転生とらぶる   作:青竹(移住)

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2134話

 シーマから連絡のあったホテルは、ズム・シティの中でも高級ホテルと言われているホテルで、当然のように迂闊に俺達が入っていけば非常に目立つ。

 だが俺達には影のゲートがあるので、特にその辺は気にしなくてもいいというのは、幸運だった。

 そうして姿を現した場所は、アンリのいる場所……ではない。

 残念ながら、俺達がアンリと接触するよりも前に、アンリはこのホテルに来た目的である誰かとの会談に向かってしまったのだ。

 普通ならホテルにやってきて真っ直ぐに休憩する部屋に向かったりはしないので、それは、ある意味当然だったのかもしれないが。

 ともあれ、そんな感じで俺達はアンリの休憩室と思われる部屋で一旦待つ事にする。

 尚、ここがアンリの休憩室だと判断したのは、これもまたシーマからの情報だったが……いや、本当にどこからどうやってそんな情報を得ているんだろうな。

 MIP社のような会社であれば、マハルの人間がいてもおかしくはない。

 だが、ここは高級ホテルだ。

 どうしてもこのような場所にマハルの人間がいれば、悪目立ちしてしまう筈だった。

 となると、ホテルで働いている従業員をどうにか手足にした……といった感じか?

 シーマ率いる海兵隊なら、普通にそのくらいはやりかねないんだよな。

 

「姫様、緊張していますか?」

 

 と、部屋の中にラルの言葉が響く。

 一応この部屋に盗聴器の類は仕掛けられていないのは確認してるけど、出来ればあまり騒がしくしない方がいいと思うんだが。

 そんな風に思うも、アンリとこれから話す事になっているセイラが緊張しているというのは、色々と危ないのは間違いない。

 面倒な事になるよりも前に、セイラの緊張を解しておけば……そう思わないでもなかったが、見た感じではセイラは特に緊張しているようには見えない。

 

「そうでもないわ。ただ、アンリ准将の説得が上手くいけば、いよいよ事態は始まると、そう思っていただけよ」

「……なるほど。姫様の考えも理解出来る。今回の一件によっては、世界が色々と大きく変わるのも事実だしな」

 

 ダグラスが納得したようにそう告げる。

 まぁ、良くも悪くも俺達シャドウミラーという存在は、劇薬と呼ぶに相応しい。

 そうである以上、俺達が協力してルナ・ジオンという新国家を作った場合、大きな騒動になるのは間違いない。

 それこそ、ジオンが現在行っている独立戦争が霞んでもおかしくはないくらいに。

 

「アクセル、クレイドルの方はどうなっている?」

「クレイドル本体の改修作業はもう終わった。それこそ、クレイドルを俺の空間倉庫に入れて持ってくれば、いつでもルナ・ジオンの首都という形には出来る」

 

 北海道よりも大きな首都というのは、前代未聞だと思うが。

 

「ただ、生態系の方はまだもう暫く時間が掛かる筈だ」

 

 一応マクロス世界でその手の事に詳しい人物から色々とアドバイスを貰いながら、クレイドルのどの地区にどんな生き物を放すか、もしくはどんな植物を植えるかといった感じで計画は進んでいるらしい。

 だが、その計画に関わっている者であっても、クレイドルのような北海道よりも巨大な移民船に関わるのは初めてだという事で、いざ実際に行動を開始したら色々と問題が起きる可能性もある。

 その辺は結局誰がやっても同じなのだから、曲がりなりにも経験のある相手に任せるというのが最良の手段だというのは変わらない。

 

「まぁ、全ての生き物を一気に放すって訳にはいかないから、まずは植物とかそっち系……で、草食動物、肉食動物って感じになると思う、他にも鳥とか魚とか……その辺は完全に詳しい奴に任せてるから、俺は分からないけど」

「ふむ。取りあえず問題はないと、そう考えてもいいのだな?」

「ああ。要塞の方も順調だし」

 

 月を支配下に置いた後で、その防衛の為に使う要塞群。

 バルジとリーブラ、ピースミリオンは既に改修が完了しているが、ジェネシスだけは話が別だ。

 まず、本体がガンマ線レーザーを撃つ為の物だからこそ、要塞として使う為の部分をきちんと作る必要がある。同時に、ガンマ線レーザーを1発発射する度に部品交換が必要となる場所も、改修項目だ。

 結果として、現在は他の改修が終わった場所で使っていた人手が、ジェネシスの改修作業に尽力している。

 あ、ちなみにニヴルヘイムは元々シャドウミラーで開発されたものだから、特にこれといった改修作業は必要なく、いつでもこの世界に持ってくる事が可能だ。

 基本的に宇宙要塞に詰めるのは量産型Wやメギロート、バッタといった面子になる筈だが、もし普通の人が暮らすのであれば、ニヴルヘイムが一番人気が高そうな気がする。

 自然とかそういうのも結構豊かだし。

 バルジとかリーブラとかは……まぁ、かなりの広さを持つから、その手の公園みたいな場所を作ろうと思えば作れない事もない……か?

