転生とらぶる   作:青竹(移住)

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2184話

 ゴップが握手の手を伸ばしたのは、俺……ではなく、当然のようにジェーンだった。

 俺を迎えに来た大尉であれば、それこそジェーンよりも俺の方に最初に挨拶をしただろう。

 だが、ゴップはこの場の主役が誰であるのかをしっかりと理解していた。

 いやまぁ、そのくらいの事は出来て当然という気がしないでもないが。

 特にゴップの場合は、シャドウミラーの政治班が高くその能力を買っているのだから、寧ろこのくらいは出来て当然という気がしないでもない。

 

「ええ、よろしくお願いします」

 

 ジェーンの方も、連邦軍に対しての不信感を完全に隠してそう告げる。

 笑みを浮かべているその様子は、まさに花開いたと表現してもいい。

 ゴップはそんなジェーンに目を奪われ……おい、もしかしてジェーンと握手をしたのって、普通にジェーンが好みだったからとか、そういう理由じゃないよな?

 微妙にだがそんな風に思っていると、ジェーンとの握手を終えたゴップが次に俺の方に近寄ってくる。

 

「アクセル代表、こうして会うのは初めてですな。……いや、それにしてもその若さで国の代表者とは。素晴らしい」

「そうか? まぁ、俺の場合はかなり成り行き任せに近い部分があったのも事実だしな」

 

 これは嘘でも謙遜でも、何でもない。

 俺がシャドウミラーの代表になっているのは、それこそ殆ど成り行きに近いのは事実だった。

 恐らくもう少し歴史の流れが変わっていれば、今のような状況には絶対になっていなかった筈だ。

 ……まぁ、何故か、本当に何故か俺が転移する世界では多かれ少なかれ戦闘が行われており、誰かさんが理想としていた永遠の闘争的な感じになっているような気がしないでもないのだが。

 ともあれ、今の俺がこうしてシャドウミラーの代表になっているというのは、俺が最初から狙っていた訳ではない。

 

「はっはっは。それでも、シャドウミラーという、この世界の者にとっては未知の世界の住人なのだ。興味を抱くなという方が無理ですな」

 

 笑い声を響かせつつ、ゴップは俺の方にも手を伸ばしてくる。

 その手を握り、握手をする。

 軍人らしい……とは、とてもではないが言えない手。

 これがシーマだったり、ラルだったり、それ以外の面々であれば……いや、それこそジェーンであっても、掌は軍人としての訓練した経験を隠す事が出来ないのだが……ゴップの掌は、そのような訓練をした事がないような、そんな掌に思えた。

 多分、軍に入った時からずっと後方での事務処理とかをしてきたんだろう。

 勿論それを馬鹿にするような真似はしない。軍というのは、補給がしっかりしていないと途端に動けなくなるからだ。

 実際にこの戦争で連邦軍が物資不足に悩んだりしていないのは、それこそゴップの手柄だろう。

 ……まぁ、掌がどうこうって話なら、それこそ俺の手は混沌精霊だからか、とてもではないが鍛えているような掌って訳じゃないんだが。

 

「さぁ、中に入りましょうか、急な話でしたので、万全のお持てなし……という訳にはいきませんが、それでもある程度喜んで貰えるような用意はしてきましたので」

 

 そうゴップに言われ、俺とジェーンは家の中に入る。

 ちなみに、俺達をここまで送ってきた大尉は、家の中に入る様子は見せずに外で待機していた。……どうやら、護衛のつもりなのだろう。

 本来なら特に護衛の類は必要ないのだが、それでもゴップにしてみれば……そして連邦軍にしてみれば、自分達が警護をしたというのが重要なのだろう。

 自分達の方が立場が上だと、そう思いたい……といったところか。

 そんな風に思いつつ、俺は家の中を見る。

 特にこれといって特筆すべき何かがある訳ではないが、このような場所に家があるというだけで、異常と言えば異常だろう。

 もっとも、連邦軍なら1日と経たずにこの家を建てるような真似をしても、おかしくはないが。

 そうして家の中に入り、リビングと思われる場所に案内される。

 リビングに近づいている時から、そちらからは食欲を刺激するような香りが漂ってきていたのだが、リビングの中に入った瞬間にその香りが何だったのかを理解する。

 リビングにあるテーブルの上に広がっていたのは、様々な料理。

 それこそ中華料理があればイタリア料理があり、インド料理もあるし、和食の類もある。

 かなり大きいテーブルの上に、これでもかと用意された料理は、明らかにこちらをもてなす為に用意された料理だった。

 

