転生とらぶる   作:青竹(移住)

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2106話

 その旗艦は、チベ級と呼ばれる艦らしい。

 シーマの説明によれば、チベ級は宇宙重巡洋艦でザンジバルのように地球に降下するような真似は出来ないが、その分宇宙では結構な高性能艦だとか。

 主力艦のムサイに比べると火力やMS搭載数、防御力、機動力といった面で上回っている事もあり、小艦隊の旗艦として使われる事もあるらしい。

 ……もっとも、今回はルウム戦役程ではないにしろ、それなりに大規模な戦いが予想されている。

 連邦軍にしてみれば、オデッサを奪われてしまったのに、そこから更に他の場所まで占領されるようになれば面子の問題もあるだろうし……何より、戦力的に厳しくなるのは間違いなかった。

 また、ジオン軍に連戦連敗の現状では、小さくてもいいから勝利して味方の士気を回復させる必要もある。

 そんな訳で、今回の作戦ではそれなりにルナツーから多くの戦力が来る事が予想されていた。

 それに対応するため、ジオン軍の方でもある程度の戦力を集めており……結果として、小艦隊とはちょっと呼べない規模の戦力となっている。

 そういう意味では、チベ級ではちょっと物足りず……いわゆるグワジン級と呼ばれる戦艦が派遣されてもおかしくはないらしい。

 もっともグワジン級は高性能なだけにコストも高く、結果として数も少ないらしいが。

 純粋な性能で考えれば、リリー・マルレーンよりも上だが……唯一にして最大の欠点は、グワジン級は宇宙での運用しか考えられていないという点だ。

 この点ではリリー・マルレーンの方が性能は上なんだよな。

 ともあれ、シーマと共にチベ級の通路を移動――歩くのではなく、壁についているスティックを握って移動する――していると、途中で何人かの軍人に遭遇する。

 中にはすぐに敬礼する者も多いのだが、やはりシーマ艦隊の評判によるものだろう。嫌悪感を浮かべる者も少なくない。

 ……そのような者もシーマに一瞥されると、すぐに表情を隠して仰々しい態度を取るようになるが。

 とはいえ、それはあくまでもシーマに見られたからで、その随員……俺達に対しては嫌悪感を隠そうともしない。

 特に今の俺は10代半ばの年齢である以上、どうしても侮られる要素は強くなる。

 とはいえ、他のおつきの海兵隊に視線を向けられれば、そっと視線を逸らすのだが。

 

「と、あたしはこっちで用事があるから、あんた達はそこの部屋で休んでな。……いいかい? くれぐれも馬鹿な真似はするじゃないよ」

 

 そう言ったシーマの声が聞こえたのか、周囲にいた者達が安堵した表情を浮かべている。

 ただ、それは甘い。甘すぎる。

 この場合の馬鹿な真似ってのは、シーマ艦隊として侮られるなという事なのだから。

 それが分からないような奴は、後々酷い目に遭う事になるだろう。

 いや、俺がそれに関わるような事はないと思うけど。

 ともあれ、この部屋はどうやら今回の会議にやってきた者のおつき……俺達みたいな連中が集まるように準備された場所らしい。

 一応テーブルの上には飲み物が用意されている辺り、それなりに気を遣われているのだろう。

 もっとも、ペットボトルとかそういうのじゃなくて、ストロー付きの密封容器だが。

 

「わざわざこのチベ級に集まらなくても、通信じゃ駄目だったのか?」

「こうして集まるって事に意味があるんだろうな。それに、通信だと全員の顔を確認出来る訳じゃないし」

 

 俺の言葉に、一緒に来た海兵隊の男がそう告げてくる。

 なるほど、そういうものか。

 やっぱり直接顔を見て会議をするというのは、きちんとした意味があるんだな。

 それが終わるのを待っているこっちとしては、かなり退屈なんだが。

 他の面々はそれなりに他の部隊と思われる連中と話している奴も多いのだが、当然のように俺達に話し掛けてくる者は誰もいない。

 ……シーマ艦隊の嫌われ者っぷりがここまでとは思わなかった。

 

「なぁ、暇だな」

「……それは否定出来ない事実だ」

 

 誰かが絡んできてくれるようなら、それはそれで暇を潰せるのかと思ったんだが、俺と一緒に来た奴等は海兵隊だけあって、これでもかと言える程にアウトローっぽい雰囲気を出している。

 普通の軍人なら、そういう相手に絡んだりとかはしないだろう。……絡んだだけで、絶対に面白くない目に遭うのが分かってるしな。

 

