転生とらぶる   作:青竹(移住)

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2196話

「よろしくお願いします」

 

 そう言って俺に敬礼をしてきたのは、金髪の若い男。……まぁ、それでも20代半ばといった外見で、今の俺の姿とはそう変わらない年齢だ。

 敬礼が様になっているのは、この男が元はジオン軍の軍人だからだろう。

 ジャン・リュック・デュバル少佐。いや、元少佐か。

 元々ヅダのテストパイロットをしていた男で、俺が知っているデータによれば、人一倍ヅダに愛着を持っている男だ。

 事実、こうしてツィマッド社からルナ・ジオンに移住してきたのは、ジャンの働きが大きかったらしい。

 もっとも、それ以外にツィマッド社が俺達とコネを作っておきたいという思いがあったのも、間違いないだろうが。

 どうやら、よっぽどフュルギアが気に入ったらしい。

 ともあれ、俺達が最初に接触したMIP社、カーウィン家の伝手で繋がったジオニック社と違い、ツィマッド社とはどうしても関係が薄かった。

 そういう意味では、今回の一件はルナ・ジオンにとってもかなり有益な取引だったと言ってもいい。

 ……ツィマッド社もそうだが、恐らくジオン公国が独立戦争に負けた後の事を考えてるんだろうな。

 

「ああ、よろしく頼む。ルナ・ジオンの面々とはもう会ったのか?」

「はい。そうしたら、アクセル代表が今日はクレイドルに来ていると聞きましたので。皆を率いて挨拶でもと」

 

 ヅダを改修するのが目的でやって来た面々だったが、どうやらこのジャンがリーダーという事らしい。

 いやまぁ、技術者ってのは基本的に自分のやりたい事だけをやっていて、それ以外は出来ればやりたくないと思う奴が多い。

 少なくても、シャドウミラーの技術班はそんな感じの連中が多い。

 ……ツィマッド社の技術者が、シャドウミラーの技術者と同じかどうか、その辺は俺にもまだ分からなかったが。

 

「そうか。ヅダが改修されて、ザクよりも高い性能を持つことを期待している」

「は! 期待に応えられるよう、頑張りたいと思います!」

 

 再び、ビシ! という擬音が似合うような態度で敬礼をするジャン。

 うーん、ちょっと堅いな。

 まぁ、シャドウミラーの技術班ならまだしも、ルナ・ジオンの技術者――正確にはテストパイロット――として活動する以上、そこまで気にする必要はないのかもしれないが。

 

「ただ、言っておくが……ヅダはルナ・ジオンの中でも主力MSの1つになる予定だ。そうなると、大事なのは尖った性能ではなく、汎用性だ。それこそ、エースパイロットでなければ操縦出来ないような、そんなMSを開発されても困る」

 

 その例が、指揮官用ザク……いわゆる、S型と呼ばれているザクだ。

 普通のザクや、それを改修したFS型よりも高い性能を持つS型だが、燃費が悪い。

 それこそ、新兵がS型に乗ったりすれば、すぐにでも推進剤を全て消費してしまうといった事もあったらしい。

 つまり、S型の本領を発揮出来るのは、あくまでもそれを使いこなせる実力があるパイロットが前提になっての話だ。

 俺が、そしてルナ・ジオン軍のパイロットがヅダに期待しているのは、あくまでも精鋭以外の一般の兵士であっても操縦出来るようなMSだ。

 基本的に宇宙用というヅダの特色は変えようとは思わない。

 そこを変えようとすれば、それこそ改修云々ではなく、最初から開発し直すような形になるのだから。

 だからこそ、特色はそのままに精鋭以外のMSパイロットでも操縦しやすい機体にして欲しいと、そう希望するのだ。

 そんな俺の希望に、ジャンは自信に満ちた笑みを浮かべて頷く。

 

「ええ、分かっています。このルナ・ジオンでなら、政治によって結果を変えられたりといった真似はせずにすみます。……ジオニック社の技術者もそれなりにいるようですが……」

 

 ジオニック社の技術者がいるという点で、ジャンの表情は若干苦々しいものに変わる。

 うーん、これは予想以上に根が深いな。

 

「言っておくが、クレイドルに来たからには、元ジオニック社だろうが、元ツィマッド社だろうが、元MIP社だろうが……そこは変わらない。もしジオニック社に所属していたからという理由で、無駄な騒動を起こしたりすれば……それこそ、ヅダを改修する為にやって来たお前達であっても、容赦なく裁かれるぞ」

