転生とらぶる   作:青竹(移住)

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2092話

 ひくり、と。

 何だかいい匂いがして、目を覚ます。

 一瞬自分がどこにいるのか分からなかったが、何かを焼く音や包丁で切る音が聞こえてきて、それでようやくしっかりと目が覚めた。

 ああ、そう言えば俺はUC世界に来てたんだよな。

 1日目からセイラに会ったり、国を作ると言われたり、サイド3に行ってラルに会ったり、そのラルや仲間達を連れてまたサイド7に戻ってきたり……

 普通に考えれば、到底1日で出来る仕事じゃないぞ、これ。

 あ、そう言えばアムロの件もあったな。

 セイラと同じくニュータイプ能力が強化されるのかと思ったんだが、セイラとは全く違う反応を……心の底からの恐怖とでも呼ぶべきものを抱かれたのは、ちょっとな。

 他人のステータスを見る事は出来なくなったので、現在セイラのニュータイプレベルが具体的にどのくらいなのかは分からない。

 ただ、あの妙な空間で触れあった感覚から考えると、恐らくレベル7とかその辺だと思うんだが……それはあくまでも俺の感覚であって、何かの確証がある訳でもない。

 だから、恐らくこの世界の主人公たるアムロだったら、ニュータイプレベル9とかになってもおかしくはないと思ったんだが。

 ともあれ、今は無理でも出来ればアムロをこっち側に引き入れたいとは思う。

 その辺りは……いっそラルに頼むか?

 そんな風に考えていると、コトン、と何かがソファの近くにあったテーブルの上に置かれる。

 

「おはよう、アクセル」

 

 そこにいたのは、セイラだ。

 微かに目が赤いのは、ラルやハモンとの再会が嬉しくて夜遅くまで起きていて寝不足なのか、それとも何らかの理由で泣いたからか。

 その辺が多少気になったが、セイラの表情は特に暗いところもなく、いつものように凜々しい……もしくは気品があると言った方が相応しい。

 

「これでも飲んで目を覚ましなさい。すぐに朝食の用意が出来るから」

「……セイラが作ったのか?」

「私とハモンさんの2人で、よ。もっとも、そこまで豪華な訳じゃないけど」

 

 セイラの言葉に、なるほどと頷く。

 ハモンは酒場を経営しているのだから、簡単な料理くらいは出来てもおかしくないのだろう。

 セイラも……まぁ、こうして1人暮らしをしていたくらいだし、サイド3にいた時はともかく、そこを脱出してからは色々と苦労してきたみたいだから、料理くらいは出来てもおかしくはない。

 そんな風に思いながらソファから起き、テーブルの上にあるカップに手を伸ばす。

 一瞬コーヒーかとも思ったんだが、飲んでみれば紅茶だ。

 もっとも昨日聞いた話によると、コロニーに紅茶のような嗜好品の類はあまり輸出されていないらしい。

 連邦と戦争をしているサイド3に比べたら、地球のすぐ側にあるサイド7はその手の物も手に入れやすいのだが……

 

「よく俺が紅茶派だって知ってたな」

「あの時の共感で、ね」

 

 ああ、なるほど。俺とセイラが初めて接触した時の話か。

 もっとも、あの奇妙な空間の中に入ったのはあの時だけだったのだが。

 

「ところで、今日の予定はどうなっている? 可能なら、そろそろ月に向かいたいんだが」

「ええ、私もそのつもりよ。ラルから話を聞いてるから、一緒に行かせて貰うわ。ボランティアの方も昨日のうちに話を通してあるから、問題ないわ。ただ……アムロをどうするのか、ね」

 

 どうやら、セイラも俺と同じ事を考えていたらしい。

 セイラにとってアムロは非常に重要な存在なのは間違いない。

 俺の虫食いだらけの記憶の中でセイラが見たのは、小惑星を地球に落下させようとしているシャアと、それを防ごうとして戦っているアムロなのだから。

 俺がこの世界で覚えていた3つの名前の1つがアムロだったというのも大きい。

 ……実際には、もしかしたらあそこでシャア、アムロ、セイラの名前を出す直前まで他の名前も覚えていた可能性はあるが、取りあえず今はもうその辺りを考えても意味はない。

 となると、普通に考えればアムロがこの世界の主人公で、シャアはライバル的な存在。……セイラはもしかしたらアムロのヒロインだったりしたのか?

