間違いない。

 となると、それ以外となるのだが……この世界の場合、明確に勢力が2つに分けられていて、第3勢力の類は……あるのか?

 

「この世界に来てからどうするかというのは、正直なところまだ決めてないな。今まで通りなら、第3勢力に協力するといったところなんだが。あるのか?」

「ないわ。いえ、正確にはサイド6のように中立を標榜しているところはあるけど、アクセルが期待しているようなところではなくってよ」

 

 そう言いながら立ち上がり、少し離れた場所にある本棚から1冊の本を取り出し、俺に渡す。

 どうやら読んでみろと、そういう事らしい。

 それはこの世界が宇宙世紀、U.C.という世界に入ってからの歴史。

 ただし、宇宙に住む人々……いわゆる、スペースノイドと呼ばれる者達の目から見た歴史だった。

 

「この本を持っているのを連邦軍に見つかれば、罪……には問われないけど、危険分子として目を付けられる事にはなるでしょうね」

 

 そう告げるセイラは、冗談でも何でもなく本気で言っている目だった。

 ……そこまでするのか? そう思わないでもないが、それだけこの本に書かれている歴史は過激な表現を使われているのだろう。

 そう考えながら本のページをめくっていく。

 U.C.0000。低軌道宇宙ステーション首相官邸ラプラスがテロによって破壊される。

 これにより、首相やそれ以外にも多数の重要人物が死亡。

 そんな歴史から始まるのは、スペースノイドにとって苦難とも言える歴史だった。

 地球に人が増えすぎたから、宇宙に作ったコロニーに移民させる。

 これは別にいい。

 そのまま地球で人数が増え続ければ、いずれは破滅していたのは間違いないのだから。

 だが、本来なら地球に住む人間全てを宇宙に移民させる筈だったのが、地球にいる殆どの人間をコロニーに強引に移住させ……そうして当時地球にいた人口110億人のうち90億人をコロニーに強制的に移住させると、突然コロニーの建設を中断。

 で、地球に残る20億人の中には多くの政治家や金持ち達が残っていた訳だ。

 半ば強制的に移住させられた者達が、これに我慢出来る筈がない。宇宙移民じゃなくて、宇宙棄民だという事がはっきりしてしまった訳だし。

 しかもコロニーに住むという事は、空気や水にもかなり高い税金が掛かるのだから、余計に不満が溜まってもおかしくはない。

 独立の機運が高まっていくが、連邦軍は力でそれを阻止。

 おまけにスペースノイドには連邦政府に対する参政権がないので、連邦政府に人を送り込む事が出来ず、地球にいる者達が一方的に搾取する事になっているらしい。

 そしてスペースノイドにはサイドのトップ、首長を決める権利はなく、連邦政府だけがその首長を決められる、と。

 まさに植民地以外のなにものでもないな。

 あー……うん。これを見ると、ちょっと連邦軍に協力をする気はなくなる。

 もっとも、W世界でも似たような状況ではあった。

 ただ、W世界ではノベンタがいたが……残念ながらざっと本を読んだ限り、この世界にノベンタのような良識派の政治家や軍人はいないらしい。

 いや、いないって事は多分ないんだろうが、実力がない以上は政治家として役に立たない。

 ましてや絶対民主主義と本に書かれているように、一応民主主義の体裁は整っているので、それこそスペースノイド派の政治家がいてもそれを通す事は出来ない。

 コロニー自治権整備法案が提案されはしたものの、あっさりと棄却されている事からも明らかだ。

 そういう意味では、ジオン公国の方に協力してやりたい気持ちがないでもないが……宇宙に住んでいる人間が進化した人間だとかいって優越感丸出しになっているのを見れば、正直ジオン公国も連邦政府と似たり寄ったりな感じだ。

 おまけに、ジオン公国はコロニー落としなんて真似もしてるしな。

 その辺りの事情を考えれば、正直なところどちらにも協力したくないと思うのは当然だった。

 しかもサイド6のように中立を主張しているところも、その方が儲かるからって理由らしいし。

 勿論、この本はあくまでもスペースノイドの視点から書かれた物で、アースノイドの視点から見ればまた違うのかもしれないが……

 

「で? この本を俺に読ませて、どうしろと?」

 

 流し読みだったが、読み終わった本をテーブルの上に放り投げてセイラに聞くと、セイラは真面目な表情で口を開く。

 

「アクセル、私に国を作る事は……出来ると思う?」




アクセル・アルマー
LV:43
PP:5
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.11
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1389

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