 

 まぁ、この場合の裁くというのは、強制的に農業をさせるという事なのだが。

 それと、食事がマブラヴ世界の合成食、それも改良前の奴になるというだけだ。

 ……それだけに、捕まった者達は必死に働く事になる。

 ジャンを含めてツィマッド社の面々が、そんな風にならない事を祈るだけだ。

 そんな俺の顔を見て何か感じるものがあったのか、ジャンは……いや、その後ろにいる技術者達も一瞬表情を引き攣らせる。

 向こうにしてみれば、それだけ俺の言葉が不気味に聞こえたのだろう。

 あるいは、誰かから捕まった後にどのような目に遭うのかといったのを聞いたのかもしれないな。

 俺と会う前にルナ・ジオンの面々と会ったって話だったし。

 

「どうやら、その表情を見る限りでは諍いの心配はしなくてもいいみたいだな。俺としては助かるけど」

「は! アクセル代表の手を煩わせるような真似はいたしません!」

 

 真剣な表情でジャンが告げ、他のツィマッド社の技術者達も急いで頷く。

 

「そうか。なら、いい。……ああ、それとシャドウミラーが全面的にバックアップしているアプサラス計画ってのがあるんだが、知ってるか?」

「話だけであれば、聞いています」

 

 そう告げるジャンの言葉に対抗意識が見えないのが、若干疑問だった。

 もしくは、ギニアス家が開発しているMAで、ジオニック社ではないからか?

 ただ、MIP社の技術者が中心になっているとはいえ、アプサラス計画に協力している技術者の中には、ジオニック社出身の者もいるんだがな。

 

「どうしました?」

「いや、ザクに対するような対抗意識を抱いてないからな。てっきり、もっと激しい対抗心を持つかと思ってた」

「それは……やはり、アプサラスの運用が基本的に地球上だからというのが大きいでしょうし、何よりもMSではなくMAというのがあるかと」

「ああ、なるほど」

 

 前者はともかく、後者……MSとMAの差については、納得出来る。

 競い合うにしても、ジャンルそのものが違うのだろう。

 ただ、前者に関しては、将来的にはアプサラスは宇宙でも使えるようにするつもりなんだけどな。

 あくまでも将来的な話であって、最初は地球での運用をする予定だが。

 ただ、一度完成したアプサラスを宇宙でも使えるようにするというのは……そこまで難しくはないと思う。

 少なくても、1から開発するよりはかなり楽なのは間違いないと思う。

 

「ともあれ、ヅダの開発は頑張ってくれ。シャドウミラーとしても、ルナ・ジオンの戦力が増えるのは助かるからな」

 

 これは、冗談でも何でもない事実だ。

 現在ルナ・ジオン軍に貸し出しているジンを始めとしたMSは、結局のところSEED世界やW世界といった、異世界のMSだ。

 そうなると、運用上でも独自の部品が必要となり、それを入手する為にシャドウミラーが頼られる事になる。

 いやまぁ、そこまで複雑な部品ではないんだし、ルナ・ジオンが自分でその部品を作る為の工場を建てるという選択肢もありではあるのだが……何しろ、今のルナ・ジオンには人手が足りない。

 バッタやコバッタ、量産型Wとかを貸し出しはしているが、あまりシャドウミラーに頼り切りになるというのも、外聞が悪いらしい。

 そんな訳で、最善なのは全ての部品をルナ・ジオン製という形でMSを開発する事だ。

 そうなれば、ジンとかはなくなる……という事はないかもしれないが、これぞルナ・ジオン製MS! という事で、胸を張ってジオン公国や連邦に自慢出来るのは間違いない。

 まぁ、ラル達も機種転換訓練をしてSEED世界のMSに乗ってはいるが、やっぱり以前から乗っていた操縦システムの方がいいだろうし。

 あ、いや。でもジオニック社とツィマッド社だと……同じMSという存在であっても、操縦システムとかはどうなんだ?