 

「話には聞いていたが、正直なところ、月の周囲にア・バオア・クーのような要塞を設定すれば、ジオンも連邦も刺激しないか?」

「ダグラスが言いたい事も分かるけど、抑止力って意味ではかなりの力を持つのも事実だしな。……もっとも、それが本当に抑止力として働くとなると、一度か二度は襲ってきた相手に対して砲撃をする必要があるけど」

 

 リーブラ、バルジ、ニヴルヘイム、ジェネシスの4つは、どれも強力な主砲を持っている。

 そういう意味では、ピースミリオンは強力な武器がないので、抑止力としてはちょっと使いにくいか?

 いや、ステルス機能があってシャドウミラーの機体を運搬出来るとなれば、かなり恐怖の筈だ。

 もっとも、それは要塞としての機能ではなく、あくまでもステルス空母的な意味での恐怖だが。

 うん、ステルス空母か。ピースミリオンを表すのに、これ以上相応しい言葉もそうそうないな。

 ピースミリオンそのものは無数のビーム砲を持っているので、一応戦闘力がない訳ではない。

 だが、そのビーム砲は他の宇宙要塞の主砲と違って、どうしても威力が弱い。

 そうなると、当然のように戦力としては期待出来ない。……まぁ、ステルス空母として使う以上、ピースミリオンが攻撃されるといった事態になるのは色々と後がない状態になるので、そこまで気にする必要はないが。

 それにW世界で使っていた時と違って、重力制御やら配線やら各種機器やら、かなり小型になって、格納庫の類もかなり広くなっているので、収納出来る戦力も大きく増えている。

 であれば、もしピースミリオンが見つかったとしても、その戦力で対処出来るという可能性は十分にあった。

 

「戦いか。……ジオン・ズム・ダイクンの名を継いだ国を作る以上、当然のようにジオンは攻めてくるだろうな」

「ああ。だから、その為に……」

 

 俺達はこうして頑張っている。

 そう言葉を続けようとしたが、こちらに近づいてくる者の気配を感じ取り、その場にいる全員に声を発さないように態度で示す。

 幸いにも、こちらに向かって近づいてくる気配は少ない。

 取りあえず、俺達の侵入がザビ家に知られた……なんて事はないようなので、その辺は安心してもいい。

 だが、少数という事は1人ではない。

 つまり、アンリ以外にも他に誰かがいるという事になる。

 アンリの部下であればいいのだが、今回の会談についての話し合いの相手だったり、その部下だったりした場合は、色々と面倒な事になる。

 なので、取りあえず影のゲートに身体を沈めて身を隠す。

 ダグラスはまだ影のゲートを使った事が少ないので、あまり慣れた様子を見せてはいなかったが、セイラとラルの2人は、既に何度も使った事があるので影のゲートには慣れていた。

 それでもこのままここに俺達がいるのを、アンリ以外の者に見られるというのは避ける為、ダグラスも大人しく影のゲートに沈み、どこに出るでもなく影の中に沈んだままじっと部屋の中で待ち続け……

 

「では、閣下。1時間程したらまた迎えに来ますので、よろしくお願いします」

「ああ。もっとも、どのみち今回の一件は見せ札だ。こちらに向こうの意識を集中させた時点で、最大の仕事は終わったも同然なのだがな」

「そうですね。ですが、だからこそこのような場所でアンリ准将に万が一のことがあっては困るのです」

 

 どうやら、話を聞いている限りではアンリと一緒に来た奴は部屋の中に入ってくるつもりはないらしい。

 その事に安堵し、そうしている間にもアンリとその相手の話は終わり……気が付けば、扉の締まる音が聞こえてくる。

 そうして部屋の中に入ってきたアンリは、ソファに腰を落とす。

 かなり高級なホテルの為か、ソファも当然のように高級な代物だった。

 そうして数分が経過し……やがて、部屋の中に誰も入ってこないだろうと確認してから、俺達は姿を現す。

 

