転生とらぶる   作:青竹(移住)

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2282話

「あーあ、ルナツーがもう見えなくなったぜ」

 

 そう言ったのは、格納庫の通信機を使って外の景色を見ていたカイ。

 実際に映像モニタに表示されている光景は宇宙空間のみだったのだから、その言葉も決して間違っている訳ではない。

 

「カイさん、今更そんな事を言わないで下さいよ。それこそ、悲しくなるじゃないですか」

 

 不満そうにカイに言ったのは、リュウと一緒にガンタンクに乗っているハヤトだ。

 その小ささに関わらず柔道が得意らしく、何度か会話をした時には柔道に関係する話を聞かされた覚えがある。

 俺とは気軽に話すし、今のようにカイともそれなりに話すのだが、アムロに対してだけは対抗心というか、反発心を持ってる。

 フラウから聞いた話によると、ハヤトの家はサイド7で以前住んでいた場所から、強制的に立ち退かされたらしい。

 その原因が連邦軍の施設を建設する為だったという事で、父親が連邦軍のアムロに対して、反発してるんだろう。

 ともあれ、アムロ以外にとってはそれなりにとっつきやすい相手なのは間違いない。

 

「だってよ。月に無事に到着出来ると思うか? きっとまたシャアが襲ってくるぜ? それも、今度は1隻だけとは限らねえだろ」

「……でも、イザークがいるじゃないですか」

 

 ハヤトの言葉に、2人の話を聞いていた全員が俺に視線を向けてくる。

 

「だろうな。イザークがいるから、ルナツーで降りるって避難民もいなかったんだろうし」

 

 リュウのその言葉に、何人かが頷きを返す。

 実際には、俺の実力云々というよりも、単純にルナツーがルナ・ジオン軍に占拠されたばかりだから、というのが大きかったと思うんだが。

 とはいえ、それを言えばちょっと面倒な事になりそうな気がするので、口にする事はない。

 代わりに、励ますように別の事を口にする。

 

「運が良ければ、それこそ月に到着するまでジオン軍が襲ってこないという可能性もある。それは期待してもいいんじゃないか? それにジオン軍に襲われても、月に近づけば機動要塞が守ってくれるし」

「お、それだよそれ。なぁ、イザーク。月の周囲には機動要塞ってのがあるらしいけど、それは本当なのか?」

 

 既に俺がルナ・ジオン所属の人間であるというのは、少なくても実戦に参加する面々には知られている。

 だからこそ、カイがこうして俺に聞いて来たのだろう。

 

「ああ、本当だ。バルジ、リーブラ、ニヴルヘイム。この3つの機動要塞が月を中心にして周回している」

「それで、どれくらい凄いんだ? 月を守ってるって事は、かなり強いのか?」

 

 さて、どう答えるか。

 一瞬そう迷ったが、現在の俺はアクセルではなくイザークだ。

 つまり、一般の兵士である以上、機動要塞について詳しい情報を持っている訳でもない。

 

「そうだな。強いか弱いかとなると、相当に強い。軍事拠点という意味ではルナツーもそうだったが、3つの機動要塞にはとんでもない威力の兵器が搭載されているらしい。それを考えると、その範囲内にホワイトベースが入り込めば、こっちの勝ちだな。幸い、ルナツーを占拠したルナ・ジオン軍の方で月に連絡はしておいてくれるって話だったから、ホワイトベースが近づいても攻撃される心配はない」

「つまり……シャアとかと遭遇しても、戦わずに月に向かった方がいいってのか?」

「そうなるな。勿論、場合によっては戦わないといけないといった事もあるだろうけど」

 

 シャアはMSパイロットとしてだけではなく、指揮官としても高い能力を持っているのは確実だ。

 そうである以上、こちらとしても迂闊にその能力を発揮出来るような行動は控えた方がいいのは間違いないだろう。

 

「うげぇ。嘘だろ? シャアと戦うのかよ」

「……少しはやる気を見せたらどうです?」

 

 嫌そうな、それこそ心の底から嫌そうな表情を浮かべたカイに対し、そんな風にメリルが告げる。

 カイも、メリルからの言葉だったからだろう。数秒前に浮かべていた嫌な表情を消し、慌てたように口を開く。

 

