転生とらぶる   作:青竹(移住)

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2216話

 サイド6にある、フラナガン機関の研究所。

 そこに突入した俺がまず最初に感じたのは、血の臭いだった。

 ……基本的に、証人となる人物を多く得る為に、出来るだけ殺さないようにと命令されていた筈だ。

 それがセイラの優しさからくるものか、それとも甘さからか……はたまた、将来を見越しての事なのか。

 その辺りの理由は分からなかったが、それでも今回の一件では出来るだけ人を殺さないようにとされていたのは間違いない。

 そんな状況にも関わらず、こうして血の臭いがするという事は……

 

「警備兵と銃撃戦にでもなったのか」

 

 ジオン公国にとって、この研究所は非常に重要な研究所だ。

 だからこそ、MSをあれだけの数用意していたのだろうが、だからといってMSだけにこの研究所の護衛を任せる筈もない。

 MS以外に生身の警備兵を用意しておくのは、ある意味で当然だった。

 そんな警備兵であれば、当然のように銃といった武器を持っているだろうし、そうなれば銃撃戦になってしまうのは必然だった。

 それでも俺が予想していたよりはかなり呆気なく戦いが終わったというのが、血の残り香がかなり薄いということで分かる。

 こっちが用意したのは精鋭だし、量産型Wに生身で勝てるような連中はUC世界にいないだろうし、何よりバッタやコバッタといった無人機がいる事を考えると……妥当な結論と言ってもいい。

 ともあれ、既にかなり奥の方まで進んでいるのか、周囲に人の気配はない。

 まだ部隊が突入してからそこまで時間は経っていない筈なんだが……それにしては随分と進んでいるな。

 量産型Wがいるから、生身での戦闘力が違いすぎたのか?

 そんな風に思いつつ、俺は研究所の中を進んでいく。

 どちらに進めばいいのかというのは、それこそ考えるまでもなく明らかだった。

 床に足跡がついているし、銃の薬莢が落ちていたり、血の跡があったりするのだから、道に迷うといったことは考えなくてもいい。

 ……少し予想外だったのは、この研究所がかなり複雑な作りをしているという事だ。

 恐らく、被験者達が逃げ出さないようにと考えての事なのだろう。

 とはいえ、ニュータイプ能力を持っていれば、この程度の迷路とかは普通に抜け出せそうな気がしないでもない。

 そう思いつつ、通路を進むと……やがて進行方向から銃声と叫び声が聞こえてくる。

 そこで何が行われているのかは、それこそ考えるまでもなく明らかだ。

 どうやら、戦闘が完全に終了する前に俺は最前線に到着したらしい。

 

「アクセル!? 一体、何でこんな場所に!?」

 

 俺を見てそう驚きの声を上げたのは、シーマの部下の海兵隊の1人だ。

 以前俺がシーマの部下として活動していた時に、何度か話した事がある。

 咄嗟だったからこそ、俺の名前を呼び捨てにしたのだろう。

 いやまぁ、公の場所でそのような真似をされた訳じゃないんだし、その辺は全く問題ないのだが。

 もっとも、この件では恐らく後でシーマに怒られる事になりそうけど。

 

「少し研究所の中を見てみたくてな。それに……ニュータイプの研究をしているだけあって、何か妙な攻撃手段とか、そういうのがある可能性もあるし」

「それは……」

 

 俺の言葉に、納得の表情を浮かべる男。

 もっとも、以前からニュータイプの研究をしていたのは間違いないが、この研究所そのものはまだ作られたばかりだ。

 そうである以上、ニュータイプ用の何らかの兵器といった物がある可能性は少ないだろうけど。

 それでも、あるという可能性は否定出来ないのだ。

 

「そんな訳で、俺がちょっと向こうを制圧してくる。俺なら、何かあっても対処出来るし」

 

 そう言い、返事を聞くまでもなく前線となっている廊下に出ていく。

 当然ながら、そのような真似をすれば俺に向かって次々に銃弾が放たれるが、俺はそれを意図的に回避せずに受ける。

 混沌精霊である俺には、当然ながら物理攻撃は効果がない。

 結果として、俺に触れた銃弾は……溶ける。

 いや、そのまま俺の身体を貫通させても良かったんだが、そうすると背後にいる面々に被害が出る可能性もあったし。

 だからこそ、俺は自分の身体に触れた銃弾を白炎で溶かしたのだ。

 

