転生とらぶる

2222話

「……ほう」

　その報告に、俺の口から出たのは微妙な言葉だった。

　怒り、呆れ、哀れみ……それ以外にも、様々な感情が交ざった言葉。

「アクセル、落ち着け。実際に戦いになった訳じゃない。ジオン軍にとっても、今の状況で儂等と戦う必要はないのだからな」

　ラルの言葉に、俺は大きく息を吐く。

　俺が聞いた報告というのは、ジオン軍が潜水艦部隊を結成したというものだ。

　いや、それだけであれば、特に驚くべき事でもないし、独立戦争をする為に連邦軍と戦っているジオン軍としては当然の行動だと思えただろう。

　寧ろ、俺が予想していたよりも遅いとすら言える。……まぁ、この件も例によって例の如く、俺がグラナダを占拠したのが影響してるだろうが。

　ともあれ、潜水艦部隊を結成したというだけなら、俺からも何も不満も文句もない。

　だが……その結成された潜水艦部隊が、ハワイの周辺で何らかの行動を起こしているとなれば話は別だろう。

　ハワイは、ルナ・ジオン軍にとって唯一の地球上の拠点であると同時に、シャドウミラーとしても相応の援助をしているアプサラス計画の本拠地でもある。

　そのような場所で色々と動き回られるのは、当然だが面白くはない。

「恐らく、この前行われたニュータイプ研究所の襲撃に対する報復行為だろう」

　アンリのその言葉に、この場にいる何人か……ルナ・ジオンの幹部達が同意するように頷く。

　俺もまた、その言葉には納得する。

　あのニュータイプ研究所の襲撃によって、ジオン公国の評判は地に落ちた……とまではいかないものの、かなり懐疑的に見られるようになってしまった。

　これで、ジオン・ズム・ダイクンの後継者が他にいなければ、ここまで被害も大きくはならなかったのだろう。

　しかし、生憎とこの世界にはジオン・ズム・ダイクンの娘にして自然発生したニュータイプ――実際には俺と接触した事によって覚醒したのだろうが――のセイラがいる。

　そうである以上、あのニュータイプ研究所の一件は、ジオン公国にとっては大きなダメージになってしまった。

　ジオン公国としては、恥を掻かされてそのままにしてはおけない。

　だが、正面切ってルナ・ジオンと戦うのは最悪の結果をもたらすというのは、グラナダの戦いや月の占領作戦において理解している。

　だからこそ、今回のような行動に出た訳か。

「だが、その挑発でこっちが本気になるとは思わなかったのか？　実際、ルナ・ジオンには血の気の多い奴がいるし」

「いや、アクセルに言われちゃ、色々と駄目だろうね」

　シーマの突っ込みに、他の面々が……それこそオルテガまでもが頷く。

　他の面々はともかく、オルテガに言われるのは微妙に納得出来ないんだが。

『ハワイの領海内に入ってきてくれれば、こちらとしても戦力を派遣出来るのだがな』

　ハワイの統治を任されているゲラートが、通信越しにそう言ってくる。

　月にいる俺達と比べて、ゲラートは直接現場にいるだけに、ジオン軍の潜水艦部隊の行動を忌々しく思うのは当然だろう。

「ゲラート司令。領海内に入ってきた相手ならともかく、入ってきていない相手に対しての攻撃は慎んで下さい」

　セイラのその言葉に、ゲラートは頷きを返す。

　表面上は普段通りだったが、特にその内面では一体何を思っているのやら。

　アプサラス計画の事と……ちょっとだけガトーとアイナの進展を聞きたいところだが。取りあえず今は真面目な話をしているので、それは止めておこう。

「それと、クレイドルに来る為のHLV待ちの方々の待遇はどうなっていますか？」

『そちらは特に問題ないかと。小さい問題は幾つも起こってますが、大きな問題は起こってませんので。……もっとも、本当の意味で大きな問題になりそうな場合は、コバッタや量産型Wといった連中が動いてくれますから』

「そう言えば、独立を目指すゲリラがいるという話も聞いたが？」

『そういう連中はいるが、その動きはきちんと掴んでいるよ。俺がそんな連中を見逃すと思うか？』

　セイラではなく、ラルからの問い掛けだったからだろう。ゲラートは、セイラに対するのとは全く違う口調でそう返す。

　そう言えば、シェリルのコンサートの一件で動いていたのも、そういう連中だったよな。

　……ハワイに比べると、月での独立運動の類が殆ど起こっていないのは、一応月を占拠したという形になってはいるが、実際に月面都市にシャドウミラーやルナ・ジオンの戦力は少なく、更には市長を含めた月面都市の上層部が不正を行っていないか監視している、というのも大きいのだろう。