「はっ、お前達の隊長、ブリディッシュ作戦で連邦軍のヘボパイロットにやられて、パイロットとしてはもう使い物にならないんだってな。連邦如きに情けねえ」

「ふざけるな! ブリディッシュ作戦で死んだのは、隊長だけじゃないだろ! それに、隊長は立派な人だ! お前なんかにどうこう言われるような事じゃない!」

 

 と、不意にそんな声が聞こえてくる。

 何人かの軍人が、お互いに向き合って険悪な表情を漂わせていた。

 ……俺達に絡むような事はしなかったが、他に絡まれる奴が出て来た、か。

 見た感じ、まだ士官学校を出てきたばかりといった具合の軍人だ。

 いやまぁ、10代半ばに見える俺に比べれば、間違いなく年上なんだけどな。

 そんな軍人に絡んでいるのは、20代半ばといったところか。

 モヒカン? トサカ? 絡まれている方はそんな髪型をしていて、後ろで髪を縛っている。

 ポニーテールという程に長くはないが。

 ちなみに、現状で暇な奴ってのは結構いるらしく、皆がそんなやり取りを眺めていた。

 

「ちょっと、ニッキ! 隊長の事を馬鹿にされてるのに、退いてるんじゃないわよ!」

「いや、別に退いてなんかいないだろ」

「私が言い負かしてやるから、ちょっと代わりなさい!」

「ちょっ、おい、シャルロッテ!?」

 

 あー……ニッキとかいう男の態度が気に入らなかったのか、仲間のシャギー? のショートカットの女が言い争いをしていた相手に向かって食って掛かっている。

 

「言っておきますけどね、私達闇夜のフェンリル隊は精鋭なんですからね!」

 

 その言葉に、黙って話の流れを眺めていた俺は立ち上がる。

 

「おい、アク……ムウ?」

「悪い、ちょっと用事が出来た」

 

 本来なら別に進んで関わるようなつもりはなかったのだが、あの2人が闇夜のフェンリル隊のメンバーであるとなれば、話は変わっている。

 何故なら、闇夜のフェンリル隊というのは今回俺が接触すべき最優先目標のゲラート少佐が率いる部隊なのだから。

 そんな俺の態度に、声を掛けてきた海兵隊の連中は……そうか、とだけ言って面白そうな笑みを浮かべてくる。

 普通なら、ここは自分達も協力するって言ってきてもおかしくないんじゃないのか?

 まぁ、海兵隊の連中は模擬戦で俺の力を直接見てるので、援軍はいらないと考えたのかもしれないが。

 ただ、俺は問題ないけど、普通はMSの操縦技術が高いのと生身の戦闘能力が高いのは、イコールじゃないんだが。

 そんな風に思いつつ、俺は座っていた椅子から立ち上がってニッキとシャルロッテと呼ばれている2人の方に向かう。

 その2人の後ろから近づいたからだろう。最初に俺の姿に気が付いたのは、ニッキ達に絡んでいた軍人の方だった。

 

「……何だよ、海兵隊が何の用だ?」

「ちょっと助太刀にな」

 

 助太刀。

 そう言った瞬間、俺に聞いてきた男や、その周辺にいる男達は卑しい笑みを浮かべ、背後からそんな声が聞こえてきたニッキやシャルロッテは絶望の視線を向けてくる。

 今の俺の容姿はともかく、シーマの部下だというのを知っているからだろう。

 だが……俺は視線を向けてくるニッキの横に立ち……ニッキ達を睨んでいた軍人に挑発の笑みを浮かべて視線を向ける。

 

「は?」

 

 まさか、相手も俺がニッキの側につくとは思っていなかったのだろう。

 完全に予想外だといった様子で、間の抜けた声が漏れ出る。

 

「どうした? 俺は言ったよな? 助太刀に来たって。ほら……掛かって来いよ。ちょっと遊んでやるから」

「このっ!」

「おい馬鹿止めろ! そいつ海兵隊だぞ!」

 

 ニッキに絡んでいた男が俺の挑発に乗って殴り掛かろうとした瞬間、他の仲間に押さえられる。

 ……海兵隊だからこそ襲うのを止めるって、改めてシーマ海兵隊の影響力――と言ってもいいのかどうかは微妙だが――を思い知る。

 結局男達はそれ以上は何を言うでもなく、最初にニッキに絡んでいた男が俺を睨み付けながらも、部屋から出ていく。

 そんな男達を見送り、俺は改めてニッキとシャルロッテの方に向けた。

 