「これは……」

 

 ジェーンの口からも驚きの声が出た。

 それを聞き、ゴップはその眠そうな顔に満面の笑みを浮かべる。

 ゴップにしてみれば、してやったりといったところなのだろう。

 

「驚いて貰えたようで何よりだよ。君達を驚かせようと、頑張った甲斐があった」

「頑張ったって……え? もしかして、これはゴップが作ったのか?」

 

 ゴップの言葉に、半ば反射的にそう尋ねる。

 大将という階級にあるべき者が、もしかしてこれ程の料理を……と。

 だが、そんな俺の言葉にゴップは首を横に振る。

 

「まさか、この料理は専門の料理人達に作って貰ったものだ。この料理に使う材料や、それを調理する料理人。それを用意するのを頑張ったという事だよ」

「あー……だよな」

 

 やはりこの料理はゴップが作ったものではなく、専門の料理人に任せたものらしい。

 人によっては意外な特技を持っていたりするので、もしかしたら……本当にもしかしたらと思わないでもなかったのだが、どうやら違ったらしい。

 

「さて、まずは食べて欲しい。これからの会談は恐らく時間が掛かるだろう。であれば、この折角の料理が冷めてしまう」

 

 そう言いながら、ゴップはテーブルに着き、大皿の中の麻婆豆腐を小皿に取り分け、それを一口食べる。

 客を前にして、自分だけが最初に料理を食べる。

 それは、普通に考えれば行儀の悪い……マナー違反だと言ってもいい。

 だが、現在の俺達とゴップの……いや連邦との関係を考えれば、ここで先に一口食べるというのは、中に毒や薬の類が入っていないと、そう示しているのだろう。

 ……本当に追い詰められていれば、毒や薬を盛った料理だと承知の上で食べたりといった事も考えられるのだが、幸い今の連邦はそこまで追い詰められている訳でもない。

 まぁ、ジオン軍を相手に大きく負け越しているのも事実なのだが。

 

「そうか。なら、ご馳走になろう。ジェーン、構わないよな?」

「はい、構わないかと」

 

 ジェーンも不承不承ではあっても、ゴップが毒味をしたのを見てしまっては、それ以上の不満を口にすることは出来なかった。

 そうしてテーブルに着いて食事をするとなると、ボーイが姿を現して俺の前には冷たいウーロン茶を、ジェーンの前にはジャスミン茶を、ゴップの前には水……恐らくミネラルウォーターか何かを置く。

 ジェーンの好物は知らないが、何も言わずとも俺の前にウーロン茶を置いたのを思えば、やはり俺の好みを理解していると、そう思ってもいいのだろう。

 

「では、酒ではないのが残念だが……連邦とルナ・ジオンとシャドウミラーの出会いと発展を願って……乾杯」

 

 そう言い、コップを掲げるゴップ。

 俺とジェーンもその言葉に合わせてコップを持ち上げ、ウーロン茶を飲む。

 にしても……

 ウーロン茶を飲み干してから、ボーイがこちらにもう一杯のウーロン茶を持ってくるのを眺めながら、口を開く。

 

「連邦軍の中でもお偉いさんのお前が、連邦だけじゃなくてルナ・ジオンとシャドウミラーの発展を願ってもいいのか?」

「構わんよ。あくまでも私個人の意見ではあるが、私はルナ・ジオンという国を認めてもいいと思っている。……ジオン公国は絶対に認められないがね」

 

 そう告げるゴップの表情は、一瞬苦々しげなものになる。

 だが、すぐにゴップの表情は元に戻り、口を開く。

 

「正直なところを言わせて貰えば、儂としてはジオン・ズム・ダイクンの正当なる後継者たるルナ・ジオンには、もっと積極的に動いて欲しいと思っておる」

「積極的、ですか? 建国1ヶ月にしては、グラナダをジオンから奪い、月そのものをルナ・ジオンが占拠し、更には月の周辺に機動要塞を3つも配置し、地上ではジオン公国からハワイを奪ってますが……まだ、足りないと?」

 