 

「ジャン、ちょっと聞きたいんだが、ヅダとザクの操縦システムはどうなっている?」

「は? 操縦システムですか? それは……製造している兵器メーカーが違うので、それなりに違いはありますが」

「……やっぱりか」

 

 ジャンのその言葉は、ある意味で俺の予想通りでもあった

 ジオン公国にいた頃であれば、それでも良かったのかもしれない。

 だが、今の……ルナ・ジオンという新しい国に来た以上、意地を張られるのもちょっと困る。

 何より、これからMSを新たに開発――正確には改修だが――するのであれば、ジオニック社の方に操縦システムを合わせた方が、将来的には色々と便利になる。

 特にジオン軍からMSを奪った時とか。

 そういう時に、操縦システムが違うので性能を最大限発揮出来ませんでしたという事になるのは、ちょっと面白くない。

 

「何か問題でも?」

 

 そう言ってきたのは、ジャンではなく後ろにいる技術者の1人。

 操縦システムの件については、テストパイロットのジャンもそうだが、やはり実際に開発をしている技術者達にとっても興味深い内容なのだろう。

 

「ああ。出来ればヅダはザクと同系統の操縦システムにして欲しい。勿論、機体が違う以上、全てを全く同じにしろとは言わないが」

「それは、何故でしょう」

「ジオン軍のMSを入手してこちらの戦力にする時に、操縦システムが違うと機種転換訓練が必要になるだろ。それは出来れば避けたいし、どうしてもやらなければならない場合は最低限で済ませたいからだ」

「……分かりました。正直なところ、あまり面白くない話ではありますが、将来的に見るとそちらの方がいいのかもしれませんね」

 

 完全に納得した様子ではなかったが、技術者の1人が俺の言葉にそう言ってくる。

 ジャンだけかと思ったんだが、実は技術者の方にもジオニック社に対して思うところがある奴がいたんだな。

 いやまぁ、もしかしたらそういう連中を集めてルナ・ジオンに送ってきたのかもしれないが。

 ともあれ、不承不承であってもこっちの要望を聞いてくれたのだから、こちらとしては不満はない。

 出来ればジオニック社からやって来ている技術者とも、友好的にやって欲しいところだが。

 その辺は、今は無理でも将来的に……といったところか。

 

「助かる。そうしてくれれば、ルナ・ジオン軍の方でも色々と便利だろうしな」

 

 そうしてジャン達との面会は終わり、ジャン達は俺の前から立ち去る。

 早速これから、ヅダについての打ち合わせを始めるのだろう。

 ルナ・ジオンという国が出来てから、まだ1ヶ月足らず。

 だが、そこに才能のある者達が集まってきて、結果としてルナ・ジオンの首都たるクレイドルは、かなり賑わっている。

 ……まぁ、クレイドルの大きさが北海道以上なので、賑わっているとは言っても、1人辺りの面積で見れば、まだまだ余裕なんだけどな。

 

「さて、ヅダの一件は予想よりも上手くいった。後は、具体的にどんな風になるか……その辺りは、俺が何かを考えるよりも、実際に技術者達で話し合って決めた方がいい」

 

 そう呟くと、俺は政治班から回ってきた書類に目を通す。

 基本的に書類の類は政治班の方で片付けられるようになっているが、どうしても俺がチェックしたり、サインしたりといった真似をする必要がある書類もある。

 俺がいない時は、俺の代理としてレモンが処理してるんだが……今は俺がいるので、俺にその書類が回ってくるのは当然だった。

 まぁ、それでも大体の書類は政治班が片付けているから、俺に回ってくる書類の類はかなり少ないんだが。

 それだけに、俺まで回ってくる書類は重要な内容が書かれているものが多く、適当に読み流すといった真似は出来ない。

 

「何々? ……へぇ」

 

 俺が見た書類に書かれていたのは、クレイドルに放す予定の動物や植物の件。

 まだクレイドルの自然環境を整え始めてから、そう時間は経っていない。

 それだけに、動物や植物の類を放す順番というのは、意外と重要……らしい。

 これはマクロス世界での専門家からの意見だが。

 ともあれ、その件については量産型Wやメギロートを始めとした無人機が、文字通り昼夜を問わずやっている。

 ハワイのHLV建設や、アプサラス計画の研究所の件といい、やっぱり便利だよな。

 取りあえず放す動植物については問題ないとしてサインをし、次の書類に目を通す。

 ……は?

 一瞬、今のが見間違いだったのではないかと視線を遠くに向け、改めて書類を見る。

 だが、夢でも見間違いでもなかったらしく、書かれている内容は変わっていない。

 そこに書かれているのは、ガトーがハワイに……正確にはアプサラス計画に参加したいとルナ・ジオン軍上層部に申請したという内容だった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:235
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.11
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1435

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