 ライバルの妹がヒロインというのは、結構ありふれた感じだと思うし。

 それはあくまでも原作での話であって、俺が歴史に介入した以上、全く違う流れになってそうだが。

 そもそも、この世界ではまだ原作が始まっていない可能性が高い。

 にも関わらず、セイラは俺との接触によりニュータイプ能力が強化されて、俺の記憶から未来の出来事をある程度理解しており、ラルがこうして会いに来ていて、建国を決意している。

 この時点で大きく違うのは間違いない。

 

「俺が行けば、多分……いや、間違いなくまた逃げるだろうしな」

「ふふっ、そうね」

 

 紅茶を味わいながら、しみじみと呟く俺の言葉にセイラは笑みを浮かべる。

 

「取りあえずその辺は朝食を食べ終わってからにしましょう。さ、身支度をしてきなさい。もうすぐ準備が出来るから」

 

 セイラに追い出されるように、洗面所に行って身支度をすませる。

 その際、近くを通ったらコズンに笑われたが……そのコズンも、セイラに身支度をするように言われていた。

 ふん、ざまあみろ。

 ともあれそうやって身支度を済ませて朝食にとなったのだが、基本的にこの家はセイラの1人暮らしだ。

 食卓用のテーブルに椅子が2つあるだけで、それ以外に椅子はない。

 なので、セイラとハモンが椅子に座って食卓で食事を、俺とラル、コズンの3人はソファの近くにあったテーブルで食事を食べる事になった。

 食事のメニューは、パンとチーズ、ベーコンエッグ、サラダという簡単なものだったが、味としては悪くない。

 ……ラルは姫様の手料理など勿体ないとか何とか言ってたが。

 ともあれ食事が終わり、今日これからの話になる。

 

「それで、姫様。今日の事ですが……」

「月に行くのね。ですが、その前にやっておくべき事があります」

「……それは?」

「アムロ・レイという人物を何とかこちらに引き入れたいのです。本来なら、アクセルが動くべきなのでしょうが……昨日接触した時に、非常に怖がらせてしまったので、それも出来ません。そこで、ラル。貴方にお願いしたいのですが」

「ふーむ。……その人物がそれ程重要ですか?」

「ええ。キャスバル兄さん。……いえ、赤い彗星のシャア・アズナブルと互角にMSで戦える程には」

「ほう」

 

 ラルも青い巨星の異名を持ってるだけに、現時点シャアがどれだけの操縦技術を持っているのかを知っているのだろう。

 だからこそ、そのシャアと互角に戦えるだけの力を持つというアムロには興味を抱いた……といったところか。

 

「ですが、その……儂やコズンが行ったところで、アムロとかいう少年は会って貰えるのですかね? 話を聞く限りでは、アクセルを怖がっているようですし。こう言ってはなんですが、儂やコズンは軍人としての気配が表に出すぎます。そうなると、残るのは……」

 

 ラルの視線がハモンに向けられる。

 いや、ラルだけではなく、ハモン以外の全員が、と言うべきか。

 

「私ですか? 貴方がそう言うのなら構いませんが……話を聞く限りでは、昨日の今日ですし、少し時間を置いた方がいいと思いますけど」

 

 結局他に何か意見がある訳でもないのでハモンのその意見が採用され、少しアムロから距離を置く事になる。

 うーん、ハモンの言い分も分からないではないんだが……このまま距離を置いていたら、気が付かないうちに原作が始まっていて、アムロがMSに乗っていたなんて事になりかねないんだよな。

 つくづく、俺との接触で強い恐怖を与えてしまったのは失敗だった。

 とはいえ、セイラとの接触の時の事を考えると、ああいう風になるのを想像しろって方が無理な話だと思うんだが。

 

「姫様、それで異存はありませぬか?」

「……ええ。昨日のアムロの件を考えれば、ハモンさんの意見が最善でしょう」

「では、次に決めるべきは……アクセル。お主の言うゲートは月に設置するのだな?」

 

 アムロについての話はこれで終わり、と。ラルは俺にそう尋ねてくる。

 

「そうだな。昨日セイラと話し合って、ゲートが設置出来る地球、月、火星の中で月に設置しようって事になった」

「うむ。儂もそれで構わんと思う。現在戦場になっている地球では色々と連邦のちょっかいを心配する必要もあるし、戦争に巻き込まれもするだろう。また、火星は距離の点から論外だ。それに、姫様がジオン・ズム・ダイクンの後継者として建国なさるのならば、やはりジオニズムを全面に押し出す方がよかろう」

 