「……え?」

 

 一瞬、何が起きたのか分からなかったのだろう。

 俺に拳銃の銃口を向けていた男の1人が、唖然とした様子で呟く声が聞こえてきた。

 向こうにしてみれば、目の前で起こった事は全く理解の出来ない光景だったのだろう。

 

「さて、こっちとしては大人しく降伏してくれると助かるんだけどな。面倒もないし」

 

 そう言いながら、俺は研究所の警備兵に向かって歩いていく。

 にしても、こいつら……警備兵ってよりも、明らかに傭兵って感じしかしないな。

 武器を持たずに素手で進むが……当然ながら、向こうはこっちに対して攻撃を躊躇するような真似はしない。

 先程の光景は夢だったと、そう思いたいかのように、こちらに向けて次々に拳銃を撃ってくる。

 当然のように、警備兵はその男1人という訳ではなく、他にも何人もいる。

 そのような連中も、次々とこちらに向けて銃弾を放つ。

 警備兵達にとって幸運だったのは、この研究所の大きさからバッタが中に入れなかった事だろう。

 いやまぁ、コバッタだけでも十分な程に強力な力を発揮しているのだが。

 それに、この研究所ではMSを使っていた以上、当然のようにMS用格納庫とかもある筈で、そこにならバッタも入る事は出来る筈だ。

 ともあれ、警備兵にとってはコバッタよりも俺の方が脅威と感じたらしく、銃弾が俺に集中する。

 ……ただし、俺の身体に触れた銃弾は、当然のように溶けてしまうのだが。

 そのまま、数十秒。

 俺はずっと銃弾を浴び続け……それでも、全く効果がないと知ると、警備兵達の動きが止まる。

 いや、正確には引き金を引いてはいるのだが、全ての銃弾を使い切ってしまったのだ。

 弾倉を入れ替えるとかすれば、当然のようにまた撃てるのだが、こうして見ている限りでは、既にその気は完全になくなってしまっているらしい。

 

「降伏しろ」

 

 一言そう告げると、全ての警備兵は……それこそバリケードに隠れていたり、通路の曲がり角に身を潜めていたりといったような事をしていた警備兵達も、全員が持っていた拳銃を床に落とす。

 自分達では、何をどうしたところで俺に勝てないと、そう理解してしまったのだろう。

 実際、この心折られた警備兵達が何をどうしようとも、俺を排除したり鎮圧したりといった真似をするのが不可能なのは、間違いのない事実ではあったのだが。

 ……とはいえ、この連中が降伏したのは俺の力だけという訳でもない。

 こいつらは生身なのに、こっちはコバッタとか量産型Wとか、生身で太刀打ち出来ない……訳ではないが、するのがかなり難しい相手だというのは、間違いのない事実なのだ。

 それを考えれば、俺の存在は相手の心を折るダメ押しになったといったところか。

 

「よし、こいつらを抵抗出来ないように縛っておけ。言っておくが、捕虜の虐待とかみっともない真似はするなよ」

 

 一応といった感じで告げるが、実際にそのような事になるとは思っていない。

 大抵捕虜の虐待とかそういうのは、仲間が殺されたとか、重傷を負ったとか、そういうのが理由で行われる。……勿論、それ以外の理由でというのもない訳ではないのだが。

 ともあれ、今の戦いでこっちが受けた被害は……ないとは言わないが、かすり傷程度だ。

 これも、コバッタが動く盾代わりとなったり、量産型Wの魔法だったりといったものが効果的だった為だろう。

 

「ここにいる連中が降伏したとなると、残っている戦力はもう殆どないだろ。ここに残るのは最低限でいい。研究者達が逃げないように、それとデータを消したりする前に先に行け」

 

 そう告げ、この場にいる連中に進むようにと言う。

 それを聞き、この場にいた兵士達は最低限の人数だけを残してコバッタや量産型Wと共に先に行く。

 ……まぁ、コンピュータのデータを削除とかしても、ルリやラピスの力があれば復旧も出来ない訳ではないが……ルリやラピス達に、あまりこの研究所のデータを見せたくはないという思いがあった。

 それこそ、既に俺にこの研究所の一件を知らせる時に、少なからず実験やら何やらのデータを見ていたとしても、だ。

 それに、幾らデータを復旧出来るとはいえ、必ずしも100%確実にという訳ではない。

 どうしてもデータが復旧出来ない場所といったものが出てくる可能性もある以上、やはりデータそのものを消去されないようにしておくというのが最善なのだから。

 