「どうやら無事だったようだな」

「ありがとう、助かった……けど、随分と若いな。もしかして学徒兵か?」

「いや、普通の軍人だよ。ムウ・ラ・フラガ少尉だ」

「俺はニッキ・ロベルト少尉。こっちはシャルロッテ・ヘープナー少尉」

「ちょっと、何で私の分までニッキが自己紹介するのよ」

 

 シャルロッテの方は、見かけは結構大人しそうに見えるのだが、結構気が強いらしい。

 

「取りあえず、お前達が闇夜のフェンリル隊に所属しているってのは、事実か?」

「……事実だけど。どうしたの?」

「なら、ちょうどいい。実は……」

 

 そこまで口にした時、部屋の中にいる者達の視線の多くが俺に向けられている事に気が付く。

 ここでラルの名前を出すのは不味いか。

 シーマとラルが繋がっているってのは、可能な限り秘密にしておいた方がいいしな。

 汚れ仕事ばかりをさせられているシーマ艦隊と、ダイクン派という事で干されているラルが繋がったというのをザビ家が知れば、これ幸いとちょっかいを掛けてくるだろうし。

 ルナ・ジオンの建国が具体的にいつになるのかは、まだはっきりと決まってはいない。

 それだけに、シーマとラルの繋がりは可能な限り隠しておきたい。

 

「ちょっと以前に闇夜のフェンリル隊について名前を聞いた事があってな。……それで、お前達がここにいるという事は、ゲラート少佐は会議に出席中か?」

「あ、ああ。うん。そうだ」

「そうか。なら……お前達を助けた礼って訳でもないが、後でゲラート少佐に紹介してくれないか?」

 

 そう言った瞬間、ニッキとシャルロッテ2人の顔が驚きに染まる。

 まさか、俺がそんな事を言うとは思ってなかったのだろう。

 

「ちょっ、ちょちょちょちょ……ちょっとこっちに来なさい!」

 

 そう言い、シャルロッテは俺を引っ張って部屋を出ていく。

 ニッキも俺を引っ張るシャルロッテの後を追ってきているのを見れば、取りあえず問題はないだろう。

 海兵隊の面々が俺を見て囃し立てるような表情を浮かべていたのを考えると、一体今の行動にどんな事を想像しているのか、考えるまでもないのだが。

 そうして部屋を出た俺達がやって来たのは、部屋から少し離れた場所にある通路の片隅。

 少し離れた場所にはこの艦の軍人と思しき者もいるが、こうして行動している3人全員がまだ若いという事もあり、取りあえず問題視はしていないらしい。

 これで何をしているのかとか、面倒な事を聞かれると厄介な事になっていただろうから、助かったと言ってもいいだろう。

 

「それで、何でゲラート少佐に会いたいの?」

 

 尋問するように言ってくるシャルロッテだったが、そこに迫力はない。

 年下ではあっても、美鶴の方がまだシャルロッテよりも迫力があるだろう。

 だがここで迂闊な返答をした場合、ゲラートに繋がる線が切れてしまう可能性が高い。

 ラルにシーマと実力者を引き抜く事には成功しているのだが、仮にも国を建国するのだから当然のように有能な人材は多ければ多い程にいい。

 特に戦争中に建国するのだから、当然のように部隊丸ごと来て貰うのが最善の方法なのだ。

 ……まぁ、ラルの親友のゲラートはともかく、その部下の闇夜のフェンリル隊が大人しく全員ルナ・ジオンに協力してくれるとは限らないのだが。

 

「ゲラート少佐の親友から、ちょっと預かってる物があってな。それを渡したいんだよ」

「……親友? ゲラート少佐の? 何でそんな人とあんたみたいな子供が知り合いなの?」

「俺の知り合いが小さい頃にその人と知り合いだったんだよ」

「……つまり、知り合いの知り合い? 何かそれ、怪しくない?」

「そう言われれば否定はしない。ただ、何か問題あるか? 別に俺がゲラート少佐に危害を加えようとしてる訳じゃないし」

「でも……」

「分かった」

 

 シャルロッテの言葉を遮るように、ニッキがそう告げる。

 こっちの言葉を信じたのか、それとも俺をゲラートに会わせる程度なら問題ないと判断したのか。

 ともあれ、そんなニッキの反応は俺にとっても助かるものなのは間違いない。

 

「いいの? もしこの……ムウ少尉だっけ? この子がゲラート少佐に何かしようとしたら……海兵隊よ?」

「でも、俺達に助け船を出してくれたのは間違いないだろ? それも、シャルロッテが危ない時に」

 

 そう言われればシャルロッテもニッキに何か言い返せる様子もなく……俺は無事、ゲラートに会える事になるのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:5
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.11
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1389

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