 この辺は、俺も昨日セイラとかラルとかコズンとかから色々と聞いたり、調べたりして知っている。

 地球を聖地として保護して、そこに住む者は全員宇宙に住むべきだというのが、エレズム。

 スペースノイドは政治的にも経済的にも自立する事が出来、連邦政府と同等の権限を持つというのが、コントリズム。

 この2つの思想を融合させ、宇宙に適応した新人類……ニュータイプという概念を組み込んだのが、ジオニズムだ。

 そんな思想だけに、ジオニズムに感化された者はアースノイドよりもスペースノイドの方が圧倒的に多い。

 そのような者達が集まるのは、やはり地球ではなく宇宙に建国するのがベスト。

 つまりはそういう事であり、俺としてもそんなラルの言葉に異論はない。

 俺が月を選んだのは思想云々とか関係なく、立地条件とかそういうのを考えての事だったのだが。

 もっとも、月だって最善の選択という訳ではない。

 何しろ、月というのはサイド3のすぐ近くにあるのだから。

 おまけにジオンを動かしているザビ家の長女、キシリア・ザビが月にあるグラナダという都市を確保しているのを思えば、シャドウミラーが月に建国したと公表した場合、まず間違いなく最初にジオンとの戦いとなるだろう。

 もっとも、その戦いでこちらの力を見せつける事により、ジオンが迂闊にシャドウミラーに手出しを出来ないようにするつもりだが。

 

「そうなると、月のどこにゲートを設置するか、だな」

「……アクセル。ゲートとやらを設置した場所が、姫様が作る国の中心になるのか?」

 

 ラルの言葉に、俺は即座に頷きを返す。

 

「そうなるな。ゲートというのは、ホワイトスターとの間を文字通り繋ぐ装置だ。それがあるからこそ、シャドウミラーもセイラの国について色々と援助が可能になるんだし」

「つまり、そのゲートという装置を破壊されるような事になれば、もう手を借りる事は出来ぬと?」

「いや、俺の空間倉庫の中にはまだゲートが何個も入ってるから、俺がこっちにいる時であれば問題ない。ただ、ゲートは楔としての役割もあるから、それが問題だな」

「……楔?」

 

 楔という言葉に、ラルだけではなくハモンやコズンも分からないといった様子で首を傾げる。

 セイラは以前の共感で俺からその辺りの情報も得ていたのか、特に疑問を覚えている様子はない。

 

「ホワイトスターがある次元の狭間と異世界では、時間の流れが違う事があるんだよ。それこそ極端な事を言えば、こっちの1日がホワイトスターでは1年だったり、もしくはその逆とかな。……ちなみに、俺がこの世界に来る前の世界では約1年をすごしたけど、ホワイトスターに戻ったら10ヶ月が経ってたな」

「それは……厄介な」

 

 ラルの言葉に、俺は深々と同意する。

 実際、ホワイトスターに戻るまで時差がどれだけあるのか分からないというのは、厄介極まりないのだ。

 不幸中の幸いなのは、時差はあってもそこまで極端なものではないということか。

 例えば、異世界での1日がホワイトスターでは100年だったとか。そんな風に。

 

「そんな訳で、出来れば一度ゲートを設置したら、それを動かすような真似はしたくない」

 

 一応ギアス世界でゲートを設置した後で動かした事があるが、特に何か悪影響はなかった。

 なかったが……だからといって、そんな真似をしようとは、やはり思わない。

 

「つまり、ゲート設置する場所は一度決めたらそこから動かさない方がいいという事か。……そうなると、場所が問題となるな」

「その辺はアクセルが昨日サイド3に向かった後で、私が調べておきました」

 

 そう告げたのは、セイラだ。

 昨日は医療ボランティアとかを辞める件やら何やらで色々とあっただろうに、よくもそこまで頭が回ったものだ。

 もしかして、これもニュータイプ能力の1つか? ……いや、まさかな。

 これは単純にセイラの素の頭の良さといったところだろう。

 

「本来ならフォンブラウンやグラナダのような場所がいいのですが、そのような場所は既に取られていますし、建国という私の行動には不似合いです。ですから……月の極冠、地球で言う北極はどうかしら」

 

 そう告げ、月の北極を主張するセイラに、俺達は特に何か異論がある訳でもなく……それを承諾するのだった。

 いやまぁ、本来なら建国場所とかはもっと何人もで考えた方がいいと思うんだが、今回の場合は可能な限り早くゲートを設置する必要があるから、それもあっての即断即決となった訳だ。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:5
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.11
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1389

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