「こいつらは……ロープとかそういうのを持ってるか?」

「ああ、その辺はきちんと用意してあるから問題ない。縄抜けとかそういうのも出来ないよう、しっかりと縛って寄せておくよ」

「そうか、分かった。ならそうしてくれ。こいつらは一応クレイドルまで連れて帰る」

 

 色々と調べて、仕事とかでしょうがなくこの場の警備をしていたというのであれば、クレイドルにある農場送りにでもしてやればいい。

 だが、自分の意思で研究していたような奴であれば……まぁ、その辺がどうなるのかは、セイラに任せよう。

 自分の同胞となるかもしれない相手に危害を加えた者達に、どんな罰が下されるのか……その辺りは、少し楽しみではあるが。

 ともあれ、降伏した連中をシーマの部下達が全員縛り終えるのを確認してから、俺はその場を離れる。

 研究所の中はそれなりに広いから、先行していった連中とは別の方に進む。

 ……いっそスライムを使って探索をするか? と思わないでもなかったのだが、ニュータイプ能力を持つ者がスライムに触れたらどうなるのかが分からない。

 セイラで試してみればよかったか?

 いや、セイラにそんな事をすれば、それこそラルやアンリのような連中を怒らせるか。

 セイラ本人は、その辺をあまり気にしていないと思うんだけどな。

 そうして歩いていると……不意に、泣き声が聞こえてくる。

 かなり小さな泣き声で、それこそ混沌精霊としての五感を持っているからこそ、聞き取る事が出来たような泣き声。

 この研究所で聞こえてくる泣き声となれば、どのような人物が流している声なのかは考えるまでもない。

 ……いやまぁ、自分達の仕事場にいきなり俺達のような存在が攻めてきた事で、怯えている研究者とかもいるかもしれないが。

 何にしろ、この状況では泣いているのが被験者であっても研究者であっても、それを見捨てるような真似が出来る筈もない。

 声の聞こえてきた方に進んでいくと、そこにあったのは壁だ。

 勿論ただの壁から泣き声が聞こえてくる筈もなく、つまりこの壁の向こうには誰かがいるという事になる、

 ましてや、壁の向こうの泣き声が聞こえるということは、この壁はただの壁ではなく……どこかに隠し通路があるという事になる。

 さて、そうなると……どうするべきか。

 いや、助ける助けないというのは、もう助けるという事で決まっている。

 問題なのは、一体どうやって助けるかという事だ。

 炎獣を使うなり、白炎を使うなり、それこそわざわざ魔法とかを使わなくても、素手で壁に穴を開けるのは難しい事ではない。

 だが、この壁の向こうにいる連中を怖がらせてしまえば、ここから出る時に向こうがこっちを信用しない可能性がある。

 いや、考えすぎてもしょうがないか。

 それこそ、下手に時間を掛ければこの研究所そのものが自爆するという可能性も……どうだろうな。

 自爆とか、何だか普通にありそうな気がするのが微妙に怖い。

 俺は何ともないが、全ての証拠を隠滅するという意味で。

 このままここでじっとしていても、意味がないと判断して、壁を軽く叩く。

 コンコンというノック音。

 だが、壁の向こうにいる相手……いや、気配が複数あるのを考えると、1人じゃなくてもっと大勢か?

 

「おい、この壁の向こうに誰かいるな?」

 

 そう告げ、向こうからの返事が来る前に言葉を続ける。

 

「これから、この壁を壊す。この壁の近くにいる奴は、出来るだけ壁から距離を取れ。多分大丈夫だとは思うけど、万が一を考えてな」

 

 一応返事を待つが、壁の向こうから言葉が発せられる事はない。

 ……本当に大丈夫なんだろうな?

 

「いいか。繰り返すけど、これからこの壁を壊す。この壁の近くにはいるなよ」

 

 そう告げ、空間倉庫からスライムを呼び出し、瞬時に壁を切断する。

 鋭利な刃と化したスライムに掛かれば、壁の向こうに被害を出さないようにしながら、壁だけを斬るというのは、難しい話ではない。

 そうして壁が切断された先にいたのは……動物が閉じ込められるような檻に閉じ込められた、大勢の子供達だった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:235
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.11
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1435

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