「悪いけど、ちょっといいか?」

「っ!?」

 

 いきなり声を掛けられ、息を呑むアンリ。

 ……年齢も年齢だし、驚きで心臓が止まるとか、そういう事にならないといいんだけどな。

 若干そんな心配をしたのだが、幸いにもアンリは特に何らかの異変を起こしたりしないまま、俺達の方に……俺、ラル、ダグラス、セイラの方に視線を向けてくる。

 ラルとダグラスに視線を向けた時に一瞬その視線が止まったのは、当然ながらラルとダグラスを知っていたからだろう。

 青い巨星の異名を持つラルは、ダイクン派の中でも高い知名度を持つ。

 ダグラスも、ダイクン派として名高い。

 それだけに、同じダイクン派としてアンリが知っていてもおかしくはない。

 

「失礼します、アンリ准将。少々お話があって、このような場を設けさせて貰いました」

「ランバ・ラル大尉か。……その前に、1つ聞きたい。どうやってここに? 先程私がこの部屋に入ってきた時は、誰もいなかったと思うが」

 

 悠然とした態度なのは間違いないが、俺達がどうやってここに入ってきたのかという事は分からないというのは変わらない。

 いや、それを態度に出さない辺りは、准将という地位にいるだけの事はあるといったところか。

 

「それについても説明させて貰いますが、その前にまず最初に紹介したい方がいます」

 

 ラルの言葉に、アンリの視線は俺とセイラの方に向けられる。

 まぁ、ラルとダグラスを知っている以上、この中で有名ではないのは俺とセイラの2人だけだし。

 あ、でも俺は一応エンデュミオンの鷹という異名が有名になっているのか?

 そんな風に考えていると、俺の横からセイラが1歩前に出る。

 それを見て、アンリもラルが言っている紹介したいというのが、俺ではなくセイラだと理解したのだろう。そちらに視線を向ける。

 

「アルテイシア・ソム・ダイクンである」

 

 セイラの口から出たのは、いつものようなセイラの口調ではなく、ダイクンの娘としての言葉。

 ここがそういう場面だと、セイラも理解しているのだろう。

 その上、シェリルの指導のおかげか以前に比べてもよりそのカリスマ性が上がっている。

 特に何か特別な動作をしている訳ではない。

 少なくても、俺がこのUC世界に来てから見たような、ギレン・ザビの演説の映像で見たように大きく手を振ったりはしていない。

 だが、微かな動きの1つ1つに意味があり、自然と相手の意識を惹きつけていた。

 セイラが生まれ持ったカリスマ性を、シェリルの教えによって増幅している……とでも言うべきか。

 

「……」

 

 アンリは、自分の前で堂々と名乗ったセイラの姿を、ただじっと見詰める事しか出来ない。

 いや、ラルとダグラスの2人も、ただじっとセイラの方を見詰めていた。

 それでも、先に我に返る事が出来たのは、今までの経験から驚きに対する免疫があったからか。

 

「アンリ准将。貴方が、父の協力者であった事はラルやダグラスから聞かされました。そんな貴方に問いましょう。……今のジオンが、本当に父ダイクンの目指した国だったのかと」

「違います」

 

 セイラの声で我に返ったアンリが、即座にそう告げる。

 色々と思うところはあるのだろうが、それだけにまず今のジオンはダイクンの目指したジオンではないと、そう真実だけを口に出来たといったところか。

 

「ジオン・ズム・ダイクンが目指したのは、今のような虐殺を行う事ではなかった筈です。少なくても、宇宙に生きる同胞の命をこうも容易く奪うような真似はしなかったでしょうし、何よりも宇宙に住むべき者達の母なる大地たるスペースコロニーを質量弾として利用するなど……」

 

 激情に身を任せながらアンリが告げるが、どうやらその様子からはセイラを間違いなくアルテイシアだと……ジオン・ズム・ダイクンの子供だと認識しているらしい。

 証拠も何もないのだが、セイラの態度とカリスマ性が、父親のジオン・ズム・ダイクンを彷彿とさせたのだろう。

 

「では、私が作る新国家に……本当の意味でスペースノイドを独立させる為の国家の建設に、協力してくれますか?」

 

 そう告げるセイラの言葉に、アンリは半ば反射的にだろう頷きを返すのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:235
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.11
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1435

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