「いやいや、やる気がない訳じゃないですよ。ただ、今回のような場合はただ闇雲に突っ込んでも、それこそシャアの思い通りじゃないですか。ここはやっぱり慎重に行動した方がいいですって。幸い、ルナツーで食料や水は十分に補給出来たんですから」

 

 カイの言う事にも、一理あるのは間違いなかった。

 実際にルナツーでは、こちらが予想していたよりも大量の食料や水を補給物資として渡されたのだ。

 ……まぁ、ルナツーを占拠したダグラス達にしてみれば、ルナツーにある物資は現在はルナ・ジオン軍の物だが、ルナツーを返せば、それはまた連邦軍の物になるのだ。

 ルナツーを引き渡す時にわざわざ月まで持っていくのであれば、話は別だが。

 ただ、連邦軍が備蓄していた食料は決して不味い訳ではないが、同時に美味い訳でもない。

 そうである以上、ダグラス達もわざわざ月に持って帰る必要はない。

 あるいは持って帰るにしても、参考程度の代物だろう。

 ……マブラヴ世界の合成食を食べさせられている者達にしてみれば、連邦軍の食料の方が数万倍もマシなのだろうが。

 ともあれ、そんな訳でルナツーからは十分な……いや、十分すぎるだけの食料や水を補給してもらった。

 ホワイトベースには、現在サイド7からの避難民が大量に――結局1人もルナツーに残ると希望する者はいなかった――いるが、その全員が腹一杯食べて、十分に満足するだけの食料と乾きを覚えないどころか、シャワーとかを使えるだけの水はある、と言えば分かりやすいか。

 そんな訳で、カイが言ってる通りシャアが網を張ってるだろう月に真っ直ぐ向かうコースではなく、大きく遠回りして月に行くというのも、決して間違っている訳ではない。

 もっとも、それは俺達にとっては安全ではあるが、少しでも早くMSの実戦データ等を必要とする連邦軍にとっては、面白くない事だろうが。

 ちなみに、当然の話だったがルナツーにおいて連邦軍との通信は殆ど出来なかったらしい。

 ブライトが中尉という階級を貰ったのだから、全く通信出来なかった訳ではないのだろうが……まぁ、これはダグラス達によって、ホワイトベースを月に向かわせる為の仕込みなのだろう。

 それに、ガンダム、ガンキャノン、ガンタンク……正確には、それらのコックピットとなるコアファイターには、教育型コンピュータが搭載されている。

 そこにあるデータを連邦軍に渡すという事は、アムロや……そして場合によっては俺の戦闘データの類も連邦軍に渡る事になる。

 もっとも、ガンキャノン程度では俺の能力を最大限に活かすといった真似は出来ないし、もしやったとしても、その場合はMSパイロットが死ぬ可能性が高い。

 何しろ、俺は混沌精霊だ。

 それこそ、普通のパイロットなら死んでもおかしくないようなGを普通に受けているし、感じている。

 だからこそ、もし俺の戦闘データを使ったりした場合、MSパイロットはミンチ肉になってもおかしくはない。

 

「そうね。カイの言う事も分かるわ。けど……イザークさんはどう思います?」

「そこで俺に聞くのか?」

 

 メリルの言葉に、呆れ交じりに返す。

 実際、今の話を聞いていたカイは、俺に嫉妬の視線を向けていたのだから。

 どうやら、カイはまだメリルの事を諦めてはいないらしい。

 まぁ、メリルの美貌を考えれば、それも無理はないのかもれないが。

 アムロもそうだし、何だかんだとメリルはモテるな。

 そのうち、ホワイトベースに乗っている男の殆どを魅了するんじゃないか?

 どうしました? といった視線を向けてくるメリルに、溜息を吐いてから口を開く。

 

「そうだな。カイの意見もそんなに悪いものじゃない。実際に食料や水の心配はいらないんだから。……けど、それでも俺は出来るだけ早く月に向かった方がいいと思う」

「へぇ、なんでそう思うんだい? まさか、出来るだけ早く故郷に帰りたいからって事じゃないよな?」

「それもないとは言わないけどな。……純粋に、避難民が精神的に参ってくる可能性があるからだよ。それに疲れの問題も馬鹿にならない。知ってるだろ? 俺達は一応部屋を与えられてるけど、避難民の殆どは通路で眠っているんだ。幾ら食料や水が十分にあるからって、精神的な疲れまではどうしようもない」

 