　こういうのが、恐らく間接統治って奴なのか？

　普段は賄賂やら何やらを貰っている上層部の連中が、コバッタや量産型Wによって違法行為をしていないかをしっかりとチェックされており、過去に犯罪を行った事が発覚すればそれを公表するようにしている。

　つまり、本来ならルナ・ジオンやシャドウミラーに向けられる憎悪が、月面都市の上層部の連中に向けられているのだ。

　ましてや、基本的にルナ・ジオンやシャドウミラーの面子は他の月面都市に行く事は皆無……とまでは言わないが、あまりない。

　それだけに、月面都市の連中は自分達が支配されているという実感がないのも大きいだろう。

　最初にそういう行動を起こそうとした連中の多くは、既に逮捕されてクレイドルで農作業をしているし。

　そんな訳で、月はハワイと違って特に騒動も起こっていない。

　……ハワイの場合、間接統治ではなくゲラートが直接統治しているというのが、色々と不味い原因かもしれないな。

「とにかく、潜水艦部隊が領海内に入るまで攻撃は禁止します。よろしいですね？」

　セイラのその言葉は、領海内に入ったら攻撃をしてもいいという事を示している。

　その事に気が付いたのか、ゲラートは笑みを浮かべて敬礼をした。

「さて、そうなると次の議題は……連邦軍がまたやった、という事ですか」

　しみじみと、ジェーンが呟く。

　にしても、またやった？　連邦軍が何かやらかしたのか？

　その事を疑問に思うが、考えてみれば連邦軍はこれまで何度もやらかしている以上、そう聞いても、またかという思いの方が強い。

「で？　今度は連邦軍は何をやったんだ？」

　俺のその問いに、ジェーンは額を押さえながら口を開く。

「サイド6沖で、連邦軍の艦隊がジオン軍の艦隊を奇襲し……撃退されてしまいました」

　あー……またか。

　先月にもヘリオン作戦とかいうので、地球軌道上にいるジオン軍の艦隊に攻撃を仕掛けて、負けたばかりだろうに。

　そんな中で、ジオン軍に……いや、ちょっと待て。

「サイド6沖？　それってまさか、俺達がニュータイプ研究所を襲撃した件と何か関係あったりするのか？」

　俺達がニュータイプ研究所を強襲してから、それなりに時間は経っている。

　だが、研究所の中身を引き上げるといった事をするのであれば、やはりそれなりに時間は掛かるだろう。

　であれば、もしかして……本当にもしかしての話だが、その戦いの引き金を引いたのは俺達という可能性も有り得る。

　だが、俺のその言葉にジェーンの隣にいたルルーが首を横に振る。

「可能性は低いかと。……いえ。今回の件でジオン軍の部隊がサイド6に来るかもしれないという予想を連邦軍が立てたという意味では、研究所の強襲が理由の1つという可能性はありますが」

　そのルルーの説明に、取りあえず納得する。

　にしても、連敗続きにも関わらず、未だにルナツーには戦力が残っているというのは……連邦軍の国力の凄さを感じさせられる。

　キブツのようなもので資源を入手出来る訳でもなく、魔法球のように時間の流れを加速出来る訳でもないのに、よく軍艦をこれだけ用意出来るものだ。

「ともあれ、これでまた連邦宇宙軍の戦力が減ったのは、間違いのない事実だ」

　アンリが若干複雑そうながら、それでも微かに嬉しさを滲ませて、告げる。

　ルナ・ジオン軍を纏めているアンリにしてみれば、敵対勢力……という訳ではないが、自軍以外の戦力が減ったというのは、喜ぶべき事なのだろう。

　ましてや、アンリはジオン・ズム・ダイクンの思想に感銘を受け、連邦軍を捨てた経歴を持つのだから。

　もっとも、ジオン軍と連邦軍のどちらをより憎むのかと言われれば、やはりと言うべきか、当然ジオン軍の方を憎んでいるのだが。

　あくまでも状況証拠でしかないが、ジオン・ズム・ダイクンを暗殺したと思われるザビ家は、アンリにとって不倶戴天の敵と評してもいい存在なのだから。

「ヘリオン作戦とかいうのは、ルナツーにいるタカ派が提案して強引に実行に移した作戦だったらしいが、今回の件は違うのか？」

「そうですね。半ば偶発的な遭遇で、連邦軍の方が先にジオン軍を見つけて、奇襲出来る状況だったので、奇襲し……結果として負けたというところかと。奇襲を仕掛けた艦隊を率いていたのがタカ派の人物であった事が、連邦軍にとっては不幸でしたね」