 メロンの上に生ハムが乗った……いわゆる、生ハムメロンを味わっていたジェーンは、ゴップの言葉にそう返す。

 返すのだが……正直なところ、建国1ヶ月しか経っていないのに、これだけの戦果を得たというのは、正直凄いと思う。

 もっとも、その戦果の多くはシャドウミラーの協力があっての事だというのは、俺も理解しているのだが。

 ともあれ、ルナ・ジオンはこの1ヶ月の間でかなり激しく動いてている。

 にも関わらず、もっと大きく動いて欲しいというゴップの言葉は、言ってみればルナ・ジオンをジオン公国にぶつけたいと、そういう事なのだろう。

 ジェーンの方も、それが分かっているからしっかりと釘を刺しながら断っていると。

 

「それに、ジオン公国とは現在戦争中ではありますが、同時に商売相手でもあります」

「商売相手?」

「ええ、資源の類をある程度安値で売っていますから」

「……それは、本当かね?」

 

 ジェーンの言葉に、ゴップの声が一段低くなる。

 ん? この様子からすると、もしかしてその辺は知らなかったのか?

 いや、だが俺が紅茶派だという事を調べるだけの諜報能力があるのに、まさかルナ・ジオンが――正確にはシャドウミラーが――ジオン公国に資源を売っているという事に気がつかないとは思えない。

 となると、これはブラフとか、そういう感じか?

 

「ええ。ルナ・ジオンにとって、資源というのは幾らでも得られる物ですから。それをジオン公国に売って、外貨を得ています」

 

 そう告げるジェーンだったが、実際にキブツを有するシャドウミラーがバックにいるルナ・ジオンにとって、一般的なという言葉が付くが、資源の類はそれこそ幾らでも入手する事が可能となっている。

 それこそ、スペースデブリの1つや2つあれば、それに応じただけの資源が得られるのだから。

 これが、サクラダイトを始めとしたその世界特有の資源であれば、話は別だったのだが。

 そういう意味では、今のところこのUC世界においてそういう物質は見つかっていない。

 だからこそ、ジオン公国にしてみれば、好きなだけ資源を得られているのだが。

 もっとも、それでもジオン公国にしてみれば、俺達だけに資源を頼る訳にはいかず、せっせとオデッサからHLVとかを使って採掘した資源を打ち上げているのだが。

 ちなみに、ジオン公国にとってルナ・ジオンが実質的に戦争状態にある以上、いつ資源の販売を打ち切られるか分からない。

 それを思えば、ルナ・ジオンだけに資源を頼るのではなく、他の場所からも資源を得るようにするというのは当然の行動だろう。

 

「ルナ・ジオンにとって、ジオン公国は敵国という認識だと思っていたが? 実際、建国宣言の時もそちらのアルテイシア女王がそのように言っていただろう」

 

 へぇ。セイラを女王と呼ぶのか。

 セイラを女王と認めたことは、ゴップがルナ・ジオンを国として認めた事に等しい。

 もっとも、さっきもゴップが言っていたが、それはあくまでもゴップ個人としてであって、連邦軍の大将という立場からの話ではないのだが。

 

「そうですわね。それは否定しません。ですが、同時にジオン公国はルナ・ジオンにとって商売相手でもあるという……かなり複雑な関係ですね」

「ふむ、敵対国でありながら、商売相手でもあるか。それはかなり複雑な関係であるのは間違いないな」

 

 焼きたて……という程ではないが、それでもまだ焼き上がってから時間が経っておらず、冷めていないピザを食べながらゴップが頷く。

 やはり先程の一言はブラフだったのか、ゴップの様子は最初のものに戻っていた。

 うんまぁ、俺が把握している限りのゴップの性格を考えても、それは当然の結果なのか。

 

「では、1つ聞きたい。ルナ・ジオンがジオン公国に資源を売っているというのであれば、それは連邦に売っても構わないと、そういう事かな?」

「どうでしょうね。ジオン公国に売っているのは、先程も言いましたが色々と理由があっての事です。その辺りの考えを抜きにして、その上で連邦にも資源を売るというのは……正直なところ、私からは何とも言えません」

「……アクセル代表は、その辺をどう思ってるのか聞いてみても?」

「ん? 俺か? まぁ、そうだな。資源の量そのものは問題ない。それこそ、俺達シャドウミラーにしてみれば、大抵の資源は無限に作り出せるんだし」

 

 そう言った俺の言葉に、ゴップの顔が引きつる。

 まぁ、無限に資源を作り出せると聞けば、それも無理はないか。

 もっとも、実際には原材料となる何か……代表的なところでは、スペースデブリやBETAの死骸、企業から出る産業廃棄物といったような、様々な物が必要となるのだが。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:235
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.11
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1435

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