 軍艦の中。それも、赤い彗星のシャアにいつ襲撃されるかもしれないというプレッシャーは、直接戦闘に関わる者だけではなく、そちらに関わりのない避難民も当然感じてしまう。

 いや、俺達のように戦いに関わる者であれば、それこそ実際に戦いがどのように進むのかを理解しているので、必要以上に恐れるといったことはない。

 だが、避難民は直接戦いに参加していないだけに、赤い彗星という異名に対する強いプレッシャーが与えられる事になる。

 だからこそ余計に赤い彗星という名の幻影に踊らされてもおかしくはなかった。

 真っ直ぐ赤い彗星が待ち構えている場所に向かうのが正しいのかと言っても、それはそれで微妙な感じだが。

 俺なら赤い彗星に勝てるが、このUC世界においてアクセル……いや、イザークとシャアでは知名度が大きく違う。

 それがこの場合は大きい。

 俺が勝てると言っても、とてもではないが避難民には信じられないのだ。……今の俺は10代半ばの姿なんだし、前回の戦いで俺が有利に戦っていたところを見ていた訳でもないので、避難民が不安に思うのはしょうがないのかもしれないが。

 

「ホワイトベースがどんな進路をとって月に向かうのかってのは、それこそ俺達じゃなくてブライト達が決めることになるんだろうけどな」

「あ、それですけど。あのリード大尉って人、本当に大丈夫なんですか?」

 

 ハヤトのその言葉に、その場にいた全員の視線が集まる。

 ……アムロが何だか微妙な表情をしているのは、俺やブライトと一緒にシーマからリードがどのような人物なのかというのを聞いたからだろう。

 タカ派にすり寄っていた、無能。

 色々と表現の仕方はあるが、一番分かりやすいのはそれだろう。

 

「その、何だ。大尉になるくらいなんだから、無能という事は有り得ないだろ」

 

 同じ連邦軍のリュウがそうフォローする。

 幸い……という言い方はどうか分からないが、まだリードがホワイトベースに乗艦したばかりで、その性格はあまり知られていない。

 本人もブリッジにいる事が多く、格納庫に来たりはしないのが、この場合は大きいだろう。

 もしリードが格納庫に来ていたりしたら、色々と問題を起こしていたのは多分間違いない。

 もっとも、格納庫を始めとして他の場所が被害を受けていない代わりに、ブリッジでは色々と被害を受けている可能性が高いのだが。

 とはいえ、俺やメリルはルナ・ジオンの人間であるというのは知られている以上、リードも何か理不尽な事を言ってきたりといった真似は出来ない。

 ルナツー占領の一件で、ルナ・ジオン軍の力を心底から思い知っているのだから。

 ちなみに、今回のルナツー占領という事態を招いた最大の原因たる、タカ派の面々に関しては……うん。まぁ、取りあえず生きているだけ良かったんじゃないのか?

 ただ、ルナ・ジオンも南極条約に加入するように求められそうな気がしないでもない、という感想を抱いたのは間違いない。

 

「ブライト達も大変だな」

 

 今頃ブリッジでリードがどんな言動をしているのかを思えば、正式にホワイトベースの艦長となったブライトの大変さが身に染みる。

 

「……それなら、イザークさんが少し注意すればいいんじゃないんですか?」

 

 アムロにジト目を向けられてそう言うが、あまりリードに関わり合いになりたくないというのも、事実なんだよな。

 まぁ、リードが暴走して妙な命令を出してくるようなら、こちらとしても行動するのだろうが。

 幸か不幸か、今のところそんな様子はない。

 なので、取りあえず今はリードに構わず、こうして格納庫でガンキャノンについて少しでも慣れるようにしている訳だ。

 実機訓練は出来ないので、シミュレータを使った訓練とか、そういうのなのだが。

 

「まぁ、ブライトがどうしても手に負えないとなったら、こっちでも対応するよ。もっとも、リードも俺やメリルがホワイトベースに乗っている以上、そこまで横暴な真似は出来ないだろうが」

 

 ブライト達も、本当にどうしようもなければ俺を呼ぶといったような方法が使える以上、恐らく……本当に恐らくだが、そこまでリードが好き勝手出来る訳ではないと、そう思う。

 そんな風に考えながら、俺はカイにシミュレータでガンキャノンの訓練をするように指示するのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:240
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.11
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1436

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