　ルルーの言葉通り、その軍人に率いられていた軍人達にとって、不幸以外の何ものでもない。

　普通の軍人であれば、連邦軍がジオン軍を相手に――例え奇襲が成功しても――勝つのが難しいというのは、容易に想像出来る筈だ。

　にも関わらず、上官が無能であった事から、戦いを挑まなければならず、結果として壊滅的な被害を受けたのだから。

　それでも……と、多少の疑問を抱いて口を開く。

「連邦軍なら、マゼラン……は無理でも、サラミスを大量に用意して遠距離から不意打ちを仕掛ければ、どうにかなりそうな気がするんだけどな」

　物量こそが、連邦軍の売りだ。

　その辺を考えれば、今回の一件幾ら何でも……と、そういう風に思ってしまっても仕方がないだろう。

　特に奇襲が成功したのだとすれば、連邦軍に とってこの戦争で惨敗の理由を作ったミノフスキー粒子も散布はされていなかった可能性も高い。

　ミノフスキー粒子というのは、一度散布すれば永遠に残るというものではなく、ある程度時間が経過すれば消えるような代物だ。

　そしてサイド6は中立という事で、特に大きな戦闘は起きていない。……いやまぁ、俺達がジオン公国の研究所を襲撃したりはしたけど。

　その辺りの事情を考えると、奇襲を仕掛けた連邦軍が一方的に負けるというのは……少し信じられない。

　考えられるとすれば、そのミノフスキー粒子がない状況で遠距離からのメガ粒子砲の発射という奇襲攻撃を行われても、どうにか出来るだけの理由が何かあったという事なのだが……

「その辺、どう思う？」

　事情を説明して尋ねると、ルルーはジェーンに視線を向ける。

　視線を向けられたジェーンは、無言で頷き、それを見たルルーが口を開く。

「実は、その戦場にはR型のザクに乗った腕利きのMSパイロットがいたらしいです。それも、赤のパーソナルカラーを持った」

「っ！？」

　ルルーのその言葉に息を呑んだのは、俺……ではなく、セイラ。

　当然だろう。赤いパーソナルカラーを使っているMSに乗っているので、一番有名なのは赤い彗星のシャアなのだから。……もっとも、グラナダを1機で陥落させた俺、月の大魔王のニーズヘッグも深紅という風に色的には赤系統なので、最近ではそっちの方が有名になっていたりするのだが。

　ともあれ、ジオン軍で赤いパーソナルカラーであれば、やはりそれで有名なのはシャアだ。

　そんな訳で、セイラがルルーの言葉に反応するのも当然の事だった。

「それで、シャア・アズナブルが出たのか？」

　緊張した様子で、ラルが尋ねる。

　ラルにしてみれば、シャアは……キャスバルは、セイラと同様の存在だ。

　それはアンリも同じで、ルルーに強い視線を向けている。

　それに比べると、ダイクン派云々は関係なく、純粋に自分の居場所を得る為にセイラに協力してルナ・ジオンの立ち上げをしたシーマの方は、シャアにそこまで興味を持っている様子はない。

　……ちなみに、この場にいる殆どの者がシャア・アズナブルの正体を知っている。

　それを知らないのは、アンリの連れてきた政治家連中のみだ。

　その辺はまだ信用出来ないという面があるので、当然の結果だろう。

　実際、何人かは既に農場送りになっているし。

　だからこそ、そのような面々は何故赤い彗星の一件で、俺達がそこまで気にしているのかといったことは理解出来ていない。

　そんな風に様々な視線を向けられたルルーだったが、頷くのではなく首を横に振る。

「いえ。残念ながら、こちらで入手した情報によると、現在シャア少佐はソロモンで補給中という事です。その辺はきちんと確認も取れているので……恐らく、この赤いMSは赤い彗星ではなく、真紅の稲妻の方かと」

「ああ、ジョニー・ライデンかい」

　ルルーの言葉に、シーマが納得したように告げるのだった。

---

アクセル・アルマー
LV：43
PP：235
格闘：305
射撃：325
技量：315
防御：315
回避：345
命中：365
SP：1987
エースボーナス：SPブースト（SPを消費してスライムの性能をアップする）
成長タイプ：万能・特殊
空：S
陸：S
海：S
宇：S
精神：加速 消費SP4
　　　努力 消費SP8
　　　集中 消費SP16
　　　直撃 消費SP30
　　　覚醒 消費SP32
　　　愛　 消費SP48

スキル：EXPアップ
　　　　SPブースト（SPアップLv.9&SP回復&集中力）
　　　　念動力 LV.11
　　　　アタッカー
　　　　ガンファイト LV.9
　　　　インファイト LV.9
　　　　気力限界突破
　　　　魔法（炎）
　　　　魔法（影）
　　　　魔法（召喚）
　　　　闇の魔法
　　　　混沌精霊
　　　　鬼眼
　　　　気配遮断A+

撃墜数：1435